徒然なる中・短編集(元おまけ集)   作:VISP

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GS美神短編 政樹が逝く2

 六道の運営する六道霊能女学院だが、下は中等部、上は高等部まであり、更に今年になって男子部まで追加された。

 無論、校舎は別なのだが、それでも近場だし、よく合同授業が行われる。

 それは勿論ながら、霊能関係の授業でも一緒だ。

 なお、クラスがABCDとなっており、Aから順番に歴史と格と実力のある家の才能ある子達で、そこから徐々に質が下がり、Cは一般出だが霊能を発現してしまった者達、Dに至っては霊能が殆どないが霊能関係の家に生まれた者達が集まっている。

 そのため、霊能の低い者は早々に見切りをつけて他の分野へと進むか、霊具作成等へと移っていく事が推奨されている。

 無論、そんな事も解らずに歴史と格だけをアイデンティティに威張り散らす者もいるが。

 なんでそんな詳しいかって?

 それはね、僕がその男子部に所属してるからなんだよ。

 

 「鬼道君は~~将来どうするの~~?」

 「家の事は父と六道夫人に任せて、GSやるつもりです。」

 

 だって、名家の仕来りとか面倒だし、ずっと冥子の面倒見るとか難易度測定不能だし…。

 

 (政樹、私も支えるからな。)

 

 影から相棒にして唯一の家族が励ましの声を送ってくる。

 癒しは本当に滝ちゃんだけだよ…。

 どうして僕の周りは一癖も二癖もある連中ばっかりなんだ…(白目。

 

 「も~~無視しないで~~。」

 「はいはい。」

 

 今も合同授業でボッチしてる冥子の面倒見ないといけないし。

 無論、これはあくまで自発的()な行動です(棒)。

 

 『冥子ちゃんを~~お願いね~~。』

 

 と自分の分の支出を別にまとめた帳簿を態々片手に持ちながら宣う夫人に、未だ収入0の自分ではどうにもならない。

 高校になればGS免許も取れるので、それで金を稼いで、過去の生活費全てを返済したら、何処か東北辺りの田舎でのんびり過ごしたいなぁ…(遠い目)。

 何としても穏やかな日常が欲しい。

 

 「おい鬼道!話を聞け!」

 

 なお、僕は現在Aクラスにいる。

 本来ならBクラスなのだが、冥子の面倒を見るために此処にいる。

 

 「ん、あぁ、何だって?」

 「なら改めて言ってやる!お前はこのクラスに相応しくない!とっと出ていけ!」

 「それ、理事長に言ってくれない?」

 

 ここの経営握ってるの冥那夫人なんだから、文句はあの人に言ってくれ。

 僕はあくまであの人に言われて入ったんだから。

 

 「…言える訳ないだろうが!」

 「分かってるなら言うなよ。」

 

 日本の霊能界における名家中の名家が六道であり、そのTOPが現当主である六道冥那。

 そして霊能以外の事業では夫が活躍し、家を盛り立てている。

 

 「分かってるんだったらその辺も飲み込んでくれ。僕だって好きでいる訳じゃない。」

 「…ッチ!」

 

 そう言ってどっかの家の長男君が足音荒く去って行く。

 お互い、嫌な家に生まれちゃったもんだね、うん。

 

 それからの中学生としての僕の日々は冥子の起こす式神の暴走を抑える事と=だった。

 他の家の跡継ぎとの仲立ち?

 (ヾノ・∀・`)ムリムリ

 家としての格がガチ貴族な連中もいて、それは大抵こっちより高い。

 所詮は野良陰陽師の生まれの鬼道家ではどうにもならないものがある。

 出来るのは尻拭いだけだし、それ以上をするつもりは無い。

 授業と修行の傍ら、暴走した式神を鎮圧する毎日だった。

 また、折角の土日や休日もあのお嬢様の我が儘で潰される事多々で、折角の修行の時間や滝ちゃんとのスイーツ巡りも潰されるせいで、滝ちゃんのご機嫌が悪い事悪い事。

 

 (滝ちゃん、ごめんね。)

 (…政樹が悪い訳ではない。だが、あの小娘は好かぬ。)

 

 

 ……………

 

 

 あれから5年、現在15歳、数え年で16歳となったので、遂に自分こと鬼道政樹は元服を迎えた。

 これにより、霊能面からは一人前と看做される。

 それは同時に、正式に鬼道家の家督を継ぐ事が出来る事を意味する。

 

 「いやイランですよ。」

 「そ~よね~~。」

 

 堅苦しい式が終わった後、六道冥那婦人とお茶を飲みつつ、今後の事を話し合った。

 

 「貴方は別に自由や富が欲しい訳でもなくて~~普通に生きれるだけの~~お金と立場があれば~~満足なのよね~~?」

 「です。」

 

 それ以上の事は勝手にやってくれ。

 あの糞親父も死ぬまで家督を手放そうとはしないだろうし、そもそもまだ高校生の自分では家の管理は無理だ。

 事業でも、霊能関連でも、自己鍛錬や霊具の作成なら兎も角、人を率いる才能と言うか、人を自分の意に沿わせる才能と言うのが自分には存在しない。

 何せ、そういった事の容量は全て滝ちゃんこと恋人の滝夜叉姫に向けられてるからな!

