徒然なる中・短編集(元おまけ集)   作:VISP

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最近流行りなので便乗。
単行本揃えたいけど車検で金がないので本誌派です。
伊黒お前ぇぇぇぇぇ!


鬼滅の刃で転生SS 鬼化転生者の話

 

 

 千年前より確認された人食い鬼達。

 不老不死であり、怪力であり、異能の力を振るい、人を食って力を増していく。

 そんな怪物達に対し、鬼狩りを主任務とする鬼殺隊は何とかそうした鬼達を討伐し、被害の拡大を防ごうとした。

 しかし、鬼は彼らの努力とは裏腹にその数と被害は増え続けるだけだった。

 そして、彼らが同胞の屍山血河と引き換えに鬼の殺し方を学び、実践するには戦国時代を待つ必要があった。

 漸く判明した鬼の殺害方法は4つ。

 日光に当てる事、日輪刀で頸を刎ねる事、そして鬼達の首領である鬼撫辻無惨の名を言わせる事。

 最近ではこれに加えて藤の花から抽出した毒を致死量になるまで投与する事も確認されている。

 だが、その他にももう一つ、鬼を殺す手段はある。

 それは人間には決してできない、と付くが。

 

 

 ……………

 

 

 「ひぃ…ひぃ……!」

 

 不死身の筈の怪物。

 その筈の鬼が息を乱し、みっともなく泣きながら逃げている。

 鬼となり、人を食らい、鬼殺隊と言われる鬼狩りを蹴散らし、最近漸く十二鬼月に昇格したばかりの鬼は、我が世の春を謳歌していた。

 だが、今のこの鬼にはそれまであった傲慢さも矜持も何もない。

 ただ、格上の捕食者から必死に逃げている被食者に過ぎなかった。  

 

 「はぁぁぁぁ!はぁぁぁぁぁぁ!」

 

 なんで、きいていない、だれか、だれかたすけて

 余りの恐怖に呼気は乱れ、必死に動かす手足は縺れそうになる。

 恐怖に満ちた心とは裏腹に、生存のために必死に思考をしながら、駆けていた森を抜けて、空けた場所に出た。

 同時、鬼の本能が直上からの危険を知らせる。

 

 「ひ!?」

 

 僅かに鬼が身を捻る方が早く、直上からの隕石の衝突染みた一撃は回避できた。

 しかし、鬼とは言えその体重は見た目通りのそれである。

 自身より上の質量が音以上の速さで地面に衝突した際の衝撃により、為す術もなく吹き飛ばされた。

 それでも即座に体勢を立て直し、再度逃走を再開しようとする辺り、流石は末席とは言え十二鬼月と言えるだろう。

 

 「げぼ!?」

 

 だが、その程度では今降りてきたモノに敵う筈も無し。

 巻き起こった粉塵の中から、何かが伸びる。

 気づけば、鬼の腹は黒い甲殻で包まれた異形の腕で貫かれていた。

 

 「あ、がががああああああ!?!」

 

 無茶苦茶に手足を動かし、血鬼術を発動させようとするも、既に体の自由は殆ど奪われていた。

 鬼の腹を貫く異形の腕から全身へ滲み出るように黒い泥状の液体が広がり、ゆっくりとその肉体を侵食していく。

 出来るのはもう僅かな身動き、思考と発声だけ。

 完全に侵食され、捕食されるのにもう一分とかからないだろう。

 

 「いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだぁぁぁぁ!!」

 

 泣き叫ぶ鬼の腹を貫く腕は一切の小動もない。

 漸う晴れた粉塵の中から現れた異形は、瞬きもしない蟲の様な複眼で獲物を見つめる。

 全身を宙に流した墨の様な甲殻に覆われ、僅かな隙間や関節も小さな鱗状の甲殻で隙間なく覆われている。

 そして、最もその形姿を異形と成さしめているのはその頭部だ。

 まるで虫の類を無理矢理人に近づけた様な異形の頭は左右と後頭部に大きく張り出した角を有し、通常の眼球ではなく大きな複眼で覆われた顔からは一切の感情を感じ取れない。

 だが、この異形極まる鬼の感情は、最初から最後まで変わらない。

 躊躇なく同胞を貫き、今体内から取り込みつつある右腕から感じ取れる感情は、たった一つだけ。

 

 

 余りにも純粋な、同胞たる鬼への憎悪と殺意

 

 

