徒然なる中・短編集(元おまけ集)   作:VISP

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オーバーロード二次 TSモモンガが逝く その3

 襲撃を受けたカルネ村にて

 

 

 「まさか幼子まで手にかけるとは…。」

 

 ガキン、と怒りに満ちた呼気をコホォ…と漏らしながら、ユリ・アルファがメイド服には合わない緑の無骨なガントレットを打ち合わせる。

 その周囲には既に幾人もの騎士達がボコボコにされて倒れていた。

 その誰もが顔面を元の形が分からない程に腫れ上がらせているが、しかし全員息がある辺りギリギリ理性が命令を順守しているのが分かる。

 とは言え、何かきっかけがあれば完全にプッツンしそうではあるが。

 プレアデスで唯一と言って良い善性の存在であり、加えて彼女を創造したやまいこはリアルでは教師であり、非常に子供思いな女性だった。

 設定されていない部分では創造主によく似るNPC達。

 取り分けリアルのやまいこに設定面から心身共に似ているユリ・アルファはそれが顕著であり、子供の守護者としての面が色濃い。

 やまいこの最後はテロに巻き込まれた子供達を庇っての死亡という位には子供好きであり、そんな彼女によく似たユリは略奪と虐殺を楽しんだこの騎士達に一切の容赦を持たなかった。

 

 「我が主からの命令により、命を取る事こそ致しません。」

 

 ギシリ、と拳が握り締められ、怯え竦む騎士達へと向けられる。

 

 「だが、子供達が受けた恐怖と苦痛を僅かでも味わって後悔なさい。」

 

 こうして、カルネ村の襲撃はメイド服を着た鬼子母神の化身によってあっと言う間に鎮圧され、追い出される事となった。

 

 

 

 

 「……私の出番は殆どありませんでしたな。」

 

 なお、この救援の発端となったセバスは、村人達が人質になる様な事態を防ぐのを除けば、後は殆どユリが命令違反をしないように気を付けるだけで終わってしまった。

 

 

 ……………

 

 

 「あちゃー、ユリ姉ぇ完全にキレちゃってるっすねー。」

 

 その頃、回復役として同行していたルプスレギナは負傷した村人達を治療していた。

 

 「はーい、動ける人は一か所に集まってっすー。≪魔法効果範囲拡大化≫かーらーの≪軽傷治癒≫!」

 

 一か所に集まった村人達の傷があっと言う間に癒えていく。

 信仰形魔法詠唱者である彼女にとって、この程度は造作もない。

 

 「あ、ありがとうございます!」

 「良いって事っすよー。」

 「で、でも、私達じゃお礼も何も…。」

 「いーんですって。あたしらのご主人様がお慈悲で助けなさいっておっしゃったんだから儲け物と感謝してくれりゃ良いんっすよ!ま、対価は後で些細なものを請求なさるでしょ。」

 「そ、それではどうかよろしくお願いします…。」

 

 生き残った村人達はほっと胸を撫で下ろして些細な傷の者でも治療を受けた。

 

 (ま、これもナザリックの将来のため。いやー私ってば働き者だなーっと。)

 

 本当なら彼らを少しだけ治療して、じっくりと死に行く様を観察したいのだが、御方からのご命令では仕方ない。

 目の前の少女が徐々に近づいてくる死の気配に、一体どんな風に表情を変えてくれるのか非常に興味があったのだが、今は自分の趣味を優先してよい時ではない。

 

 「さーて、後はデミウルゴス様のお仕事に期待っすねー。」

 

 

 ……………

 

 

 「ひぃ…ひぃ…!」

 「くそ、やっぱこんな任務なんて…!」

 「馬鹿野郎!喋ってないで逃げるんだよ!」

 

 20人程のバハルス帝国の鎧一式を纏った、スレイン法国の騎士達。

 大義のため、国家間の思惑のために無辜の民を虐殺した彼らだが、最後に襲撃したカルネ村からは全員が何とか逃げ出していた。

 

 「離脱してニグン殿に報告せねば…!あの執事とメイド達は化け物だ…!」

 

 スレイン法国の特殊部隊、六色聖典でもなければとてもではないが対抗できない。

 実際はあの三人だけで漆黒聖典最強の番外席次が出張らない限りどうにもならないのだが、それはさて置き。

 そんな彼らを背後から静かに追跡する存在があった。

 

 「………。」

 

