アーランドの冒険者   作:クー.

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人生最高の瞬間

「うーん、あー眠みぃ」

 

 村に戻ってきた後、俺たちは解散して俺は宿屋に泊っていた。

 金はモンスターが何故か持っていた金で何とか間に合った。

 モンスターがアイテムを落とすなんてゲームの世界だけだと思ってました。

 

「今日はどうすっかな」

 

 第一に何とかして金を稼がなくてはいけない。

 トトリちゃんたちは今日も出かけるとか行ってたし、手伝いにでも行ってもいいが……。

 正直なとこ、後輩君とか俺より強いから付いていく必要もない訳だ。

 

「とりあえず出かけるとするかな」

 

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「のどかだなぁ」

 

 噴水のある広場まで来たのだが、この村は本当にのどかだ。

 森とかにいる時よりよっぽど異世界だなって実感するわ。

 

「? トトリちゃん?」

 

 お店らしきところからトトリちゃんが出てきた。

 俺は声をかけようと思ったが、しかし……

 

「……っ!?」

 

 扉の隙間から見えた光景に俺は固まってしまった。

 明らかに酒場な感じの場所だった。

 

「えっ?え?」

 

 俺がうろたえている間にトトリちゃんは店の前にいたジーノ後輩と出かけようとしている。

 

「ちょっと、待ったーーーー!!」

 

「えっ!?」

 

 俺は走って一気にトトリちゃんと距離を詰める。

 当然のようにトトリちゃんは動揺している。

 

「あ、アカネさん。どうしたんですか、そんなに大声出して?」

「と、トトリちゃん君は今どこから出てきたんだい?」

 

 俺は君を信じているぞ、トトリちゃん。

 

「どこって、このゲラルドさんのお店ですけど?」

「何をやってる店なんだ?」

「何って先輩、看板を見ればわかるだろ?」

「看板?」

 

 俺は店の上を見上げる。

 えっと、何だ……。

 

『バー・ゲラルド』

 

「トトリちゃん、君が不良だったなんて……」

 

 人は見た目と性格によらないってことなのかよ。

 

「ち、違いますよ!私はゲラルドさんに呼ばれただけです!」

「隠さなくてもいいさ、子供を酒場に呼び出す大人がいるわないだろう」

「ほ、本当に違うんですってば!」

「はぁ、やっぱりみんな酒なんて飲んでるもんなのかな。高校のやつらもみんな一回は飲んだことあるみたいだし……」

 

 ぶつぶつと自分の世界に没頭する俺であった。

 

「トトリ、言い忘れていたんだが」

 

その時店の扉が開いて、ガタイの言いおっさんが出てきた。

 

「あっ、ゲラルドさん!」

「よかった、まだいたか。……ところで、このぶつぶつ言ってるのは誰だ?」

 

「考えてみると、酒飲んだことある奴以外みんな彼女いなかったよな。ああ、死にたい……」

 

「えっと、アカネさんっていう私のお手伝いをしてくれてる冒険者さんです」

「ほう、冒険者かちょうどいい。おい、お前」

「うむ?」

 

 声をかけられて、俺は初めて目の前のおっさんに気づいた。

 なんというか一言で言うとナイスミドルといった具合の中年男性だ。

 

「誰?」

「ああ、この店の店主をしている。ゲラルドだ」

「な!? 出たな諸悪の根源め!」

「? 何のことだ?」

 

 全く分からないと言ったような顔だな。白々しいぜ。

 

「アカネさん私がお店から出てきたから、いろいろ勘違いしてるみたいで……」

「何だそんなことか。アカネといったか?トトリはただ呼ばれたから来ただけだぞ」

「いやいや、むしろそっちの方が問題だよ!酒場に酒以外何があるんだよ!」

「話すから少しは落ち着け、一応お前にも関係があるだろうからな」

「う、ああ、わかっ……んんっ、わかりました」

 

 

 この人、大人すぎるわ。冷静っていうか、落ち着いているっていうか。

 俺の不慣れな敬語を使わなくちゃいけない相手がまた増えてしまった。

 

 

「トトリにはさっき話したんだが、この村にアーランドから依頼を回してもらうことになってな、その仕事をトトリにやってもらうと思って呼んだんだ」

「なんで、トトリちゃんに? 冒険者にやってもらった方がいいんじゃないですか?」

「いや、この村には冒険者が少なくてな」

 

 ふむ、だから素材を取りに行ったりで外に行くトトリちゃんに声をかけたってそういう事か。

 

「なるほど。いやートトリちゃんごめん! 俺なんか勘違いしてたわ」

「いえ、分かってくれたならいいですから」

 

 あっさり許してくれるとは、トトリちゃんの優しさはもう俺の中でカンストしてるわ。

 

「ところで、ゲラルドさん。言い忘れてた事ってなんですか?」

「ああ、そうだった。トトリには知り合いに冒険者がいたら、ここを教えてやってほしくてな」

「私、この村の人たち意外ほとんど知り合いいませんけど?」

「そうだが、まぁ早速一人いたじゃないか」

 

 えっ、何? 俺ってカモ?

