というのはおいといて。今日は8日、ということで、8つながりーの18時に投稿してみました。
ちょっと推敲が足りないので、あまりにも酷かったらあとで直しにくるかもです。
石壁に囲まれた街、トラペッタ。
店はにぎわい、人々の明るい話し声が所々で飛び交う平和な街並み。
それを眺めつつ、私は石畳を踏みしめ先を行く。
「……ここの住人も、元いた世界の人たちと変わらないんだなあ……」
甲冑を身につけていたり、変にぼろい格好をしていたり。旅人といった風貌の男性が、あてもなくふらふらとしていたり。
……この世界も、人間というものは変わらないらしい。
「ということは、やっぱり星のオーラとか出るのかな。それでも天使は見かけないし……放置されてるんだったらもったいないかも」
少し考えて、ぽつり。言葉を零してみる。
そしてその後、はたと気がついた。この世界にはセレシア様がいないわけだから、そもそも集める必要がないのかもしれない。
あーでもない、こーでもないと、人に聴き取れない程度の声で呟きつつ、ふらふらと街を見て回る。……人々は楽しそうに話し込んでいるが、この当たり前のように存在している平和に感謝することはないんだろうか。元の世界では誰かしら天使や王様などに感謝していたから、平和を当たり前のように感受しているその姿は、なんとなく慣れないものだ。
そのままぐるりと街を一周してみた。賑わう街の風景。そこには人間に感じられる違和感なぞなく、けれど天使だけには感じられる違和感が点在している。
天使像は影すらもなく、他にもやはり天使の痕跡は存在していなかった。……この世界には天使が存在していないのかもなあ、とか、心の隅で思う。……薄々気がついてはいたけれど、なんとなく複雑な気分だ。
……大切な人たちの、存在を否定されたような気がして。
意味もなく眉を顰めていると、道具屋さんの看板が目に映る。おっと危ない危ない、目指していた場所だ。考えることに熱中しすぎて通り過ぎるところだった。……雑念をぱっぱと振り払って、小走りでそちらに向かってみる。
「いらっしゃいませ。お嬢さん、なにをお求めかな?」
愛想良いターバンを巻き付けた店主が、お品書きをさりげなく差し出して、にんまりと問いかける。これぞ商人魂か。
こっそり関心して、私はそのお品書きを覗き込みつつ、とりあえずの用件を告げることにする。何かを買うか買わないかは手に入れた金額で決めよう。ポケットを探って、中に入っていたものをすべてカウンターに並べてみせる。
そう、今回ここを訪れたのは他でもない、金銭調達のためなのだ。
……前にも言った通り、今の私は身につけていた装備品はあるにしろ、他は何も持っていない無一文児。薬草どころか盾も武器もないのだ。素手で戦えなくもないとはいえど、魔物が存在するこの世界ではあまりにも不用心である。
それに、積極的に戦わないにしろ、情報を集める為には先立つものも何かと入り用になるだろう……あまり考えたくない話だけど、人間とは全員が親切なものと限らないものなのである。
「すいません、先に買い取りを頼めますか?」
「あー、買い取りね。大丈夫ですよ。……品はこちらでよろしいですか?」
「ええ、問題ありません」
愛想良くそういいつつ、指で品を示し頷く。営業スマイルはお手の物だ。人懐っこい笑みを意識しつつ商談を持ちかける。
並んでいるのはここ数日間で得た素材たちだ。エイトさんたちと行動を共にしているときに採取したものだけど、街に近い場所にあるなし関係なくすべてが立派にそろっていた。エイトさんたちの様子を見るに、もしかしたらこの世界には採取という概念がないのかもしれない。割と入手難度の高いものも取れるのに……もったいないと思う。
ちなみにお品物はめざめの花、ルビーの原石、夜の帳に毒牙の粉とまあまあなラインナップだ。実は鏡石だとか魔力を帯びた土だとかも採取できているのだが、今回は売りに出さないことにしておく。
そんなに長い距離じゃない割にはそれなりによい素材たちを手に入れることが出来た。カマエルさえいればほくほくものなのに、何とも残念なものである。
……さて、どれだけ金を得られるかな?
そっと店主の顔を除き見れば、どことなく悩ましげな顔をしていた。
「いかがされました?」
様子を見るに、かなり悩んでいるようだ。ならばとそっと問うてみる。すると、
「……これ、一体どこで手に入れて来たんだい?」
見たことも聴いたこともないんだけど、と、なんともまた困ったような声が返って来た。……オウフ。まさか存在すら知られていないとは、予想外だ。外で拾って来たんだけどな……この世界の住人達は本当に素材採集をしないのか、それともこの街の人たちが知らないだけなのか……ともあれなんにせよもったいない。
とまあ、知らないなら知らないで仕方が無いので、とりあえず大まかな説明をしてみることにしよう。物を知らないままじゃ交渉が成立するわけないし。……原産地についてはどうするかって? そこら辺の地面です、なんて不興を買いそうなので、そこは誤摩化すつもりだけど。
「……詳しくは内緒です。でも、そうですね……これらはあまりこちらの方々には馴染みの無いものかもしれないので、軽く品物の説明をさせてください。使いどころはそれなりにありますし……得はしても、損はしないはずですよ」
胡散臭く聞こえてはいないだろうか。“内緒”という単語に、一瞬店主の眉が動いたような気がしたけど、不安になって来た。……まあそもそも胡散臭い話ではあるんだけど。こちらの世界の人にとっては特に。不安になりつつ、詳細を語り始める。
「……右から順に、めざめの花。ルビーの原石と、夜の帳。そして、毒牙の粉と呼ばれています。めざめの花はその名の通り目を覚ます効能があります。ルビーの原石もそのままですね。磨けば装飾品に使えるでしょう。夜の帳は加工の仕方にもよりますが、良い装備品を作れます。毒牙の粉は、その名の通り触れた相手を麻痺させる能力がありますが、少量ではかなり弱いのでうまく加工してやってください。……使い方によっては、すごいものに化けます」
心の中で「まあそんなに強い武器にはならないんだけど」と付け足しながら、にんまりと微笑む。ビジネスは強気で行かなければならない。特に今私は無一文児なのだし、手加減は無用だ。容赦なく利点だけを相手に叩き付ける。
店主に ???の ダメージ ! コマンド?
