「~♪~~♪~♪」
「ぷ~に~♪ぷに~♪」
俺とぷには上機嫌でアランヤ村へと自転車に乗って向かっていた。
自転車の完成後に、クーデリアさんやイクセルさんに挨拶して出発して今に至る。
おいてきぼり状態から一ヶ月、自転車を手に入れてやっと帰ることができる。
「長かった……」
「ぷに♪ぷにに♪ぷ~にに♪」
「いつになく上機嫌だな」
「ぷに!」
それもマークさんが気を利かせて付けてくれたぷに用のカゴのおかげだろう。
俺が支度をしている間に付けてくれていたのだ。
「今度なんかお礼でもするか?」
「ぷに!」
どうやら賛成らしいな。
しかし、ペーターがぷにを置いてってくれて本当に助かった。
ぷにがいなかったら、いろいろと退屈すぎる。
「あ~、なんか面白いもんでもないかね~」
「ぷに~」
折角いろいろ見ながら帰れるんだ。
ぷにがいれば大抵のことは大丈夫だから、寄り道して行ってもいいかもしれない。
「…………ん?」
なんか前方の方から人が歩いてきてる。こんな所にいるってことは同じ冒険者かね?
「…………」
減速して、目を凝らしてみると前にここらへんで会った。あの山賊だか騎士だかの人だった。
「……ぷに、あの人俺の中の怪しい人ランキング二位の人なんだけど」
「ぷに?」
一位はロロナ先生とやらだ。あの人は話だけ聞くとものすごい怪しい。
まぁ、そんなことは置いといてだ。地味に距離が近づいてきてる。
しかもなんか俺の事を凝視してる……何で?
「無視するべきか、こないだのお礼をするべきか」
俺的には後者がいいんだが、前者も無難といえば無難だ。
「ぷに。お前、1と2のどっちが好きだ?」
「ぷにぷにぷに」
3ぷにか……これはぷにの俺に対するネタフリと思っていいのだろう。
「オーケー。面白ことかましてやんよ」
「ぷに!」
「クックック」
そうこいうしているうちに大分近づいてきた。
オペレーションテンコウセイを開始する!
「遅刻、遅刻~! 一ヶ月前の馬車に乗り遅れちゃった~」
「なっ!?」
そして俺は自転車で騎士の人にぶつかって横転した。
「痛った~い。どこ見て歩いてんのよ」
急いでた私は、ちょっと目つきの悪い男とぶつかっちゃった☆
「ぶつかってきたのは君の方だろう! 第一その妙な乗り物は何だ!」
「ちょ、ちょっとどこみてんのよ!」
騎士の人は私の大事なもの(自転車)を見ていたの。いやらしい!
「話を聞け! それに、その喋り方をやめたまえ!」
「い、いままで誰にも見せたこと無かったのに!」
「…………」
騎士の人のコメカミに青筋が立っているのが見えた。
おお、こわいこわい。
「い、いっけなーい! もう、こんな時間! 急がないと!」
俺は急いで、自転車を起して立ち去った。
「な!? ま、待ちたまえ!」
ふっ、人間の脚力でこの俺の愛車に勝てるはずがなかろう。
さらばだ。もう一度あったら、「あー、あの時の!」って言ってやるさ。
「グッバイ!」
「ぷに!」
ドコッ!
ぷにが前のカゴから俺の顔に突っ込んでき、バランスが取れずにまたも横転してしまった。
「……お気に召しませんでしたか」
「ぷに!」
そういや、このネタは俺の世界でしか通用しないもんな。
「ふぅ、俺が浅はかだったってことか……というわけで、俺を睨みつけるのやめていただけないでしょうか?」
座り込んでいる俺は騎士の人に見降ろされて睨みつけられていた。
何気に片手で腰に刺さった剣の柄を持っている……。
「君は数秒前の自分のした事さえ覚えていないのかね?」
「人にぶつかって逃げました。自分がやられてたら許さない」
「ならば、すべきことはわかっているのではないかね」
「……うう」
今回ばかりは調子に乗りすぎた俺が悪いということもあるので、素直に土下座の体勢を取った。
「申し訳ございません」
「何故あのようなことをしたのかね」
「俺の相棒であるぷにが、何か面白い事をしろとのお達しだったので」
「相棒のぷに?」
そう言うと騎士の人は倒れた自転車の上に乗っていたぷにを見た。
「もしかして君はアカネという名前ではないかね?」
「……有名すぎるのが仇になった」
自慢ではないが俺はぷにを連れまわしてたおかげで有名人となっていたのだ。
このことで名前を知られることになるなんて……。
「やはりそうか、クーデリア君から話は聞いている」
「クーデリアさんから?」
「ああ、すぐ調子に乗って人をからかうとな。まさか、初対面で実感することになるとはな」
「……クーデリアさん」
こいつは不当な評価だ。今度あったら訂正させてもらう。
……しかし、そろそろ足がしびれてきて、きつい。
「そろそろ許してくれたりは……」
俺が様子をうかがうと、仕方ないと言うかのようにため息をつかれた。
「反省はしているようだな。次はこの程度では済まないと思っておけ」
「本当に申し訳ありません」
俺はうなだれつつ立ちあがった。
「それじゃ、急いでるんで失礼します。この埋め合わせはいつかしますんで……」
「いろいろと聞きたいこともあるが……まぁ、いずれ会うだろう」
そう言うと、騎士の人はアーランドの方向に歩を進めていった。
「……目つきは怖いけど意外とやさしい人なのかね?」
「ぷに」
「反省してるって、さすがにやりすぎた」
最近はマークさん以外とかかわりがなかったので、加減を間違えてしまった。
「結局名前聞き忘れたな……」
自己紹介をする空気じゃなかったしな。
まぁ、あの人も言ってた通りその内また会うか……。
「よし!気分一新!アランヤ村へ向かうぞ!」
「ぷに!」
過去の事なんて振り返らずにゴーゴーだ!
……あれから一週間が経った。
あの時の元気が懐かしいほどに俺は憔悴していた。
「……うう、いきなり夕立が降るなんて……」
そろそろ今日の拠点でも決めようかと思ってた矢先に降られたのだ。
「はあ、足もパンパンで痛いし……」
ぷにが寝てて独り言状態になってるし。
雨から庇ってやった俺の身にもなってくれよ……。
「早く村に着いてほしい……」
所詮馬車なんて時速が速くて十数kmやそこらだ。俺の筋力でこぐ速さに適うはずがない。
そこらか考えるに、あと一週間弱ぐらいで着くはずだ。
「……だるい」
五日後
「着いた~」
夕方頃にやっとアランヤ村に到着した。
「やどや~やどや~」
挨拶は明日にしよう。とりあえず今はベッドで思いっきり寝たい。
その後俺は宿屋で爆睡した。
……今日ばかりはオチがなくてよかった。