 

「アカネくん。時々でいいから、店に顔を出してくれよ」

「あ、はい。わかりました」

 

 ? あれ、ちょっと待てよ。

 

「おお、そうだ。そうだ」

「どうしたんですか」

「いや、アーランドで受けた依頼をまだ報告してなかったんだよ」

「そうなんですか?でもアカネさん、何でアーランドで依頼受けたのにこっちに?」

 

 …………。

 

「アハハハ。さぁ!ゲラルドさん!報告がしたいので、早く店に入りましょう!」

「あ、ああ。分かったから。押さないでくれるか」

「あ、あれ?アカネさん?」

 

 多少強引だが、許してくれよトトリちゃん。あの秘密は墓場まで持ってくと決めてあるんだ。

 

「先輩。俺たち、これから出かけるんだけど」

「あ、ああ。俺にかまわず行ってくれ。トトリちゃん!悪いけど手伝いはまた今度で!」

「は、はぁ?」

 

 俺は、パパっと酒場の中に入った。

 

 

 

 

 

 

「ふう……」

 

 危なかった。急な誤魔化しを思いつかないのが、俺の欠点だな。

 

「よくわからんが、依頼の報告だったな。それなら、カウンターの方に来い」

 

 ゲラルドさんはカウンターの方に歩いていく。

 ……つか、この店客が少ない、というよりもいない!

 大丈夫なのかこの店?昼だからだと信じたいが。

 

 疑問を持ちつつも、カウンターのほうに歩いていく。

 

「どぞ」

 

 俺はカバンから、うにと奇跡的に無事だった報告書を取りだした。

 

「ああ、確かに受け取った。品質も問題ないな」

「ところで、本当にこっちで報告しても大丈夫なんですよね?」

「ああ、この国の錬金術士のおかげでな」

「錬金術士ですか?」

「詳しくは言えないが、便利な道具が支給されたからな」

「そうなんですかー」

 

 どこでもなドアーとか言い出さないよな。

 

「よし。これが今回の仕事の報酬だ」

「あ、どうも」

 

 150コール……俺の宿代一日分以上じゃないか。

 

「顔が緩んでるぞ」

「おお、いかんいかん」

 

 うまい。この仕事かなりうまいぞ!

 

「ゲラルドさん。早速次の依頼を!」

「随分とやる気だな。冒険者であるお前にちょうどいい依頼はこれくらいだな」

「どれどれ」

 

 手渡された書類を見てみる。

 ……アードラの討伐?

 

「トトリとジーノだと心配だが、アーランドからここまで来る冒険者だ。実力から考えて十分だろう」

「ハハッ!もちろんですよ。ええ、ここまで来たんですから」

 

 怖いわ~。人間の見栄って怖いわ~。

 アードラってたるリスとか青ぷにとか名前が明らかに一味違うんだが。

 せめて、傷薬みたいなのが欲しいな。

 

「よしっ手続きが終わったぞ」

「(速いよ!)ええどうも。ところで、薬とか売ってる店ってありますかね?」

「薬があるかはわからんが、この店を出て真っ直ぐ行ったところに雑貨屋のようなものがあるぞ」

「あ、そうですか、どうもです。それでは」

「ああ、気をつけてな」

 

 

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「どうすっかな」

 

 とりあえず、この150コールで何を買うかだ。

 物価が分からないから、何を買えるか全くわからんが……。

 

 手袋が最低でも欲しいな。薬は金が余ったらかな。

 ガチ戦闘はもうしないって心に誓ったのになー。早く相棒に会いたいぜ。

 

「っと、ここか」

 

『パメラ屋』

 

「……この村では店に自分の名前を付けるのが流行ってるのか?」

 

 パメラってどう考えても人名だよな。違ったら恥ずかしけど。

 

「とりあえずっと」

 

 俺は扉を開けて中に入った。

 

 

「いらっしゃーい」

「ヘブン!」

 

 クッ!この村の女性偏差値は化け物か!

 俺の目の前にはきれいな長い薄紫色の髪を持つ美人さんがいた

 何より特筆すべきはバスト! 異世界中最高の威力だ!

 あれ?俺なんかきもくないか!?

 

「大丈夫かしら?」

「あっ!もちろんですとも! ええ、全然大丈夫ですよ!」

「あら~。元気ね~」

「い、いえいえ! あ、俺アカネっていいます」

 

 テンパリすぎて、何故か自己紹介しちまったーー!

 

「私は、パメラって言うの。よろしくね~」

「こ、こちらこそ!」

 

 フウ! 俺また美少女とお知り合いになっちまったぜ!

 俺の人生もうバラ色じゃないかな、これ。勝ち組みでしょ。

 

「ところで、今日は何をお求めかしら~」

「あ、はい。手袋みたいなものってありますか?」

「軍手ならそっちの棚に置いてあるわよ~」

 

 パメラさんは俺から見て右の方を指した。俺はそっちの棚に近寄って中を見てみた。

 

「お、あったあった」

 

 まさに軍手だった。ジーノ後輩がしてるようなレザーグローブがいいが、背に腹は代えられない。

 

「値段はっと……150コールだと」

 

 運命か、これは……まさしく運命。

 

「これ、買います」

「まいどあり~」

 

 俺は先ほどもらったばかりの金をカウンター出そうとした。

 

「…………」

「? ……どうしたのかしら~?」

 

 パメラさんが手を前に差し出している。

 

 そこに渡せってのか!その手に渡せってのか!

 これが、その辺のコンビニ店員だったら、無視する所だが……。

 

「どうぞ」

「はい、確かに」

 

 やばい、心臓がドキドキいってる。買い物ってこんなに心臓に悪いものだったのか

 若干触れちゃったんですけどー!やばい、今だったら何をしても怖くないわ。

 間違いなく、前の世界含めて一番幸せだわ。

 

「それでは、また来ます!」

「どうもね~」

 

 俺は意気揚々と外に出る。

 

 

「…………」

 

 外に出て俺は後ろを振り向く。

 

「……また来よう」

 

 こうやって、リピーターが増えていくんだろうなと思った。

 


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