幽霊たちでリリカルマジカルゥ!   作:じーらい

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前に投稿したの何時さ……感想は全部読んで直せる所は直していく努力。


幽霊の叫び声

 私は高町なのは。

 成り行きで魔法少女になって、いろいろ大変で時には挫けそうになったけどそれでも踏ん張っていたら、気付いた時には世界の危機に巻き込まれてしまいました。スケールが大きすぎてちょっとイメージしにくいけど、今も管理局の人たちが一生懸命事件を解決しようと頑張っています。

 

 この事件の解決に協力する中で、どうしてもお話を聞きたかった女の子がいました。

 ――どうして悲しい目を浮かべてまで戦うの?

 最初はお話を聞きたかっただけ。戦う理由も、どうしてジュエルシードを集めているのかも。

 でも、その気持ちは女の子の使い魔さんと話をしてから変わりました。ただ話を聞きたかっただけから、ただただ助けたい、力になりたいと。

 

 そして最後の勝負で勝って、ようやくお話が聞けると思った直後にそれは起きました。頭上から雷が降り、女の子は空から落ちました。

 

「フェイトちゃん、大丈夫かな」

 

 プレシアさんに人形だと言われてしまったフェイトちゃんは、あまりのショックに膝から崩れ落ちてしまいました。幾ら声を掛けても何の反応もしてくれなくて、まるで本物のお人形さんみたいにぐったりして……今はアルフさんが抱えて医務室へ運んでいるんだけど……

 

 医務室を出て途方に暮れていると、見慣れた小さな影が目に入った。

 

「あ! クロノ君、何処へ!?」

 

「現地へ向かう!」

 

 クロノ君は医務室の扉を一度見て、その後で私の質問に応えてくれた。クロノ君は優しいから、きっとフェイトちゃんのことが心配なんだと思う。でもそれ以上に、クロノ君の目には自分の出来ることをやろうとする、この事件を解決するんだって強い意思が見えた。

 

 ――私はフェイトちゃんを助けられなかったけど、まだ何も終わってないんだ。

 

 むしろ、今からが大一番。クロノ君の姿を見たらそれがわかる。だったら、私も自分に出来ることをしよう。フェイトちゃんのことは気になるけど、フェイトちゃんの為にプレシアさんを此処まで連れてきて、もう一度しっかりと話し合う方が良いと思うから!

 

「私も行く!」

「僕も!」

 

 ずっと私を助けてくれていたユーノ君もそう言ってくれた。今から庭園に向かうのは少し怖いけど、それでもユーノ君がいてくれれば少しは気が楽になると思うの。だって今までもずっと私を助けていてくれたんだから!

 

「あまりお勧めしないが……。ただ、ここから先は命を落とす可能性が出てくる。それでもいいのかい?」

 

「私なら大丈夫。自分の身くらいは自分で何とかするし、力になる自信もあるよ」

 

「心強いな……じゃあ行こう。時間がない」

 

 そう言って走りだしたクロノ君を、私とユーノ君は追いかけて行く。

 

「……」

 

「……どうかした? クロノ。何か言いたそうだけど」

 

 クロノ君の横顔を見たユーノ君がそう尋ねた。クロノ君がどうかしたのかな? と思って私も横顔を覗くと、苦い顔をしたクロノ君の横顔があった。

 何だかとても辛そうで、でもどうすることも出来ない気持ちを持っているような……そんな感じ。

 

「……君達もどうせ知るだろうから先に言っておく。現場で驚いて動きが止まるようなことがあったら致命的だからね」

 

「何があったの?」

 

「アリシア・テスタロッサが生き返った。……いや、ジュエルシードに取り憑かれたと言った方がいいかもしれない」

 

「「ええ!?」」

 

 私が思っていた以上に、とんでもないことになってるみたい。

 

 

   ◇

 

 

「私の妹、フェイトのことだよ」

 

 フェイト・テスタロッサ。

 アリシア・テスタロッサのクローンで、アリシアにとっての妹。プレシア・テスタロッサの人形で、いらなくなった慰みモノ。

 

 俺にとってはただの他人。生まれについては、アリシア達との文化の違いから語ろうとは思わない。狂った母親を持ち、健気にもその母親に認められようともがく不幸な少女。そんな彼女を俺如きがどうこう出来るとも思ってないし、やろうとも思わない。

