ゼロの使い魔で転生記   作:鴉鷺

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第九話 街

オーク討伐という一大イベント―前世でいう9月ごろ―から

 

早数ヶ月そろそろ新年を迎えるだろうか。

 

いや基準がどこにあるかは知らないが、どうしても元旦なるものを意識してしまう。

 

20年間そのような環境で生きてきたから慣れはなかなか抜けないものである。

 

そんな冬のある日。自身の領の街、正確には父の領の街であるが。

 

今日はそこ―コメス―にフィーの申し出を受け出かけるのである。

 

勿論侍女付きである。イリスとフィーの侍女クララである。

 

二人とも武術を習っているんだとか、なので子供のおもりもできるというわけだ。

 

オレはおこずかいとして持たされた、

 

1エキューとフィーのおこずかい1エキューを袋に入れ、

 

腰にしっかりと短剣を交差し固定し、杖を腰に差す。

 

マントをつけて完了。

 

フィーは厚手の白いワンピースと帽子にマント姿である。杖は太ももにある。

 

「よし、行くか」

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

街に向けて馬車で20分ほどで着く交易の街コメス。

 

一応は諸国との貿易をしているので、

 

トリステイン方面からの商人がツェルプストー領を通り、

 

ここを経由するかたちで帝都などに行く。

 

「フィー、今日は街で何をするんだ?」

 

オレもついでに買いたいものを買うか。

 

「今日はね、お洋服を買いに」

 

なるほど、女の子らしい用事だ事だ。

 

「なるほど、なら洋服を見た後にでも昼食にするか……」

 

そういい窓の外を見る。窓には森―アルデンの森―が映っていた。

 

あそこはの深部は魔物怪物が跋扈しているそうだ。

 

ちょっと興味がある。

 

もっと魔法武術の腕を上げた後にでも行ってみるのも一興だな。

 

そう思い口元がつり上がる。

 

「あ、レイちゃんわるい顔してる」

 

「え?い、いや、べつに悪い顔か?」

 

「うん、なにか面白いモノ見つけた時の顔してる」

 

フィーには分かるらしい。

 

「まぁ、面白いかはともかく、興味がわいたことなら見つかったよ」

 

「どんなの、どんなの」

 

「まだフィーには早いさ」

 

フィーの魔法の技量はつい先日風と水がラインになったばかりである。

 

オレもオークを倒してから武術の修行をしつつも、

 

魔法を修行して二月ほど前に風がトライアングルになったばかりである。

 

まだ親には言って無いが…。

 

「むぅー。レイちゃんの意地悪」

 

むくれるフィーを横目で見つつ苦笑いする。

 

「ま、許してくれ、デザート買ってあげるから」

 

「ほんと!?」

 

デザート進呈で機嫌が右肩上がりに直る。

 

これくらい安いもんである。なにドニエぐらいだろうか。

 

 

 

街に着き大きな貴人用の店に入りフィーのお眼鏡にかなう服を探す。

 

フィーは時折オレに感想を服を着て聞きに来る。全てにあっている。

 

フィーに似合わないものなどほぼ皆無ではないだろうか。

 

と真面目にアホなことを考えていると。

 

「レイちゃん。買ったよ」

 

どうやら買い物が終わったらしい。

 

「よし、なら今日は何が食べたい?」

 

昼食何にするか。

 

「極楽鳥の蒸し焼きがいい」

 

久しぶりに極楽鳥かあれはおいしい。鶏的な感じである。

 

「いいね。よし、それがある店に行くか」

 

そこで、ふと振り返る。

 

そこは、横幅3メイルほどの通路に雑踏が広がっているだけ、

 

であるが、脇道が何本もある。街の光と影の境界線。

 

その脇道の1本を睨む。時間にしてわずか一秒。

 

首の方向をもとに戻し、極楽鳥が料理として出されるだろう店を探す。

 

あそこは何かある…。そう感じながら。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

腹ごしらえを終え午後、オレはアクセサリーショップ…、

 

とりわけ魔法関係の店に足を運んだ。

 

理由としてはマジックアイテムの考察である。

 

家の書庫での知識だけでは物足りなくなる。

 

それともう一つが、そう思いつつ一軒の店を訪ねる。

 

「ここに指輪、もしくは腕輪ありますかね?マジックアイテムの」

 

「へい、いらっしゃいませ。

 貴族の坊ちゃま。指輪腕輪はありますが、

 マジックアイテムとなるとさすがにうちでは扱ってやせんねぇ。はい」

 

壮年のひげ親父が出てきた。マジックアイテムは貴重だからまぁしょうがない。

 

「そうか、魔法にゆかりのある指輪か腕輪はあるかな?」

 

「それなら、ありまさぁ。

 貴族のかたから買い取った商品でして、何かしらあるとは思いまさぁ。

 その方は地面に埋まっていたとか何とか」

 

地面に埋めっていた…。

 

オレが言えたことじゃないが何してたんだ?地面の中を探し物か?

 

いや、ただ単に落し物を探してたら偶然…みたいな感じだろう。

 

オレみたい発掘目的では、やらんだろう。

 

「そうか、みせてくれ」

 

親父は一度カウンターの奥に引っ込みもどってきた指輪である。

 

それを見せてもらい、

 

ディレクトマジックをかけると『固定化』の呪文が掛けられていた。

 

それも強力な、あの短剣の『固定化』に比肩しうるほどの。

 

これは…。

 

「これはいくらだ?」

 

「金貨50枚新金貨で150枚でさぁ」

 

50エキューだと?高いのかどうなのか…。

 

いや装飾品としての価値はない。シンプルすぎる何も細工のない指輪だ。

 

よほどの物好き出ない限りこんなの買わない。

 

だから、見つけた貴族も売り払ったんだろう。

 

そう考察していると考察している、沈黙を何やら勘違いしたのか。

 

「40でいかがでどうでしょうか……」

 

値切りがなぜかできた。

 

「いいだろう。40だ」

 

そう言いオレは親父に貰ったこずかい以外に持ってきた今までためていた、

 

こずかいの約6割を使い指輪を買った。

 

店を出るときこれが何か楽しみで、細く笑んだ。

 

今日はこれで終わり、

 

そう思い店先で待たせたフィーとクララと共に街を後にする。

 

帰りの馬車の中でまたフィーに「レイちゃん、また悪い顔してる」

 

と言われたのはまた別の話。


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