魔法科高校の立派な魔法師   作:YT-3

11 / 77
12800UA&218件のお気に入りありがとうございます!

たいへん遅くなりました。YT-3です。

なかなか納得できる話が書けなくて大変でした。

今回はほとんど話がすすみません。
その割には原作解離が起きます。

それでもよろしければどうぞご覧ください。


第二話 再会と『友達』

 

 高校生活二日目の朝。

 少しの居心地の悪さを感じながら通学していると、昨日知り合った兄妹と偶然会った。

 

「おはよう達也くん、深雪さん」

「ああ、おはようナギ」

「あ、ナギくん!おはようございます!」

 

 って、深雪さんはなんでそんなに嬉しそうなんですか!?

 

「達也くん、深雪さんはどうしたの?」

「ああ、実は昨日ナギが出ていたニュースを見ていてな。

 それで、ナギが言い負かしていたコメンテーター、魔法力至上主義で有名だろう?深雪も嫌っていたんだが、コテンパンに言われていたのを見てナギに感謝しているようでな」

「そうなんです!ナギくん、本当にありがとうございました。

 なんども私が思っていたことを言ってくれたおかげで、多少溜飲が下がりました」

「そんなに感謝されることでもないですよ。あまりにも二科生を馬鹿にしていたので、頭にきてしまって言ってしまっただけですから。

 むしろ少し言い過ぎてしまったかと思ってたんですが」

 

 スタジオの空気も悪くしちゃったし。

 

「そんなことないですよ!!そうですよね、お兄様!」

「『ボクは確かに二科生ですが、魔法塾にも行ってませんし、そもそも古式魔法師です。似たような、まだまだこれから伸びる人や、現代魔法の試験だけでは実力を測れない人は他にもいるでしょう。現時点での成績だけで全てを判断するのは若い魔法師の将来を狭めてしまうと思いますよ?』、だったか?

 別に間違っているわけではないし、言い過ぎというほどでもないと思うんだが、どうしてそう思ったんだ?」

「実はさっきから嫌悪とか侮蔑の視線がすごくて。これから平和に高校生活をしていくのにあまり良くなかったかなって思ったんだ。

 言ったことが間違っていたとは思ってないよ」

「そういうことか。確かに入学早々悪目立ちしたくはない。

 ナギはこれから大変だろう」

 

 ……それは達也くんには言われたくないなぁ。

 

「……達也くんも、一年生首席の深雪さんを連れていて、すでに結構目立ってると思うんだけど?」

「それを言われると弱いんだけどな。こればかりは兄妹なんだから仕方ない」

「兄妹が一緒に登校するのは自然なことですもの」

「まあ、確かにそうだね。二人は魔法師云々の前に兄妹だから、こうして科なんて関係なく仲良くしているほうが正しいからね。

 これから、関係が広まっていったら目立たなくなってくるんじゃないかな」

「そうならいいんだがな。

 だが、その場合でもそれまでに一悶着ありそうだ」

 

 まぁ、この感じだとそうなる可能性は高いよね……。

 

「まったく、たかが学校の成績、それもほとんど実技のみの差だというのに、ここまで区別が起きるなんて。

 だいたい、一科生でも二科生でも、卒業してしまったら公的には同じだというのに、どうしてこんなに自慢したがるのでしょう」

「自慢や区別をしたがるのは人間のサガですから仕方がないよ。

 問題は、そこから差別やイジメに発展していかないように大人や社会が対処することだけど、この学校はうまくできていないね」

「いや、何もこの学校に限った話ではないだろう。

 ライセンス、BS魔法師、現代魔法師と古式魔法師、さらに言えば魔法師と非魔法師。この社会にはまだまだ解決するべき壁は多い。

 これは魔法が『兵器』として急激に台頭してきた影響だろうな。もう少し時間がかかったり、そもそも『兵器』ではなく『技能』として初めから出てきていたら、まったく違う社会になっていただろう」

 

 うん。その通りだ。やっぱり達也くんは世論とかに流されずにきちんと物事が見れてるな。

 

「それらの問題を聞くと、なおさら一科生と二科生の差別なんてくだらなく思えてきますね。

 結局のところ、時間が解決するしかないという問題なのでしょうか」

「もしくは『革命(revolution)』や『革新(innovation)』だね。

 どちらにせよ、このままではいけないことが明確に示される大事件か、いままでの常識を覆すような大発明がないとおきないから、しばらくはこのままの状況が続くしかないかな」

「そうですか。できればお兄様には学校を楽しんでもらいたかったのですが……」

 

