徒然なる中・短編集(元おまけ集)   作:VISP

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まさかの4000字突破

動画云々の所で時代考証間違ってたので修正


転生モーさんが逝く 第四次聖杯戦争編 前編 微修正

 世界の裏側に領民と街ごと引っ越し、異形の女神として覚醒しながらも他の神霊や傍迷惑系影の国の女王と戦い始めて早1500年、随分と色んな事があった。

 

 先ず、モーさんが産んだギャラハッドの魂を継いだ娘はすくすくと育ち、祖母にあたるモルガンの教導のお蔭でモルガンの手伝いをする巫女となり、ギャラハッドから継いだ魔力防御と魔術を用いて国を守る結界や城壁の建設時における術式の構築等に多大な貢献を果たした。

 また、多くの人々に分け隔てなく接し、笑顔で奉仕する様は流石は女神様方の娘だと多くの人々から尊敬され、慕われた。

 しかし、惜しまれる者から早逝するのが世の習いなのか。

 モーさんが複数の軍神・戦神・武神に足止めされている間、隙を狙う様に国にやってきた神々へと迎撃戦が繰り広げられた。

 とは言え、兵士達が勝てるのは非戦闘系の神霊であって、怪物や原初の神々と戦い勝利した主神の相手等は荷が重すぎる。

 そこに大盾を持って彼女は参戦した。

 天変地異に等しいあらゆる権能と神造兵装による攻撃を受け、反らし、弾き、防ぎ切る。

 例え雨霰と降り注ぐ雷霆も、雲霞の様に押し寄せる蝗の大群も、巨大な津波すら、彼女は大盾と魔力防御、そして魔術で以て防衛し尽くした。

 守りが完璧ならば、他の者は攻撃に専念できる。

 全ての備蓄を使い切る勢いで、戦士団は神々へと量産型対軍宝具(ビームバズーカ相当)によって攻撃し、徐々にだがダメージを蓄積させていった。

 戦いは三日程続き、神霊側が痺れを切らした。

 そこが分け目だった。

 自身の権能を攻撃に全て注ぎ込み、小賢しい防御ごと国を滅ぼそうとする一撃に、しかし盾の乙女は怯まなかった。

 内心の恐怖や怯え、不安を押し殺して、脅威を前に吠えてみせた。

 神霊の必殺の一撃に因り、第二・第三城壁は砕け、このままでは第一城壁内の人々の避難する地下シェルターにまで被害が及ぶだろう。

 だから、彼女は一歩も退かず、その盾で以て第一城壁とその向こうへの被害の一切を防いだ。

 残ったのは後先考えずに力を振り絞った神霊と何とか凌いだ戦士達。

 戦士達は最後の切り札たる量産型対城宝具(バスターライフル相当)の集中砲火によって、見事主神級神霊を撃退する事に成功した。

 歓声は、上がらなかった。

 

 盾の乙女が己の全てを使い切り、国を守ったが故に。

 

 帰って来たモードレッドは呆然として我が子の亡骸と対面した。

 まさか二度も大切な者を失う羽目になるとは思ってもいなかったのだ。

 涙ながらにその亡骸を抱き締め、号泣しながらよくやったと撫でて、そして葬儀の段取りをモルガンに任せて、十分な休息と準備をした。

 今回の騒動では余りに多くの犠牲が出てしまった。

 そして、防衛ではなく報復の必要まで生じてしまった。

 そのために、モーさんは悲しむのを後回しにして、仕事に取り掛かったのだ。

 この日は丁度、裏側に引っ越して20年目の事、盾の乙女の20歳の誕生日だった

 

 そして一ヵ月後、国の復興が全て済んだ後、モーさんは報復に打って出た。

 暫く自重していた影の国の女王も誘い、神霊狩りに出かけたのだ。

 スカサハはスカサハで盾の乙女に指南していた事もあり、この事件に激怒していた。

 この二人が揃えばあっけないもので、弱体化した神々は一年と経たぬ内に二人によって狩り殺された。

 結果として、一つの神話体系の神霊の9割が殺される事となる。

 とは言え、やり過ぎても恨みを買うので、表側にいた頃に神話上でも特にやらかさなかった者は見逃したり、そういった者達が助命嘆願した連中(某狩猟の女神とその恋人等)のみが生き残る事が出来た。

