とある英雄の伝説大戦(レジェンドウォーズ)   作:マッスーHERO

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突然ですが、ユーザー名と作品名をかえました 
詳しいことは活動報告で後日書きたいと思います。


罠に掛かったシンデレラ(前編)

[スキャニングチャージ!]

 

「はあ、セイヤー!」

 

周りの暗闇を引き裂くように火の鳥がマント姿の邪悪な戦士に向かっていく。オーズ・タジャドルコンボのマグナブレイズである。しかし邪悪な戦士はそれをものとはせずに受け止めると、そのままブレーンバスターの要領で投げ飛ばす。オーズはそのまま背中から地面に落ちそうになるがフォーゼに受け止められる。フォーゼはオーズを地面に下ろし、邪悪な戦士に挑む。

 

[Rocket Drill Limit Break]

 

「ライダーロケットドリルキック!」

 

フォーゼの必殺キックと邪悪な戦士のキックがぶつかり合い、周囲にすさまじい衝撃波を放つ。フォーゼはキック合戦に負け、地面に叩きつけられるも素早く立ち上がり、懐からあるものを取り出す。

 

「とっておきだ!」

 

[ガブリンチョ!ガブティラ!]

 

「キョウリュウチェンジ!」

 

フォーゼの姿が赤い戦士に変わり、赤い戦士は剣を手に邪悪な戦士に挑む。その姿をただ見ていることしかできないオーズ。

 

「オマエハワタシニハカテナイ、アノチカラナシデハオマエハムリョク」

 

赤い戦士と戦いながらも邪悪な戦士は余裕をみせながらオーズにそう言うと、手に持ったナイフで赤い戦士を突き刺した。鮮血が周りに飛び散り、辺りを赤く染めていった。

 

 

 

 

 

 

「うわぁ!」

 

御坂は慌てて起き上がる。周りを見渡すとそこは自分の部屋であり、ベットには黒子が寝ている。

 

「あ、あ、お姉さま、そこは…」

 

「どんな夢みてんのよ…」

 

どうやら御坂は椅子に座ったまま寝ていたようだ。机のスタンドはついたままで、机の上にはキョウリュウジャーのデータの映し出された端末と様々な格闘技の技の写真や資料がばらまかれている。

 

「はあ…いやな夢ね…」

 

椅子から立ち上がると御坂は風呂場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

時間は進み、下校時刻。御坂はいつものファミレスに向かうために通りを歩いていた。

 

「(妙にリアルな夢だったわね…あんな夢を見るってことは私は寝ながらあいつのことを考えているってことなの…)」

 

首をブンブンと横に振り、御坂はそんな思いを捨てようとする。ふと、前をみるとそこには件の少年が金髪頭と青髪頭と共に歩いていた。距離はそんなに離れていないが彼らは後方の御坂には気づいていないようだ。

 

「…だからよ、何回言えばわかるんだにゃあ?」

 

「何回言われてもわからんで、なあ上やん?」

 

「ああ、お前の言ってることはおかしいぞ土御門」

 

三人の話し声が御坂の耳に届いた。周りには下校時刻とあってたくさんの学生がいるため、すべてではないが断片的な彼らの会話が御坂の鼓膜を揺らす。

 

「やっぱり…は足やろ!」

 

「いや、胸や。そうやろ上やん」

 

「おう!俺たちムネーズの誓いは絶対にぶれないぜ!胸がない…なんて存在しなくていいとすら思ってる」

 

鼓膜どころか三半規管、いや脳全体が揺れるかのように錯覚した御坂は立ち止まりふらふらと近くのベンチに倒れこむ。そして自身のまるでオーズのオーラングサークルのような胸を見つめる。御坂の頭のなかを駆け抜けるのはかつて戦隊として変身した時の記憶だった。

 

『海賊戦隊!ゴーカイジャー!』

 

『特捜戦隊!デカレンジャー!』

 

『轟轟戦隊!ボウケンジャー!』

 

『電撃戦隊!チェンジマン!』

 

『鳥人戦隊!ジェットマン!』

 

中心に立ち、レッドの姿で名乗る自分の胸部はまるで装甲で守られているようだが、同じスーツを着る佐天、春上、婚后、湾内、泡浮…彼女たちの胸部はボールでも入れているかのように膨らんでいる。イメージのなかの自分が彼女たちに襲いかかるが、胸部の膨らみに弾かれ吹き飛ばされた。

 

 

 

「…」

 

「御坂さん、オーイ御坂さーん?」

 

気づくと御坂はいつものファミレスのソファに座っていた。目の前で掌を振る佐天に眼球の動きだけ反応を示す。

 

「御坂さん、大丈夫?」

 

「ウ~ン、生命活動はある…」

 

佐天の隣に座る枝先が心配そうな声で佐天に確認をとった。御坂のよこにいる春上も心配そうに御坂をみる。

 

「何か強いショックを受けてますなあ…」

 

「…はっ!?」

 

「あ、目覚めたの」

 

ようやく御坂もショック状態から立ち直ることができたようで、体をびくつかせながら目に光が戻る。

 

「本当に大丈夫ですか、御坂さん?」

 

「あ、うん、大丈夫…」

 

「あの御坂さん、どうして私の顔を見てくれないんですか?」

 

御坂の視線が自分の顔のはるか下を見ていることに気づいた佐天はゆっくりと御坂の視線の先を追う。その先は明らかに佐天の胸部に向いている。

 

「きゃあ、エッチ!」

 

わざとらしく胸を隠しながら、ふざけた感じで言う佐天だったが、御坂は表情をすこしも変えずに真剣な顔で佐天の胸部を凝視している。

 

「ちょ、御坂さん?あの…」

 

さすがに佐天も御坂の異常に気づき、すこし後ずさりをする。

 