 深雪さんは兄思いのいい妹さんだね。問題は『兄思い』から『兄想い』になっちゃっていることだけど。

 

「深雪、それは違う。俺は現状に満足しているよ。

 ナギとは考えが合うし、エリカや美月もいる。他にも気の合うやつは居るだろう。生徒全員と仲良くできるわけはないんだから、こういう友人ができるだけでも十分だ。

 だから心配せずとも大丈夫だよ。

 むしろ、そんな傷ついた顔をされるほうが困る。深雪が俺を思ってくれているのと同じように、俺も深雪には笑顔でいてほしいんだ。そんな顔をされると俺まで悲しくなってきてしまう。

 だから深雪には自分の友人を作って、学校を楽しんでほしい」

「お兄様……」

 

 あ、ダメだ。また二人の世界を作り始めちゃった。

 この部分は直さないといつまでも注目を浴びるだろうなぁ〜。

 

◇ ◇ ◇

 

 あの後、深雪さんとは階段の前で別れて(名残惜しそうにしていた深雪さんを達也くんがなだめて、また世界を作っていた)、今はちょうど1-Eの教室の前についたところだ。

 

「エリカさんたちと同じクラスってことは、たぶん一年間退屈しないだろうね」

「それについては全面的に同意する」

 

 二人して苦笑して、教室に入る。

 

「あっ、オハヨ〜」

「おはようございます。達也さん、ナギくん」

「ああ、おはよう二人とも」

「おはよう」

 

 二人とももう来てたんだ、早いなー。

 さて、ボクの席は……。あれ?

 

「どうしたナギ?」

「いや、友達がたまたま隣の席だったから驚いただけ。

 少し挨拶してくるね」

「ああ、後で紹介してくれ。お前の友人だったら気が合いそうだ」

「わかった」

 

 エリカさんが少し反応してたけど、とりあえず三人は達也くんと美月さんの席(こっちもたまたま隣だった)に向かったようだ。知り合いとの再会に見ず知らずの人がいるのは気まずいだろうと気を遣わせてしまったかな?

 まあ、なんか彼も切羽詰まってる感じだし、ありがたかったな。

 これから学友になるんだ。きちんと挨拶して、みんなにも紹介しないと。

 

「久しぶりだよね、幹比古(みきひこ)くん。一年ぶりぐらいかな?」

「……久しぶりナギ。そうだね、最後に会ったのはちょうど一年ぐらい前だ」

 

 よかった。話もできないほど思いつめているわけじゃなさそうだ。これならみんなとも仲良くできるかな?

 

「それにしてもびっくりしたよ。まさか幹比古くんと同じクラスだなんて。

 そもそも魔法科高校に入ったことも知らなかったよ。去年は入るつもりはないって言ってたけど、なんでまた?」

「……ナギは父さんから聞いてないのかい?」

「?なんのこと?」

 

 なんか、ヤケクソって感じだけど?

 

「去年の夏、僕は魔法事故を起こしてね。魔法がうまく使えなくなったんだ。

 だから、足りないものを補えないかと思って、現代魔法を学ぶためにこの学校を受けたんだけどね。結果はこのザマだよ」

「……そうだったんだ」

「そう。だから、僕はもう神童じゃなくて……」

 

「やっぱり幹比古くんはすごいね!」

 

「……え?」

「だって現代魔法の勉強をし始めたのは去年の夏からでしょ?この短期間で古式魔法師が二科生とはいえこの学校に受かることが出来ただけですごいじゃない!」

「そ、それはナギだって——」

「ボクは春原家の魔法の復元のために十歳ぐらいから調べたりしてきたから。

 それに、たった半年ぐらいで入学できたのは幹比古くんだったからだよ。他の人ならそんなにうまくはいかないって」

「……そうかな」

「絶対そうだよ。実際、古式魔法師の合格率はかなり低いんだから。

 それに、魔法がうまく使えなくなったことは気の毒だと思うけど、完全に使えなくなったわけじゃないんだから、何かしら元にもどる方法はあるはずだよ。

 ボクも手伝えることがあったら手伝うからさ、あまり悲観的にならないほうがいいよ」

 

 できることがあるかは分からないけど、愚痴を吐くだけでもだいぶ違うはずだからね。

 

「……『そのうちに戻るさ』とは言わないんだね」

「そうなったからには何かしら原因があるはずだからね。それが時間で解決することならそのうち戻るかもしれないけれど、そうじゃなかったら解決のために動かなくちゃならない。

 幹比古くんは本気で悩んでいるんだもの、そんな無責任なことは言えないよ」

「……ありがとう。おかげで少し気が楽になった。

 じゃあ、これから頼らせてもらうね」

 

