とある英雄の伝説大戦(レジェンドウォーズ) 作:マッスーHERO
時は、アンコウネジラーとバーニングユガンデとの戦いが終わったすぐあとにさかのぼる。
「健太先生!説明してもらうで!」
「そうよ!」
ギャラクシーメガとデルタメガ、ボイジャーマシンが月面基地に帰っていくのを見届けた後、伊達健太がどこへともなく歩いていくのを上条達が追いかけていた。
「どうして先生はメガレッドに変身できるんや!」
青髪ピアスの言うとおり、伊達健太はこの戦いでテクターメガレッドに変身し、上条たちと共にアンコウネジラーを倒しただけでなく、ボイジャーメガという新ロボで巨大アンコウネジラーを倒したのだ。
「まあまあ、こういう話はやっぱりここでしよう」
健太は突然立ち止まり、横を向く。上条たちがつられて同じ方向を見るとそこには…
「や、焼肉屋?」
「さあ、速く入ろうぜ」
あっけにとられる上条たちをよそに健太は店にはいる。
店に入った健太たちは一番奥のテーブルに座る。テーブルに座った健太はメニューをひろげて、やって来た店員に淡々と注文をしていく。
「特上カルビ、タン塩、ホルモンあとは…」
「あの…健太先生?」
「お前らは?」
「そうじゃなくてにゃあ…」
「あ、僕はごはん大盛」
「私は小」
「私も…」
「じゃあ、俺は特盛」
「上やん…」
土御門が横に座っている上条の身体を引き寄せ、小声で話はじめる。
「(上やん!これは伊達健太の作戦ぜよ)」
「(作戦?)」
「(話をそらして、はぐらかすつもりにゃあ!)」
「(そうか…)」
「(最初の一言が重要にゃあ。こっちが主導権をとるためにも…)」
やがて、注文したメニューが到着し、健太はそれをなれた手つき肉を焼きはじめた。すでに他の三人は焼肉に夢中である。二人は健太の言動に注目していた。
「ところで…」
「「(きた!)」」
二人の体が緊張で強ばる。
「お前らさ…」
「俺の戦いぶり、どうだった?」
「「はぁっ!?」」
健太からの思いがけない言葉に上条と土御門は変な声を出して顔を健太につきだす。
「どうって…ねえ」
「めっちゃくっちゃ強かったで!」
「うん…」
三人の言葉を聞いた健太は満足そうな顔で焼いた肉を三人の皿へ置いていく。
「そうか、そうか。現役の頃にヘルニアやって、完治後はじめての戦いだったからな。心配だったんだ」
「前にもいってましたね」
「デカイ戦いがあってな、そこで調子にのっちゃってさ~」
健太の態度に調子を狂わされた二人は半分放心状態になってしまう。その二人の表情を見た健太は少し笑う。
「今さら隠すつもりはないさ。その気ならお前らを助けることもなかった」
健太の目が一瞬で真剣になる。
「さてと、話そうか。お前たちになぜその力が与えられたのか。そして何と戦っていたのかを」
『…』
肉の焼ける音が周りに充満している。周りの雑踏で彼らの話がほかの人に聞かれる恐れはない。
「パラレルワールドって言葉をしっているか?」
「パラレルワールド?」
「お前らに教えるならシュレディンガーの猫で例えるとわかりやすいか。箱の中の猫が死ぬ世界と生きる世界が同時に存在するって話。それと同じでこの世界とは別にまったく違う世界が存在する。お前らのような異能の力を持つ世界や俺たちのように悪と戦う戦士のいる世界が」
健太は長めの肉を二つを平行に並べて焼き始める。
「世界をこの肉とすれば、世界同士が交わることはほとんどない。こんなふうに平行なんだ」
二枚の肉は並行で伸ばしても縮めても交わることはない。
「あるところに二つの世界があった。正確には二つじゃないんだが…まあいいか、それが俺たちスーパー戦隊の世界と上条が力をもらった仮面ライダーの世界だ。この二つの世界も例外ではなく、決して交わることのない世界のはずだった。もっとも根幹の部分ではヒーローの世界は一つだったという意見もあるが…今はいいな。ところが二つの世界はその世界のルールをたびたび破りながらすこしずつぶつかり距離を近づけていった。そして、決定的な事件が起こる。それが33代目のスーパー戦隊、侍戦隊シンケンジャーと仮面ライダーディケイドの激突だ」
「シンケンジャーって土御門の?」
「大事なのはそっちじゃない、ディケイドのほうさ。もともとディケイドには仮面ライダー各次元世界をわたる力が備わっていた。それが偶然にもスーパー戦隊世界につながってしまったのさ」
健太の箸が肉同士を近づけ、一つに重なる。