「…はあ」

 

御坂は目線をしたに向けて、ため息をついた。自分の胸の問題を他人のせいにするのは実に不毛であるということに気づいたからだ。

 

「(あいつ、あんなに巨乳好きだったなんて…)」

 

「(御坂さん、何にそんなに悩んでるんだろう…なんとか場の流れを変えないと…)そ、そういえば御坂さん、新しい必殺技のアイデア浮かんだんですか?」

 

「え、ええ…だいぶいい感じよ」

 

佐天の言う新技とは御坂が対怪人用に開発している新しい必殺技のことである。先日のバスコ戦での命がけの無茶がたかり、クジャク、コンドル、クワガタ、サイのメダルが使用不能となっていることやバスコのような強敵の出現から従来の必殺技が敵に効かなくなる可能性を危惧した御坂が過去の資料や格闘技のデータから新しい技を開発していたのだ。

 

「80%は完成したわ。新技名も決まったしね」

 

「技名ですか?」

 

「ええ、名付けて『オーズストライカー』。佐天さんはどうなの?」

 

「私も仮面ライダーの技からいい技を見つけたんですよ。新技名は『ゴーカイドロップ』です!」

 

佐天も今後のために別のヒーローが使う技を使えるようにしておくことで相手を惑わせるのではないかと考え、ウルトラマンや仮面ライダーの技を調べていたのだ。この二人の技が後に一悶着起こすことになるのだが、それは別の話で語ることにしよう。

 

「それにしても御坂さん。何をそんなになやんでるんですか?」

 

ある程度御坂が調子を戻したところで佐天は話をもとに戻した。

 

「えっ?いやべつに、大したことじゃ…」

 

「ははーん、ズバリ恋の悩みですね!」

 

「ブッ!?」

 

佐天のある意味で真実をついた言葉に御坂は口に含んでいたジュースを吹き出しながら驚く。

 

「そ、そんなわけないじゃないの!」

 

「図星ですね」

 

「図星だね」

 

「図星な…恋の悩みなら僕が聞こうか?」

 

話の途中で春上の髪に青いメッシュが入り、眼鏡をかけたU春上へと変わるが、枝先がバックから取り出したハリセンでU春上を叩いて元に戻す。

 

「ウラタロスに任せるとろくなことにならないからね」

 

「「おおー」」

 

枝先のなかなかのイマジンコントロールっぷりに御坂と佐天が歓声をあげる。

 

「で、どうなんですか?やっぱりあのクッキーの?」

 

「いや、べつにね…その…」

 

佐天の追及に御坂は赤くなりながら顔をふせる。佐天はそんな御坂を見て、かなりの重症と判断しあるものをカバンから取り出した。それは佐天の愛読する都市伝説紹介雑誌だった。

 

「そんな御坂さんに朗報があります!」

 

「なに?また都市伝説?」

 

「その通り!今回のはすごいですよ!」

 

また始まったと御坂は思った。佐天の都市伝説好きにも困ったものだ、それで危険な目にあったこともあると言うのに。御坂はやれやれといった感じで頬杖をつき、笑う。

 

「100%恋が叶うガラスの靴「詳しく聞かせて!」うわぁ!」

 

佐天が最期まで言う前に御坂は文字通り佐天に飛びつくように顔をちかづけた。

 

 

 

 

「恋が叶うガラスの靴?」

 

「うん!舞花から聞いたんだよ」

 

「それを二人で探したいと思うんです」

 

とある学生寮の一室では、インデックスと風斬の話を上条が部屋を歩きながら聞いていた。上条はこれから補習があるのだが、それに必要な教材をとりにきていたためだ。

 

「風斬が見ててくれるなら安心だけどな、なんでまたそんなものを探すんだよ?」

 

「決まってるんだよ、実物を手に入れてそんなの眉唾物だって証明してやるんだよ。シンデレラの術式を応用してもそんなものはできるはずがないんだから…」

 

シンデレラの術式と聞いて、上条の頭にある女性がよぎる。確かに彼女の魔術は恋を叶えるようなロマンチックさに溢れた魔術には程遠いものである。

 

「で、それはどこにあるんだ?」

 

 

 

 

 

「学園都市中にガラスの靴がばらまかれてるだァ?」

 

「そうそう、だから探しに行こってミサカはミサカは言ってみたり!」

 

黄泉川宅のマンションではソファに寝転んだ一方通行に打ち止めが件の話をしていた。もっとも、一方通行にガラスの靴の効果までは話していない。

 

「はぁ、めンどくせェ。そンなのそこの暇人にでも頼めやクソガキィ」

 

一方通行は椅子に座っている番外個体を指差して言う。番外個体はその言葉に笑いながらこう反論した。

 

「あなたにだけは言われたくないね、色白ニー…」

 

すべてを言う前に一方通行がチョーカーのスイッチを入れようとしたのを見て、番外個体は打ち止めをつれて外に出ていくことを決めた。

 

 

 

 

 

「いや探すのは超いいんですけどね滝壺さん。別にいらないんじゃないですかねそんな靴」

 

絹旗と滝壺は第七学区の街中を二人で歩きながら、例の話をしていた。

 

「どうして?」

 

「だって、滝壺さんの恋は超叶ってるでしょ?浜面がいるじゃないですか」

 

「駄目、最近浜面の周りを邪魔な虫がたくさん飛んでるからしっかり鎖をつけないと…」

 

「あの、そのなかに私やむぎ…いやフレメアは…」

 

「超はいってるよ」

 

滝壺が絹旗の口癖を真似ながら言ったのを聞いて、絹旗は凍りついた。

 

 

 

 

 

「うっ!?」

 

「どうしました、浜面さん?」

 

