徒然なる中・短編集(元おまけ集)   作:VISP

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今回、軽くR描写あり。


SRWOG転生 テンザンが逝く3

 さて、DC本部への顔出しも終わり、自宅のバーニングPTも軍用シミュレーターに改装し、家政婦のお菊さん(58歳)も抱き込んで機密もばっちりにした状態で、テンザンは日常生活に戻った(無論監視付きだが)。

 予定としては、来月行われるバーニングPTの大会に出た後は直ぐに本部に直行なのだが。

 では何故態々戻って来たのかと言うと、テンザン個人の用事があったからだ。

 それも極めて個人的なものだ。

 それは、リョウトのご家族への説明である。

 流石に今年で漸く18歳になる少年が長期で家を留守にするには何の説明も無しでは不義理に過ぎる。

 となれば、テンザンは直にヒカワ家に顔を出してあの怖い親父さんと心抉るのが得意な四姉妹を相手にする事になる。

 可愛い末っ子で長男で跡継ぎをつい目を離してたらテロリストに就職させちゃいました☆とか殺されても文句は言えない。

 

 「あ、もう連絡しましたから大丈夫ですよ。」

 「はえーよ」(震え声)

 

 色々と覚悟決めてたら、何かリョウトが勝手に終わらせてました。

 

 「父さんからは自由にしろって言質取ってますし、姉さん達もまぁ…。」

 「マジかー……。」

 

 親父さんは兎も角、あの四姉妹が認めたのを意外に思いつつも横にやり、シミュレーターは兎も角として軍事教練で疲れた身体を癒す事にして、テンザンはその辺りのやり取りを聞かずにその話題を終了してしまった。

 してしまったのだ。

 

 

 

 

 

 「…これを機にテンザンさんをちゃんと捕まえるって言ったら、喜んで許可してくれましたよ♪」

 

 誰も聞いていない場所で、少女はうっとりと微笑みながら呟いた。

 

 

 ……………

 

 

 そんなこんなで、あっと言う間に一ヵ月が経過した。

 テンザンはバーニングPTでは相変わらずのランキング1位を更新しつつ、DC側とはシミュレーター越しに情報のやり取りをし、挑んでくる兵達を返り討ちにする日々。

 多少時差があって辛いが、オタク趣味なだけあって夜型人間なので、その辺は余り苦にならない。

 最近は対エース戦術が出来上がってきたのか、被弾する事が多くなっており、テンザンとしてはスリル満点でとても楽しい。

 傍らで見ていたリョウトはその戦闘映像を引き攣った顔で見ていたが、彼女自身も対エース戦術を身に着け始めているDC兵(全員エリート相当に強化)一個中隊(12機)を相手に互角に渡り合っているので大概化け物なのだが。

 

 「あ、テンペスト中佐の部隊も来てる。」

 「おし、本気出す。」

 「あ(察し)」

 

 兵装もミサイルを減らし、対高機動戦闘を意識してか、頭部も通常の指揮官アンテナ増設仕様にしてあるリオンで、テンペストとその部下達がシミュレーションに乱入してきた。

 その数は一個中隊であり、ただのDC兵ならリョウトでも頑張れば倒せる程度の数だ。

 しかし、此処にいるのはDC兵の中でも親衛隊であるラストバタリオンの一員であり、更に言えば指揮官であるテンペスト・ホーカー中佐によるテスラ・ドライブを始めとした先進戦闘技術の対策・研究部隊としての色を濃くした連中だ。

 その技量と経験、何よりDC及び指揮官への忠誠心故に戦力比は同装備の一個大隊に匹敵する。

 そんな連中が相手では今のリョウトでは些か以上に厳しいものがある。

 だが、それをテンザンは笑って歓迎した。

 

 「いッッッくぜェェェェェェェェェェェェッ!!」

 

