魔法科高校の立派な魔法師   作:YT-3

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第三十一話 裏話

 

 着弾から30秒あまりで火柱は消え、周囲への延焼もわずかだった為ナギが風塵乱舞で搔き消して、誰もが予想しなかった(スラ)(イム)騒動は幕を閉じた。

 

 しかし、当人達にとっては、ある意味これからが本番だ。

 なにせ、あとひと月もすれば敵として相見えるだろう相手だ。油断をすれば学校や先輩達に迷惑がかかるとなると、迂闊なことはできなかった。

 

「こっちは大丈夫でしたか?」

「ああ。碌なことも出来ずにすまないな。

 それで、助けてもらって悪いんだが、なぜこんなところに一高の春原が居たんだ?」

「ついさっきまで下の社務所で四十九院(つくしいん)さんと会談をしていたんです。……ああ、ご当主のほうですよ」

「父様と?」

「はい、そうです。

 そういえば、自己紹介がまだでしたね。春原家当主で、第一高校一年の春原凪です」

 

 当主代理でも次期当主候補でもなく当主、と言い切ったことに、特に小柄な少女は驚いて目を見開いた。他の人物はそうでもなかったが。

 

「同い年なのに既に当主を務め上げているとはのう。立派なもんじゃの。

 わしは三高一年の四十九院(つくしいん)沓子(とうこ)じゃ」

「同じく第三高校一年、師補十八家(いっ)(しき)家の一色愛梨(あいり)よ。こっちも一年の()()()(しおり)。助けてくれてありがとう」

 

 小柄で長い髪の、年下にしか見えない少女と、長く美しい金髪の少女が、それぞれ名乗り返す。

 しかし、ナギの気を引いたのはどちらでもなく、金髪の少女が『栞』と紹介した少女だった。

 

「……栞がどうかしたのかしら?」

「え、ああ。いえ。ボクの知り合いにも栞さんがいたのですが、その方に似ているなぁ、と」

 

 雰囲気は彼女と違い無口で冷静な感じがするのだが、髪型や顔立ちがどことなく似ている。名前を聞いて、思わず過去に意識を飛ばしてしまったのだ。

 

「そう。『いた』ということは……いえ、これはあまり踏み込まない方がいい話ですわよね?」

「そうですね。あまり触れられても困る話なので……」

「ところで、四十九院(つくしいん)家に来た理由はわかったんだが、この林に来た理由はなんだったんだ?」

 

 暗い話題に行きかけた話を切るように、将輝が話を振る。というよりも、脱線しかけた話を元に戻した、のような気もするが。

 

「実は夕方に一条家にもお伺いする予定だったんです。それで、ここで入れ違いになって挨拶ができないよりかは、少し時間もあったので挨拶だけでもしておこうかと思いまして」

「なるほど、そういうことか」

「一条家と四十九院家だけなのかしら?」

「一色家には朝方お伺いしましたよ。一之倉(いちのくら)家や他の古式魔法師の方々はどうしても時間の都合がつかなかったので、また次の機会に訪ねることになってますが」

「そう」

 

 こうしてスムーズに会話をしているが、これは本来驚くべきことなのだ。

 将輝はそうでもないが、愛梨はかなり選民思想が強く、家柄が良いか、よほど才能がないと対等に見ようともしない。そんな愛梨と普通に話せているだけでも、三高の彼女のファンクラブからすれば血涙の滲む状態なのだ。

 しかし、それもある意味自然なこと。師補十八家ともなれば、ナギが両の手では数えられないほどの戦術級魔法を復活させたことは知っているし、テレビなどでも活躍しつつ当主としての仕事もこなしていることも知っていて当然だ。そんなナギに対して、尊敬の念こそ出てくれど、見下すような真似をするほど傲慢ではない。

 

「それじゃあ、この機会に乗じてウチのスパイをしようとした、ってわけじゃないんだね?」

「もちろん、そんなつもりはなかったですよ。なんでしたら、口外できないように契約で縛りますか?」

 

 そう言って、ナギは懐から鷲と天秤を(かたど)った置物らしきものを取り出した。そんな物があるような膨らみはなかったのだが、どこに隠していたのだろうか?