トゥモローリサーチで休憩をとっていた浜面が突如体をびくつかせたのをみて、海原が心配そうに声をかける。

 

「いや、なんか悪寒が…」

 

「なんだ浜面、風邪か?今日は兄者もいないんだからな。仕事がたくさんあるんだぞ」

 

店の奥から霞一鍬と男が1人出てくる。

 

「仕上くん、体調悪いなら今日は休んだ方がいいぞ」

 

この男こそ何でも屋『トゥモローリサーチ』の店長である浅見竜也である。

 

「大丈夫ですよ、店長。それより、一甲さん休みなんですか?」

 

「ああ、本職が忙しくてな」

 

「本職?」

 

「ああ、コーラス・グループのリードボーカルをやってるんだ」

 

「「ええ!?」」

 

一甲の意外な本職に海原と浜面が驚いた。

 

 

 

 

 

第七学区の病院では、伊達に連れられた固法、黒子、初春がある病室に来ていた。病室には四人の少女がベットに寝かされていた。

 

「これが例の?」

 

「ああ、原因不明の昏睡状態の患者たちだ。いまカルテを持ってこさせてるから…」

 

「伊達先生!カルテ持ってきました!」

 

「おお安達ちゃん。サンキュー」

 

安達と呼ばれた白衣の男はカルテを伊達に手渡す。安達とよばれた男は黒子たちの方に視線を移すと軽くお辞儀をしてその場を去った。

 

「あの人もTPCの?」

 

「そうそう、俺らのなかじゃ一番下っ端だけど仕事・勉学共に優秀、将来期待の新人だよ」

 

そう言うと伊達はカルテを少しだけ見て、固法に手渡した。

 

「心拍数や血圧に問題はなし、でもまったく目をさまさない…」

 

「普通ならありえないことですの」

 

「被害者は四人で学校、能力などに共通点はなし。唯一の共通点は女性であることくらいですかね?」

 

カルテを見ながら固法たちはそれぞれ考えを言った。そもそもこの事件の始まりは一週間前、丁度ワロガとの戦いのすぐあとのことである。固法たちはその間もガイアメモリ事件などに挑んでいたためにこの事件のことをよくはしらなかったのだが、今回TPCから直々に調査してほしいと要請があり、この病院を訪れていた。

 

「もうひとつおかしな点がある。被害者全員がレム睡眠状態で眠り続けているってことだ」

 

「えっ?」

 

固法が驚くのも無理はない。通常人間はレム睡眠とノンレム睡眠という二つの睡眠を交互に行うからだ。

 

「レム睡眠ってことは、夢を見てるってことですか?」

 

「まあノンレム睡眠でも夢は見るが、鮮明な夢となるとやはりレム睡眠の方が見やすいから…そういう考え方もできるな」

 

レム睡眠の間脳は活動を続けているため、鮮明な夢を見やすくなり、夢が記憶に残る場合も多い。それに対してノンレム睡眠は脳が活動を止めるために夢を見にくいのだ。

 

「 …ひょっとすると、幻想御手<レベルアッパー>事件に近い何かの可能性も…」

 

固法の言葉に黒子と初春が息を飲む。一方伊達は残念そうな顔でもうひとつの資料を固法たちに手渡した。それを受け取った固法の手が震え始める。

 

「これは…」

 

そこには被害者の脳波のデータが記されており、その脳波はほとんどの被害者が同じものになっていたからだ。かつて幻想御手事件でも被害者の脳波が一定にシンクロするという現象が起こっていることを彼女たちが忘れるはずがないからだ。

 

 

 

数十分後、固法たちは病院から第177支部へと戻っていた。

 

「この事件に関しては私たち三人で調査しましょう」

 

「そうですわね」

 

「私も賛成です。佐天さんはようやくバスコ戦でのダメージから回復したのにまた追い詰めるような目にあってほしくありません」

 

「よし、とりあえず白井さんは関係者への聴き込み。初春さんは書庫にアクセスして被害者のデータを調べて。私は現場にいってみるわ」

 

「「はい」」

 

 

 

 

 

「なかなか見つからないもんね」

 

「あの御坂さん…まだ探しはじめて一時間もたってませんよ」

 

暗い路地裏を這いつくばりながら靴を探す御坂に佐天が言った。春上と枝先はその姿を佐天の後ろから心配そうに見ている。

 

「(御坂さん、なんか必死なの)」

 

「(ちょっと恐い…)」

 

『恋が叶うガラスの靴』を噂を聞いてからの御坂は少しおかしかった。何かに執着するように路地裏を探す姿は言っては悪いがさながら妖怪のようだ。

 

「(なんか言っちゃいけないことをいったかも…)あの御坂さん、ガラスの靴はちゃんと祈りながら探さないと…」

 

「祈ってるわよ!」

 

佐天の言葉に御坂は鬼のような形相で言い返した。『恋が叶うガラスの靴』の噂は要約すると次のとおりである。恋を叶えたい、あるいは強い願いを持った女の子が路地などの人の目につかないところで叶えたい恋の相手や願いを心に思いながら探すと美しいガラスの靴を見つけることができる。その靴を履いて、サイズが見事に合えばその恋や願いは叶う、以上が『恋の叶うガラスの靴』の噂として一週間程前から学園都市で噂になっていた。

 

「絶対みつけてみせるわ!佐天さん、春上さん、枝先さん!次いくわよ!」

 

「「「あ、はい」」」

 

もはやブレーキはおろか線路すらなくして暴走する御坂美琴を止められるものは誰1人いなかった。

 

 

 

 

 

「ここが最後ね」

 

固法は四人目の被害者の部屋を訪れていた。1人目の被害者の部屋はすでに片付けられてしまい見ることは出来なかったが他の部屋はしっかりと保存がされていたため、固法はこれまでに二つの部屋を見ていた。

