ユクモ村の狩人録   作:箱の中の世界

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どうもかなりお久し振りですね。箱です。
最近は専門学校の試験練習等で忙しく執筆に割く時間を見つけることが出来なくてこんなに間が空いてしまいました。
さて、今回の狩人の里帰り編が狩人の里帰り編の最終回になります。次回からついにユクモ村でのストーリーになります。今回の話はストーリーの中ではかなり重要な回になります(後半から)
さて、前書きでの語りはこれ程にしておいて本編どうぞ!


狩人の里帰り【嵐の密林で】

 

まだ誰も起きていないであろう時間帯――ユクモ村のハンター・トールは真夜中のポッケ村を一人で散歩していた。

店主も寝ているであろう武具屋の前を通りかかるとトールは足を止め、

 

「……眠れないなぁ」

 

そう呟き、再び歩き始める。

そんなとき、集会所に入っていく一つの影が目に入った。

 

「こんな時間に誰が?」

 

トールは自身の好奇心に動かされ集会所に向かうのだった。

 

◇◆◇◆

 

トールは集会所の入口の影に身を隠しながら中にいる人物を確認した。

 

(装備からするとハンターのようだけど……)

 

中を確認すると、そこには集会所の長椅子をベットのようにして寝ている様子のハンターらしき人物がいた。

トールはその人物が気になったが何せ今は真夜中である。多少目が闇に慣れているにせよ明かりの点いていない集会所の中は見にくいものである。

 

(知らない人の寝顔を見るのはいい気がしないけどここは行くしかないよな)

 

トールが集会所の中に足を踏み入れた瞬間、

 

「誰だ!」

( !? )

 

眠っていたハンターらしき人物はトールの気配を察知したのか体を起こすと、投げナイフをトールの顔近く目掛けて投擲してきた。

とっさに体を反らしたトールに投げナイフが刺さることはなかったが、代わりにトールの近くの柱に投げナイフは刺さっていた。

トールがナイフを投げた人物の方を向くとその人物はトールの前に立っていた。

 

「お主、何者だ。こんな夜更けに何をしている」

 

集会所で眠っていたハンターの正体は、女性であった。

そのハンターは未だにトールに警戒の目を向けている。

 

「実は眠れなくて散歩をしている時に集会所に入っていく人影が見えたので確認しようと……」

「ふむ。それでここに来たのか……」

「……はい」

 

女性ハンターはしばらくトールの顔を見つめ、何かを思い付いたように口を開いた。

 

「やはり君はオルドに似ているな。いや、失礼。昔のメンバーの事を思い出してしまってな。今は確かユクモ村という村で教官をやっていると聞いたが……」

「あの……」

「む?どうした?」

「実は……オルドは俺のお父さんです」

 

トールがそう言うと女性ハンターは驚愕の表情を見せ、村に響く程の大声で叫びをあげた。

 

「ええぇぇぇッ!?」

 

≡≡≡≡≡≡

 

あれから数時間ほど経ち、夜は明け村には日が登っていた。

そしてトールは自分の父親――オルドに会いたいと言う女性ハンター――ソラウを家に連れてきていた。

 

「いやぁ……まさかあの少年がオルドとティリスさんの息子とは……驚きが隠せませんな」

 

こんな事を言っているソラウはかれこれ1、2時間程同じことを繰り返している。それを同じ時間聞いているオルドは呆れた顔をしながらソラウの言葉に相槌を打っていた。が痺れを切らせたのかオルドが話の本題に入るため口を開いた。

 

「ところでソラウ。なんか用でもあるのか?」

「はい。実は密林にて古龍クシャルダオラが確認されまして、近くの村の物流が完全に止まってしまい村が孤立化してしまっているのです」

 

古龍クシャルダオラ。トールには聞き覚えのない名前だったが古龍と名が付くと言うことはかなりの強敵になると予想はできた。

 

「そこで討伐を依頼しにハンターを探しに来ていたのか」

「はい。一応他の村にも使いは出したのですがどこも承諾してくれず最後の頼みでこのポッケ村に来たわけです」

「と言うことだがトール。お前はどうする?お前にとったら初めての相手だが挑んでみるか?」

「もちろん!」

 

トールがそう答えるとオルドはその答えを予期していたかのように頷いた。

 

「よし、なら準備をしておいてくれ」

 

オルドがそう言うとトールは準備をするために部屋に向かって行った。

トールの姿が見えなくなるとソラウがしぶしぶ口を開いた。

 

「お、おい。オルド……流石にそれは……」

「大丈夫だ。アイツは将来ユクモ村を()()るハンターになってもらわないと困る。その為にはこれくらいもやってもらわないと困るからな」

「オルドがそう言うなら構わないが……」

「さて、俺も準備するとしよう。そうだソラウ。お前に隣の宿にいるユーカっていう娘を起こして来てくれないか? その娘もユクモ村の将来の為に成長してもらわないとな」

「フフッ……教官みたいですね」

「『みたい』じゃなくて教官だからな……」

 