 この虐殺により、多くの神霊達がモリグナへの認識を改め、余程の馬鹿か腕自慢に挑んでくる連中を除けば攻めて来る事は無くなった。

 だが、モーさんの顔に喜びは無い。

 多少すっきりしたとは言え、失った者は余りにも大きかった。

 

 「よし、ではヤるか。」

 「ゑ?」

 

 だがしかし、ケルト系女戦士の極致たるこの御仁にそんなセンチメンタリズムが通じる筈も無く。

 モーさんはもう何度目になるかも分からない影の国の女王の本気の殺し合いに巻き込まれるのだった。

 

 

 ……………

 

 

 そんなこんな騒動を挟みつつ、気付けば1500年経過していた。

 最近はすっかり生き仏扱いのモーさんであった。

 モルガンは未だ魔術の研究と指導をしているが、政治方面においては第一線を退いている。

 戦士団にしても、月一で現れるスカサハとベテランの戦士達のお蔭で教導役に困る事は無く、神霊も竜種も脅威ではなくなって久しい。

 現在はどっかのローマよろしく拡大しまくった国を地方行政権を拡大して事実上の自治都市化を推し進め、何かしらの問題が起きれば連携して解決すると言う状態だった。

 勿論、未だ諦めの悪い神霊達や知恵持つ幻想種等もいるが、そういった連中が実際に行動を起こした時点でモーさんによって種族や神話体系ごと殲滅されかねないので、特に問題らしい問題は起こっていない。

 そんなモーさんの最近の日課は、世界の表側を覗き見る事だった。

 自分達とは違って弱いがそれでも精一杯生きている人々の生活を爆笑したり悲しんだり憤ったりしつつ見る中、書物やTV、アニメやゲームにネットにドはまりしていた。

 曰く、「だって、本当に久々で面白かったんだもん!」 

 まぁ中世よりも遥かに娯楽面が発達してるのだし、仕方ないよネ!

 すっかり私室(客や使用人も入って来れない様なプライベートルーム)はサブカルグッズやプラモで埋め尽くされ、ドはまり具合を如実に現わしていた。

 現在は金と手間と時間をかけまくったガンプラのジオラマ等の作成や超人的身体能力を生かしたゲームプレイ等を趣味にしている。

 また、裏側へのそういったサブカル系娯楽文化の普及にも努めている。

 これで数年以内に動画配信とかも出来るな!

 

 そんな頃、珍しくモーさんでも感心する程の出来の大規模魔術の発動を感知した。

 おや?とモーさんが注視すると、原因は日本の神戸もとい冬木市で行われる四回目の聖杯戦争だった。

 60年前に盛大に儀式に失敗したソレが、今またノーメンテ・ノーチェックで行われようとしていたのだ。

 この科学技術が発展しまくった現代の大都市で英霊を交えた戦争をしようと言う現代の魔術師達のアホさ加減に呆れつつ、暫しその地を眺めていたら…

 

 騎士王がのうのうと召喚に応じたのを確認した。

 

 「あ”ぁ”?」

 

 ついつい口から品の無い言葉が出てくるが、努めて平静を保ちつつ、状況を調べていく。

 すると、どうやら円卓の欠片を触媒に召喚に応じたらしい。

 しかも未だに死に損なっていると来た。

 それでもなお召喚に応じる辺り、お目出度い頭だと思ってしまうのはやはり散々苦い目に遭わせられたからだろうか。

 

 「チッ、まぁ表側に下手に干渉する訳にゃいかねぇか…。」

 

 今直ぐにでも殺したいのを我慢して、モーさんは監視に徹する事にした。

 もしまかり間違ってこちら側にまで干渉する様な願望を抱きでもした場合、直ぐにでも干渉できるように。

 そして、共に行動する貴婦人との会話から、騎士王の願いが判明した。

 

 「ブリテンの救済だぁ?」

 

 阿呆らしい、としか言いようが無かった。

 何せブリテンの滅びは人理によって定められた事象だ。

 それを覆す事は即ちブリテン以降の世界を滅ぼす所業に他ならない。

 そんな事も分からないのだろうか?

