アーランドの冒険者   作:クー.

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一年目『冒険者としての始まり』
相棒は白玉団子


気が付いたら森にいる、そんな体験をだれでも一度はしたことがあるだろう。

……したことがないって?

馬鹿なことを、俺みたいな凡人が経験することはだれでも一回はやってるはずさ。

 

そう、今現在俺は森にいるわけだ。

 

 

 

 

 

「さて、どうしようか」

 

自分で言うのもなんだが、俺はそこまでアウトドアではないんだよ。

筋トレは好きだけど、走るのとかだるいからってとりあえず美術部に入るような男だ。

でも、小学生のころはボーイスカウトやってて自然のことはそこそこ分かっているんだよ。

 

つまり何が言いたいかというとだな。

 

「死ぬかもしれん」

 

 

俺の今の武装は、パジャマと寝巻きとジャージだ。

要はジャージオンリー。他には何もない……いや、スリッパ履いてた。

 

まぁでも考えてもはじまらないよな、起きたら森なんて俺にとっては初めての経験だ。

我ながら人生経験の足りなさに辟易するぜ。

 

「作戦はひたすら歩け、GO&GOだ」

 

目標は森を抜けることだ!

 

 

 

……

………………

 

 

 おいおい、ここは夢もしくは異世界ってことかよ。

 

「ぷにっ、ぷにっ」

 

 俺は今、木陰に隠れているんだが、なんか白いぷにぷに鳴いてる生き物がいる。

 一言で言うなら雪見大福だ。

 

 今俺の脳内には三つの選択肢があるのだよ。

 

 1.逃げる 

 2.戦う 

 3.食してみせよう

 

 

 俺のお勧めは1なんだが、俺の脳内にいる三百人のファンが3を勧めてくる。

 

 ……今まで俺を応援してきたファンは裏切れないよな。

 あいつらは俺が生まれたときからの付き合いだ。

 なんか、あいつら近くにいると妙に肩が重かったり、寒気がするけどな。

 

 それにどうせ、あんなスライムっぽいの一般ピーポーの俺でも行けるはずさ!

 

 というわけで、レッツチャレンジスリー。

 

「死ねぇ!」

 

 俺は木陰から飛び出してやつ目がけて左足で踏み込み、右足からの蹴りを放とうとした。

 

「ぷにっ!」

「ぐぼぁ!?」

 

 何をされたかよくわからなかったが、おそらく腹に向かっての体当たりだろう。

 つか、やつにはそれ以外できるはずがない。

 

「スライム風情が!」

 

 再び俺はやつに向かってさっきと同様に蹴りを放った。

 

「ぷににっ!」

 

 特に打撃音もせず、奴は真っすぐ茂みに向かって吹っ飛んでいった。

 

「ぷにー!」

 

 と思いきや、着地して奴は一直線に俺の腕めがけて跳ねくる。

 

「いてぇーー!」

 

 ガジガジと俺の腕をかんでくる、大福野郎。

 

「雪見大福に食されてたまるかよ! 俺にはファン(脳内)の期待があるんだよ!」

 

 腕をブンブン振り回して引きはがしてからのキックを放つ。

 だが、また体当たりの応酬を受ける……。

 

 

 

 

 

 

 

 …………どれだけ続けていただろうか、今の俺と大福はそう。

 

 

「お前なかなかやるじゃないか」

 

「ぷにに(お前もな)」

 

 そう、まるで土手で喧嘩したあとの不良のような状況だった。

 

「一緒に来るか?」

 

「ぷに(あぁ、ついていくさ)」

 

 奴の言葉? いや、まったくわからんよ。あくまでただの妄想です。

 いやでも、ついてくるッぽいんだよねこれが。

 

「これが、種族を超えた友情ってやつか……」

「ぷに?」

「よし 白玉よさっそく俺を人のいるとこまで案内してくれ」

「ぷに」

 

 了承したっぽい。つか、ぷには俺の言葉がわかるのかよ。

 

 言わなくてもわかると思うが白玉はこのぷにぷにしたやつの名前だ。命名俺、由来? 言わせんな恥ずかしい。

 

 

「言い忘れてたが、俺の名前は白藤明音だ。よろしくなぷに」

「ぷに!」

 

 まだまだわからないことばかりだ

 とりあえず、今は俺の前をひょこひょこ跳ねてるこいつについていくしかないさ。

 

 だけどさ……友達ができたのはいいことだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ白玉。さっきの俺のモノローグ、最高にカッコよかったと思うんだがどうだろうか?」

「ぷに?」

 


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