 

「…」

 

三人だけの捜査は思ったよりうまく進んでいた。テレポート使いの黒子による関係者への聴き込みは八割がた終わっており、初春の検索もほとんど終わっていた。それらの情報をまとめると次のとおりである。四人の被害者は全員レベル3か4の女生徒で学業への悩みはとくになく、幻想御手を使用するようなものはいなかった。この事件に幻想御手が関係ないことを決定づけたのは固法が三人目の被害者の部屋を現場検証をした時だった。その部屋の持ち主は耳に障害があり、音楽プレーヤーはもちろんのことスピーカーやイヤホンもなかったのだ。幻想御手は音楽ソフトであるために彼女はそれを聞くことはできない。よって幻想御手事件の再来ではないことはわかっていた。

 

「キレイな部屋ね」

 

固法は部屋を見渡しながら言う。整理がしっかりされているが、ゴミ箱にはゴミなどが残っており、誰かが証拠隠滅のために掃除をしたのではなく、いつも整頓されていたのがよくわかる。固法は部屋を隅々まで見渡すがとくになにも見つからない。キッチンやトイレ、風呂場もチェックしてみるがとくに証拠はない。

 

「ここも空振りか…」

 

固法は玄関に戻り、第177支部に戻ろうかと思いドアを開けようとするが、ふと靴箱の上に置かれた靴を買ったときにいれる箱に気づいた。パッケージに描かれたブランドメーカーのマークは固法も知るメーカーのものだった。それを裏付けるようにその箱に入っていたとおもわれる靴がしたに置かれている。だが、これが固法にある違和感を持たせた。

 

「(あれだけ整理がいきとどいてたのに…この箱だけ何故?)」

 

したに置かれている靴には泥が少しついているため出してから少しは日がたっているはずだ。それなのに箱がなぜ靴箱の上に置かれているのか。固法は試しに箱を持ち上げてみる。すると箱には何かがはいっているらしく重みが感じられた。ゆっくりと箱の蓋を開けてみる固法。するとそこには二足のガラス製の靴が入っていた。

 

「ガラスの…靴?」

 

固法が箱から靴を出そうとした瞬間、背後でドアノブが回転する音がした。固法は靴箱の上に箱を置くと、靴を履いたまま部屋のなかに戻り、すばやく物陰に隠れる。ドアが開かれ、現れたのは…

 

「なんだ、白井さんか」

 

「なんだとはショックですの、固法先輩」

 

ドアを、開けて現れたのは白井黒子であった。固法は玄関に戻る。

 

「もう聴き込みは終わったの?」

 

「ええ、それでおかしな共通点を見つけたんですの」

 

「おかしな?」

 

「はい、どうも被害者は皆…恋をしていたようなんですの」

 

「はぁ?」

 

黒子が言うには事件の被害者たちは皆、片想いや叶わぬ恋をしており悩んでいたというのだ。

 

「で、ここの部屋の持ち主は、『近々あなたの恋も叶うよ』と言ってたわけね?」

 

「ええそうですの」

 

固法はすこし迷った後、見つけたガラスの靴を黒子に見せた。

 

「これは見事なガラス細工ですの」

 

「ねえ、白井さん。ひょっとすると被害者は友達にこれを渡そうとしてたのかも知れないわね」

 

「これに何か関係が?」

 

「とりあえず支部に戻って初春さんの意見を聞きましょう」

 

二人は支部に戻るために部屋を後にした。

 

 

 

「見つけた!」

 

「ええ!?」

 

第七学区の公園の草の中を探していた御坂は歓声をあげた。歓声を聞いた三人が御坂のもとに行ってみると、その手には美しく透き通ったガラスの靴が乗せられていた。

 

「やったね、御坂さん!」

 

「うん!」

 

枝先が御坂にそう言いながらガラスの靴を見ている。一方で佐天と春上は浮かない顔をしている。別に先にガラスの靴を見つけられたことを妬んでいるわけではない。ただ、二人とも靴から何か不吉なものを感じていた。

 

「早速履いてみようよ!」

 

「ええ!」

 

御坂は早速ベンチに座り、靴を脱ぎ始めた。

 

「…御坂さん、ちょっと待って下さい」

 

佐天は靴をはこうとする、御坂を制止しようとするが御坂はそれを聞こうとしない。

 

「佐天さん、慌てなくても次はあなたに貸してあげるから」

 

御坂は止める間もなくガラスの靴を両足に履いてしまった。

 

 

 

 

同じ頃、ガラスの靴を見つけたインデックスと風斬も靴を履いてみようとしていた。

 

「じゃあ、私が履いてみるね氷華」

 

「う、うん…気を付けてね」

 

風斬もガラスの靴に不吉なものを感じていたが、インデックスがあまりに履きたがるので制止することができなかった。インデックスは靴を脱ぎ、ガラスの靴を両足に履いていく。

 

 

 

 

 

同じ頃、ガラスの靴を見つけてマンションに戻っていた打ち止めと番外個体はそれを眺めていた。

 

「よし、私が履いてみるねってミサカはミサカは靴を取りながら言ってみたり!」

 

「別にいいよ、ミサカには愛なんて前向きな感情はないからね」

 

打ち止めはガラスの靴を自分の足に履いた。

 

 

 

 

 

同じ頃、ガラスの靴を見つけ同じくマンションに戻った滝壺と絹旗は靴を観察していた。

 

「誰がこんなもん超つくったんでしょう?」

 

「まあ、そんなことより履いてみようか…あっ、ちょっとトイレ」

 

滝壺が立ち上がり、トイレに向かうのと入れ違いにリビングに麦野が入ってきた。

 