そんな殺伐とした思考を浮かべつつも、私は店主の様子を伺ってみる。与えられたダメージは、果たして……んん、返事がないな、考え込んでいるみたいだ。おそらく、見たことも無い、実際にそうかもわからないものを目前にして、他に持ち込まれる前に手に入れるか、無駄なリスクを回避するかを天秤にかけているのだろう。
まあね、自分の利益が優先に決まっている。考え込むのは仕方ないよね! 薬草とか、他の武器とかならあっさり決まっていたんだろうけど。……そのことを考えると、なんだか申し訳なくなってくるなあ。
様子を見るに、まだ結論を出すには時間がかかりそうだ。少しの間だけども、私もなにかしら考え事でもしておこうかな。
——そのまま私は、なんとなくエイトさんたち一行の姿を思い起こす。あの奇抜な三人組……特に、奇抜な三原色を持つ少年をあっさり忘れられるわけもなく、ビジュアル自体はあっさり思い起こすことに成功する。
……あ、でも顔は少しぼんやりとしているかな。……どんぐり眼ってことは覚えてる……けど、ヤンガスさんやトロデさんたちと比べて大人しめな印象を受けるから、最も大切であろうそこだけがうまく思い出せないや。ああ、ごめんよエイトさん。イメージの中に漂う顔なし青年に向かって、ぺこりと頭を下げた。
——そういや、話していなかったが、彼らとは街についた時点で別れた。私は今後の方針を固める為の拠点が欲しいという意味でこの街に来たのだが、もちろん彼らにもこの街に訪れた目的と言うものがあるらしく、ここからはそれぞれ別行動、という形になったのだ。
……まあ、そもそも街まで案内する、という名目で行動を共にしていたんだから、当然と言えば当然なんだけど。それにしたって、あの三人組はあまりにも印象が強い方々だった。これから先、どうなるかは見当もつかないが、彼らのことは最後まで忘れないだろう。
もしかしたら、またどこかでご一緒する機会があるかもしれない。彼らの目的が何かは知らないけど、どうやらこの大陸にはしばらくいるようなので、その可能性はなきにしもあらず、といったところだろうか。
……と、そこからこの大陸についてへ思考が跳んだところで、店主の視線がこちらへ向けられた。なんとか買うか買うまいかの葛藤は終着したようだ。……さて、どうなるのやら。
「……どうですか?」
店主さんは一度「うぅむ」と唸ってから、少し間を空けて、こう言った。
「……ええ。そうですね。買い取りましょう……合計で2300Gでどうですか?」
やりぃ! どうやら買い取ってくれるようだ。値段も、量の割に多い。……未知のアイテムというのもあってか、多めに見積もってくれたようだ。有り難い。おそらくまったく知らないアイテムというのもあって、この値段なのだろうが。
……とはいえ、知っている限りではあるが相場より少し高め程度におさめられているのだから、さすがである。賞賛の拍手をこっそり送っておこう。
「それで良いです。ありがとうございます」
即座に返答して、笑顔を向ける。最低限物をそろえられればいいだけだしね、つりあげる必要はないだろう。交渉成立だ。
にんまりと手を差し出せば、店主はどこか疲れたように袋を差し出した。
「……ふう、はい。ではこちらが2300Gになります」
「はあい」
そのまま重たい貨幣を受け取って、ついでに一礼してみる。突然の一礼に、店主さんは目をぱちくりしていた。ふふ、どや。ダーマの塔で鍛えられたおじぎの角度は美しかろう。……って違うか。
「見慣れない素材を買い取っていただき、ありがとうございました〜。機会があれば、次もお願いします」
台詞を添えなきゃただの変な人になってしまう。表面に出さないよう、あわてて取り繕って声を吐き出す。店主さんは、ああ、こちらこそと声を漏らした。……ふう、まあこれでいいだろう。そろそろおいとましようか。
そう考えて、また一つ言葉を紡ごうと前をむいた。
そんな時だった。
「……あの、そこに立てかけてあるものって、なんですか?」
——私が
用語説明
主人公:3話の冒頭くらいで素材収集してたことに気づいた人います? いないか。
三原色男:信号カラーとも言う。「顔覚えてないってry」「ちょ」
店主:不憫。ゲームならメモくれる。
素材たち:9の世界ではフィールド上に素材が落ちている。ぶっちゃけ単品だとそんなに高く売れない。
天使像:その街or村の守護天使の名前が刻んである像。担当が変わると勝手に変わる。尚、像の見た目はまるで担当の天使たちには似ていない。
おじぎ:しぐさの一つ。9では通信プレーが出来るので手を振ったり踊ったりジャンプしたりできる。その中で、おじぎはダーマの塔の扉を開く為に必要。綺麗な角度で行わなければ開かないらしい。
作者から一言:閲覧ありがとうございます。字数の問題で一度区切りましたが、実際は七千越えてました。スランプいえーい。
ただそのわりにはまるで進んでいません。次の次あたりで若干動け……ばいいのですが……。
とりあえず、片割れの次話は割と早めに更新する予定です。少々お待ちを。
【訂正】H27.10.8 やはりというか細かい部分を手直ししました。内容は変わってません。