 

「契約?どういうことだ?」

「これは(エンノ)(モス・)(アエト)(スフラ)(ーギス)と言って、起動した状態で交わした約束を、何があろうとも強制的に遵守させることができる魔法具(レリック)です。いわゆる、刻印型精神干渉系魔法に分類されるものですね」

 

 サザッ、と皆一様に距離をとる。そんなものを懐に忍ばせているなんて思ってもみなかったのだろう。

 

「「「「「せ、精神干渉系⁉︎」」」」」

「はい、分類するとしたらそれになると思います。

 まあ、今は全然(サイ)(オン)を込めてませんし、そもそも人一人が出せる量ではないので、ボクのように仙術でも使えない限りはただの置物ですけど」

「そ、そんな恐ろしいものを使わなくてもいい!というか、春原は俺たちの戦闘すら見ていないだろう!」

 

 そうですか、と言ってナギは(エンノ)(モス・)(アエト)(スフラ)(ーギス)を懐にしまう。どこか残念な表情なのは、アンティークマニアの血が騒いだからだろうか。

 

「はぁ、はぁ。なんか、戦闘しているよりも緊張したぞ」

「そうですか?それなら、四十九院さんも心配していたことですし、休憩ついでに山を降りたほうがいいですよ」

「そうか、父様にも説明せんといかんのか。(おっ)(くう)じゃ」

 

 口ではそう言いながらもどこか本心ではなさそうなのは、心配をしてくれているという単純なことが嬉しいのだろう。

 

「そうね。叔父様にも迷惑をかけたことだし、説明はするべきよね。

 それと、出来ればお風呂をいただきたいわ」

「うん。服がベトベトして気持ち悪い」

「そうじゃのう。まずは湯浴みしてからじゃな。

 ……ところで、一条たちはわしらの裸を覗いたわけじゃが、風呂まで覗きに来るでないぞ」

「の、覗いてない!そもそも裸にはされてなかっただろう!」

「……一条くん?なんで裸じゃなかったことを知ってるのかしら?」

「そ、それは、さっき受け止めた時に見て……」

「それでも充分恥ずかしい格好だったんだから、目を逸らして見ていないふりをするのが優しさ」

「うぐぅ⁉︎」

 

 どうやら十師族が一席、一条家の御曹司は、その肩書きや異名とは裏腹に、仲間内ではいじられ役のようだ。幹比古と会ったらすぐに打ち解けそうなほど、苦労人の雰囲気を漂わせている。

 

「嫁入り前の肌を見られたのじゃ。これは責任を取って貰わんとのう?」

「ええっ⁉︎せ、責任っ⁉︎そ、それは……い、いや、見たのは俺だけじゃないだろう‼︎ジョージも俺と同じだったし、春原だって見えてたはずだ‼︎」

「冗談じゃよ冗談。まさか間に受けるとは思っておらんかったわ。

 そもそも、誰もがお主をそういう目で見てると思うでないわ。自意識過剰じゃぞ?」

「正直、顔だけなら春原くんのほうが整ってる」

「今の動転の仕方は気持ち悪かったですわね」

「ぐはっ⁉︎自意識過剰……気持ち悪い……」

「ごめん将輝。これはフォローできない」

「あ、あはは……」

 

 訂正。弄る役が三倍に増えてるから、こっちのほうが大変だった。

 

  ◇ ◇ ◇

 

「この度は、娘がとんだご迷惑を……」

「いえいえ。幸いに人的被害はなかったですし、そこまで気になさらずとも」

 

 その後、気絶した一人を起こして山を降り、警戒しながら待っていた当主に簡単に事情を説明すると、顔を真っ青にして蔵のほうに行ってしまい、さらに顔色を悪くして戻ってきたのだ。

 

「まさか、水妖を封印したと言われていた瓶と御神酒の瓶を間違えるとは……」

「す、すまなかったのじゃ。まさかそんな曰くのあるものじゃったとは、露ほども思うてのうて……」

「ボクは本当に大丈夫ですよ。大した労力も使っていませんし」

 

 ちなみに、蔵を調べに行っている間に女性陣の入浴と洗濯は終わっていて、現在はナギを除く男性陣が入浴中だ。こういう時、服をすぐさま乾かせる発散系魔法は重宝する。

 