 それは忍装束を着た黒い蜘蛛のような八本脚のモンスター。

 不可視化の能力で知られる八肢刀の暗殺蟲/エイトエッジ・アサシンだ。

 Lv49とデスナイトよりも強力であり、取り分け八本の刃を用いた8連続攻撃および首狩りによる即死攻撃が可能である。

 前述した様に高い不可視化の能力を持ち、シーフとしての技能も有する。

 ナザリック内ではコキュートスの指揮下で15体存在する。

 不可視化や気配遮断等のスキルを持っているシーフ系のシモベの中では強い方に分類される。

 

 『デミウルゴス様、こちらは予定通りです。』

 『ありがとう。ではこちらも手筈通りに進めます。そちらもくれぐれも注意してくれたまえ。』

 

 密かに携帯していた伝言/メッセージのスクロールで現在の指揮官であるデミウルゴスと連絡を取る。

 本来なら第五階層でコキュートスの指揮下にいるのだが、今現在コキュートスは一部のシモベ達と共に第一から第三階層に一時的に移動しており、その中に選ばれなかった彼らはこうしてモモンガの命令の下、デミウルゴスの指揮下に入って隠密作戦に従事していたのだ。

 彼は必死に逃げようとしゃにむに走る騎士達を追う。

 その先にいるであろう別動隊の存在を確認するために。

 

 「では、こちらも始めよう。」

 

 一方同じ頃、デミウルゴスもまた動き出した。

 配下の悪魔達に命じて、先程わざと逃がした3人以外の騎士達、それらを生け捕りにするために。

 

 「折角現地住民が我々の前に大きな隙を見せてくれたんだ。突いてあげなきゃ彼らに失礼だろう?」

 

 ナザリックきっての邪知狡猾なる最上位悪魔が、初めてこの世界の人間へと牙を剥いた。

 

 「あぁくれぐれも死なせないように。彼らには情報を吐いてもらってからも、暫くは引っ張りだこなんだからね。」

 

 その顔は嗜虐の愉悦、そして御方の命令に従う歓喜に満ちていた。

 

 

 その後、件の騎士達は拷問官ニューロ二スト・ペインキルへと引き渡されて脳を啜られ情報を絞り取られ、その上で蘇生魔法で生き返った所を改めて情報を支配/ドミネートの魔法で操り記録を取り、一部は拷問の練習台となった。

 その後もデミウルゴスにより数多の人体実験へと参加させられ、幾度も幾度も繰り返し蘇生や治癒、復活を繰り返した。

 そして、完全に精神が擦り切れ、本当にもうどうしようもなくなって初めて恐怖公の眷属の餌と餓食狐蟲王の苗床となるのだった。

 

 

 

 ……………

 

 

 「順調ですね。」

 「これもモモンガ様の御蔭かと。」

 

 カルネ村の様子、人々に感謝されるセバスとユリ、ルプスレギナの姿を見て、モモンガは満足気に頷いた。

 

 「セバスにはこの周辺の地理情報を優先して得るように命じています。」

 「そして都市部の様なより多数の人口のある場所を発見し、より多くの情報を確保する。流石はモモンガ様です。」

 

 モモンガの言葉に、デミウルゴスとの会議が一旦中止となったために傍に控えているアルベドが賛辞を捧げる。

 

 「とは言え、まだまだ手探りの状態です。大胆になるのはまだ先だと思っていました。」

 「まさか人間同士でああも愚かに争っているとは……本当に救いようのない連中です。」

 「念のため、情報系魔法への対策は入念に行いましたし、現在もニグレドに警戒してもらっていますが…。」

 「まだ足りないと?」

 「幸いと言うべきか、この世界でも私達の魔法もアイテムも使用可能です。一部は変質していますが……少なくとも、今すぐ問題は出ないでしょう。問題なのは、この世界固有の技術やスキル、法則の類です。それが分からない内は目立つのは可能な限り控えるべきでしょう。」

 

 モモンガの言葉、それは元々警戒心が強く、慎重過ぎるきらいのある彼女からすれば当然のものだった。

 リアルでは幼い頃に両親を亡くし、親戚縁者もおらず(居たとしても引き取ってはくれないだろうが)、一人孤独に生きてきた。

 しかもそれなりに整ってはいるが年齢よりも幼げな容姿に大き目の胸部装甲と小さな背は彼女に多くの身の危険を齎した。

 結果、彼女は生き残るために必要に駆られてそうするようになった。

 その警戒し過ぎる様子はギルメン達に「石橋を叩いて渡る所か叩き過ぎて壊した上に新しい橋を作り終わってから飛行/フライで飛んで川を渡る」と言わしめ、同時に「警戒心の強い小動物系ギルドマスター」としてギルメン達をほっこりさせる事となった。

