徒然なる中・短編集(元おまけ集)   作:VISP

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このすば転生 ガチ女神が逝く その2 微修正

 「佐藤和真、お前はトラックから子供を庇って死んだ。しかし、お前が庇わなくても子供も運転手も無事だった。」

 

 「うぇ!?」

 

 

 一目惚れだった。

 

 

 きっと死ぬ寸前になっても、年寄になってボケても、その人の事を忘れないだろう。

 そう思う程に、その人は綺麗で、美しく、清冽だった。

 そして考える、今までの人生で最も深く考える。

 テストや試験なんて比べるべくもない、佐藤和真はその脳髄の限界まで思考を加速させた。

 この美しい人と離れたくない、ずっと一緒にいたい。

 そのために何をするのが最善か考えろ…!

 

 「子供は兎も角運転手は業務運転上過失致死に問われ有罪。出所後も犯罪者として後ろ指指される人生を送るだろう。」

 

 これはあれだ、所謂流行りの転生って奴だ。

 なら、必ず特典がある筈…!

 

 「しかし、お前の行い自体は善意からのもの。罪に問う事はないので安心しろ。」

 「ちっとも安心できねーよ!? 罪悪感で辛いわ!!」

 

 考えろ考えろ考えろ考えろ!

 態度は普段のそれから変えず、決して怪しまれない様に!

 特典だけじゃ駄目だ、ずっといるには相手からの感情や意思も大事だ。

 なら、何とかして好感度を高めないと!

 こういう仕事が出来てそれでいて不器用ながらもこっちを出来るだけ安心させようとする女性への対処法……って思いついてたらヒキニートになんざなっとらんわ!

 …って、思いついた!

 

 「こっちから運転手の人に何かしてやれる事は無いのか!?」

 「無い。お前は死んだのだ。あの運転手にも、お前の両親にも、お前ができる事はもう何もない。」

 

 ビンゴ!これだ!

 だが、この方法は正直博打以外でも何でもない。

 確実に好感度は稼げるが、ずっと一緒にいれるかというと心許ない。

 だが、オレの第六感が告げている……ここは全プッシュだと……!

 

 「佐藤和真、お前はまだ決められた寿命を生き切っていない。故に、もう一度だけ選ぶと良い。故に、お前には二つの選択がある。このまま死後の世界に進むか、異世界に転生するかだ。」

 

  よし、まだだ、まだ……!

 

 「じゃぁ転生で!」

 「良いのか?異世界に行けば、お前は魔王を退治せねばならない。魔王を始めとした人外が存在して人類を脅かし、人類もこちらより発展していない。その分、生きるには大きな努力と協力、機転が必要だ。」

 

 よし、ここまではよしだ。

 次、次で決める…!

 

 「では特典を選べ。問題があれば修正を加える。」

 

 KITA----!

 特典に関する質問の後、オレは人生最大の賭け時へと到達した。

 

 「そっすか……じゃぁ運転手さんに何かしてあげてくれませんかね?」

 

 女神様の目が丸くなる。

 その成熟し、同時に芯のある強さを持つ女性の持つ柔らかさが強調された表情に、目と思考を奪われかけるが、何とかそれを耐え抜いて、好感度を上げる事に腐心する。

 最悪、転生して直ぐに死ぬかもだが、それはそれ、もう一度この女神様に会えると思えば悪くない。

 

 「良いのか? それを選べば、お前は何の特典も無しに転生する事になるぞ。」

 「良いんです。 オレがやっちまった事なんですから、オレが責任取らないと。」

 「宜しい。あの運転手の人生には今後、幸福が舞い込む様に手配しよう。」

 「ありがとうございます!」

 「うむ。」

 

 いぃぃぃぃぃよっしゃあああああああああああああああ!

 ミッションコンプリートッ!!  

 女神様の満足気な頷き、そして本人無自覚だろうけど柔らかな笑み!

 超サイコーって奴だぜヒャッホーー!!

 が、これで万策尽きた。

 まぁこんな笑みを浮かべる女神なら、全員に手引きとか初期アイテム位はあるかな…?

 

 「さて佐藤和真、これからお前は転生してもらう。だが、その前に一つしておかねばならない事がある。」

 「へ?」

 「お前の好きなゲームでもあるだろう?初期配布アイテムだ。」

 

 神はここに居られた(ガチ)。

 配られたのはお金(日本円にして1万円相当)と所謂「ぬのの服」と「剥ぎ取りナイフ」。

 この分だと、初心者向けの街とかもありそうだな。

 

 「次に、お前のカルマに応じてステータスポイントが割り振られる。これを使って好きに設定せよ。」

 

 ッ! ここだ、ここで決めれば好感度だけじゃなく逆転ワンチャン有り得る…!

