ゼロの使い魔で転生記   作:鴉鷺

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第二十八話 閑話

レイジ一行のオーク退治も何事もなく済み、

 

季節は移りそろそろ冬の冷え込みも越え、

 

暖かさと春が顔を出してきたであろう季節。

 

レイジの家、つまりはフォン・ザクセス家の邸宅で来月の末に迫っている

 

レイジの10歳の誕生日会

 

(レイジとしては、もうそんなことしなくていいと言いつ続けている)が始まろう頃。

 

またも親の都合に振り回される子がフォン・ザクセス家に居候に来ていた。

 

「ちゃお!! レイジ、フィー、フィル。元気してた?」

 

馬車から降り最初に言う言葉かそれかと、レイジは思う。

 

「こっちは三人とも元気だったよ。レイジなんて元気過ぎておかしくなってたよ」

 

キュルケの挨拶に修行バカをおちょくりつつ返答する。

 

「おい、オレを変な奴に勝手にしてんじゃねぇ」

 

「キュルケは元気してたの?」

 

レイジの言は知らずとばかりにフィーもキュルケ質問を返す。

 

「私は勿論元気よ。トライアングルにもなったしね。」

 

キュルケも特に変わりはないようである。

 

「そう言えば、トライアングルになったのか」

 

どこか、なぜか悔しさをにじませそんなことを言い出すレイジを見て、

 

「気にしないでくれ、レイジは全然、スクエアになれないから落ち込んでるのさ。

 モチベーションがどうとか言ってるよ、最近は」

 

「けど、火もトライアングルになったよね」

 

レイジは火こそランクが上がったが、

 

得意である風がいまだにトライアングルのままであることを嘆く、

 

「まったくだ。これで全系統トライアングルだがオレは風がスクエアになったほうがよかったね」

 

「高望み、とは言えないのがレイジの怖いとこね」

 

若干引き気味にレイジをほめる(?)キュルケ。

 

こいつはどこを、何を目指しているのか皆目見当がつかない。といった具合に。

 

そこで、気を取り直しレイジは、

 

「まぁいいや。キュルケも家でゆっくり知ってくれ。勝手知ったるなんとやらだろ?」

 

「そうさせてもらうわ。積もる話はあるかもしれないから」

 

その言葉にうなづきつつオレは修行にもどると、言い残しレイジは裏庭へと消えていく。

 

「いつもああなの?」

 

その姿が消えた時にキュルケが疑問を口にする。

 

「あとは、修行のことかな?」

 

「それなら、レイちゃんは基本毎日飽きずにやってるよね」

 

さもこれのどこがおかしいのかと二人は息を合わせる。

 

「こんな修行する子供なんて私の知っている中でもレイジだけよ」

 

「へぇ~」「そうなんだぁ」

 

「もうレイジって普通のメイジじゃ勝てないでしょ?」

 

「そうだね。たぶん無理なんじゃないかな。試したことないだろうけど」

 

「レイちゃんすごいもんね。お父さんももう勝てなくなってるから」

 

もう何も言うまい。そんなふうにキュルケは額に手を当て首を振る。

 

そこで、微かにがぶつかる音がする。

 

「この音って」

 

まさかね。そう思いつつも可能性を否定できない。

 

「あ~、レイジがサンドバッグ相手にしてる音だね」

 

それを聞き、盛大に溜息をつくだけだった。

 

 

 

 

「第一回!! 緊急レイジについての座談会!! 開催!! はい、拍手」

 

パチパチと三人分の拍手が虚しく部屋に響く、正午を過ぎて幾ばくか。

 

「というわけで、レイちゃんについて話します」

 

「特に、することとかないからね」

 

ちょっと笑い気味にフィルが承諾の意を示す。

 

「まぁ、いいわ。レイジについては面白い話が数多ありそうだから」

 

こちらキュルケも不満はない。

 

そして妙にテンションが高い

 

「じゃあ、レイちゃんのこと好きなんだけど、ここがダメ!!」

 

フィーのテンションがうなぎ登り。レイジが一番好きであろう人である。

 

「じゃわたしから。レイちゃんは修行修行で全然遊んでくれないとこ」

 

「そうだね。もろ手を挙げてフィーに賛成かな」

 

「これはレイジが好きって前提の上にあるの?」

 

「え? それは勿論。キュルケも好きでしょ?」

 

「まぁ好きか嫌いかで言えば好きよ」

 

「ならいいじゃないか」

 

「まぁ、そうね」

 

キュルケは釈然としないままに議論。レイジの駄目だし作業に加わっていく。

 

途中から、羊皮紙に列挙し始める。

 

実はなかなかレイジへの駄目だしの量は多いようである。

 

終盤に近付くにつれ議題はレイジ賞賛に変わって行った。

 

そして、キュルケ曰くレイジはモテるらしいことが分かった。

 

キュルケ的には茶々を入れたかったのだが、フィーもやっぱり?とちょっと喜んでいた。

 

レイジが認められる、好かれることが自分のように思うのだろう。

 

そこでキュルケも感づく、「この子は純粋だ」と。

 

それもそのはず、フィーはレイジもしくは父が必要だと思ったことしか教えられてない。

 

世間には疎くはないがどこかしら知らないことがある。

 

それはフィーの年齢を加味しての知識であるから仕方ないだろう。

 

レイジは例外的に“それら”の事情は知っている。

 

 

 

 

 

議論も終わるころ、黄昏の空になったころにレイジが部屋に修行を銘打った鍛錬を終え、

 

女子会に加わる。そこで再び思う。

 

やっぱ、男友達が欲しいと。原作に主人公と仲良い奴いたような。

 

そう確かギーシュだっけか。

 

おぼろげな記憶を掘り起し、そう若干黙考する。そこに羊皮紙が一枚手渡される。

 

「これは?」

 

疑問に思いつつも受け取る。

 

「それ、できれば全部直してね」

 

三人に笑顔で言われた。そこにはレイジにとって絶句する文字の列挙だった。


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