 鬼同士の共食いによる殺害。

 本来不死の筈の鬼を殺す方法の一つにして、人間には決してできない方法。

 夜闇の中、月明かりに似た輝きを持つ複眼に見つめられながら、下弦の陸と瞳に刻まれた鬼はその生を閉じ、地獄へ落ちた。

 

 

 ……………

 

 

 気付けば、自分が転生している事に気づいた。

 だが、その気づきは余りにも遅かった。

 ある夜、訳も分からず襲撃され、鬼の首領の血を入れられ、激痛の中で意識を失った。

 そのまま数年を埋められた墓の下で過ごした後、漸う起きてきた時には何もかもが消えていた。

 住み慣れた二つ目の故郷も、大事な家族も、最愛の妻子も、何もかにもが消えていた。

 鬼となったお陰で鋭敏化した五感が、僅かな残り香から此処が故郷だった村の跡地に作られた集団墓地だと教えてくれた。

 生き残りは、いなかった。

 二度目の両親、新たな故郷、不自由だが生き甲斐のある暮らし、助け合ってきた村人達、そして初めての妻子。

 全て全て、一夜にして消えてしまった、殺されてしまった。

 たった一人、否、一鬼の手によって。

 

 「          ッ!!!!」

 

 余りの激情に、言語化できない咆哮が墓地に響いた。

 それからだった。

 身を焦がす憎悪に突き動かされるまま、鬼を殺し始めたのは。

 鬼の身体能力と再生能力任せに、他の鬼を見つけ次第殺していく。

 無論、最初は返り討ちに合う事が当たり前だった。

 だが、人を食おうとする鬼と一晩中殺しあう事で時間を稼ぐ事は可能だった。

 その内、日光や鬼殺隊の持つ特殊な刀で首を刎ねる事で鬼は死ぬと分かった。

 なので、事前に武器(主に竹槍や枝槍、大きな石等)を用意し、拘束した上で朝まで殺し続けるようになった。

 そんな事をしていれば、自然と腹が空いてしまう。

 普通の鬼なら人間を食べるのだろう。

 それが本能であり、自らを強化する方法だった。

 だが、それだけは死んでも御免だった。

 あの唾棄すべき連中と心まで同じものに成り果てるのは御免だった。

 

 だから、鬼を食う事にした。

 

 人食いの怪物である鬼を食う事、それは即ちより効率的に栄養を摂取する事に繋がるのではないか?

 全ての鬼は当然ながら元人で尚且つ複数の人間を捕食してその栄養を吸収しているし、あの憎き鬼舞辻の血を多少の個体差はあれど持っている。

 手っ取り早く強くなるには鬼を食う事は実に合理的で、更には共食いする事で鬼を殺害可能だと知れた。

 そこから先は早かった。

 血鬼術に目覚め、身体能力と再生能力が向上し、身体をより戦闘に向けたものへと作り変えていく。

 なお、血鬼術は自分自身の体を改造するもので、主に体の筋肉の配置を変える事だ。

 つまり、腕の筋肉を足に移動して脚力UPとかそんな感じだ。

 全てを満遍なく強化は出来ない辺り、実に使い勝手が悪いが、最初なんだからそんなもんだろと諦めておく。

 

 そうして鬼を食い殺す日々を続けていく内、鬼殺隊とやらに捕捉され、戦闘になる事が増えた。

 無論、自分から人間に手を出す事はしないが、向こうはこちらのやり方生き方に拘る事なく、鬼だと分かった瞬間に攻撃してくる。

 幸いと言うべきか、自分が逃げに徹すれば直ぐに撒ける程度の腕前だったため、今まで殺してしまうような事は発生していない。

 当時、自分は人の噂話を元に鬼の出現場所を予想し、そこに駆け付ける形を取っていた。

 これに対し、鬼殺隊は隠と言われる支援部隊による人海戦術と鎹烏を用いた索敵、更に各地にある協力者である藤の家紋の屋敷への通報を合わせ、個人に比べ圧倒的な情報収集能力を持つ。

