アーランドの冒険者   作:クー.

3 / 131
神の料理人

 アーランドを探索すること数時間程度して、やっと良さそうな店を一つ見つけた。

 

「コーヒー一杯無料か、サンライズ食堂……ここなら時間潰せそうだな」

 

 ぷにを置いてきたせいで、独り言になっていて空しい。

 

「コーヒー一杯で粘る迷惑な客を演じてやるぜ」

 

 俺は意気込んで目の前を扉を開けて店に入った。

 

「いらっしゃい」

 

 店に入るとカウンターの内側にいるイケメンさんに迎えられた。

 大分若く見えるけど、コックさんみたいだ。

 

 テーブルが埋まってる辺りなかなか人気があるみたいだな。

 つか、俺カウンター席に座らないといけないじゃんか……。

 

 カウンターの前でコーヒー一杯で粘るとか俺の精神値がやばい、いた仕方がなく俺はカウンターに近寄り、席に座った。

 

「とりあえず、コーヒーお願いします」

 

 とりあえずですよ、とりあえず。

 

「はい、どうぞ」

 

 ちょうど、淹れたところだったようですぐに出てきた。

 イケメンさんは俺の事をじろじろ見ながらこう言った。

 

「あんた、変わった格好してんな」

 

 カウンター席名物、会話が登場しやがったよ。

 

「あー、そうですかね?」

「俺の知り合いも大分変った格好してるけど、あんたもなかなかに変わってるから気になちまってさ。

別に悪い意味じゃないぜ」

 

 逆によくあるとか言われたら、この世界の文明レベルを考え直さなきゃいけなくなるな。

 でもクーデリアさんとか結構いい服着てた気がする……。

 

「結構遠いところから来てますからね」

「へえ、どっから来たんだ?」

 

 うっ、またあの設定を使わなければならないのか……。

 数分前の悪夢がよみがえりそうだ。

 

「海の向こうから船で来たんデスヨ」

 

 緊張しすぎて語尾あがっちまったぜ。

 これも小心者故なのである。

 

「海を渡って! すごいな! なあなあ、海の向こうってなにか珍しい食材とかあったりするのか?」

 

 このイケメン超元気。笑顔がまぶしすぎるだろ。

 

「いや、あの、まだ何がこっちで普通とかわからないんで……」

「言われてみりゃそうか、よし! 今日はオレのおごりだ! 何でも頼んでくれ」

「マジですか!」

「どうせ金持ってないんだろ。その代り、今度そっちの料理について聞かせてくれよ」

「そんなんでよければいくらでも!」

 

 このイケメンは心までイケメンすぎるだろ。とりあえず拝んでおこう。

 

「あなたは、神です」

「なんだ、そんなに腹減ってたのかよ?」

「丸一日と半日何にも食ってませんでした」

「そうか、そんじゃ好きなもん頼んでくれていいからな」

「本当にありがとうございます」

 

 俺は心の底からお礼を言いつつ、料理ができるのを待った。

 

 

…………

……

 

 

 あの後、適当にオススメのものを頼んだんだが、冗談なしに全部うまかった。

 

「ごちそうさまでした。イクセル様」

「いや、様はやめてくれよ」

 

 食べてる間に名前を聞いて、敬意をこめて様付けにしてるのだがどうも不評のようだ。

 

「このお礼はいつかしますんで」

「ああ、時間が空いたときでいいから、いろいろ聞かせてくれよ」

「はい! 失礼します」

「おう、またな!」

 

 俺は扉を開けて外に出ていった。

 

「いや、しかし本当にいい人だったなイクセルさん」

 

 俺の異世界好感度ランキングをぶっちぎりの一位になったぞ。

 んで、この後俺に対する好感度がぶっちぎりで低いであろうクーデリアさんのとこに行かなければならない。

 

「憂鬱だ……」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。