 フェイトは俺を知らないし、俺もフェイトにとって他人でしかないからだ。何て冷たい男なんだと罵るやつは罵ればいい。そして俺の代わりにプレシアに向かって叫ぶといい。

 

 自分が、妹を助けようとする姉の代わりが務まると思うのなら。

 

「お母さん、何でわたしの妹にあんなこと言うの?」

 

「アリシア、フェイトは貴女の妹なんかじゃないの。ただの私の慰みモノ。お遊びのお人形でしかなかったのよ?」

 

「それは違うよ。だってずっと、始めからずっと見てたもん! お母さん、最初はフェイトのことをとても可愛がってた。フェイトの前では出さなかったけど、一人になった時には笑ってたよ!」

 

「そんなことはないわ」

 

「違うよ! お母さんは、フェイトが生まれたころはとても可愛がってた!」

 

「そんなことはないわ!」

 

「っ……」

 

 否定するように叫ぶプレシアに、アリシアは驚いたように体をビクつかせた。狂ってる相手にビビったら押し負ける。少し発破を掛けてやった方がいいか。

 

(この程度でビビるくらいなら代わるぞ?)

 

(だっ、大丈夫! お母さんなんか怖くないもん!)

 

 今にも尻餅をつきそうなほど脚を震わせているくせに。怖いのに無理しているのがまるっとお見通しだ。まぁ、それでも踏ん張ってるのが凄い所なんだが。

 

「アリシア、私だけのアリシア。貴女は何でそんなことを言うの? 私はフェイトのことなんてどうでもいいの。貴女が今ここに居てくれている。それだけでいいの。なのに、どうして、貴女はフェイトのことを構うの?」

 

 青白い顔で微笑むプレシアは、傍から見ても”気持ち悪かった”。狂喜の笑み。一見綺麗に見える母親の笑顔の癖に、見ているこちらが吐きそうになるくらいに。

 

「フェイトがわたしの妹だからだよ! お母さんがフェイトを苛めてるのをわたしはずっと見てきた! フェイトはあんなにお母さんの為に頑張ってたのに、どうしてあんなことが出来るの!? どうしてあんな事を言えるの!?」

 

「解ったわアリシア! 何で貴女がそんなにフェイトのことを気にするのか! 嫉妬しているのでしょう? あの人形が、貴女の代わりとして私の傍にいることに。でも安心しなさい、もうお人形遊びは終わり。だから、昔みたいに一緒に暮らしましょう?」

 

「お母さん……お母さんは、おかしいよ!」

 

 ああ、おかしいな。もう駄目だ。プレシアはアリシアしか見えていないのだろう。アリシアを生き返らせるために狂ったのだから、生き返った姿を見た今じゃそれも仕方ないことなのだろう。プレシアは狂うことを超えて、壊れてしまったんだ。アリシアが生き返ったことで、残っていたかもしれない良心が欠片ごと吹き飛んで壊れたんだ。

 

(アリシア、もう駄目だ。プレシアが何でこうなったのか、お前だって想像つくだろ。何よりお前自身が俺にそう言ってたじゃないか。プレシアは壊れたんだって。狂ったんだって、初めにお前が俺に言ってたじゃないか)

 

(でも……でもっ! こんなのってないよ! せっかく生き返ったのに、せっかくお母さんやフェイト達と一緒に暮らせると思ってたのに!)

 

(ああ、そうなれば良かった。だけど、これが現実だ。現実なんてこんなもんなんだよ)

 

 もしかしたら、俺たちが奇跡を願わなければフェイトとプレシアは和解できたのかもしれない。死んだ人間を生き返らせるのは無理だと、プレシアも心の何処かでは考えていただろう。だが、こうやって俺達は生き返ってしまった。本来ならあり得ない奇跡を起こしてしまった。

 

(プレシアは、お前を生き返らせることが止まった人生の中で唯一の意味で目的だったんだ。それがこんな形で叶ってしまった。お前以外には見向きもしなくなるのも、仕方がないんだよ)

 

(……ゴンベエ)

 

(なんだ?)