 

 「カルマ値1万P……これって凄いんですか?」

 「無論だ。久々に見たぞ、5桁代は。さ、振るがよい。それしか特典が無いのだから慎重にな。」

 「あ、質問よいですか?」

 

 ここで最終確認をしておく。

 ダメならダメで仕方ないにしても、ポイント足りないとかありませんように…!

 

 「宜しい。質問を許す。」

 「この1万ポイント、ステータスじゃなくチートの代金にする事は出来ますか?」

 「通常なら不許可なのだが……久々の5桁だ、許可する。」

 

 勝ったな(確信)

 

 「じゃぁ女神様! オレは貴方を希望します!」

 「何?」

 

 目を丸くして驚く姿も麗しいですね、って違う!

 今はそっちじゃない。

 冷静に、確実に勝負を決めるんだ!

 

 (って、あれ?) 

 

 こっちが話し掛ける前に、女神様は目の前に現れた立体映像式の端末?のようなもので何事かを詳しく調べている。

 その目つきも険しく、何事かを考えている様子だ。

 

 (頼む…頼む!)

 

 女神を前にしての神頼みという滑稽な状態。

 しかし、和真はただ祈った。

 それしか出来なかっただけだが、その祈りは確かにどこかへと通じた。

 

 「よし、法的な問題も無いな。確認するが、私を連れていく事でお前のカルマによるステータスボーナスは消える。また、私のステータス等は現地の混乱を避けるために10分の1とする。異論はあるか?」

 

 あっても消します(真顔)。

 そんな事を内心で狂喜乱舞しながら考える和真は、平静を取り繕いながら、辛うじて思いついた質問をした。

 

 「10分の1……それって向こうで問題ありますか?」

 「あくまで一度に出力できる量に制限がかかるだけだ。HPやMPの総量は変化しないため、女神としての力は兎も角アークプリーストとしての技能に問題はない。」

 「なら、宜しくお願いします!」

 「うむ。では早速転生の儀を始める。」

 

 和真は思った。

 女神様、ありがとうございます。

 オレ、絶対に貴女を大切にして幸せにする事を誓います。

 

 魔王?余力があったらね。

 何よりもまず女神様が第一だからね!

 

 「では行こう。新しい世界が、お前を待っている。」

 「よし、じゃぁ行ってきまーす!」

 

 そんな事を考えながら、佐藤和真は異世界へ女神と共に転移していった。

 

 

 ……………

 

 

 「ようこそ、始まりの街アクセルへ! お前さんらも冒険者になりに来たのなら、冒険者ギルドで登録してくるんだな!」

 

 転移早々、門番やってるおじさんからそう言われた二人は道中で道を聞きながら、真っすぐ冒険者ギルドへ向かうのだった。

 

 「にしてもアクアさm…おっと、アクアはその姿で良いのか?」

 「えぇ。あの本来の姿じゃ目立って仕方ないし、これ位で良いのよ。」

 

 カズマの質問に、アクアが女神としてでなく素の言葉で答える。

 今のアクアは初対面での女神として威厳と品格ある成熟した女性の姿ではない。

 十代後半程度の少女の姿であり、その姿からは嘗て大いに感じられた女神としての威圧は無い。

 能力を十分の一にまで下げているからだが、それでも凛とした美少女であり、カズマは将来性抜群の一目惚れした少女と一緒にいられる事で内心狂喜乱舞していた。

 

 「先ずは登録、然る後に装備を整え、初心者向けのクエストをこなしましょう。」

 「最初はお約束的にお使い系クエストかな?」

 「あればそれにしましょう。最悪、どこかで日雇いのバイト、という事も有り得るでしょうけど…。」

 

 一応、一万エリスあれば数日はそこそこの宿に泊まって食事にも苦労しないで済む。

 しかし、装備代や今後の事も考えれば無駄遣いは一銭も出来ない。

 

 「最悪、オレの服を質屋に…。」

 「絶対ダメよ。それ、唯一の思い出の品じゃない。」

 

 カズマの今の姿はこの世界のこの地方の一般的な旅人の服装であり、以前着ていたジャージは背負い袋の中に入っている。

 珍しいから買ってくれる物好きはいるかもしれないが、それでも故郷から持ってきた唯一の思い出の品を貧乏が原因で手放させるのはアクアとしては絶対に看過できなかった。

 

 「ちゃんと稼げば良いじゃない、ね?」

 「うっす。頑張ります。」

 

 今後の予定を話しながら歩くこと暫く、遂に冒険者ギルドに到着した。

 

 「いらっしゃいませ!こちら冒険者ギルドになります。」

 「二人分の登録をお願いします。」

 

 冒険者ギルドとこの世界の文字で書かれた看板の建物に入ると、そこでは綺麗な受付嬢(0エリススマイル)が受付をしていた。

 

 「畏まりました。登録料は一人当たり1000エリス、合計2000エリスになります。」

 「はい、一万エリスでお願いします。」

 「はい……はい、こちらお釣りになります。では改めて説明させて頂きますね。」

 