「あ、麦野」

 

「なに、この靴?キレイじゃん。ちょっと履かせて」

 

麦野はさっと靴を取ると、自分の足に履いた。

 

 

 

 

「えっ?」

 

気づくと御坂はドレスを着て舞踏会の会場に立っていた。1人の男が御坂の手をとり、踊り始めた。その人物はおとぎ話の王子のような姿をした上条当麻だった。御坂はその状況に少し違和感を持ったが、それでも今はこの状況に身を委ねてしまった。

 

 

 

「ハハハ!ハハハ!」

 

「み、御坂さん?」

 

乾いた笑みを浮かべながら踊り狂う御坂を三人は黙って見ていることしかできなかった。御坂はまるで誰かに手をとられているかのように踊り続けている。

 

「ハハハ!ハハ…」

 

突如、御坂が糸の切れた人形のように地面に倒れ込んでしまう。

 

「御坂さん!?」

 

三人は御坂の元へ駆け寄る。佐天は御坂の足からガラスの靴を剥ぎ取る。

 

「こんなもの!」

 

ガラスの靴を勢いよく地面に叩きつける佐天。ガラスの靴は強い衝撃を受けてバラバラに砕け散る。しかしその破片から突如煙のようなものが発生し、その煙が怪人の姿へと変わっていく。

 

「冥獣人インキュバスのベルビレジ!」

 

怪人はそう名乗ると佐天たちに襲いかかる。しかし、モモタロスが憑依したM春上のドロップキックを受けて吹き飛ばされる。

 

「絆理!そこのビリビリ女を安全なところへつれてけ!」

 

「うん!」

 

そう言いながらM春上は腰にベルトを巻き付け、パスを取り出す。同時に佐天もモバイレーツとレンジャーキーをポケットから取り出した。

 

「変身!」

 

[Sword From]

 

「豪快チェンジ!」

 

[ゴーカイジャー!]

 

電王・ソードフォームとゴーカイイエローはそれぞれデンガッシャーとゴーカイサーベルを構え、ベルビレジに挑む。

 

 

 

 

[It's morphin time!]

 

「レッツ!モーフィン!」

 

「たぎれ!獣の力!ビーストオン!」

 

同じ頃、絹旗が倒れた麦野の履いていたガラスの靴を剥ぎ取り砕いたところ、中から怪人『ロウソクロイド』が出現したため、二人は変身し、これを迎撃しようとしていた。

 

[Transport]

 

「はあ!」

 

カメラ型銃『イチガンバスター』がロウソクロイドを撃ち抜き、窓の近くまで後退させたところでゲキイエローの正拳突きが極り、ロウソクロイドは窓を突き破りながら部屋の外へと吹き飛ばした。

 

 

 

 

「ぐお!」

 

打ち止めのガラスの靴から現れたマシン獣『バラナイトメア』がマンションから吹き飛ばされ、地面に叩きつけられて苦悶の声をあげる。その横に番外個体の変身した『仮面ライダーバース』がカッターウイングを装備した状態で悠々と降り立つ。

 

「くっ、貴様もライダーだったのか」

 

「おいでよ、相手してあげるからさ」

 

バースは人差し指をくいくいと曲げてバラナイトメアを挑発する。バラナイトメアは怒り狂いながら突っ込んでいくがバースは軽やかにジャンプして飛び箱の要領でバラナイトメアの頭に手をおいて後ろへ飛ぶと、振り向き様にバースバスターを発砲した。

 

 

 

 

各々が様々な戦いを繰り広げるなか、1人苦戦していたのは風斬だった。インデックスは昏睡状態で彼女は戦うすべがなかったのだ。

 

「くっ!」

 

「どうした?変身せんのか?」

 

『悪夢忍者ユメバクー師』は少しずつ風斬を追い詰めていく。しかし、その時青い光球がユメバクー師を吹き飛ばす。

 

「な、なにものだ!?」

 

「仮面ライダーメテオ、あなたの運命は私が決めます!」

 

メテオはユメバクー師と風斬の間に立つと、風斬に逃げるように促した。風斬は一度頭を下げた後、どこかへと走り去る。

 

[Saturn!Ready?OK!Saturn!]

 

「はあ!」

 

メテオがサターンソーサリーをユメバクー師に放つ。

 

 

 

 

電王とゴーカイイエローのダブルキックがベルビレジを吹き飛ばす。

 

「お前の声聞いてると、あのモノマネ野郎を思い出すんだよ!一気に行くぞ!涙子!」

 

「ええ!」

 

[Full Charge]

 

[ファイナルウェーブ!]

 

「俺の必殺技!パート4」

 

「ゴーカイスラッシュ!」

 

二人の必殺技がベルビレジをX字に切り裂いた。しかしベルビレジは悲鳴もあげずに煙のように消えていった。

 

 

 

「ゲキワザ!瞬瞬弾!」

 

「スペシャルバスターモード!」

 

[It's time for special buster]

 

ゲキイエローの必殺技とイエローバスターのイチガンバスターとソウガンブレードを合体させたスペシャルバスターモードの銃撃がロウソクロイドを貫くがこちらも煙のように消えてしまった。

 

 

 

 

「これで終わり!」

 

[セルバースト]

 

「終わりです!」

 

[Meteor Limit Break]

 

バースのバースバスターによる砲撃がバラナイトメアを、メテオのメテオストライクがユメバクー師を撃破するも二体は先ほどの怪人たちと同じように煙となって消えてしまった。

 

 

 

 

同じころ、固法と黒子もピンチに陥っていた。固法は愛用バイク『Z1000MKⅡ』に黒子とともに跨り、177支部へと向かっていたのだが、そこで怪しい白ローブ集団に囲まれていた。

 

