徒然なる中・短編集(元おまけ集)   作:VISP

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以前途中で力尽きてたものを完成させました。
うーん尻切れトンボw


よくある転生作家系サーヴァントの話 序章

 古い話だ。

 私はかつて西暦1990年代に生まれ、平和な日本国で一生を生きた。

 終生本を、読書を嗜み、それこそ漫画からラノベ、図鑑から専門書、古書から発掘された竹簡や石板まで読み続けた。

 なお、職業は古本屋だった。

 我ながら天職だったなーと思う。

 また新たに生まれたが、今度も本を読んで過ごしたいなーと考えていた。

 しかし、大問題に直面した。

 

 

 この時代、本がない。

 

 

 より正確に言えば、一般庶民が読めるようなものは無いと言うべきか。

 何せ主な筆記媒体が粘土板か石板、或いは極一部でパピルスがある位で、読み書き計算が可能なのは国の特権階級である役人や神官、王侯貴族しかいないのだ。

 しかも、書いてある文字も楔形文字の様なちょっと見た事がないような代物なのだ。

 危うく心折れかけた。

 この絶望感、課金してたゲームのデータが丸ごと吹っ飛んだ時に近いな…。

 

 なので、私が物語を記す側になる事にした。

 

 幸いと言うべきか、私の住まう集落において私は司祭の家に生まれており、誰もが知らないような知識を持つ私は神の啓示を受ける事の出来る一等特別な存在として拝まれていた。

 流石は古代、考え方が吹っ飛んでやがる…!

 さて、そうと分かったら色々と書くべき事は多い。

 幸いな事に農耕は既に始まっているので、星を用いた暦の知り方とかそういった最初期天文学から始まり、医療や生物について、道具や武器の作り方に食材の調理の仕方等のこの時代において必要で役立ちそうな知識を片っ端から書いていく。

 で、書いた知識は直ぐに実践して、どんなものであるかを集落の長や大人達に周知させていく。

 その上で、この時代の人々では決して理解も出来なければ得る事も出来ないだろう知識、所謂高等数学や工学、建築学に航空力学、更には政治学や私が嘗て生まれた世界の大まかな歴史等、その内容は本当に多岐に渡る。

 途中、心折れそうになったが、これも将来誰かが必要とするかもしれないと自分に言い聞かせて彫り続ける。

 文章の中にあるこの時代のこの部族には無い単語なんかもあるので、それらの解説や注釈も入れなければならないと気付いて更に頭を抱えたが。

 加えて、文字だけでなく、図を用いた解説も入る事で分かりやすくする。

 こうすれば知識そのものに興味が無い人でも読んでくれるかもしれないからだ。

 漫画や絵本なんかで読書に入門するのと同じで、少しでも知識が失われる可能性は低くするための措置だった。

 ここまでやったんだからちゃんと後世にまで残して役立ててほしいと思う所存だ。

 具体的には予言の書だ、人類の聖典だー!ってな感じになってほしい(誇大妄想)。

 

 そこまでやって、漸く私自身の趣味の領域である神話や伝承の作成に入る。

 

 既に結構な歳になってしまった私だが、既に近隣地域では並ぶ者無き賢者にして司祭として他の権力者から畏れられているおかげで石や道具の調達なんかは若い頃よりも楽に感じる。

 先ずは以前に集落の年寄や司祭に有力者等(含む私の両親や親族)からこの地に伝わる伝承(極簡単なもの)を全て聞き出した内容を纏めていく。

 可能な限り体系立てて分類しておくと、後の人からも分かりやすいのでお勧めだ。

 その内容から更に「あ、こうなってたら面白いな」って内容の伝承を盛り込みつつ、遂に私オリジナルの神話の作成に取り掛かる。

 ファンが出来れば、未来でも数多くのサブカルチャーに派生するので気は抜けない。

 内容には多分に教訓的な内容を含ませつつ、現代人でも考えさせられる内容を増やす事でこの神話に面白さを持たせ、後世の人々に積極的に伝承して頂きたい。

 なお、うっかり書き損じしたりすると石板なので一枚分最初からやり直しとなる。

 一度粘土板なり地面なりに書いてから清書しよう。

 …私が存命の内に終わるよな?

 

 さて、具体的な内容としては…割と神話としては在り来たりと言っても良いかもしれない。

 まぁ趣味で日本神話とクトゥルー神話と型月風味になってはいるが。

 創造神話(宇宙の起源から始まって星・神々・人類の誕生と起源)から始まり、数多くの神々と人々が存在したが未だ世界の法則が定まっていない混沌の時代、神々が世界の裏側へと隠れて人類が主役となり各地に広まり繁栄するも相争う分散の時代、最後に滅んだ大地=地球を捨てて新天地を求めて宇宙へと飛び立つも宇宙に住まう数多の強大な神々を相手に絶望しながらも立ち向かう流浪の時代となる全4部作となる。