「それが悪いことなんか?ヒーロー同士が協力して敵を倒すことは悪いことやないで。ぼくらだって…」
「確かにそうだ、クラス委員長。だがそれと同時に敵もお互いのことを認知し、協力するきっかけを作ってしまった…」
健太は二枚の肉を自分の皿に置くと、新しい肉を置き始める。
「悪の組織は長年の戦いで成長し、そしてあるきっかけから同盟を組んでしまった。なんとか撃退はできたが…年々その侵略の規模は強く広くなっていった」
コップに継がれたお茶を口に含む健太。
「そして、奴らはあることに気づいてしまった。俺たちヒーローが活動しにくい世界があることを…」
「それが俺たちの世界?」
「お前らの世界だけじゃない、いろいろな世界があってな。人間がアーマーを着て戦う世界や特殊なゲームが世界に大きな影響を与える世界、ただ平和な世界…そういった世界の超技術や人材を集め、その世界や俺たちの世界を侵略あるいは破壊するための組織、それがお前たちが戦ってきた組織『リベンジャー』ってわけだ」
「なるほど…だから俺たちに力を与えたわけか…」
「もちろん、別世界の人間を危険にさらすのはどうかと思った人もいた。俺みたいにリベンジャーなんて少し力がなくてもぶっ潰せると主張したり、新たな防衛組織・マシンを別世界につくるという意見もあったがどれもうまくはいきそうになくてな…そんなとき、ある戦隊が手に入れた敵の技術を応用して俺たちの力に近いものを作れるのではないかと考えた技術者たちが作ったのがあのライダーカードと白いレンジャーキーだ」
「へえ~じゃあこのデジタイザーは健太先生のつかってたものじゃなく、新たに作られたものだったんや」
「変身アイテムだけじゃないさ、お前らの使ってるギャラメガもほかのロボも新造されたものだ」
「え!?あんなものも新しく作ったの!?」
吹寄が持っていた茶碗を落としながら驚く。
「それがTPCの決まりでな。他の世界の技術をもとの世界へ持ち帰ること防止するための措置だ」
「TPCって組織も別世界からやってきたものぜよ?」
「ああ、主体は他のヒーロー世界の防衛チームだが俺たちスーパー戦隊の防衛隊や技術者も深くかかわってるがな。公にされてないが世界中の怪獣・怪人の撃退他様々なことをやってる機関だ」
青髪たちはまるでTVのなかの話のように聞いていたが、上条には現実味を帯びた話だった。彼は過去に自らをゲームのように操る人物とともに戦ったこともある。ほかにもさまざまな敵や組織を見てきた彼には健太の話は身近にすら感じていた。その後も健太の話は続いた。
「さて、最後にお前らに聞きたいことがある」
「最後に…?」
「お前らが戦い続ける意志はあるか?」
健太の言葉を聞いた五人に緊張が走る。
「これから先の戦いにお前らを巻き込むことを俺はよしとはしてない…まだ、反対してる。このことはこの後小萌先生や黄泉川先生にも伝えるつもりだ。もし彼女たちが反対するか、これ以上戦い続けたくないなら変身装置を返還してもらう」
健太の言葉に全員が黙ってしまった。食事が終わり、会計を済ませ外に出た五人に健太は真剣なまなざしで見る。
「明日はちょうど休みだ。もし戦い続ける覚悟があるなら学校へ来い。待ってるから」
「わかったで…」
「…」
青髪・吹寄・姫神の三人は先ほどの健太の言葉が響いたのか、ほとんど無言で帰路についた。
「やっぱりお前らはまだ帰れないか…ついてきな」
残っていた上条と土御門を連れて健太は彼らの寮近くの公園にやってきた。
「お前らの聞きたいことはわかってる、俺が…いや俺たちがどこまで知ってるかだろ」
「…あんたはさっき超能力とは言わずに異能の力といった。つまり…」
真剣な言葉遣いの土御門に健太も真剣な顔で対応する。
「もちろん俺たちTPCは魔術結社のことや土御門元春が多角スパイであること、上条当麻が能力でも魔術でもない力、幻想殺しを持っていることもしってる」
「…やっぱり」
「TPCを甘く見るなよ。すでに一部の魔術結社や各国首脳人との接触もしている」
「それほどの組織か…」
「なあ健太先生…」
二人の会話を当然上条がさえぎる。
「さっきのは少し言いすぎじゃないのか。あいつらだって一生懸命…」
「べつに俺はあいつらの力を信じてないわけじゃない。俺たちが苦労して倒したユガンデともあきらめず戦った。これまでの戦いもよく頑張っていた…だがな、あいつらはお前らとは違う。姫神はともかく二人は一般人…俺はあいつら、そしてお前らを戦わせることはさっきも言った通りいいとは思えない…」
