ゼロの使い魔で転生記   作:鴉鷺

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第十四話 『錬金』

ヴァリエール公爵家で一晩過ごし、もう用はないので朝、帰路につく。

 

「お世話になりました」

 

そう言いオレたちは頭を下げる。

 

「いや、昨日はいいものが見れたからこちらもよかった」

 

オレは良くないが。

 

「では、トリステインの討伐隊はそちらにお任せいたします」

 

「うむ」

 

そういい会釈をして馬車に乗り込む。

 

馬進み、景色は流れて、けつ痛し。

 

馬車はしりが痛くなるから嫌である。自動車が恋しい。せめて、自転車、自転車かぁ。

 

そう思いつつ車窓を流れる景色を見つめる。

 

「レイジどうしたのよ」

 

そんなたそがれているオレにキュルケが声をかける。

 

馬車の移動は暇なのである。携帯ゲーム機とかないから。

 

「いや、景色を見てるのさ。あと尻が痛い」

 

いかんな、今日はどうも前世を思い出す。疲れのせいだろうか。

 

サスペンションが恋しい。

 

「景色なんて見ててもつまらないじゃない。お尻が痛いことには同感ね」

 

つーか、もっといいシートにしようか……。

 

ソファーみたいなの、……いい案だな。

 

「まぁ暇すぎるのは否めんな」

 

あと家までどれくらいかかることやら…。暇である。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「わたしは帰ってきた!!」

 

そう叫び、両手を広げる。

 

「……どうしたのよ急に」

 

ツッコムか否かの逡巡をし突っ込むことに決めたキュルケが声をかけてくる。

 

「いや、言いたかっただけ。馬車の中は陰鬱すぎたから」

 

「まぁそうだけど」

 

「そんなこたぁどうでもいいんだよ。まだ昼だ! オレは修行を開始する!」

 

そう意気込み、いつもの場所に行こうとすると。

 

「ユリア、レイジ、帰ったか」

 

父が登場した。

 

「ええ、協力してくれるそうよ」

 

「ああ、知っている。梟便が来たからね。

 ところで、レイジお前も討伐隊に加えるからな」

 

「え゛? なぜですか?」

 

「ヴァリエール公爵との決闘、

 もといお前をこの討伐隊に加えるかどうかの試験結果だ」

 

「ちょっと待って下さい。それじゃあの決闘は」

 

「そうとも、無理を承知で手紙に書いてみたのだ。したらば、公爵も乗り気だったというわけだ」

 

「……なにも他国の公爵様に頼むことじゃないでしょう」

 

「お前は、常に力量を隠しているじゃないか。

 だから、閣下からの文もあることだしお前は本気を出してくれると思ったが……。

 まぁいい、公爵のお墨付きも貰ったことだ。

 これを期に領民を守るという、貴族の仕事の手伝いをしてみるのもいいだろう。

 お前は貴族でありトライアングルなんだ」

 

「はぁ…。分かりました。謹んでその命、承りました」

 

ため息を一つ吐き承諾の意を表す。

 

「よし、討伐は複数に分かれてアルデルの森を包囲するような形で行う。

 お前は私の指揮下のもと編成する。といっても三人ひと組だ。気負うなよ」

 

そういいオレの肩を叩く。

 

「それで、いつ頃開始なんですか?そのアルデルの森での魔物討伐は」

 

「そうだな。時期を合わせるとのことだから。

 まぁ一月後くらいか。兵糧などの準備もあるしな」

 

「そうですか。では」

 

父の言葉を聞き終え、オレは定位置にむかう。

 

そこに、屋敷からフィーが出てくる。

 

「レイちゃん!」

 

「おぉ、フィー。元気してたか?」

 

「うん!」

 

元気がいいのは何よりだ。そう思いフィーの頭をなでる。

 

「オレはこれから魔法の練習するけどフィーはどうする?」

 

「わたしもやる!」

 

「私もやるわ」

 