 第一部は日本神話風に宇宙からの来訪神が星を作り、星は次第に空と大地及びそれらに相応する神に分かれ…という感じ。

 ここから更に多数の神と人のキャラを出して、世界観の説明や各種物理法則、動植物に対しての起源や説明を加えるのが第二部になる。

 所謂バナナ型神話とか死の定めなんかが該当する。

 で、第三部が以前見た伝承やら史実なんかを面白おかしくミックス&カスタムして数多くの英雄譚や童話の様な教訓を含んだ伝承が出てくるのが第三部だ。

 ぶっちゃけ、陰惨な陰謀とか人の狂気とか破滅とかがメッチャ多くて気を病みそうになったが、同じ位人々の団結や信頼に友情愛情、希望や栄光なんかも多いので読み応え抜群の部でもある。

 そして第四部はぶっちゃけSFである。

 クトゥルー神話とディストピア系とハイスピードメカアクションを悪魔合体して宇宙へ飛び出し「そして伝説へ…」って感じである。

 へ?神話でSFに走る所かハイスピードメカアクションに走るな?

 だって好きなんだもんロボものがさぁ!

 例え世界観にそぐわなくても出したかったんだよっ!!

 内容は…ガンダム残酷物語にフロムの悪意とクトゥルー系宇宙的恐怖の宝石箱やぁ!な内容です。

 だってニュータイプと黒い烏とクトゥルフ眷属邪神群の戦いとか、碌な目に会う筈がないし。

 辛うじてデモベ成分が最後の希望として存在してるけど、あれもあくまで最悪の事態を遅らせてるだけというね…。

 例え誰も理解してくれなくても、この第四部は元々ロボゲーマニアだった自分としては実に満足である。

 デモ○ベインは未だ自分の中でバイブルとして輝いている。

 あぁ懐かしきニト○+にバンナム、フ○ムソフトウェア…。

 

 なお、ここまで執筆するのに実に10年以上経過してたりする。

 

 そんなこんなで神話本編が完結した後はちょいちょい注釈や外伝を執筆していた。

 本編に入れるには微妙でも、ネタが湧き出す時があるのだから仕方ないと思い、石板を掘り続けていたのだが……どうやらそれももう終わりらしい。

 もう少し布教したり小さい子達に読み聞かせたかったけど…ここまでか……。

 うん、まぁ、こんな古代に生まれたにしちゃ上出来すぎるな…。

 じゃ、また来世にでm

 

 

 ……………

 

 

 「はっはっは、善哉善哉。」

 

 また生まれ変わりました。

 だがしかし、今回は21世紀であり、しかも自分が神話を書いた世界での遥か未来。

 自作の神話が未だ人々の間で大人気となり、娯楽作品の題材として数多く利用されている事に笑いが止まらない。

 予言書だとかリアル時代考証無視とか言われているが、そっちのは気にしない。

 あれもこれも転生者の仕業だったんだよぉ!と本当の事を言っても誰も信じちゃくれないし、それよりもそうして生まれた数多くのサブカルチャーを消費する事の方が大事なのだ。

 ま、あんだけ掘ったのに未だ未発見の石板が多数存在する事に関しては若干思う所もあるが、それは仕方ない。

 過去の遺物なんてそんなものだし、総数3000枚近い石板全てを現存させるなんて当時できる技術じゃ出来るだけ沢山作る位しかできなかったもん。

 粘土板やパピルスなんかじゃ1000年単位の保管だと崩れる可能性が高かったしね。

 なお、今世は一回目でもお馴染みの古本屋で生計を立ててるので、そうした作品が次から次へとやってくる。

 趣味で経営してるから利益が薄くても良いし、収入は執筆業(自分の神話をテーマとした二次創作?)で結構稼いでいるので何の問題もない。

 

 「あ、先生!そろそろ締め切り近いですから進捗聞きに来ましたよ!」

 「うげ!?」

 

 でも締め切りだけは勘弁な。

 

 

 ……………

 

 

 「これは歩いてはいけない場所の知識である。」

 

 

 既に途絶えた世界最古の言語によって記された一文を皮切りに刻まれた石板は、発見から今日まで人類の至宝として扱われている。

 来歴の一切が不明な石板の著者たる「彼」への敬意を示して、これら一連の石板は「無銘石板」、或いは「彼の石板」や単に「最古の石板」と呼称されている。

 「彼」の存在は石板の中には一切登場しない事、2000以上の石板の数から複数の人物による作成かと思われていたが、字の癖等から現在では一人の人物が生涯をかけて作成したものだと判明している。