「アレだけの大威力の魔法で大した労力じゃないなんて、噂以上に桁外れ」

「奈落の業火、だったわね?今まで見た『燃焼』系列の魔法の中でも、最も凄い魔法だったわ」

 

 共に戦った仲や助けてくれた救世主だからか、この短い時間でだいぶナギに三高生達も打ち解けてきていて、友人と言えるぐらいの関係にはなっていた。

 

「いや、あれでもそこまで得意な魔法じゃないんだけどね」

「一色家のお嬢様にそこまで言われる魔法とは、是非ともこの目で見たかったですな。

 それで、封印されていた水妖とは、スライムでよろしかったですか?」

「はい。液体の体を持つ悪魔の一種です。人型をとったり、意外と厄介だったりする以外はRPGでよくでてくるスライムと同じです。

 わかりづらかったら、水を肉にした、完全自立型傀儡式(ゴーレム)のようなものと思って頂いて構いません」

 

 司一が呼んだ魔物もそうなのだが、基本的に『魔』の存在は意志を持った魔法式と言ってもいい。情報体(エイドス)が核の人間とは違って、魔法式を統括している(たま)(しい)が核になっているのだ。

 

「そのようなモノが封印されていたとは。驚きです」

「ボクも一応知識はありますが、正直そっちの方はあまり詳しくないので、専門家の意見を聞いてみてもいいと思いますよ」

「専門家、ですか?」

「神鳴流と言えばわかりますか?」

「神鳴流、って()()神鳴流ですか⁉︎」

「はい。そのほぼ唯一の生き残りの少女が、一高で四月にあった事件で主謀者に操られていたところを保護されて、現在は十文字家でメイドの修行をしているそうです。

 スライムとかの魔物について知りたいのなら、紹介状を書きますよ?」

「それは是非とも!」

 

 少女達は何のことやらさっぱりな様子だが、それよりも気になっていたことがあったようで、ついでにとばかりに聞いてきた。

 

「それなら、一条たちが水の中に閉じ込められて溺れなかったのは何故なんじゃ?普通なら死んでおったであろう」

「いや、溺れてはいたんだよ。呼吸ができていただけで。

 たぶんあの(すい)(ろう)は、水の中に高濃度で酸素を溶け込ませていたんだと思う。それを球状に展開した結界で閉じ込めていただけ。

 最初だけ息苦しくて、焼けるように痛かったと思うけど、慣れれば息はできたから死にはしなかったってことだね。殺さずに無力化するための魔法、ってとこかな?」

「へぇ。面白い使い方ね」

 

 溺れているが息はできる、という矛盾した話が面白いと感じたのか、それとも殺せるのにわざわざ殺さない魔法を面白いと感じたのか。あえてナギはそれを聞かなかった。折角仲良くなったのに、わざわざ空気を悪くする必要もないからだ。

 

「それよりも、じゃ。お主は九校戦に出るのかの?」

「えーと、それは……」

「三高の新人戦モノリス・コードの選手を知ったんだから、あなたの分だけでも教えてもらわないとフェアじゃないわよね?」

「うっ⁉︎」

「大丈夫。作戦スタッフには言わないから」

「そ、それなら……って、三高には初めから作戦スタッフはいないですよね⁉︎」

 

 バレたか、という顔をした三人。どうやら悪女の傾向があるようだ。一人はどちらかと言えばイタズラ好きという感じだが。

 

「でも、フェアじゃないのは本当よね?そこら辺はどう思っているのかしら?」

「……はぁ。分かったよ、教える。

 今現在だけど、新人戦のアイス・ピラーズ・ブレイクとモノリス・コードに出る予定だよ」

「……そいつは……」

 

 入り口の方からした声に振り返ると、風呂から上がった将輝たちが固まっていた。

 

「そう。お互い勝ち上がったら全面対決だけど、よろしくね将輝くん」

 

  ◇ ◇ ◇

 

 その後、ナギは将輝と吉祥寺と共に一条家に赴き、当主の(いち)(じょう)剛毅(ごうき)と会談、という名目の神隠し事件の説明と七草家とのメッセンジャーを務め、雑談ついでに先ほどのスライム事件について触れて終了した。

 

「言われた通り、ジョージも連れて来たぞ」

「失礼します」

「おう、入れ」

 

 そして、ナギが翌日の授業のために帰路に着いた後の一条家の生活スペース、一条剛毅の書斎。そこに、家にいた男性陣が集まった。

 