「もちろん。ボクたちは友達だろう?困った時は助け合うのが普通だよ」

 

「……そうか。そうだよね」

 

 そう言って幹比古くんは笑った。

 うん、せっかくの高校生活だもの、気を張ってばかりじゃもったいない。

 こうして友達に会えたんだ、高校生として過ごしたほうが楽しいもんね。

 幹比古くんは、教室の中央付近で言い争っ(じゃれあっ)ている男女のうち、女性のほうをちらりと見ると口を開いた。

 

「それにしても、ナギがあのエリカと知り合いだなんてね。世間は狭いと改めて思ったよ」

「エリカさんたちとは昨日の入学式で知り合ったばかりだけどね。幹比古くんはエリカさんとは知り合いなの?」

「うん、家同士の友好が深くて、昔からね。一応、幼馴染み……ってことになるのかな。

 初めて会った頃は、今からは想像できないくらい無口で無愛想だったんだけど、一体なんであんな感じになったんだろうね……」

 

 へえ。エリカさんって昔はそんな感じだったんだ。たしかに今からは想像できないな。

 ところで、たぶんこんな話をしていると……

 

「そうよね〜。今では立場が逆転して引きこもりになっちゃったもんね〜、ミキが」

「ボクの名前は幹比古だ!大体、引きこもってなんかない!」

「あ、エリカさん。やっぱり聞いてたんだ」

 

 格好のネタだものね。

 

「なんか、やっぱりって言われるのは釈然としないんだけど……。

 まあ、お互いの家のパーティーにも出てこなくなって、引きこもりになった幼馴染みの事だもの、気にはなるわよね」

「だから引きこもってはいないよ!修行だとかリハビリで忙しかっただけだ!」

「なんだ、ナギの友人はエリカの幼馴染みだったのか」

「あ、達也くん」

 

 気づけば美月さんと、さっきエリカさんと言い争っていた人も来ている。まだ少し時間があるし今のうちに自己紹介だけでもしておこうっていう事かな?

 

「ボクも今知ったんだけど、そうだったみたいだね」

「そうか、世間は意外と狭いものだな。

 っと。エリカ、時間もなくなってきているし、そろそろ自己紹介されてくれないか」

「あっ、忘れてた!

 それじゃ、ミキ。あんたから始めなさいよ、時間とったんだから」

「時間を使ったのはエリカじゃないか……。まあいいや。

 僕は吉田(よしだ) 幹比古(みきひこ)。あまり苗字で呼ばれるのは好きじゃないから、できれば幹比古と呼んでくれ」

「わかった、そう呼ばせてもらうよ。

 俺は司波(しば) 達也(たつや)だ。同じ一年に妹もいるから達也と呼んでくれたほうが分かりやすくてありがたい」

柴田(しばた) 美月(みづき)です。よろしくおねがいしますね」

「俺は春原のほうも初対面だよな?

 西城(さいじょう) レオンハルトだ。レオでいいぜ」

「知ってるみたいだけど、一応初対面だから自己紹介するね。春原(はるばら) (なぎ)です、ボクもナギでいいよ」

 

 達也くんの前の席にいた男の子は、レオくんっていうのか。ハーフかな?

 

「オーケー、ナギ。にしても本当どこかで会ったことなかったか?」

「あはは。よく、テレビで見てるから初対面の気がしないって言われるよ」

「有名人の特権だよね〜。あたしも昨日会った時、初めての気がしなかったもん」

「わたしもです。やっぱり、そういうことってよくあるんですね」

「そうだね。テレビのイメージが強いらしくて。他にも、よく声をかけられたりとかあるね。

 まあ、これはテレビのせいだけじゃないだろうけど。深雪さんとかもよくあるんじゃない?」

「たしかにスカウトなんかにはよく声をかけられている。断っているがな。

 ただ、基本的には一人で出歩かせないようにしているからナンパにはあまり遭わないな」

「うわ〜。もしかして達也くんってシスコン?」

 

 たぶん、間違いありません。

 

「そんなわけないだろう。単に家族として心配なだけだ」

「というか達也の妹の名前、深雪っていうのか。もしかして昨日挨拶してたあの娘か?」

「ああ、彼女だったらたしかに心配になるかもね」

 

 まぁ、幹比古くんの言う通り深雪さんは美人だものね。心配になるのも無理はないか。

 