 それはさておき。

 

 『モモンガ様、村へと接近してくる一団があります。更にそれを追う様にもう一団が。』

 

 そこにニグレドからの伝言/メッセージがモモンガに届く。

 

 『そう、ステータス等は見れる?』

 『最初の一団と二つ目の一団では装備がどちらも別々のもので統一されております。最初の方の指揮官と思われる戦士の男性はLv30程で、後方の指揮官と思われる魔法詠唱者の男性は20程でしょうか。後は全員3から10と言った所です。』

 『随分とLvが低い様だけど……要は国家間ないし組織間での抗争が原因で、目的は最初の一団の殲滅かしら?』

 

 その内容で、モモンガは凡その事を把握できた。

 しかし、態々Lv30程度を暗殺するのにここまで手間暇をかけるものだろうか?

 やはり未だ何か決定的な情報が不足しているという事だろうか?

 こちらで確認できるレベル以外の、何か重要な要素が存在する可能性。

 流石にそういった完全に未知のものへと未だ情報不足のナザリックで対応できるかは微妙な所だ。

 

 『御苦労様。そのまま監視と情報対策を続けてください。何か変化があれば報告を。』

 『勿体なきお言葉でございます。このニグレド、全力を尽くします。』

 『期待していますよ。』

 そこまで言って伝言を切る。

 

 「恐らく、あの村の襲撃は囮でしょう。この国の正規軍らしきものを引き寄せるための。そして、最初の接近中の一団が狙い。」

 「どうやら当たりの様です。二つ目の一団が村の外で布陣を広げ始めました。」

 

 遠隔視の鏡からの映像で、二人は二つの団体がそれぞれどの様な行動を取っているかを上空から俯瞰する様に見つめていた。

 

 「さて、セバスはどう対応してみせるのかしら?」

 

 そして、興味津々とその視点をセバス(+村長)と最初の一団の方へと切り替えた。

 

 

 ……………

 

 

 「大変申し訳ないが……セバス殿、どうにか協力して頂けないだろうか?」

 「申し訳ありません。無辜の民草を守るためなら自衛と言い訳も出来ますが、これ以上は難しいかと。」

 「そうか。いや、すまないな、他国人である貴方方を巻き込む訳にもいかないな。」

 

 試しに言ってみたガゼフだが、予想通り断られてしまった。

 国同士のいざこざ、それも既に戦闘が勃発している所に第三国が介入する。

 それは当然ながら、戦争へと発展しかねない火種に成り得る。

 

 「とは言え、降り掛かる火の粉への対処は自衛の範囲でしょう。どうかこの村の事はお任せを。」

 「おお!感謝する!」

 「お礼は何れ我が主に。我が主の許可なくば、私もこうは動けませんでした。」

 「そうだな。何れ機会があればその時はお礼を申し上げさせてもらおう。」

 

 そこまで言ってガゼフは馬へと乗り、村の外へと出て行こうとする。

 

 「どうか、ご武運を。」

 「あぁ、セバス殿の主殿にお礼申し上げるまでは頑張らせてもらおう!」

 

 こうして、ガゼフとその部下達は死地へと分かっていながら出発した。

 

 『よく耐えましたね、セバス。』

 『いえ…。』

 

 その一方、セバスはモモンガからの伝言/メッセージを受け取っていた。

 

 『周囲の情勢が不透明の今、余り干渉したくありません。』

 

 その点はセバスも分かっていた。

 分かってはいるし、決して最後の一人たる御方の命令に背く事もないが、それでも彼の中のたっち・みーから受け継いだ正義を愛する心が軋みを上げるのだ。

 お前は見ているだけなのか、と。

 

 『現地住民からの情報収集をスムーズに行うために村を救いました。そして今現在、私達の前には非正規部隊という多くの情報を持つだろう者達が現れました。』

 

 おや、とセバスは思う。

 その言葉通りなら、この後…

 

 『村の外の事に関しては、こちらで対応します。セバスは村人達からより多くの情報を収集し、今後のためにも彼らの慰撫に努めなさい。』

 『畏まりました、最も慈悲深き御方様。』

 

 その後、セバス達は外から転移させられたガゼフとその部下達の治療に加えて、村人の慰撫のために二日程カルネ村へと滞在する事となった。

 

 