 登録料のやり取りを終えると、受付嬢はてきぱきと慣れた様子で説明を開始した。

 

 「冒険者には各種の職業がありまして、そこからポイントやステータスに応じたものを選択して頂きます。そしてこちらが登録カード、モンスター等の討伐数が記録されます。レベルが上がるとスキルを覚えるためのポイントが与えられるので、頑張ってレベル上げをしてください。それではこちらの水晶に手を翳して下さい。こちらで初期のステータス並びにポイントが記録・表示されますので。」

 「じゃぁオレが先に。」

 

 そう言ってカズマが先に水晶に触れると、ものの十数秒で計測が終わった。

 すると、そこに表示された数字を見て、受付嬢は顔を曇らせた。

 

 「これは……残念ですが、サトウカズマさんのステータス、つまりは筋力、体力、魔力はかなり低いですね。敏捷と知力、器用さはそれなりで、幸運は凄い高いですけど……ポイントに至っては0です。これでは職業は冒険者しか選べませんね。」

 「冒険者ってどんな職業なんですか?」

 「全てのステータスが低い代わりに、全ての職業のスキルをポイントさえあれば覚えられるんです。ただ、本職の方と比べるとステータスや補正の関係で効果が全般的に低くなってしまうんですけど…。」

 「(何という器用貧乏なRPG主人公) 分かりました、冒険者でお願いします。」

 「畏まりました。サトウカズマさんは冒険者で登録いたします。」

 

 こうして、カズマの冒険者としての職業選択は終わった。

 

 「それじゃ次は私ね。」

 「貴女は……アクアさんですか。失礼ですがアクシズ教の方ですか?」

 「えぇ、生まれた時からです。」

 「そうでしたか。この街にもお社がありますので、良かったら後でお参りすると良いですよ。 っと、出ましたね。」

 

 朗らかな会話の最中、遂にアクアのステータスが表示された。

 

 「これは…!? 素晴らしいステータスとポイントですね。魔力と知力、器用さは凄く高いです。特に魔力はちょっと見た事無いですね。その分、体力と敏捷は低めですけど……幸運だけは本当に低いですね。あ、ポイントも物凄くありますよ。」

 「幸運は放っといてください…。」

 

 目が死んだ状態でアクアが言う。

 彼女の脳裏にあるのはただ只管に激務だった頃。

 他の神々の尻拭いと無茶ぶりに擦り減り、摩耗し、壊れかけていた自分の姿。

 そんな女神の幸運が高い訳が無かった。

 

 「失礼しました。 これならアークウィザードやアークプリースト等の後衛系上級職にもなれます。えっと……これは初めて見ますが、固有職業でしょうか? えっと、ハイプリエステス(女教皇)?」

 「アークプリーストでお願いします。」

 

 固い声でアクアは断言した。

 何で休暇中も仕事しなくちゃいけないんです?(意訳:絶対やだ)

 しかも人間界の宗教に直接一個人で関わるとか死亡or面倒事のフラグでしかない。

 アクシズ教ならばその辺りはかなりマシだが、それでも尋常じゃない仕事が舞い込む事は目に見えていた。

 

 「固有職業の情報は貴重なので、選んで頂ければギルドから補助金も出るのですが…。」

 「嫌です。」

 「畏まりました。それでは登録カードの説明をさせて頂きます。」

 

 そんな彼女の様子に、受付嬢も諦めたのかそれ以上は追及しなかった。

 

 「名前と顔写真の下に書かれているのがレベルやスキルになります。で、隅の方に数字が書かれているのがポイントです。このポイントに指先を当てて、覚えたいスキルを想像しますと、ポイントを消費してスキルを習得できます。ただ、冒険者に限っては一度見たスキルしか覚えられませんので、ご注意ください。」

 「分かりました。所で初心者向けの宿屋と武器屋ってありますか?」

 「それでしたらこちらのタウンガイドをどうぞ。3Pに初心者向けのお店一覧が載っていますので…」

 

 こうして、二人は有用な情報を土産に冒険者登録を終了したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「こちらL。本部に通達、AAがスタートに出現。繰り返す、AAがスタートに出現。」

 『こちら本部、了解した。引き続き観察と報告をせよ。それと怪しまれない程度に支援を。近隣の他の人員にも通達するので必要あらば連携せよ。健闘を我らが女神に祈る。』

 「了解。我らが女神に祈りを。」

 

 




Fate風ステータス

カズマ(人間・冒険者)
属性…混沌・中庸
筋力E 耐久E 敏捷D 魔力E 幸運EX 知力A 器用さC

アクア(女神・大司教=アークプリースト)
属性…秩序・中庸
筋力C 耐久C 敏捷C 魔力EX 幸運E 知力B 器用さB

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