 

(お願い……)

 

(聞くだけな)

 

(お母さんを……止めて)

 

 殴るなと言ったり殴れと言ったり、お前は何がしたいんだよ。――ああ、言わなくてもわかる。腸煮えくり返っている激情が伝わっているからな。

 

 それに俺だってなぁ、他人だなんだと心の予防線張ってても腹が立ってないわけがない。殴れと言われれば俺は幾らでもあのクソ婆を殴るぞ。そりゃもう顔が見られなくなるくらい殴る。腰の入った拳で、骨が折れるまでブン殴る。それでもいいのならタコ殴りにしてやる。

 

(それでね、お母さんを捕まえて時空管理局に引き渡して)

 

(よし……無理だ!)

 

(なんで!?)

 

(プレシアには魔法がある。対して俺は魔法無し。そしてこの身体が貧弱すぎる。

 いや、本当に参った。この身体が貧弱でなかったら魔法のハンデがあっても余裕なんだが……いやなに、俺もやる気はあるんだぞ。でもお前だって痛いの嫌だろ? あんなバチバチした雷が当たれば、人なんて木端微塵だ。コロナ放電にパルスストリーマ放電、プラズマで浄化される塵の恐怖を知ってるからこその判断なのさ。

 でも勘違いして貰っては困るぞ? 別に魔法が俺の常識範囲外で理解不能だから怖くて立ち向かえないとか、そんな情けない理由では断じて無いからな)

 

(へー)

 

(解ればいい、解れば)

 

 完璧だ。アリシアは完全に納得した。流石は俺、言い訳すら完璧だ。それに騙されるお前は……っと、危ない危ない思考カットだ。とにかく、争わずに済むのならそれに越したことはない。アリシアが笑顔浮かべてお願いでもすりゃそれで済む話だ。

 フェイトはどうするって? ジュエルシードが暴走して危ない? はっはっは、俺があのクソ婆に適うとでも? 逆立ちしても無理だろう。自分の身の安全には変えられんよ。当然だよなぁ?

 

(わたし達だって魔法は使えるよ?)

 

(おまっ、前に無理だって言ってただろ騙したのかァアン?)

 

(今は使えるの。だって当たり前じゃん? ジュエルシードの魔力量は人なんて軽く超えてるんだから。それが身体の中にあるわたし達だもん。それを自由に使えるんだよ?)

 

(……あー、確か魔法にはデバイスと言った魔法を発動させるコンピュータが云々)

 

(デバイスなんて無くても使える魔法はあるよ? わたしを甘く見ないで欲しいね。わたしは天才のお母さんを持つ超! 天! 才! アリシア・テスタロッサだよ? 並の機械の処理速度なんて目じゃないことを証明してあげるよ!)

 

 馬鹿野郎、それは既にスーパーコンピュータだ。そんな処理したら脳が焼き切れて死ぬ可能性……って、俺たち元は幽霊だったか。

 

(ゴンベエだって上田ナントカ先生の数学――(物理学だ) 物理学の天才――(超天才だ) ……ウルトラスーパーデラックス糞超天才なんでしょ? 魔法くらいすぐに憶えて、わたしの補助くらいしてよ。補助があれば魔力量で勝ってる分、負ける要素なんて無くなるんだから!)

 

 だがしかし、だがしかしだアリシア。上田教授が許容量以上の摩訶不思議に出会えば気絶するように、俺もある一定以上の魔法を見てしまえば気絶する可能性が……。リスペクトするのなら全てをリスペクトしなければいけない。そうだろう? それにもし俺が気絶してみろ、困るのはお前だ。そうだとは思わないか?

 

(自分で自分を人質にする人は初めて見たよ)

 

 別にお前の為を想って言ったわけであって、俺自身のことは関係ない。俺は優しいからな。お前が困る姿を見てられないだけだ。だからアリシア、ここで来るべき救助を待つか、プレシアに従うことが一番のベストだと俺は考えるぞ。

 

(ふーん、諦めるんだ)

 

(なん…だと……?)

 

(言い訳してるんじゃないの? 出来ないこと、無理だって。諦めてるんじゃないの?)

 

(おま、俺の……!?)

 

(ふっふっふ、甘いよゴンベエ。ゴンベエの弱点はこの身体に入った時に全てリサーチ済みなのさ!)

 

 よりにもよって、よりにもよって俺をその言葉で炊き付ける気か! 鬼かお前は!?