「っと。もう10分前だね。そろそろ席に戻ったほうがいいよ」

「?なんでだ?別に教師が来るわけじゃないんだろ。ギリギリでもいいんじゃないか?」

「うわ〜。不真面目〜。教師がこなくても座っとくべきでしょ。そんなんだから不良みたいになるのよ」

「んだとコラ!それとこれとは話がちげーじゃねーか!」

「はいはい二人ともそこまで。もう小学生や中学生じゃないんだから」

「うっ」

「そ、そうだな」

「……なんか手慣れてるね、ナギ」

 

 それはそうだ。前世であの騒がしいクラスを受け持ってたのは伊達じゃない。アレに比べればこんなの全然マシだもの。

 本当にあの頃は大変だったなー……。

 

「ナギくん?そんな遠い目をしてどうしたんですか?」

「あっ。すみません美月さん。少し昔のことを思い出してただけですから、大丈夫です」

「一体お前の過去に何があったんだ……」

「それより、どうして席に着いといたほうがいいの?こいつの言うこともたしかに一理あると思うんだけど」

「ああ、実は入学案内には書いてないんですけど、オリエンテーションの時間に限って教師が来るそうなんです」

 

 ボクの言葉に、全員疑問符を浮かべているけど、そんなにおかしいことかなぁ?

 

「ん?どういうことだ?別に担任教師なんてものがいるわけでもないんだろ?」

「いまどきそんな時代遅れなシステムあるわけないでしょ。常識で考えなさいよ」

「……さっきからテメェは喧嘩売ってきてるよな?」

「レオくん、とりあえず抑えて抑えて。

 エリカさんも言い過ぎないでよ。

 それにレオくんの発想は、あながち見当違いってわけでもないんだ」

「どういうことですか?」

「……そういえばひとクラスにつき二人、カウンセラーがつくんだったか」

 

 さすが達也くん。もう思い当たったのか。

 

「そうだね達也くん。真由美お姉ちゃんから聞いたんだけど、毎年二人のうち一人がきて挨拶をするらしいから、余裕を持って行動したほうがいいっていうことだよ」

「そうなのか、ありがとな。

 それにしてもナギも姉がいたんだな」

「あれ?でも確か春原家って——」

「バ、バカッ!それは触れちゃ——」

「ボク一人だよ。兄弟はいないし実の親ももう他界したから」

 

 し……ん。

 あ、教室の空気が死んだ。

 会話が聞こえてた人も固まってる。

 

「すまん。無神経すぎた」

「知ってたはずなのに、ごめん」

「昨日エリカさんたちにも言ったけど、もう気にしていないから大丈夫だよ。

 それで、真由美お姉ちゃんっていうのは姉のように接してきた人のこと」

「この学校の生徒会長さまなんだよね」

「マジかよ。生徒会長ってあれだろ、十師族の七草家長女の『妖精姫(エルフィン・スナイパー)』」

「そうだけど、その二つ名は気に入っていないみたいだから本人の前では言わないほうがいいよ」

「達也の実の妹は一年の主席で、ナギの姉代わりの人は三年の主席。これってすごい確率だね……」

「たしかに、そう考えると偶然にしてはすごいな」

「なんか、運命を感じちゃいますよね」

 

 そんな感じで、結局話していたけど、予鈴がなったらみんな自分の席に戻っていった。

 さて、あと五分あるし今のうちに履修登録だけでもしておこうかな。




遅くなりまして申し訳ございませんっ!(二回目)

今回、本当にしばらく書けなくて、情報収集も兼ねて「LOST ZERO」を始めたらそっちも意外と進まなくて……って言い訳ですよねごめんなさい。
しかも10日もかかってまだ遥ちゃんの出番までいってませんし。
一体いつになったら入学式編終わるんでしょうか・・・
とりあえず頑張ります。

それにしても、計算してみたところ、実技の授業数にもよりますが、『個別指導』の教員って複数クラスを受け持っても最低で75〜150人以上、もしクラスごとに完全に分かれているとしたら300人はいそうなんですよね。
廿楽先生は「2-Bの指導員」だから後者が正しいんだろうけど、そんなに教員数が多いようには書かれていないんですよね。どういうことなんでしょう。
場合によっては今後の展開にも影響するので何か意見をください。

そして、一つ大きな問題が。
精霊魔法というものは原作魔法科でも出てきているんですね。読み返して初めて気がつきました。
なので、この作品では、

『』がネギま!でいう魔法を春原家が定義したもの
《》もしくは“なし”が魔法科での魔法の種類としてのもの

とさせてください。ほかにいい呼称が思いつかなかったもので。
何かほかにいい呼び方がございましたら、教えてください。それに変えるかもしれません。


それでは次回をできるだけ早く書きますのでお待ちください。

・・・味方の強化フラグは立ったから、敵を超強化しても大丈夫ですよね?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。