 否、現実に耐え切れずにプッツンしたと見るべきか。

 

 「こりゃ最悪現地に跳ぶべきだな。」

 

 とは言え、簡単な事ではない。

 モードレッドは一応表側で一度死んだので、英霊の座は存在するのだが、本人がこうして世界の裏側に居る事から、例え召喚しようとしても応じるのは偽物しかいない。

 まぁそんな偽物でも並の英霊よりは何かしらの突出した能力を持っているので、決して完全な外れではないのだが。

 

 「ま、早々勝ち残れる訳もないだろ。」

 

 何せ他の面子が強すぎる。

 特にどう考えても、物量でのマスター殺しが出来るアサシンに、原初の大英雄たる英雄王の存在が大き過ぎだ。

 ライダーは宝具こそ強力だが、本人の技量はそこまでではないし、何よりマスターが未熟過ぎてガス欠になるだろう。

 ランサーはマスター共々強力だが…内紛一直線なのでダメだなアレは。

 騎士王は騎士王でマスターとは早々に不仲で嗤える。

 この時点ではまだ、モーさんは参戦するつもり等無かった。

 が、総勢6騎ものサーヴァントが一堂に会した直後、異変に気付いた。

 

 雨生龍之介と言う連続殺人犯により、開催地の一般家庭が犠牲になったのだ。

 しかも、生き残った一人息子を生贄に英霊召喚を試みていると来た。

 

 「…………。」

 

 そして、縛られた子供が、たすけて、と声なき声で呟いたのが見えた。

 それを見た瞬間、ブチブチとモーさんの堪忍袋の緒が切れた。

 即座に魔術を行使し、召喚へと介入する。

 先ず、召喚に応じようとした下種な英霊の魂をぶん殴って座へと送り返す。

 次に、召喚によって集まったエーテルを材料に、精神を作成した仮初の肉体へと移し、嘗て肉人形を操作した時の事を参考に己の肉体として操作する。

 一応このエーテル体はサーヴァント・キャスターとしてのソレなので、現在の神霊としての肉体に比べれば10分の1にも満たないスペックだが、取り敢えず子供を助けられれば問題ないので無視する事にした。

 こうして、モードレッドは再び世界の表側へと戻って来た。

 

 

 ……………

 

 

 テキトーな詠唱と下手な魔法陣が発光し、輝きの中から現れたのは大型の爬虫類の頭骨で出来たマスクで顔を覆い、黒い革製のコートの下に白地に赤いルーン文字が刻まれたドレスを纏った存在だった。

 人の形をしていた、しかしソレを人と言うには余りにも威圧感が凄まじい。

 ただそこに立っているだけで、ソレは周囲全ての生物を威圧して余りある。

 殺気を放てば、或はそれだけで相手を致死足らしめるやもしれない。

 

 「あ、っと、オレは」

 

 龍之介が何とか口を開いたと同時、人型の怪物はその右手に持つ骨製の杖を向けた。

 それだけで、龍之介は何も言う事が出来ずに昏倒した。

 

 「んー!んー!」

 

 縛られ、布を噛ませられていた子供が恐怖の余り呻き声を上げる。

 それを見た人外は杖を再度一振りし、縄と布を断ち切った。

 

 「あ…」

 「眠りなさい。」

 

 そして、何事か言われる前に、子供の意識を刈り取った。

 

 「さて、後始末をすべきだな。」

 

 遺体のエンバーミングに子供と龍之介の記憶処理。

 そして子供を監督役のいる教会に届ける等、やるべき事は多い。

 

 

 こうして、キャスター・モードレッドの第四次聖杯戦争は始まった。

 

 

 

 


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