「なんなんですのあなたたちは?」

 

黒子がメットをとりながら、ローブ集団のリーダー格と思われる男性に尋ねる。

 

「わが名は大神官ガジャ!小娘ども、その靴は私たちのもの返してもらうぞ」

 

集団は一斉にローブを脱ぎ捨てる。その正体はかつて戦ったカースという怪人だった。

 

「く、エマージェ…」

 

「(待って、白井さん)」

 

SPライセンスを構えようとする黒子を固法は小声で止めた。

 

「(あなたはそれを持って病院へ行きなさい)」

 

「(なぜですの?)」

 

「(あいつらが狙ってるってことはこの靴には何かあるわ、途中で初春さんに連絡をとって病院へ行きなさい。クゼ先生や伊達先生にこの靴を調べてもらうのよ)」

 

黒子は少し迷うが、抱きかかえていた靴をしっかりと抱きなおしてテレポートを使用し消えた。

 

「なに!?消えた?」

 

ガジャが消えた黒子に気をとられた瞬間、固法はバイクのスロットルをひねりガジャへと猛スピードで突っ込んだ。突然のことにガジャも隙をつかれて吹き飛ばされた。包囲網を脱出した固法はバイクをターンさせた。そして懐からアクセルドライバーを取り出し、腰にセットする。

 

[Accel]

 

「変…身!」

 

[Accel]

 

アクセルメモリーをドライバーにセットし、ドライバーのスロットル回した後、再びバイクのスロットルを強く回し全速力で怪人に突っ込む。同時に固法の体がスーツをまとい、アクセルへと変身する。

 

「さあ!振り切るわよ!」

 

「わわわ、来るな!」

 

ガジャが慌てながら逃げようとするが再びバイクのタックルを受けてガジャは吹き飛ばされる。さらにアクセルはバイクからアクセルブレードを取り出し、周りのカースたちを叩き斬っていく。バイクから降りたアクセルはアクセルブレードでカースたちをさらに切り捨てていくが、あまりも数が多く、再び囲まれてしまう。

 

「そのままなぶり殺してやれ!」

 

「そうはいかないわよ!」

 

アクセルは新たなガイアメモリを取り出す。しかしそこに刻まれたアルファベットはEでもAでもなく『G』である。

 

「いくわよ!」

 

[Grand]

 

あたりにガイアウェスパーが鳴り響く。このメモリはかつてオーズ、ゴーカイイエロー、そしてWを苦戦させたグランドドーパントが使用していたものであり、アンチスキルが回収したものをTPCを通じてアクセルが入手したものである。

 

[Grand Maximum Drive]

 

「はぁぁぁ!」

 

グランドメモリを装填したアクセルブレードを地面に思いきり突き刺す。同時に地面に何本もの亀裂が走り、地面が隆起しカースたちを吹き飛ばす。そんなカースたちを見ながら狼狽するガジャにアクセルはアクセルブレードを向けた。

 

「次の相手はあなたかしら?」

 

「…」

 

黙りこむガジャにアクセルはゆっくりと近づいていくが、突如後ろから新たな怪人に羽交い締めにされる。

 

「な、なに!?」

 

「ユメバクラ、そのままおさえていろ」

 

「おう!」

 

アヤカシ・ユメバクラに羽交い締めにされたアクセルに剣を向けるガジャ。

 

「は、離しなさい!」

 

「あの世にゆけ」

 

アクセルに向けて剣が降り下ろされる。

 

「メビウース!」

 

その時、掛け声とともに等身大のウルトラマンメビウスが現れ、ガジャを蹴り飛ばす。

 

「のわ!?」

 

「デュワ!」

 

さらにメビウスはメビウススラッシュでユメバクラを攻撃する。ユメバクラの拘束が解けたアクセルはドライバーのスロットルを回した。

 

[Accel Maximum Drive]

 

「せや!」

 

アクセルグランツァーがユメバクラをえぐるが、ユメバクラはそのまま煙のように消えてしまった。

 

「くっ、やはり本体ではない怪人では駄目か…まあいい、私のノルマは果たした」

 

そう言うとガジャは忽然と姿を消した。

 

 

 

 

 

翌日、学園都市全体が一週間前のワロガ事件以上に混乱していた。突如として女性が倒れ、昏睡状態となるという事件が色々な学区で発生し、その被害者は千を軽く越えていたからだ。

 

「また例の被害者か!?」

 

「はい!」

 

テッペイと伊達の声が響くこの第七学区の病院でも多くの患者が運び込まれていた。そんな病院の一室で眠り続ける御坂の横には黒子や佐天たちの姿があった。

 

「すみません…私がガラスの靴の噂なんて教えたせいで」

 

「佐天さんのせいじゃありませんの」

 

「そうなの」

 

そんな会話をしていると病室に伊達が入ってきた。

 

「あの靴の解析結果がでたぞ」

 

「本当ですか?」

 

伊達は資料を固法に手渡す。

 

「この靴を履いた人間は強制的に昏睡状態に陥ってしまう。しかも昏睡した人間たちの意識を夢を媒体にした幻想空間へと閉じ込める」

 

伊達は御坂にかけられている蒲団をめくる。露出して御坂の腕にはひっかかれたような傷がついている。

 

「おそらく夢、いや幻想空間でおった傷は…現実のものになる」

 

どんな理由でそういう能力があるのかはわからないが、過去の四人の被害者やほかの新しい被害者の一部にも何らかの傷を負ったものがいたり、生命反応(血圧や脈)が弱まったものがいるのだ。

 

「つまり、その幻想空間で…死んだ場合は」

 

「現実でも…死ぬ」

 

その一言が場を一気に凍らせた。御坂のひっかかれた傷は明らかに人でないものによるものだ。ガジャの言っていたことが本当なら、幻想空間に佐天たちの戦った怪人たちの本体がいる可能性もある。