≡≡≡≡≡≡

 

準備を終えたトールは家の外でオルドに借りた情報誌を読んでいた。

 

「古龍クシャルダオラ……鋼龍と呼ばれる古龍である。風を体に纏っている。毒属性の攻撃で風を封じる事が出来る……って書いてあるけどまったく想像出来ないな」

 

そんな風に考えていたトールの頭を後ろから現れたユーカが小突いた。

 

「何考えてるのよ。トールらしくないわね」

「よっ、ユーカ。実はクシャルダオラについて少し調べておこうかなって思ってね」

「私もソラウさんから少し聞いたわよ。角で風を操ってるらしいわよ。まったく想像出来ないけど」

「だよなぁ……まぁ念には念を押して回復薬は沢山持ってきたから少しは安心出来そうだな」

「そうね()()はね」

 

そんな感じの会話をしているとやっと準備を終えたオルドとソラウの二人が現れた。

 

「すまんな、武具を選ぶのに手間取っちまってな」

 

オルドが身に纏っている防具は奇怪な見た目の防具である。トールとユーカはその奇妙な防具が気になっていた。

 

「あぁ、この装備か? これは古龍オオナズチの素材から作れるミズハ防具だ。クシャルダオラと戦うならこの防具だと思ってな」

「オルドが語りだすと長くなりそうなので早く出発しましょう。船を手配してあるので農場に向かいましょう」

 

トール達は率先して向かうソラウの後を追うように農場に向かって行った。

 

◇◆◇◆

 

「さて、密林に着いたが予想通りだな。なぁソラウ」

「ですね。やはりクシャルダオラが現れる時は雨風が強くなりますね。しかし、この雨風の量は異常ですね」

 

オルドとソラウは現状をすぐ把握することが出来たがとユーカは理解するのに少々時間を要した。

 

「ねぇ、トール……流石にこの雨の中に長くいると風邪になりそうよ」

「だな……さっさと片付けようぜ」

 

◇◆

 

トールとユーカはオルド達の後を追うように密林を移動しているとオルド達が急に足を止めた。

 

「……いるな」

「いますね。どうします?一応毒投げナイフは持ってきましたが」

「あぁ、頼む。早めにあの風は消しておきたい」

「了解しました」

 

ソラウはアイテムポーチから刃に毒の滴る投げナイフを5本取り出すと未だにこちらに気付かず歩いているクシャルダオラに向けて投擲した。

 

「フッ!」

 

まず一本目の投げナイフがクシャルダオラの甲殻を貫き体に刺さる。その痛みでこちらに気付いたクシャルダオラは咆哮とともに風を纏うが、ソラウのナイフを投げる行動は止まらない。

一本、また一本とクシャルダオラの体に突き刺さっていく。そして体に刺さった投げナイフの毒が体に回ったのか、クシャルダオラが纏っていた風がクシャルダオラの周囲から離れるように消えていく。

 

「よし、行くぞ。ソラウ援護を頼む」

「了解しました」

 

オルドは背負っていた大剣――ブリュンヒルデをクシャルダオラの左翼目掛け抜刀する。

 

「ふんっ!」

 

力任せの一撃のように見えたオルドの攻撃は翼の薄い部分を切り裂いた。

 

左翼の膜を切り裂かれた痛みでクシャルダオラは周囲を八つ当たりのように攻撃する。クシャルダオラの尻尾がオルドに直撃するほどまで近付いたとき、一つの轟音とともにクシャルダオラの尻尾を弾丸が弾いた。

 

「まったくオルドは援護があるからといって突っ込み過ぎですね。昔と変わってません」

 

その弾丸を放った主であるソラウは愛弩であるヘヴィボウガンのグラビドギガロアから通常弾Lv2をクシャルダオラの角目掛け放ち続ける。

 

「トール!何やってる!お前も加勢しろ!」

「お、おう! 行くぞユーカ!」

「え、えぇ」

 

先程までオルドとソラウによる絶妙なコンビネーションに魅せられていた二人は遅れてクシャルダオラとの戦闘を始めた。

二人が接近するのを横目で確認しながらスコープ越しにクシャルダオラを見ていたソラウは大声で叫んだ。

 

「もうじき毒が切れます。龍風圧に気を付けて下さい!」

 

ソラウが忠告を終えるとほぼ同時に毒から治ったクシャルダオラは再び自身に風を纏わせた。

運悪くそのタイミングでクシャルダオラに近付いてしまったトールとユーカは普通の風圧とは違う足を(すく)われる感覚に襲われ二人ともその場に尻餅をつくような状態になってしまった。

それを好機に思ったクシャルダオラが二人目掛け風を圧縮させたブレスを放とうとしたとき、ミズハ装備の恩恵により龍風圧を受けずに済んだオルドがクシャルダオラの尻尾に強力な一撃を喰らわせた。その一撃は甲殻を、骨をいとも容易く切断した。尻尾を切られたクシャルダオラはバランスを崩しその場に倒れこんだ。