そこでキュルケも参加の意を表する。

 

「よし、じゃあ何から練習しようか」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

『錬金』、という魔法は便利である。

 

いや何がすごいって物体の構造を書き換えることができるわけであり、

 

様々な形に変形も可能ということである。結局何が言いたいかというと…。

 

「ここにサドルをさして…、『錬金』」

 

『錬金』っていうか連結、溶接である。

 

「できたあああああああ!!」

 

ヴァリエール家へのチョーわくわくした旅時から二週間。

 

着々討伐隊の編成難度の準備ができているようで、

 

あわただしさが増してきたある日の昼下がり、オレは歓喜の声を上げた。

 

「レイちゃんどうしたの?」

 

そこに不思議そうな顔をしたフィーが声をかけてきた。

 

「いやー、自転車初号機ができたんだよ!」

 

いつもは自称クールキャラであるオレは興奮気味に作品を発表する。

 

何せイメージだけで一から作り上げたものだから、喜びもひとしおである。

 

「それって、前に行ってたやつ?」

 

「そうともさ、これで気軽にサイクリングってもんだ!」

 

「レイジ、完成したの?」

 

そこに離れていたキュルケも会話に加わる。

 

「よし、早速乗ってみるか」

 

そう言いオレはハンドルを握りサドルをまた議決を下ろしペダルを踏みしめ、

 

こぐ、こぐ、が重い。非常に重い。そこで気付く。

 

「はっ! 鉄なのがいけなかった!!」

 

『錬金』で鉄製のフォルムであるからに軽いわけがない。

 

車輪も別にゴムじゃないことにここで気付く。ホイールだけである。

 

「オレとしたことが……しくった!!」

 

雄叫びを上げ、『錬金』を唱える。

 

「アルミになれぇえええ!!Alぅぅぅぅぅぅ!!」

 

心の底から楽したいと思いながら。

 

怪訝そうにこちらを見るフィーとキュルケを無視しながら。

 

すると、自身に変化が起きることを感じ取る。

 

この感じ!?

 

そこで自転車コ通称チャリンがしばし発光。自転車を持つ、

 

「おお!軽くなってる。これは成功か?

 しかも、多分にしてトライアングルになったな」

 

流石『錬金』万能である。

 

オレの強い願いがオレとまた一段強くさせたらしい。

 

若干、いやかなり残念な原因で、トライアングルになったろうオレは、

 

「クリエイトゴーレム」

 

ゴーレムを最大出力でつくった。

 

するとやはり、前までとは違い最高5メイルほどだったゴーレムが、

 

今ではゆうに10メイルはあるだろう。巨大なり現れた。

 

「レイジ…これ」

 

「ああ、どうやら今のでランクアップしたらしい」

 

「何よそれ……私はまだトライアングルになれてないって言うのに」

 

「レイちゃんすごーい!」

 

それぞれの感想を聞きながしつつ、ゴーレムを自壊させ土に戻す。

 

あとは。

 

「『錬金』」

 

もう一度『錬金』の呪文を唱え、

 

「ゴムをつくって装着完了!!」

 

『固定化』をかけ、これで完成。先ほどと同じようにまたがりペダルを踏みしめ、

 

こぐ先ほどとは比べ物にならないくらいこぎやすくなっていた。

 

これはいいものができたな!!

 

そういえばこの世界に天然ゴムとかあるんだろうか。

 

自転車は馬よりゃ遅いがなかなか快適だ。

 

もっと試行錯誤が必要だが……。初号機はこんなもんだ。

 

売りに出すか?これは平民に売れるんじゃなかろうか。

 

が、たしか何歳までだっか……に乗らないと平衡感覚がどうとかって聞いたことが。

 

まぁ魔法と違い、やればできることは確かなんだ。

 

気を長く持とうじゃないか。

 

風と受けつつそんなことを考えていた。




今回は深く考えない回です。魔法はアバウト。

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