アーランドを探索すること数時間程度して、やっと良さそうな店を一つ見つけた。
「コーヒー一杯無料か、サンライズ食堂……ここなら時間潰せそうだな」
ぷにを置いてきたせいで、独り言になっていて空しい。
「コーヒー一杯で粘る迷惑な客を演じてやるぜ」
俺は意気込んで目の前を扉を開けて店に入った。
「いらっしゃい」
店に入るとカウンターの内側にいるイケメンさんに迎えられた。
大分若く見えるけど、コックさんみたいだ。
テーブルが埋まってる辺りなかなか人気があるみたいだな。
つか、俺カウンター席に座らないといけないじゃんか……。
カウンターの前でコーヒー一杯で粘るとか俺の精神値がやばい、いた仕方がなく俺はカウンターに近寄り、席に座った。
「とりあえず、コーヒーお願いします」
とりあえずですよ、とりあえず。
「はい、どうぞ」
ちょうど、淹れたところだったようですぐに出てきた。
イケメンさんは俺の事をじろじろ見ながらこう言った。
「あんた、変わった格好してんな」
カウンター席名物、会話が登場しやがったよ。
「あー、そうですかね?」
「俺の知り合いも大分変った格好してるけど、あんたもなかなかに変わってるから気になちまってさ。
別に悪い意味じゃないぜ」
逆によくあるとか言われたら、この世界の文明レベルを考え直さなきゃいけなくなるな。
でもクーデリアさんとか結構いい服着てた気がする……。
「結構遠いところから来てますからね」
「へえ、どっから来たんだ?」
うっ、またあの設定を使わなければならないのか……。
数分前の悪夢がよみがえりそうだ。
「海の向こうから船で来たんデスヨ」
緊張しすぎて語尾あがっちまったぜ。
これも小心者故なのである。
「海を渡って! すごいな! なあなあ、海の向こうってなにか珍しい食材とかあったりするのか?」
このイケメン超元気。笑顔がまぶしすぎるだろ。
「いや、あの、まだ何がこっちで普通とかわからないんで……」
「言われてみりゃそうか、よし! 今日はオレのおごりだ! 何でも頼んでくれ」
「マジですか!」
「どうせ金持ってないんだろ。その代り、今度そっちの料理について聞かせてくれよ」
「そんなんでよければいくらでも!」
このイケメンは心までイケメンすぎるだろ。とりあえず拝んでおこう。
「あなたは、神です」
「なんだ、そんなに腹減ってたのかよ?」
「丸一日と半日何にも食ってませんでした」
「そうか、そんじゃ好きなもん頼んでくれていいからな」
「本当にありがとうございます」
俺は心の底からお礼を言いつつ、料理ができるのを待った。
…………
……
あの後、適当にオススメのものを頼んだんだが、冗談なしに全部うまかった。
「ごちそうさまでした。イクセル様」
「いや、様はやめてくれよ」
食べてる間に名前を聞いて、敬意をこめて様付けにしてるのだがどうも不評のようだ。
「このお礼はいつかしますんで」
「ああ、時間が空いたときでいいから、いろいろ聞かせてくれよ」
「はい! 失礼します」
「おう、またな!」
俺は扉を開けて外に出ていった。
「いや、しかし本当にいい人だったなイクセルさん」
俺の異世界好感度ランキングをぶっちぎりの一位になったぞ。
んで、この後俺に対する好感度がぶっちぎりで低いであろうクーデリアさんのとこに行かなければならない。
「憂鬱だ……」