 考え方が古風で奥ゆかしくて清楚系で可愛いんだあの子。

 割とオレ様系に見えながら、目下の者への配慮も欠かさないし、思いやりのある良い子で、そんな彼女と一緒になりたいと思う事は罪か?いやそんな訳が無い。

 それはさて置き、人の動かし方を指導してくれる人間もいないし、何より覚えてもらっては困る人間もいる。

 特に鬼道家の人間は上も下も腐っていて、多くは既に六道から派遣された人間達にパージされるか、普通に汚職が判明して逮捕されている事もあり、その鬼道家の跡取り息子が管理職に就く事は誰も良い顔はしないだろう。

 無論、こちらを単なるイエスマンとしている六道は除くが。

 あの糞親父にいたっては、一応名目上の当主なのでそこまではされていないが、常に自身の能力をギリギリ超えない程度の仕事を過剰に与えられて遊ぶ暇も何もなく、文字通り忙殺されていた。

 まぁそれは事業の刷新に伴う一時的な事務量の増加なので仕方ないのだが、流石にげっそりと窶れ果てた姿は哀れみを覚えた。

 母親?海外の愛人宅に住んでるらしく、ここ数年顔も見てない。

 会話に至っては7年はしてないかな?

 

 「僕を六道家の養子って事にしてもらって、見返りに成人するまではそっちに管理してもらうのはどうでしょう?」

 「うちとしても~~将来的にも~優秀そうな子に~~頑張ってもらいたいのよ~~。」

 

 また六道で独占するとか、業界内から非難轟々で敵が更に増えるから、六道の意のままに出来る自分にまかせてリスク分散したい気持ちは分かる。

 今更とは言え、その辺りを意識するかしないかで大分差は出る。

 だが、こちらはあんな汚物の集積所みたいな家とはとっとと縁を切りたいのだ。

 

 「…僕が継いだ所で維持できない不良債権とか、本当にいらないんですけど。」

 「あらぁ~~それじゃ夜叉丸ちゃんはどうするの~~?」

 

 確かに夜叉丸は対外的には鬼道家付きの式神であり、鬼道家を継ぐ=夜叉丸を継ぐ事でもある。

 しかし、既に夜叉丸もとい滝夜叉姫とは個別に契約をしている状態なので、それは無意味だ。

 だが、やはりと言うべきか、既に夜叉丸と自分の関係性どころか、性別すら知っているらしい。

 流石に正体に関しては知らないだろうが、推測位は立てているだろう。

 いや、これは女の勘かな?

 どちらにしろ厄介な事には変わりない。

 

 「僕にとっては溝にでも捨てたい産業廃棄物を、貴方は有効活用できる。それ以上は求め過ぎでは?」

 「でもでも~~冥子のお友達を~~路頭に迷わせるなんて~~。」

 

 そこか、確かにそれは世間体としても不味い。

 

 「ご心配なく。近々GS免許試験に受かるつもりですので。」

 「そう言えば~~もうそんな時期だったわね~~。」

 

 韜晦する六道冥那夫人に、自分は冷めた視線を向ける。

 確かに育ててもらった恩はある。

 とは言え、それは自家の利益を最大限考慮した果ての、籍だけを鬼道に残した養子状態の自分を利用しようとしたまでの事。

 しかし、単なる置物としてなら兎も角、積極的に後ろ暗い事に関わらせようとするのは止めて頂きたい。

 GS免許さえ取れれば、自分達の食い扶持を自分達だけで稼ぐ事が出来る。

 まぁ、それすら出来ない様に圧力をかけると言うのなら、それこそ国外に出るまでなのだが…。

 一応、英語位はそこそこ出来るので、オカルトGメンに所属する事も可能だろう。

 

 「じゃぁ~~冥子ちゃんも出るから~~お願いね~~。」

 「その辺りは本人に言ってください。」

 

 八百長とかは絶対しませんからね?

 後、もしもの時のために修理費用意してた方が良いかと。

 

 

 ……………

 

 

 で、GS試験当日

 

 「冥子のお友達らしいけど…容赦する理由にはならないわね!」

 (何で美神さんの相手やねん。)

 (政樹、落ち着いて蹴散らすのだぞ!)

 

 順調に勝ち進んだ準決勝にして、神通棍を構えたJK美神令子を相手に、僕は何でこうなっちゃったかなーと遠くを見ていた。

 

 

 

 

 


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