「それで、なんだよ親父。今日は疲れたからゆっくりしてたかったんだが」

「ああ、春原殿に聞いたぞ。流石のお前達とはいえ、人ではないモノ相手では分が悪かったか」

「人質をとられた上に初見だったからだ。次があったら無様な真似は繰り返さないさ」

「知識という面でナギに差をつけられてましたから。魔物なんてモノは、元々古式魔法師の領分だっただけです」

 

 将輝の口調が砕けているのは、先ほどのナギと剛毅が会談していた和室とは違い、ここでは家族として話しているからだ。そして吉祥寺も、家族同然に付き合っている剛毅相手に、今更緊張するような人間ではなかった。

 

「ほう?また大きく言ったな。

 まあ、確かにここ最近、十文字が取り込んだ退魔師の一族といい、全日本選手権での神隠しといい、立て続けにそうした人ならざぬモノが表舞台に立っているからな。次がないとも言い切れないか。期待しているぞ?」

「次なんてない方がいいに決まっているけどな」

「違いない」

 

 クックックと笑う剛毅と、疲れた笑いを見せる将輝と吉祥寺。この場面だけを見たら、一流の魔法師の家系の当主と次期当主ではなく、ただの親子の会話に見える。

 いや、世間や一部魔法師の考えでは違うのかもしれないが、彼らも魔法師である前に家族なのだ。これが自然な形だろう。

 

「それで、そのことについて話すために呼んだのか?」

「いや、春原殿から顛末は聞いているからな。それについてはただのついでだ。

 本題に入るか。お前達は、まさか他校に出場競技を知られただけで、何もしてないわけではあるまいな?」

「当たり前だ。いくらほとんど予想されてただろうとはいえ、確定した情報を渡しておいてそれで終わりなわけないだろう。ナギの分だけだが、相手の情報も手に入れてきたさ」

「ほう?何に出ると言っていた?」

「あくまで現段階らしいですけど、アイス・ピラーズ・ブレイクとモノリス・コードだそうです」

 

 それを聞くと、剛毅は腕を組んですこし考え込んだ。そして、顔を上げると、口元にニヤリとした笑みを浮かべて問いかけた。

 

「それを聞いて、お前達はどう思った?」

「は?なんだよ藪から棒に」

「これも当主教育や軍師教育の一環だ。こうした情報から、どこまで相手の思惑を読み取るのかも必要な資質の一つだからな」

「そりゃそうかもしれないけど……。何を思ったと言われると……」

「……そうですね。魔法適性的に向いていそう、ということでしょうか」

「何故だ?」

 

 吉祥寺の感想に、剛毅は理由を聞く。その顔を見る限り、分からずに聞いているのではなく答え合わせをしているようだった。

 

「ナギはそれまでの春原家の方針とは大きく変わり、自らが復活させた数多くの魔法を公開し、魔法(インデ)大全(ックス)にも多くを載せています。最後の一線、と言うべきか詳しい理論は公開していないため、その高速発動術や普通では不可能な魔法の発動を可能にする技術は不明なままですが」

「それがどうかしたのか?」

「その魔法の中で、特徴的なものが三つある。

 一つ目が、昼間スライムに放ったような大規模で大威力の広範囲物理攻撃魔法。

 二つ目が、インターマジックで使ってみせた飛行魔法。

 三つ目が、弾幕型を含む複数の対人攻撃用非殺傷性捕獲・捕縛魔法」

 

 吉祥寺は、右手の指を三つ立てる。それを見て、将輝が何かを感じたのか考え込むが、吉祥寺も剛毅もそれを止めるようなことはしない。出来ることなら、将輝の知力を鍛えるのが好ましいのだから。

 

「……なるほど。一つ目の魔法はアイス・ピラーズ・ブレイクにうってつけ、というわけだな。

 氷柱自体に干渉しているわけじゃないから情報強化はほぼ無意味。その上あれだけの規模の魔法を防ごうと思ったらこちらの息切れも覚悟に入れて領域干渉するしかない。発動前に全て倒すしかないな」

