ユクモ村の狩人録   作:箱の中の世界

22 / 25
どうも皆さん、箱です。
今回も楽しんでくれたら嬉しいです。
サブタイトルが少し腑に落ちないのでもしかしたら変更するかもですが……
それでは……どうぞ!


戦線離脱

 

シマはイーシャを拾い上げると、イーシャを脇に抱えそのエリアから逃げ出そうと駆け出す。

しかし、ジンオウガもただでは逃げさせないと、無防備なシマの背中にその巨体を生かしたタックルを繰り出した。

 

「クッ……」

 

背中に受けた衝撃で跳ね飛ばはれたシマだったが、幸い怪我は大きくないようであった。

だが、背中に受けたことにより肺の中の空気が抜けてしまった様な感覚に陥っていた。

 

「ハァ……ハァ……」

 

明らかに酸素が足りなかった。今のシマは肩を上下にさせながら呼吸している。

視線を抱えているイーシャに向ける。

ジンオウガの爪によりオトモ防具は引き裂かれているが、イーシャにはまだ息があった。傷が深いのか未だに目が覚める兆しはない。

だが、シマにとってイーシャが生きていることが励みとなった。

 

シマは立ち上がるとアイテムポーチを漁り閃光玉を取り出すと、自分の顔を腕で覆いながら()()()()()に叩きつけた。

地面に叩きつけられた閃光玉は眩い閃光を放ち、ジンオウガたちの視界を奪う。

シマはその閃光が消える前にアイテムポーチからモドリ玉を取り出し先程と同じように地面にぶつけた。

そして、ジンオウガたちの視界が戻ってくる頃にはシマとイーシャの姿はそのエリアになかった。

 

…………

…………

 

「……これは一度村に帰るしかないかな」

 

現状を考えるとそれが妥当なのかもしれない、シマはそう思ったのだ。

それにイーシャの事も心配であった。いつ状態が悪化するかも解らない状況なのである。

 

「ふぅ……」

 

シマは荷物をまとめると、渓流に来る際に乗ってきたガーグァ荷車に荷物を乗せ自分はガーグァに跨がり村に向かっていった。

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

「……すみません。この依頼を達成出来ませんでした。明日、準備を整え再び向かうことにします」

「そうですか……分かりましたわ。それとイーシャさんは治療をしておりますので安心してください」

「はい。ありがとうございます」

 

村長に依頼中に起きた出来事を事細かく説明し、全てを話終えたシマは気を落ち着かせるために浴場に向かっていった。

 

◇◆◇◆

 

「はぁ……」

 

シマは湯槽に浸かりながら今後について考えていた。

 

イーシャが治療を受けている以上、ジンオウガを狩猟するのは自分しかいない。

しかし、一人ではあの二匹の狩猟は厳しいだろう。

 

「困ったな……」

 

そんなとき……

 

 

 

「あれ? もしかしてシマさんですか?」

 

 

声のした方を向くとそこにはトールが立っていた。

きっと温泉に入りにきたのだろう。

 

「ん? あぁ、トールくんかい。実はオトモのイーシャが狩りの際に怪我を負ってしまってね……今は治療中なんだよ。流石に一人ではあの二匹を相手するには心細いかなぁ…なんて思っちゃってね」

 

まあ、自分が悪い点もあるけどね……そう付けたそうと思ったがシマは口を閉じた。

そうシマが黙っているトールが口を開いた。

 

「なら手伝いましょうか?」

 

 

「いや……トールくんに迷惑をかけるんじゃ……」

「大丈夫ですよ。困っていたら助け合わないと。人はそうやってモンスターを退けてきたんですから」

 

トールはそう言った後、苦笑しながら小声で父さんの受け売りですけどね、と呟いた。

 

 

「ふぅ……ありがとう、トールくん。じゃあ、手伝いお願いするよ」

「はい、わかりました」

「それじゃあ明日の朝、渓流に向かうことにするが大丈夫かい?」

「大丈夫ですよ。それと……狩猟対象は二体なんですか?」

「あぁ、そう言えば説明してなかったね。相手はジンオウガだよ。しかも二体だ。大丈夫かい?」

「はい! それでは明日はお願いします」

 

 

◇◆◇◆

 

シマが部屋に帰ると、治療を終えたであろうイーシャがベッドの上で眠っていた。

その様子を見たシマは安堵からか笑みがこぼれた。

 

「今日はゆっくり休むといいよ。明日はトールくんとあの二匹にリベンジしてくるからさ」

 

そう言ってシマは眠っているイーシャの頭を撫でた。

頭を撫でられた感覚で目が覚めたのかイーシャがシマを見つめてきた。

 

「ごめんよ、起こしちゃったかな」

「……別に気にしてないニャ。明日はしっかりと倒してくるニャよ」

「あぁ、わかってるよ」

「それでいいのニャ。それとその依頼が終わったらマタタビを要求するニャ」

「……まったく怪我しててもイーシャはイーシャだな」

「……どういう意味ニャ?」

 

ジト目でこちらを睨んでくるイーシャを見てシマはつい吹き出してしまった。

 

「ニャ!? ニャんで笑うニャ!!」

「ははッ、悪い悪い。明日はしっかり頑張ってくるよ。それと明日は早いしもう寝るとするよ。お休み」

 

シマは目を閉じると眠りについていった。

 

「ニャんか露骨に話を逸らされた気がするニャ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――そして、夜が明けた。




……引き延ばしますねぇ
いいえ、違います。こういう予定だったんです。
次回はシマトールでの狩りです。
お楽しみに!!

それとアンケートの方もまだ行っておりますのでどんどん投票してください!
それではまた次回あいましょう。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。