 

「まったく……トール。いいか?狩り場で大切なのは観察と攻撃だ。とにかく隙を見付けたら殴れ」

 

再び立ち上がったクシャルダオラはこの場から退避しようと翼を羽ばたかせるが、オルドによって傷つけられた左翼のせいで飛竜の代名詞である飛翔を封じられているためこの場から逃げる方法はない。

 

「さて、今回の依頼は久しぶりだったがかなり動くことが出来たな。我ながら上出来だ」

 

オルドは一人言のように呟くとクシャルダオラに歩いて近付き最後に一言、

 

「安らかに眠りな」

 

そう言い放つとクシャルダオラの脳天目掛け一撃を喰らわせるとクシャルダオラは絶命した。

 

◇◆◇◆

 

「ふぅ……今回の依頼は中々大変だったな」

「そうですかね? かなり一方的にやってたような気がしたのですが……」

「そうか? まぁ、討伐出来たから結果オーライってことで」

 

クシャルダオラの討伐を終えた四人はベースキャンプに向かいながらそんな会話をしていた。

 

「……ねぇ父さん」

「ん?どうしたんだ?トール」

「クシャルダオラがいたから雨風が強かった……だよね?」

「あぁ、その通りだが?」

「まだ雨風の強さは変わってないよ」

「んぁ……」

 

オルド達が足を止めた、その時今までとは比にならないほどの強烈な風が辺りに吹いた。

 

「ッ!?」

 

誰もが体勢を崩さないようにバランスをとっている中、ユーカは雲の隙間からクシャルダオラとは違う別の風を纏う龍の姿を確認した。その龍はまるで羽衣のような翼膜で(そら)を舞うように飛行していた。

ユーカはその龍の事を知っていた。いや、忘れることは出来なかった。かつてユクモ村を襲い二人のハンターによって撃退された古龍。災厄と共に現れその地に終わりを告げるとさえいわれる嵐龍・アマツマガツチ。ユーカの両親はこの古龍と闘い、そして災厄を退けるかわりに消息を絶った。

 

「アマツマガツチ……」

 

ユーカの呟いたその一言には深い憎しみの念が込められていた。しかし、この言葉は誰の耳にも届くことはなかった。あまりの暴風に消されてしまったのだ。

そして、アマツマガツチの姿が見えなくなると密林に吹いていた雨風は嘘のように止み、星空が広がっていた。

 

「……今のは一体何だったんだ?」

「さぁ?流石の私でもあんな風は体験したことはありませんので……」

 

≡≡≡≡

 

ポッケ村に向かう船の上でオルドはトールに

 

「ポッケ村に着いたらその日の夜にユクモ村に帰る」

 

その事だけ伝えると眠りについた。伝えられた内容に驚いたトールだったがすんなりとその事を承諾した。

 

 

 

ポッケ村に着いた四人は依頼の成功をギルドに伝えるとそれぞれの帰路についた。トール達はユクモ村に帰るための荷物整理をするために家に、ソラウはまだすることがある、と村長の家に向かって行った。

 

そしてその日の夜。ユクモ村に帰るための準備を終えたトール、ユーカ、オルド、ティリスはポッケ村の入口まで来ていた。

 

「短い間でしたがありがとうございました」

 

そう言って頭を下げるトールに武具屋のおじさんが泣きながらお別れの言葉をかけていた。お土産を持っていけだの色々なことを言っているようであった。

 

お別れを終えた一行は、ネコタクに乗り込むと村人が見えなくなるまで手を振っていた。

 

「はぁ……長かったな……そう思うだろ?ユーカ?」

「……」

「ユーカ?どうかしたのか?」

 

トールが心配そうにユーカの顔を覗き込むとやっと気が付いたユーカは多少慌てた様子で

 

「べ、別に大丈夫だから気にしないで」

 

と一言だけ言うとまた考え込むような表情になってしまった。

 

 

「なぁ、ユーカ」

「……なに?」

「なんか悩んでるのなら俺に相談してくれよ」

「ありがとう、トール」

 

トールの気遣いにユーカは笑顔で答えた。

 

「うん、やっぱりユーカは笑ってる方がいいよ」

「……ばか」




はい。と言うことで狩人の里帰り編終了です!
今回はフラグと新キャラ登場回でした。ソラウは昔オルドがポッケ村のハンターだった頃のパーティーメンバーです。ヘヴィボウガン使いのガンナーですね。
さて、今回はオルドの無双でしたね。クシャルダオラをいとも容易く葬る……しびあこです!
さて、プロット通りだと今は物語の折り返し地点です。なんというかもう折り返し地点です。
これから受験等で忙しくなってしまうため、投稿が遅れてしまう事がありますが、これからもユクモ村の狩人録をよろしくお願いします。
ここがおかしいよー、等の誤字報告も受け付けておりますので気軽にどうぞ!

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