 ……………

 

 

 「御機嫌よう、皆さん。」

 

 ガゼフ達が消え、陽光聖典の面々が戸惑う中、ソレらは現れた。

 赤い鎧と奇妙な槍を持った少女、青い水晶の様な巨躯に鎧の様な外骨格と4本の刀剣と槍で武装した昆虫人。

 

 「ひっ」

 

 しかし、ニグン達が恐怖したのはその二体ではない。

 その二体を左右に引き連れた黒い豪奢なローブの者にこそ恐怖を抱いたのだ。

 

 「貴方達、どうやら私の部下達が助けた村をまた焼き払うと言ったそうですね。」

 

 言った、確かに言った。

 そしてガゼフに止めを刺そうという時に、この存在がやってきたのだ。

 

 「二人とも、可能な限り手加減して生きたまま制圧しなさい。」

 「御意ノママニ。」

 「お任せくださいまし!」

 

 そうして、蹂躙が始まった。

 

 

 

 この後、陽光聖典の面々は全員捕えられ、ナザリックで手ぐすね引いて待っていたニューロニストの元へと招待される事となる。

 とは言え、モモンガは先の騎士達が最初の情報源だったから丁寧に情報を搾り取ったのとは異なり、レベルもあって装備も整った陽光聖典の面々に対して何らかの処置がなされている可能性を考え、慎重かつ確実に全ての情報を搾り取る事をニューロニストに命じた。

 最初の一人、最も新任の隊員は拷問によりあらゆる情報を絞られかけたが、彼ら全員にかかっていた口封じの魔法により最初の三つの質問に答えた時にその頭が爆ぜた。

 それからは陽光聖典の隊員達は順番に脳を吸われ、蘇生された後に支配/ドミネートで洗い浚いの情報を書面に書き出し、後の使い道を考えられて偽死/フォックススリープによって仮死状態とされた。

 また、その装備等は分析に回され、彼らの使う魔法・アイテム・装備の多くが何かしらユグドラシルと共通するものがある事が判明した。

 

 「興味深いですね。これはつまり、この世界には我々以外に先にやってきた者達がいるという事です。」

 

 騎士達と陽光聖典から搾り取った一連の情報に対し、モモンガはそう結論した。

 

 「どういたしますか?」

 「六大神となら話し合いたいと思いますが、八欲王と言う異形種狩りの連中は論外です。」

 「では…。」

 「今後、必要な事は4つあります。この世界全てに対する情報収集。ナザリックの強化。魔法・アイテム類の再検証。そして外貨や資源の獲得です。」

 

 アルベド、デミウルゴス、パンドラズ・アクターというナザリック内の三賢者とも言うべき者達の前で、モモンガは告げた。

 

 「情報収集はデミウルゴス。ナザリックの強化はアルベド。再検証はパンドラズ・アクターにそれぞれ任せます。」

 「「「畏まりました。」」」

 

 恭しく跪く三人に、モモンガはうんうんと満足気に頷く。

 

 「デミウルゴスは隠密活動を得意とするシモベを率いてこの世界の全てに関して情報収集を。特にこの世界へとやってきたプレイヤー関係と使い捨ての下位のスクロールの材料、データクリスタルの代替品の三つを最優先に。また、確保した資材が生産可能なものであれば私に報告した後、生産に取り掛かりなさい。」

 「お任せください。」

 「アルベドはナザリックに残っているNPC達へ追加できるレベルの分配や新たなシモベの配置等を考えなさい。但し新しいシモベに関しては外で動く者達から要望があれば優先して叶えるように。」

 「承りました。」

 「パンドラズ・アクターは先程言った通りです。他のギルメンの姿を取れる貴方なら最適と判断しました。……ごめんなさいね、折角外に出してあげようと思ったのだけど、この仕事は貴方が最適ですから。」

 「Oh,My Goddess!どうかそんな悲しそうな顔を為さらないでください!私本来の役目に戻るだけの事。一体何の問題がありましょうや。どうか吉報をお待ち下さいませ。」

 「…ありがとう。」

 

 ふぅ、と必要のない呼気を吐き出し、モモンガは話を続ける。

 

 「外貨と資源の獲得ですが……こちらはデミウルゴスが一段落したら商会を開いてもらいましょう。その上で、セバスとユリ、ルプスレギナの三人にはこのまま近場の都市であるエ・ランテルに行って冒険者として登録してもらいましょう。」

 「冒険者、でございますか?」

 