 

「なんとかならないんですか!このままじゃ御坂さんは…」

 

「う~ん…夢の中に人間を閉じ込める力があるんだろう、なら…」

 

「夢のなかに入れれば、助けられるかもしれないってことですか?」

 

初春の質問に伊達は頷くが、現実的に考えれば夢の中に飛び込む方法などありはしない。あの靴は解析された一足以外消滅してしまっているし、その後靴を探したが発見することはできなかった。

 

「なにか、夢のなかに飛び込む方法はないんですの…」

 

「そんな方法、簡単には見つからないわ」

 

黒子の言葉に固法が反論した。そのまま無言になる一同。そんな中ふと、春上が目をつぶった。そして次に目を開けた時、春上の目は青く変わっていた。

 

「夢にはいる方法が…一つだけある」

 

「え、衿衣ちゃん?」

 

「春上さん?」

 

春上のかわりように初春と枝先が驚く。今までもイマジンに憑りつかれて変貌する春上をよく見ていたが、こんな風に変わる春上は初めて見る。

 

「もしかして、コスモス?」

 

佐天の質問に春上は頷いた。今の春上はどうやらウルトラマンコスモスに憑依されたC春上とでも呼ばれるような状態なのだろう。

 

「私はかつて夢の中で戦ったことがある。幻想空間にも飛び込むことができるだろう」

 

「ほ、本当ですの?」

 

C春上は重福の方に顔を向ける。

 

「メビウスの協力があれば幻想空間につながるゲートを作り出すことができるだろう」

 

「そのゲートの中を通れば、私たちも夢の中に飛び込むことができるんですね?」

 

「だが、かなり危険だ…幻想空間がどんなところかわからない上に、ゲートは私たちが力尽きれば消えてしまうからな」

 

C春上の言葉にその場にいたメンバーは黙り込むが、やがて全員が強い表情でうなずき合った。

 

「行きましょう!御坂さんを助けなきゃ!」

 

「ええ!」

 

メンバーたちは手を重ねて御坂救出を誓い合った。

 

 

 

 

 

幻想空間突入が一時間後と決まり、全員が戦闘への準備を進める中、黒子は第七学区中を能力で飛び回っていた。それはある人物を探していたためだ。そして公園付近でようやくその人物を見つけた。

 

「どうも」

 

「白井か、なんのようだ」

 

その人物とは上条当麻だった。上条もまたインデックスを幻想空間にとらわれており、その救出のためにガラスの靴を探していたのだ。

 

「すこしご相談ありますの」

 

幻想空間はおそらく怪人の巣窟だ。このまま飛び込んでも返り討ちになってしまうだろう。そこで黒子はより多くのメンバーをあつめるために上条に声をかけることにしたのだ。さらに言えば上条は巻き込まれやすい性格なので今回の事件にもおそらく巻き込まれているだろうと思っていたが、案の定今の様子では巻き込まれているようで、黒子たちの作戦を熱心に聞いていた。

 

「じゃあ夢の中にとらわれた人間を助けられるのか?」

 

「ええ、ですがとても危険な方法ですの」

 

黒子はこの男に助けを求めることはあまりしたくなかったため、危険だということを強く彼に伝えた。

 

「それでもあなたがお姉さまや大切な人を助けたいんなら、この場所にきてくださいの」

 

黒子はメモを渡すと答えを聞かずにその場を去った。

 

 

 

 

一時間後、第二三学区の婚后財閥所有の倉庫に御坂のベットが移動され、そこに黒子、初春、固法、春上、重福、婚后、湾内、泡浮の姿もあった。ゲートを開く際に怪人に襲撃されないようにするための処置だった。その倉庫に遅れて佐天がやってくる。

 

「もう佐天さん、時間ぎりぎりですよ」

 

「ご、ごめん。なんか寝てたみたいで…」

 

「これで全員揃いましたね。ではゲートを…」

 

「もう、すこしまってくださいの」

 

重福がメビウスブレスを出現させ、かまえるのを黒子が静止する。

 

「白井さん、ぐずぐずしている暇はないんですのよ」

 

「でも、もうすこしだけ…」

 

その時、御坂の首筋にあざが出現した。全員に緊張が走る。もはや一刻の猶予もないだろう。

 

「いいですね、白井さん」

 

「…」

 

重福の言葉に黒子は無言で頷いた。時間と場所はちゃんと伝えたはずなのに上条は来なかった。彼を非難することはできないが、それでも黒子は彼を憎まずにはいられなかった。そんなことなど知らない重福とC春上は前に出て、説明を始めた。

 

「テッペイさんがTPCで開発された『スタミナカプセルβ』というものをくれました。これがあれば僕らの等身大での戦闘時間は1.5倍になります」

 

「つまり45分間でけりをつければいいわけね」

 

「はい、それではゲートを作ります」

 

重福とC春上は頷きあい、変身アイテムを構える。

 

「メビウース!」「コスモス!」

 

二人の体を光がつつみ、等身大のウルトラマンへと変身させた。そして二人が腕をクロスさせ、エネルギーを御坂に浴びせると、御坂のよこに巨大な光の穴が発生した。

 

「みなさん、行きますの!」

 

『おう!』

 

黒子の号令とともに全員が変身アイテムを構える。

 

「エマージェンシー!デカレンジャー!フェイスオン!」

 

「豪快チェンジ!」

 

[ゴーカイジャー!]