 組織の強さを十全に活かす鬼殺隊が自分よりも遥かに早く鬼の出現予想地点へと到着するのは当然の事だった。

 だがまぁ、戦国時代が終わり、近代化が始まったこの時代では、隊士の質は低下の一途を辿っているらしく。

 残念ながら先に到着しても鬼に返り討ちに合う事も多かった。

 ある時、隊士の死体を傷つけないように戦闘して鬼を食い殺した後、隊士の持っていた刀を回収する事にした。

 彼らの持つ刀、日輪刀という鬼を殺せる刀を回収する。

 数は3本で、全て折れてしまっているが、問題はない。

 何でもこの刀は日光を浴び続けた特殊な鉄や鉱石で作成するのだとか。

 つまり、日光そのものには劣るが、その性質を引き継いだ物質であり、何よりも日光を浴びると透過させずに吸収する可能性が高い物質でもあるのだ。

 これを自身の体に応用すれば、今までよりも簡単かつ迅速に鬼を殺害可能になるし、何なら日光への耐性を獲得できるかもしれない。

 バリバリと日輪刀をよく噛んで食べる。

 胃壁が裂けたり、焼け爛れているが、吸収する方法なんてこれしか知らないから仕方ない。

 それからは鬼を探し出して食らう事に加え、時折遭遇する鬼殺隊から日輪刀を略奪・強奪・窃盗する日々が続いた。

 鬼を食らう度、日輪刀を食らう度、戦いを重ねる度、自分自身が強くなっていく事を実感する。

 そんな時だった、鬼に協力する人間と出会ったのは。

 とある宿場町、そこは人好きのする仮面を被った人間達が旅人を生贄にする事で鬼に襲われる事なく暮らし、剰え他の鬼や夜盗等の外敵から庇護されている鬼に味方する町だった。

 まぁそんな連中もいるよね、と人間の汚さをよくよく知る元平成生まれの捻くれ者はその宿場町の人間を生かしておいても似た様な事をするだろうと判断し、皆殺しにした。

 何か大事な一線を越えたと明確に分かった。

 だが、あんな醜悪な連中、生きているべきではないと思ってしまった。

 思い出の中の妻子や家族、故郷の村人達が死んで、何故こんな連中がのうのうと生きている?

 

 「鬼は殺す。鬼に与する者も殺す。皆殺しだ。」

 

 そう口にして、己自身もまた心身ともに悪鬼になっているのだと、漸く気づいた。

 鬼になってから10年、鬼とそれに与する人間を殺して回り、時折鬼殺隊と戦闘になっては日輪刀を貰っていく日々。

 その頃には時折目に漢数字や上下の文字が書かれた鬼と遭遇する事が増えた。

 下と書かれた鬼は多少梃子摺るが問題なく捕食したが、上と書かれた鬼には危うく殺されそうになった。

 恐らく、四天王とか十二神将とかそんな感じの、鬼の中でも別格の連中なのだろう。

 下の鬼はとても良い栄養にさせてもらっているが、上の連中相手にはまだまだ敵わない。

 精々が命辛々撤退するだけで、今はまだ勝てない。

 だが、向こうもこちらも鬼、寿命や外傷で死ぬことはない。

 この偽りの命尽きるまで、延々と戦い続ける。

 絶対に絶対に鬼は殺す。

 

 鬼になってから20年、漸く自身の血鬼術が完成した。

 

 自分自身の体を自在に改造する「自己改造」。

 触れただけで他の生物を食らう「融合捕食」。

 食らったものと同じ性質へと体を変化させる「変身」。

 食らった鬼の血鬼術を行使可能になる「略奪鬼」。

 これらを併用する事で、上の字を持つ上弦の鬼に匹敵する戦闘能力を持つに至った。

 だが、これだけでは余りにも足りない。

 奴を、鬼舞辻無惨を殺すには、この程度では到底足りない。

 下弦の鬼を始め、多くの鬼を食らい殺す。

 上弦の鬼や鬼殺隊の柱と戦い、戦闘経験を蓄積していく。

 

 鬼になってから30年、漸く日輪刀の性質を獲得するに至った。

 

 体表は日輪刀、即ち猩々緋砂鉄と猩々緋鉱石と同じ性質を持つ甲殻で覆われている。

 これにより日輪刀と同じく近接攻撃で首を刎ねれば鬼を殺せるし、日光は甲殻の部分で吸収する事で内部には届かなくなった。

 目は圧倒的身体能力を持つ上弦の鬼達に対抗するために複眼を形成し、更に虫の様な小さな耳と共に全身各所に死角が発生しないように設置されている。

 更に全身の甲殻の内側には無数の生体式誘導弾頭(ミサイル)や眼球にも似た生体式光線発信器(レーザー)等を内蔵し、甲殻を展開する事で使用できる。

 また、モノコック構造、つまり昆虫や甲殻類等の外骨格形式を採用しており、内部に骨が無い事から各関節は人間とは逆に動いたり、回転させる事も出来る。

 遠距離攻撃は主に生体ミサイルとレーザーで、近接攻撃は日輪刀と同じ効果かつ融合捕食で対処する。

 他にも適宜状況に応じて今まで食べた生物の器官や鬼の血鬼術等を使用する事であらゆる状況に対応可能になっている。

 なお、全身の神経網が全て神経節で構成され、更に首を刎ねられそうになると内部の肉が脳髄に変化する事で首を刎ねられていなかった事にする事も出来るため、通常の手段で殺す事は不可能になった。