 レーダー識別圏内に反応を確認したと同時、お馴染みの強襲用ブースターを最大まで噴かせて一気に加速する。

 以前なら遠距離からの狙撃で何機か墜とせていたのだが、今の彼ら相手では弾薬の無駄にしかならない。

 それを分かっているからこそ、テンザンは敵の只中に飛び込む事で乱戦へ持ち込もうとした。

 だが、既にそれで幾度も痛い目を見ている彼らはそれをさせじと小隊単位で散開、肩部マシンキャノンによる濃密な対空砲火で迎え撃つ。

 以前はここで分隊単位のツーマンセルに分かれたのだが、あっと言う間に瞬殺され、時間稼ぎすら許されなかった事から、敢えてやや行動が縛られる小隊単位を選んでいる。

 それをテンザンは攻撃的な笑みを浮かべつつ、慣れた様に切り込んでいき、最寄りの小隊一つへと踊りかかっていく。

 接敵と同時、一機が左腕のレールガンに貫かれて爆散。

 接敵から1秒後、一機の影から接近戦(と言う名の特攻)をしかけた一機の頭部(=コクピットの直上)を右の大型レールガンで射抜いて撃破。

 接敵から4秒後、逃げ切れないと悟った残りの二機が全兵装を形振り構わず発射し、一発でも被弾させようと弾幕を張るが、大型レールガンの発射時の反動すら利用した独特の機動で回避しながら立て続けに撃破する。

 立て続けの撃破にパイロット達の練度を疑うが、これでもまだ最初期に比べれば遥かに伸びているのだ。

 最初はレーダー識別圏外からの狙撃で部隊の半数が沈められ、次に先が読めていると言わんばかりの偏差射撃によって一秒で数機が撃破されていたのだ。

 寧ろ、この異常なテンザンを相手によく心折れずにここまで食らいついてくるものだと感心すらされている。

 現にDCの一般パイロット達の中では既に心折られている者も多い。

 そんな彼らはテンザンと言う大き過ぎる壁に挑み続けるラストバタリオンの面々を心底尊敬し、組織内の結束を高めているのだから皮肉なものである。

 

 『各機、フォーメーションC1!』

 

 指揮官機であるホーカーの声に反応し、各機が一斉に後頭部に増設されたコンテナからミサイルを発射する。

 これもまた唯のミサイルではない。

 テスラ・ドライブ搭載機同士の戦闘を意識して作成された空対空ミサイルであり、威力こそやや低下しているものの、今まで採用されていたミサイルとは一線を画す機動性と誘導性を持っている。

 一機当たり6発、合計48発もの高機動型ミサイルが発射され、ド派手な黄色に塗られたテンザン機目掛けて殺到していく。

 

 「ハッハッハーッ!」

 

 それをテンザンは最高だと言わんばかりに正面から突っ込む。

 両肩のマシンキャノンで迎撃し、三割近いミサイルを迎撃しながら、残りのミサイルをまるで曲芸飛行の様なターンと加速、停止、急降下で撒き、或はミサイル同士を衝突させ、窮地を難なく潜り抜けていく。

 

 『次、C2!』

 

 だが、ミサイルばかりにかまけてはいられない。

 テンザンの予測進路目掛け、大量の砲弾が発射され……それら全てが着弾前に炸裂、無数の散弾となって降り注いだ。

 対空散弾と言う、大昔の戦争で使用された戦艦の対空用砲弾だ。

 これをミサイルに気を取られてやや機動が単調となったテンザン目掛け、残った三個小隊全機で発射したのだ。

 だが、テンザンとてそれで黙ってやられる程度なら、此処まで来れはしない。

 

 「まだまだぁ!」

 

 遊びは終わりと言わんばかりに、左腕部のレールガンとマシンキャノンで一気に残ったミサイルを全機撃墜、散弾砲弾が炸裂するのとほぼ同時、予測進路周辺からブーストを最大に吹かしつつ、置き土産とばかりに右腕部の大型レールガンで狙撃し、一機を撃墜しながら安全圏へと離脱してみせた。