 

「レディ!ボウケンジャー!スタートアップ!」

 

「変…身!」

 

[Accel]

 

「クロスチェンジャー!」

 

「レッツ、チェンジ!チェンジマーメイド!」

 

「プリズムフラッシュ!シャットゴーグル!」

 

全員が変身完了し、横一列に並んだ。

 

「デカイエローですの!」

 

「ゴーカイイエロー!」

 

「深き冒険者!ボウケンピンク!」

 

「さあ、振り切るわよ!」

 

「ホワイトスワンですわ!」

 

「チェンジマーメイド!」

 

「ピンクフラッシュ!」

 

全員が名乗りを終え、ゲートに向かおうとした瞬間、後ろの大きなスライド式ドアが音を立てながら開いた。全員にまさか怪人の襲撃かという緊張が走る。しかしドアが開き入ってきたのは、白いロケット頭の男、すなわち仮面ライダーフォーゼだった。

 

「白井!遅れてすまない!」

 

「…来てくれると信じていましたの!」

 

デカイエローはフォーゼと固く握手する。なんだかんだ言っても他人の不幸を放っておけない男であり、だからこそ御坂をひきつけるのだということを黒子は理解していた。

 

「フォーゼさんが来てくれれば百人力ですよ!」

 

「いや、助っ人は俺だけじゃないぜ」

 

ゴーカイイエローの言葉にフォーゼは少し笑ったようなしぐさをしながら後ろに振り向く。同時にスライド式のドアが一気に開かれ、たくさんの人影が倉庫のなかへと入ってきた。

 

「こ、これは…」

 

デカイエローは驚いた。それもそのはずでその人影とは学園都市で活動していたヒーローたちだったからだ。

 

「シンケンブルーぜよ!」

 

「メガブラックやで!」

 

「ピンクターボ!」

 

「今回も特に名乗りはない…」

 

とネガティブに言う仮面ライダーキバ。

 

「ファイブピンク!」

 

「オーイエローじゃん!」

 

「吹きゆく風のエレメント!桃色の魔法使い、マジピンク!」

 

「キラキラ世界!ゴーオンシルバー!」

 

「麗しの白虎!ガオホワイト!」

 

「俺も協力させてもらうのよな」

 

「恋を利用するなんて許せません」

 

と仮面ライダーガタックとメテオが言う。

 

「怒涛のシーイックパワー!ゴセイブルー!」

 

「俺たちも麦野をもとに戻したいからな、協力するぜ!」

 

クウガがサムズアップをしながら言う。

 

「イエローバスター!」

 

「日々是精進!心を磨く!オネストハート!ゲキイエロー!」

 

「あの馬鹿ガキの目を早えとこォ覚まさなきゃならねえからなァ」

 

「今回は一応ミサカにも責任があるし、がんばらないとね」

 

「最終信号とお姉さまは我々にとって大事な人ですので救出お手伝いしますとミサカは意気込みます」

 

ディケイド、バースそしてバースMPRをはじめとしたバースMPR軍団も続く。

 

「色んな人に連絡回して、その人からも連絡してもらってをやってたら遅くなっちまってな」

 

「ありがとうございますの、では参りましょう!」

 

デカイエローはそういうと真っ先にゲートの中へと走りこんでいく。それに続いて超電磁砲メンバー、さらにフォーゼたちも続いてゲートへと飛びこんで言った。

 

 

 

 

いままさに、幻想空間でヒーローと怪人による戦争が始まろうとしていた。

だが、幻想空間には思いもよらない強敵が待っているのを彼らは知らなかった。

 

後篇に続く




御「学園都市メンバー全員が総登場(一部を除いた)よ!」

黒「さすがはスペシャルですの」

初「思ったより特別な話じゃないですね?」

佐「長いくらいかな?」

御「なんで特別か…その理由は…」









御「この話は作者が考えたものではないのよ」

黒・初・佐「げえ、盗作の告白!」

黒「すぐにハーメルンの運営に報告ですの!」

御「ち、ちがうわよ!この話の原案は別の方にもらったものなのよ」

初「ええ!?」

佐「そんな親切な方がいたんですか!」

御「ええ、ハーメルンで連載されている『鈴神』さんが原案をくださったの。下に前半の原案を書くわよ」

罠に掛かったシンデレラ(前篇):
学園都市内部で、昏睡状態に陥る少女が続出する。冥土返しが中心となって原因を探るも、一向に手掛かりは掴めない。怪人の仕業ではないかと疑い、ジャッジメントに捜査を依頼する。
同じ頃、学園都市の女学生の間で「恋が叶うガラスの靴」と呼ばれる都市伝説が流行していた。噂好きの佐天は早速、美琴と春上を伴って靴探しを始める。一方、アイテムの滝壺は絹旗と、インデックスは風斬と共にガラスの靴探しに動きだす。
女学生の連続昏睡事件を捜査していた黒子と固法は、昏睡間際にガラスの靴を手に入れていたという事実に行き着く。同時に、ガラスの靴を手に入れた少女のもとへ辿り着く。ガラスの靴を履いた少女は、姿なき王子を幻視して一人でダンスを踊り、しばらくすると糸の切れた人形のように昏睡状態に陥ってしまった。早速、ガラスの靴を回収しようとした二人の前に、ゴードム文明の戦闘兵カースと大神官ガジャが現れた。
一方、ガラスを拾った少女達は、不測の事態に見舞われていた。発見したガラスの靴を試しに履いたインデックスと美琴、滝壺が拾ってきたものを面白半分で履いてみた麦野の三人が、昏睡状態に陥ってしまったのだ。ダンスと共に倒れた少女達のガラスの靴を脱がせた直後、傍にいた少女達は、ガラスの靴を脱がせて地面に叩きつけたところ、それぞれの靴からから悪夢を司る怪人が出現すのだった。

御「後篇もガンガン行くわよ!」

黒「新ヒーローも登場しますの」

初「次回もお楽しみください!」

佐「それでは」

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