アーランドの冒険者   作:クー.

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爆弾強化

 

「よーし、今からミミちゃんの武器材料の作成に取り掛かりたいと思います」

「ぷに」

 

 ミミちゃんのお願いを受けた翌日、俺はアトリエでさっそく錬金術の準備に入っていた。

 

「……作り方の知識はある、勉強した覚えはない。ホラーな体験だな」

「ぷに~」

「まあこっちの記憶が残ってるのは万々歳だな。こっちも失ってたら一ヶ月が完全に無駄になる」

「ぷに」

 

 そう言う訳で、まあ失敗はしないだろうから適当に頑張るとしよう。

 

「味気ない、このままじゃあっさり終わりすぎるだろ。ここは隠し味を……」

「む~」

 

 と思ったが、師匠がかわいらしい唸り声を上げてこっちを見てくるのでやめとくとしよう。

 過保護な師匠の前じゃ危険行為の一つも出来ないな。

 

 

…………

……

 

 

 材料の準備など含めて二日後、見事に鉱石を完成させたのだが。

 

「俺のアイデンティティーが消失しかけてる……」

 

 鉱石を片手に、俺は茫然とつぶやいた。

 

「ぷに?」

「俺のアピールポイントは爆弾なんだ! それが最近はこんな物にかまけて、爆弾の作成を怠っている……嘆かわしい!」

「ぷに……」

 

 俺の今の実力ならメガフラムやラケーテレヘルン、ドナークリスタル等々の上位ランクの物を作れるはずなんだ。

 なのにバカの一つ覚えみたいにフラムフラムと進歩が全くない。

 

「と言う訳で、お前はこれを親っさんに届けて来てくれ、その間に俺はスッゴイの作っとくから」

「ぷに」

 

 俺はぷににフリーゲント鋼を乗っけて、親っさんの下へと送りだした。

 

「ここは昔失敗した三色爆弾をレベルアップした爆弾たちで……」

「ダメだよ?」

「ですよねー」

 

 前にそれで師匠の機嫌を損ねた事は忘れてはいない。

 だけどその内やりたい、絶対にやってやる。

 

「よし、パパっと三種類作っちゃうか」

 

 コンテナの中から材料を取り出して、俺は早速作成に取り掛かった。

 

…………

……

 

 

「……ぷにが戻る前に全て完成させるとは、さすがは俺。爆弾だけなら俺の右に出る者は師匠くらいだぜ」

 

 フラムが三つ束になってサイズが両手で持ち上げるくらいになったメガフラム。

 背中にジェットエンジンが付いた雪だるま、ラケーテレヘルン。

 すごいバチバチと電気の音がうるさいドナークリスタル。

 

「片手で投げれる分前の方が使い勝手はよさげだな」

「……アカネ君って爆弾作るのは本当にうまいよね」

 

 師匠が俺に近づいてきて感嘆の声を漏らしていた。

 

「まあ、俺にかかればこんなもんよ」

「うん、アカネ君ももう立派な錬金術師だね。偶に変な事に使うけど……」

「た、大半は普通に使ってるからいいじゃないか」

 

 一割程度は俺の趣味のために使っている節は無きにしも非ず。

 

「それでね、アカネ君に聞きたい事があるんだけどいいかな?」

「? 別にいいけど?」

 

 師匠が珍しく顔をキリッとさせて俺に質問してきた。

 

「アカネ君は、将来錬金術士になるの? それとも冒険者?」

「うん? あっ、ちょっと待ってくれ」

 

 まさか師匠と進路について話すことになるとは、俺の嫌いなことの一つは将来の仕事を考えることだ。

 二十歳の人間が何を言ってるのかって話だけどな……。

 

 錬金術士は将来安定間違いなし、安定した報酬であなたの将来をサポートします。

 冒険者は危険と隣り合わせ、歳を重ねるたびに体にボロが出てくるでしょう。

 

「錬金術士一択だな」

「ほ、ホントに!? そ、そっか、うんそれなら良いんだ!」

 

 師匠は満面の笑みになって俺の選択を喜んでくれた。

 うん、これ単純に師匠が俺に錬金術続けてほしかっただけみたいだな。

 

「まあ、しばらくは冒険者の仕事もするけど将来的には錬金術だな」

「うんうん、そうだよねそうだよね」

 

 俺が錬金術続けるのがそんなに嬉しいのだろうか、まあ数少ない教え子だし当然なのかもしれない。

 口には出さないけど、たぶん俺が師匠の最後の弟子になるだろうし……。

 

「えへへ~♪」

「あー、ちょっと俺出かけてくるわ」

「うん、いってらっしゃい。気をつけてね」

 

 師匠の喜びように照れてきた俺は、アトリエから逃げ出した。

 まさかここまで喜ぶとは思わなんだ。

 

 

 

 

 

 

 この後仕方ないから爆弾の威力をテストしてみた。

 

 メガフラムを使ってみたら、自然豊かな緑の大地があっという間に焼け野原に変わった。

 強化版ってレベルじゃない、こんなん日常的に使ってたら森の神的な物に天罰を下されても文句言えないレベルだ。

 

 よっぽどの事がなければ普通のフラムを使おうと心に誓った。

 

 


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