「その通りだよ将輝。

 そして、二つ目、三つ目はモノリス・コードにピッタリだ。空を飛べるだけで索敵能力や戦略は段違いになるし、飛ばれたまま捕縛系魔法で弾幕を張られたら、将輝レベルの遠距離攻撃能力を持っていても厳しい戦いになる。

 一つ目はモノリス・コードには、二つ目、三つ目はアイス・ピラーズ・ブレイクには使えないけど、それでも驚異的なのは間違いがない。幸いにも、ほぼすべての攻撃魔法が物理的攻撃を介するという特徴があるから、たぶん将輝なら物理障壁でほとんど防げると思う。だけど、僕たちが相手取ったらほぼこっちの負けが決まるはずだ」

 

 そこで話を区切ると、吉祥寺は剛毅に視線で採点を求める。剛毅はそれに満面の笑みで答えると、その解答に点数をつけた。

 

「50点だな」

「は?」

「半分、ですか。残り半分はなんなのですか?」

 

 将輝は相方が出した答えを信用していたし、ジョージもまさかそれ以外に理由があるとは思っていなく、白旗を揚げた。

 

「簡単に言えば面子の問題だ」

「面子?」

「そうだ。

 春原殿はバイアスロンの日本代表に選ばれている。そのような立ち位置なのに、バトル・ボードやスピード・シューティングではなくその二つに選んだのには訳があるとみた。もちろん、吉祥寺くんが予想したのも事実ではあるだろう。だが、それ以外にもあるのは間違いがない。

 そしてその理由とはおそらく、万が一負けた時の言い訳、だ」

「負けたときの言い訳、ですか?」

「ああ。バトル・ボードやスピード・シューティングでなければ、もし負けて日本代表の実力を問題視されたとしても、『代表に選ばれた競技とは似ても似つかないから、バイアスロンの結果には関係しない』とでも言えば問題ないだろう。

 そして、負けるのが十師族ならばなおいい。それなら十師族の実力を、より世に知らしめることができる。そのために、わざと将輝にぶつけたのだ」

 

 剛毅の解答を聞いて、二人は感心したのかしきりに首を縦に振っている。

 

「なるほど、そういう考え方もできるのか。

 だが、もし俺に勝ったらどうなんだ?ナギなら可能性自体はあると思うが」

「もちろん、その可能性は充分にある。千葉の麒麟児や百家の鬼子、渡辺摩利の様に、十師族に匹敵、ともすれば上回る実力者は国内にもそれなりにいる。春原殿も、すでにそれに当たるだろう。

 しかし、それならそれで構わないのだ。

 春原殿は、七草家と親密な関係にある。あそこの三姉妹のいずれかから嫁にでも出して外戚関係にでもなれば、十師族の面子は保たれるだろう。おそらく、こう考えているのは七草殿だけだろうがな」

「……ようは、その時は俺は当て馬にされた、ってわけだな」

「一枚も二枚も裏がある案を出してくるだろう?これが大人の世界だ。

 今は、とにかくその頭を磨いておけ。幸い、お前には吉祥寺くんという優秀なブレインがいるんだ。突発的な状況で、最悪の手を打たないだけの頭があれば十分だろうからな」

 

 その言葉に、将輝と吉祥寺は顔を見合わせる。将輝の表情は信頼であり普通だが、吉祥寺の顔が赤いのはまずくないだろうか。

 

「まあ、いろいろ思惑は絡んでいるが、それも競技が始まればすべてが無意味だ。

 全力で当たれ。相手はそこらの雑兵ではなく、全力で挑んでちょうどいい敵だからな」

「「わかった(りました)」」

 

 覚悟も新たに、将輝と吉祥寺は大会へ想いを馳せる。

 例え今日新たな友人になろうとも、大会では敵なのだ。いや、友人だからこそ、全力で挑まなければならない。

 一高のチームも確定していない中、三高陣営では着実に優勝へ向けて切り替えていっていた。




三高男子C「俺はハブられてんのな」

ナギ、大ピーンチ‼︎
というわけでもありませんが、将輝たちと仲良くなる&やる気を出される話でした。
え、なに?女性陣の(サー)(ビス)シーン?書けるわけないじゃないですか〜。今回の口調ですら怪しいのに〜。

次回からは、視点は東京に戻って一高中心です。それでは!

・・・夜の女王「精神干渉魔法の置物なんて……。どうにかして手に入らないかしら?」

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