 「彼」による当時の神話と数多くの知識が刻まれた一連の石板は紀元前5000年頃の地層より発見され、その後の人類史において、多くの神話の起源として扱われた。

 何せ発見まで最古とされた古代メソポタミア神話の時代よりも更に1000年近く古かったのだ。

 この世界に息づく人々、取り分け神秘に敏感な魔術師等はその存在を崇拝し、同時に発見された無数の石板の扱いに関しては意見が割れた。

 何せその内容、特に当時では有り得ない筈の無数の生物学・工学・科学・数学的な資料の数々は国家を始めあらゆる団体が隠匿・独占を目論むに足る内容だった。

 この石板の知識を解読・参考にされた毒の煙玉や対船舶用の防衛兵器である鉤爪、連射式の弓や簡易式の火炎放射器等が多数開発され、当時版図を拡大せんと戦争を続けていた繁栄期のローマ帝国はこれに大いに苦しめられた。

 これらの兵器は後に十字軍遠征やイスラム系勢力の欧州侵攻に対しても使用され、鹵獲された兵器類はイスラム圏にも逆輸入され、世界各地へと広まっていった。

 だがしかし、それらの基となった知識を記された石板は情報の隠匿のために複数の写本に分けられた後に多くが破壊され、当初は2000近い数だったとされるそれらの内、21世紀現在まで現存しているのは僅か900程度しかない。

 欧州各国が植民地支配に乗り出し、科学・工学・医学等の多くが大きな技術的進歩を迎えた頃には流石にそろそろ太古の人類の至宝を保護するべきだという動きが巻き起こったものの、それはとある石板の発見と共に停滞した。

 

 その石板の内容、それは未だ各国が机上の空論としてまともに取り扱ってはいなかった航空力学に関してのものだった。

 

 世間では漸くライト兄弟が人類初の動力飛行機による飛行を成功させたばかりであり、世間からの評価は兎も角、実際に軍事・民事において役に立つかどうかは疑問視されていた。

 そこに件の石板の発見がドイツの片田舎から発され、更にその内容から航空機の大まかな有用性等が知れるとドイツは石板の内容を秘匿、石板の保護運動から一抜けし、航空機の開発に力を入れていく事となり、後の世界大戦において猛威を振るう事となる。

 この動きに他の欧米列強も追随し、結局石板の保護運動は国家の思惑により棚上げになってしまった。

 

 そうして石板の保護活動が本格化したのは第二次大戦終了後であり、更に一か所に纏めて展示等が成されるようになったのは東西陣営の冷戦が終了する雪解けの季節を待たねばならなかった。

 

 

 さて、多くの国家や集団が各種の先進的な知識を記した預言書とも言うべき石板の収集と隠匿、解析を行っていた中、そうした知識よりも寧ろ伝承や神話の部分にこそ注目し、血眼になって収集していた勢力がある。

 この世界の神秘を担う聖堂教会と魔術協会である。

 

 彼らは記された内容の結構な割合が神秘の秘匿のためには絶対秘匿すべき知識が多く含まれている事に予てから気付いており、科学的・物理的知識が記された方ではなく神話・伝承系の石板の収集を優先した。

 無論、収集に成功したらしたで両協会並びその内部の派閥でも毎度恒例とばかりに争いが勃発したのは言うまでもない。

 それだけ世界最古の神話を記した石板は聖遺物としても貴重であり、文字通り殺してでも奪い取る価値があったからだ。

 とは言え、完全な隠匿は両協会、特に神話学や自宗教への取り込みを狙う聖堂教会の一派からは完全な隠匿は民衆から教会への不信を煽るとして、添削した後の問題無い内容に限り写本にされ、国家の重鎮や神学者は教会の許可の下に閲覧を許されるようになる。

 これには魔術協会も習い、後に神話そのものの認知度を上げるため・両協会の資金繰りのためという理由で印刷技術の普及と共に添削済みの内容が広まる事となる。

 それでも、両協会が絶対の秘匿を誓った石板もまた存在した。

 

 それはこの世界の人理の概要、そして大まかな歴史を綴った予言の部分である。

 

 極一部は世間に漏れてしまったものの、それらの多くはあくまで神話・伝承に関するものとして認知させる事に成功していたが、明らかに当時の文明レベルでは絶対に予想できない内容が多く存在する(航空力学に基づいた航空機の開発並び発展について等)事から、人類の歴史を予言した石板の存在は囁かれ続けていた。

 この石板の内容に関しては両協会の上層部のみが閲覧を許されており、今現在もその内容は公にされていない。

 だがしかし、この予言の石板の内容に関して、関係者のみに公にされている事が一つある。

 それは人類史の歴史が記されているのは、あくまで西暦2011年までだという事だ。

 即ち、それ以降の人類の歴史は完全に分からないという事だ。

 これに危機感を抱いたのか、時計塔のとあるロードが音頭を取って人理継続保障機関フィニス・カルデアを開設する事となり、後の人理焼却・漂白において最後の砦になる事をこの時点ではまだ誰も予想していなかった。

 

 

 ……………

 

 

 気付けば、上とも下ともつかない場所で微睡んでいた。

 はて?私は古本屋のカウンターでうたた寝をしていた筈だが…?

 まぁ自分でどうにか出来る訳もなし。

 取り敢えず、事態が動くまでゆっくり待つとしようか。

 その間、頭の中で次のネタでも構想しようかねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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