 

(でも別に諦めても良いんだよ? 無理だって言っても良いんだよ? ほら言っちゃいなよ。YOU出来ませんって言っちゃいなYO! でもその程度で諦めるんだったら心の先生に失礼だとわたしは思うんだけどなぁ〜? あ、わたし『は』 だからね?)

 

(……ぇ…な)

 

(え? なに? 声が小さくてきこえなーい)

 

(此処までコケにされて引き下がれるかってんだ! いいさやってやる、やってやるよ!)

 

 頑張れ頑張れ頑張れ出来る出来る絶対に出来る! 大丈夫! 俺は絶対に出来る! そう、信じていれば大丈夫。魔法が未知の物だからってなんだ!? 俺は既に先生から魔法の言葉を貰っているじゃないか! 【大丈夫】って言葉を! それに魔法なんざ気合いでなんとかしてやる! そうさ、本気になれば何だって出来るんだからな! ベストを尽くす俺に不可能と言う文字は無い!

 

(代われよアリシア! 野郎ぶん殴ってやらぁっ!!)

 

(魔法での補助は任せてね!)

 

「さぁアリシア、少し下がってなさい。無粋な局員たちをここから追い出さないと」

 

「おいババア」

 

「————え?」

 

 アリシアと代わった時、この身体の目付きが鋭くなったのを感じた。なるほど、アリシアの時は器もお目目真ん丸になって、俺の場合は目玉ギラギラ殺意マックスな吊り目になるのか。身体も馴染んだようだし、もう何も問題ないな。

 

「聞けよババア」

 

「ア、アリシア……?」

 

「この拳はなぁ……死ぬほど痛いぜ!」

 

 気をつけろよ? ゴンベエさんの第二回目はかなり効くぜ? 振りかぶってぇ———

 

「だらっしゃぁっ!」

 

 殴ったぁ! 爆音残してホームラン! ピンポン玉の様に地面を跳ねながら、ババアがゴミ屑のように吹き飛ばされました、のは良いんだが……

 

(おい、アリシア)

 

( ゜д゜)

 

(おい金髪幼女、ぽかーんとせずに応答してくれ)

 

(((( ;゜д゜)))アワワワワ

 

(可愛い可愛いアリシアちゃん、お兄さんの声に気付いてくれないか?)

 

(かわいい!? わたし可愛いよね! でもゴンベエどうしよう!? お母さん死んじゃったかも!)

 

 そこで反応するのかよ。いや、別にお前は可愛いからいいんだけどさ。ウザいけど。

 

(説明してくれ。出来れば物理学で)

 

(時間がないから省くけど、思った以上に魔力で身体強化しすぎちゃったみたいなの!)

 

(で? 魔法には防御があるんじゃなかったのか?)

 

(あるけど……けど、あんな短時間じゃお母さんでも張れなかったかもしれないの。生身であんなの受けちゃったら、人の身体なんて粉々だよ!?)

 

 いや、たぶん大丈夫だと思うぞ。殴った感触は壁みたいだったし。むしろ壁をそのまま押し出したような感じだった。

 

「貴女……アリシアじゃないわね?」

 

(ほーら)

 

(お母さんって何者?)

 

(化け物じゃね?)

 

「ジュエルシードの反応――っそう、そうよねっ! アルハザードに行ってないのに、そんな都合のいいことが起こるわけないのが当然! アリシアの体を奪った偽物……今すぐ、今すぐアリシアを返しなさい!!」

 

 ババアの言葉に呼応して揺れ動く庭園。迸る電流。迫り来るクライマックス臭。

 雷の余波か肌がピリピリする。ヤバイよヤバイよ、これマジでやばい奴だって。何がヤバいと聞かれたら? ……いいだろう、答えてあげるが世の情け。俺の平和を守るため。俺の常識を守るため。物理と気合いで常識を貫く、俺様殿様な仇役。ゴンベエ、アリシア! 次元を駆ける幽霊二人には。落雷注意! 白目の明日が待ってるぜ!

 

(――ふぅ)

 

(ゴンベエ気絶しちゃだめー!?)

 

 ああ、次は賢者モードだ……

 

 




・上田教授
 何故ベストを尽くさないのか

・諦めんなよ!
 富士山になってから2年が経ちました

・YOU言っちゃいなYO!
 アリシアちゃん光源氏計画

・何だかんだと聞かれたら
 あの3人組ってまだ出てるの?

・総評
 アリシアボディはデフォがMapper()

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