 殺すなら、動きを封じた上で全身をミンチになるまで日輪刀で刻むか、或いは甲殻を破壊した上で日光に晒すか、共食いをする事のどれかだ。

 これにより、上弦の鬼達よりも死に辛い体を手に入れた上、条件付きとは言え日光を克服するに至ったのだ。

 戦闘・活動における時間制限が殆どなくなったのは極めて重要だ。

 最近では偵察・情報収集時は犬猫や鳥に化けたり、航空機に似た姿となって高高度を飛翔する事も多くなり、自身の化け物ぶりを改めて再認識する事となった。

 更に分身系血鬼術を駆使し、各地に分身体を設置して情報収集も併せて行っていく。

 これらの分身体は全て本体でもあり、たとえ今現在司令塔となっている個体が死亡しても、全ての個体を殺さねば死ぬ事はない。

 欠点は脳内会話が愉快な掲示板状態になる事だが……懐かしき平成の時代を思い出すから良しとしておこう。

 そんな頃に逃れ者と言われる鬼に出会う。

 珠代とその従者たる愈史郎。

 当初は鬼だったので捕食しようとしたのだが、その余りの血の匂いの薄さを疑問に思い尋ねると……余りの境遇に取り止めた。

 彼女らには今後とも頑張って研究をしてもらいたい。

 成程、鬼を人に戻す……大抵の鬼は近しい者を真っ先に食らうので、正気の人間に戻っても発狂ものだとは思うが、鬼舞辻にとっても猛毒となるのなら無粋な事は言うまい。

 

 鬼になってから50年。

 無数の鬼を、多くの下弦の鬼と一部の上弦の鬼を食らっても、まだ鬼舞辻には届かない。

 

 

 ……………

 

 

 「鬼は殺す。鬼に与する者は殺す。皆殺しだ。」

 

 

 その鬼と出会った時、珠代は死を覚悟した。

 「共食い」、そう呼ばれる鬼の存在は知っていた。

 憎き無惨から名を与えられる事もなく、只管に同類たる鬼を食らい続け、遂には鬼関係で共食いと言ったらこの鬼の事を指すようになった、珠代自身とはまた違った特異個体。

 邂逅直後、愈史郎共々捕食されかけたが、幸いにも説得に成功し、協力関係を得る事が出来た。

 あのまま共食いが疑問を抱かずに捕食を続行していたら、恐らく自分も愈史郎も殺されていたと思うと、四百年を生きた珠代にしても流石に背筋に寒いものが走る。

 

 「私は、鬼を人に戻す方法を研究しています。」

 「……困難だぞ。」

 「全て承知の上です。それにその方法が分かれば、鬼舞辻無惨を殺せるかもしれません。」

 

 鬼を人に戻すとは即ち、強力な鬼を無力な人にするという事。

 如何に限りなく不死に近い鬼の首領とも言えど、その力を失っては為す術もないだろう。

 

 「そういう事なら協力しよう。採血を頼む。」

 「ありがとうございます。必ず役立たせてみせます。」

 

 以来、彼からは割と頻繁に彼の血液と強力な鬼の血液を提供していただいています。

 

 

 

 

 

 

 




肉体=大体アプトム
精神=子鬼殺し級の殺意
知識=平成・令和生まれのオタ

結果、鬼や他の生物の力を良い所取りしたり、腕を銃火器にしたり、果ては車や航空機に変身する捕食生物の完成

なお、転生特典は「自己改造EX」。
普通に暮らす分には一切役に立たない。
辛うじてスポーツ選手なら生かせるが、基本インドア派で村では主に鍛冶師(物作りなら大抵いける)だったので意味なし。
鬼にならなければ完全に死にスキルでした。



長らく執筆を休んでいまして申し訳ありませんでした。
ちょっとテラテックとFGOのイベントで忙しくて時間が取れなかったんですごめんなさい。
なお、ガンオンはアカウント(データ5年分)がクラックされてもう二度と使用できないかも…(白目)
年内の投稿はこれで最後です。
来年はもうちょい頻繁にしたいと思いますが、冬休み期間中はサービス業なので無理ですごめんなさい。
では皆さん、良い年末と年始をお過ごしくださいますように。

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