 

 「今のはヤバかったぜ!」

 『よく言う!』

 

 もし最初に一小隊撃墜していなかったら、散弾ミサイルの包囲網から逃れる事はできなかっただろう。

 もしもの可能性に背筋を冷たいものが走るが、一戦ごとに手強くなっていくホーカー中佐とその部隊に、テンザンは惜しみなく称賛しながら、何時もの様に勝ちにいった。

 

 

 ……………

 

 

 「あー……流石に疲れた…。」

 「ふふ、お疲れ様です。」

 

 ホーカー中佐らとの濃密なシミュレーターを終え、バーニングPTの大会を二日後に控えた事もあり、テンザンは今日明日は早めに切り上げる事にした。

 なお、家政婦のお菊さんは夕飯を作り終えた後、既に帰宅し、テンザン邸には既に二人だけである。

 

 「はい、アイスティーですよー。ミルク入りですけど。」

 「応、ありがとな。」

 

 気を利かせてくれたリョウトに礼を言いつつ、テンザンは何の疑いもなく底にやや沈殿物のあるアイスミルクティーをがぶがぶと飲む。

 シミュレーター後に入浴し、ずっと水分を取っていなかった事もあって、実に美味そうに飲んでいく。

 それが自分の人生の墓場逝きを決める行動になるとは、一切知らず。

 

 「ふー……」

 「良い飲みっぷりですねー。」

 「応。やっぱ疲れてたみたいだわ。今夜は早めに寝るよ。」

 「はい、お休みなさい。」

 

 そう言って、そそくさとテンザンは自室へと引っ込む。

 そんなテンザンを、リョウトは注意深く観察していた。

 そう、例えば立ち上がる時、テンザンが妙に引け腰だったり、ズボンの前が突っ張っていたりした事を。

 

 (もう少ししたら頃合いかな?)

 

 コップを片付け、この後の見繕いの算段を考えながら、リョウトは誰にも見せない様なニンマリとした、それでいて艶っぽく上気した笑みを浮かべた。

 

 

 ……………

 

 

 何故かやたらムラムラしたので自室で自家発電して就寝した後、テンザンは夢を見た。

 小柄な少女を抱いている夢だ。

 何故か相手の顔形がよく分からない。

 が、夢なんだし、そんなもんだろうと納得しておく。

 ただ、自分が感じる感覚に関しては結構リアルな夢だなと思いつつ、夢なんだし色々やってみるかと好奇心と興味の赴くまま、その少女の身体を思うが儘に貪り続けた。

 その少女も最初がぎこちない動きだったが、徐々に積極的になっていき、今では結構な体格差があるにも関わらずこちらに合わせてくる。

 寧ろ、こちらに合わせる形で、自分自身の気持ちの良い動作や体勢を探っている様にも見えた。

 でまぁ、よい夢だったものの、夢とは覚めるのが道理な訳で。

 気づけば、自室のベッドの上で、テンザンは目を覚ました。

 

 「ぁ……?」

 

 何か身体がヤケに怠いし重い。

 それに運動した後の様に汗を始めとした色々と濃い匂いが漂っている。

 はっきり言うと臭い。生臭い。

 そして、右腕が何故か動かないし、やたらと温い。

 

 「…?」

 

 まだ寝ぼけたままの思考で振り向くと、そこにいたのは夢の中で見た少女だった。

 だが、夢の中とは違い、その少女は現実の存在だった。

 そして、とてもとても見覚えのある顔をしていた。

 具体的に言うと、自分の弟分として可愛がっていたリョウトだった。

 だが、その身体は少女のものだった。

 その事実が頭の中で結びつかず、テンザンは暫く硬直していた。

 

 

 

 

 




TSリョウト≒秋山殿(一見着やせだが出るとこは出てる)

なお、起きた時点で既に10時を回っており、第一発見者の菊代さんには知られている模様。

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