「…なぜそこまで戦わせることをよく思わないんですか?」
「…かつて俺たちメガレンジャーはボロボロになりながら、最悪な敵と戦うことになった」
健太は腕に巻かれたデジタイザーを見つめる。
「だからお前らのようなまだ若い奴らを戦わせたくないんだよ。おれは…」
健太はそれだけ言うと二人に背を向けて去って行った。
次の日、上条の通う学校の前に上条と土御門の姿があった。
「なあ、上やん…あいつら来ると思うか?」
「さあな…もし来なくても、それはそれでいいことかもしれない…」
二人は学校へ入り、教室の前方のドアの前に立つ。
「じゃあ開けるで上やん」
「…ああ」
土御門がドアを開ける。そこには…
「まっていたぞ」
教壇には伊達健太が立っていた。
「遅かったな、お前ら」
「遅い?朝いちばんで来たつもりですけど…」
「いや、遅いわ」
「そうやで」
後ろからの突然の声に上条と土御門は驚きながら振り返る。そこには青髪たち三人が席についていた。
「お前ら…いいのかよ?」
「乗り掛かった舟や」
「それにあんたたちだけ戦わせ続けるのは後味が悪いしね」
「変身してればすこしは目立つ…」
三人は立ち上がり、上条達のもとに集まる。
「でも…小萌先生たちは…」
「お前らの判断に任せるそうだ。まったくバカばっかりだな、俺も含めて」
健太が笑いながら五人を見つめる。だがそのとき外から大音量の爆発音が響き、六人に緊張が走る。
「また性懲りもなくでてきやがったな…」
「お前ら、いけるか?」
「もちろんやで!」
「いくわよ!」
「うん…」
五人が教室のドアをいきおいよく開けて、外に出た。
こうして上条たちは新たな戦いが始まった。はたして彼らに何が待っているのか?
伝説の戦士 魔術編 完
次章へ続く
御「伝説の戦士編完結よ!」
黒「長かったですの…」
佐「今日の解説は先日『デュデュ~ビデュ~ビデュ~ビデュ~ビドゥバ~』というわけのわからない言葉とともに行方をくらました初春に代わり…」
春「原作ファンから人気の少ない春上がお送りしますなの~」
御「ようやく終わったこのシリーズ、次章のタイトルは次の投稿で発表するわ」
黒「次章の二話からついにあの戦士が登場しますの」
佐「楽しみですね~」
春「そうなの~」
御「さてこの章最後の紹介はあのレジェンドよ!」
伊達健太/テクターメガレッド 登場作品 電磁戦隊メガレンジャー
電磁戦隊の一員として戦ったレジェンドの一人。リーダーではなかったが電磁戦隊の中心人物として活躍した。メガレッドのスーツの特徴である「戦えば戦うほど強くなる」の言葉通り、その成長は速く、多くの幹部怪人を倒した。ロボのメインパイロットも勤めており、一流のゲームセンスで数々の危機を乗り切った。高校の卒業後は浪人して大学に入り、母校の教師となる。レジェンド大戦で他の戦士と共に力を失うが新たにメガレンジャーの力を得たゴーカイジャーを認めて大いなる力を授けた。探偵をしている親戚がいる。
(ここからはオリジナル設定)メガレンジャーの力を取り戻し、母校の教師を続けていたが、リベンジャーの多次元侵略計画の阻止のための計画に最後まで反対、母校の教師を一時休職し、上条たちのとある世界へとやって来る。その目的は力の行く末を見届けることと自分達に起こった悲劇を防止するためであった。普段は上条たちの高校で教師をしており、上条たちが危機に陥れば場合によっては変身して助けるが、能力低下により変身時間は三十分しかなく、しかも一度変身すると数日間変身出来ない。彼の変身するテクターメガレッドはかつて一度だけ装着したメガテクターをTPCが再現してものである。得意技は『セイバースラッシュ』『スクリュードリルセイバー』など
御「実家は八百屋で、好物は焼肉の優しい先生よ」
黒「ヘルニアネタはゴーカイジャー撮影時に中の人がヘルニアになりながらも熱演してくださったのをリスペクトして使ってますの」
佐「軽いように見えるけど、実は真面目な人なんですよね」
春「この小説オリジナル設定でレジェンド大戦では上条似の生徒を怪我させたというのも付け加えてるの」
御「さて今日はここまでよ」
佐「え!速くないですか!?」
春「せっかく出番があったのに…」
黒「次回は変身戦隊や登場戦士を纏めるんですの」
御「春上さんには次回も活躍してもらうわ」
春「やったの~」
佐「来週まで初春を探さなきゃ…」
御「というわけで次回は次章の予告とまとめ編をおおくりするわよ!」