 疑問符を出すアルベドに、モモンガは説明する。

 

 「ほぼ間違いなく他のプレイヤーがいるのです。ならば、目立つ囮を用意しておくべきでしょう。それにあの三人が冒険者となり、善行を重ね、人々からの信頼を勝ち取れば、それだけ多くの情報と報酬を獲得できるでしょう。」

 「成程、一石三鳥でございますか。」

 「そしてデミウルゴス。貴方の作る予定の商会は王国及び周辺国の経済を掌握して下さい。」

 

 今現在までの調査で分かった事の一つだが、文明レベルは中世相当であり、それにユグドラシル産の魔法とタレントと言われる特殊能力があるだけなのが一般的らしい。

 実際、先程捕獲したニグンなる陽光聖典の隊長は「召喚したモンスターの能力を微増する」というタレント持ちだった。

 無論、例外としてプレイヤー及びその支援を受けた存在が考えられるが、それはさて置き。

 経済レベルも中世程度だとすると、貨幣の類は村で確認された金・銀・銅がメインであり、その管理は国家が行っていると思われる。

 すると、これら三種の貴金属が一定以上の量が市場に出回るだけで市場が崩壊する恐れがある。

 また、税の徴収に関しても基本麦で行われるらしく、相場よりも安価かつ大量の麦が出回れば、それだけでこの国の税収はガタガタになる。

 加えて、ユグドラシル金貨とは異なり、この世界の貨幣には偽造防止の魔法が使われていない。

 つまり、ナザリック級の生産能力を持った勢力がその気になれば幾らでも市場操作・崩壊させる事が可能なのだ。

 そうなってはどんな国家だろうとまともな軍事活動を行えない。

 

 「現地住民の中にも脅威となる者、利益となる者はいるでしょう。そうした者達を効率よく排除・勧誘するためにも人間社会の中で確固たる立場が必要です。冒険者としてのセバスらの後援者となり、その支援をすれば…。」

 「相乗的に名声を上げる事も出来ると。成程、素晴らしいですね。」

 「商品に関してはナザリック内で置き場所に困っている使い道の無いコモンアイテムを売りに出しましょう。私達からすればガラクタですが、この世界の一般的な人間からすれば、とても貴重なものとなるでしょう。」

 「委細承知致しました。周辺国の情報収集がある程度纏まり次第、取り掛からせて頂きます。」

 

 こうして、ナザリックによるこの世界の人類社会への進出は開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あぁ、そう言えば忘れていましたね。」

 

 部屋を去る前、モモンガは最後に付け足した。

 

 「私の目的はあくまでナザリック地下大墳墓、そこで暮らす私とシモベ達の安寧こそが最優先です。それ以外は一切が些事。この世界の生物を一つ一つ統治するような面倒な事はするつもりはありません。」

 

 その言葉に、密かに世界征服して御方に捧げるのも有りか、と考えていたデミウルゴスとアルベドは内心の考えを捨て、パンドラズ・アクターはその二人の僅かな動揺を敏感に感じ取った。

 

 「さっきの商会が成功すれば、そんな事をせずとも利益は十分でしょう。見込みのある個人をこちらからスカウトするなら兎も角、傘下に入りたいとか言われても困ります。精々が絶滅しない程度に代価と引き換えに多少の助力をするだけにしなさい。」

 「「「全て御方の望み通りに。」」」

 

 こうして、ナザリック地下大墳墓の方針は決定した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




こっから思いっきり加速。

基本、このTSモモンガさんは外に出ません。
外の危険性を分かっているので、全力の隠蔽とかかけてモモンガではなく人間の一個人として護衛付きで漸く外に行きます。
また、自分は既に死んでいる者であり、影響も大きいため、必要以上に生者に関わるべきじゃないとしています。
原作モモンガさんは未知を求めて楽しんでましたが、TSモモンガさんはギルメンという自分よりも大事な人達の死によってその辺の遊びが殆ど消えてるのが最大の差異ですね。


なお、生身の外見は童顔で巨という程ではないが立派な胸部装甲、茶のショートカット。
オーバーロードとしての姿も撫で方なので肩当がほぼ垂直に近く、肩幅も背丈も小さくなって、ローブを引き摺らない様に地面から僅かに浮いている設定です。
第一話で言ってる様に、オーバーロード時も完全な骸骨ではなく、胸部装甲と右顔面、そして長髪が残ってますので、嗅覚・味覚は生きてます(胃が無いので飲み食いしたら下に落ちますが)

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