更新が遅れて申し訳ありませんでした。今回はいつもより長めにしたので許してください!
※食戟のソーマ十三巻と漫画版遊戯王ファイブフィール九巻買いました。
遊星の未来の可能性の一つにしれっと混じる先輩達とZONE(別人)に笑い、ジャックの清々しいまでの踏み台レモン(否、二五〇円)に熱いフィールを感じましたが、その後に読んだソーマのスタジエール辺の秘書子と番外編水原さん(16)に全て持っていかれました。
アニメのマジカルキャベツといい、水原さんマジ天使。
堂島さん、アニメでのキャベツピンクは止めてください。お茶の間がザ・ワールドしてしまいます。
「これこそが俺が
「魔法?呪い?ムッシュ榊奴、お前何を言っている?」
「アレ?自分は『レギュムの魔術師』とか言われているのに信じていないんですかァ?四宮セ・ン・パ・イ?」
食戟の結果は既に出た。
そして、全てが俺の”思い通り”になった以上、今更演技をする必要もない。
「この世の中にはね、本当に魔法も呪いもあるんだよ」
「テメェ、何を考えてやがる…………。食戟は俺の勝ちって、事実は今更変わらねえ」
「まさか、俺が最初から貴方に勝てると思って挑んだとでも?馬鹿言っちゃいけない。これでも、才能と経験っていう途轍もねえ壁なんてのは嫌というほど実感してんだよ。どれだけレシピを完璧に再現したところで日々それを実行し、洗練させた天才の料理は必ず俺の上を行く。あの天才だらけの遠月にいて俺がその壁にブチ当たらなかったとでも?―――――当たったよ!そして、粉々に砕けた!だからいま俺はここにいる!」
遠月という箱庭は凡人が生き抜いていけるほど生易しいものではない。どれだけ優秀な成績を残しているものでもたった一度の失敗で退学という気を抜けない環境と食戟という独自の制度は若き料理人達を互いに競わせ、巨大な原石を荒削りの美しい宝石へと磨き上げる。
そんな中、「誰もを料理で笑顔にする」という俺の願いは見事撃ち落とせれた。遠月が求める『食の極み』は食べた人間の笑顔”なんか”よりも遥か先を目指していて、笑顔という”中途半端な”イメージは高みを目指すもっと必死で切実な料理人達の思いに打ちのめされた。
俺が魔女と出会いレシピを見ただけでその味を完璧に再現する魔法を得た後もそれは変わらない。食の怪物たちは俺が引き出した”偶像”よりも上の味を引き出してくる。それに対して俺は常に一定のラインまでしか踏み込めない。
「どれだけ技術を、知識を、経験を磨いたところで
「俺と幸平たちの食戟のやり直しだったか?だが、そんなものに何の意味がある!既に出た勝負だ。まさかあいつらが今の食戟で何か掴んで俺に勝る武器を手に入れたとでも言いたいのか?」
「残念ながらそれはありえないでしょう。貴方が作ったのも俺が作ったのも彼らが作ったものと作り方や材料は同じテリーヌだが、参考にしようとすればどうやっても美味い方に引っ張られる。”今はまだ”無理だ。それに俺が言ったのは食戟のやり直しではなく、”判定の”やり直しだ」
「…………、?それなら尚更意味がわからねえ。それのどこに意味がある?」
「意味は――――まぁ、実際に判定する人たちに聞いてみましょう。関守さん、どうですか?」
「…………」
「ありゃ、無視ですか。ドナートさんは?今改めて考えてみて、四宮さんの料理と田所さんの料理―――――どちらが美味しかったですか?」
「…………わからない」
「わからない?それはおかしな話ですね?一度決まった勝敗でしょう?何故、わからないんです?」
関守さんもドナートさんも二つの食戟の両方で四宮さんに票を入れている。だが、その二人でさえこの四宮小次郎が圧倒的勝者であるはずの状況で再びの問いに答えられずにいる。
「………確かに俺はシューファルシもテリーヌも四宮の方が素直に美味しいと思った。だが、今は何故かその答えをもう一度出せる自信がない」
「俺もです。こんな事はありえないのに、あってはならない事なのに自分で下した決断をもう一度しろと言われると答えが出ない」
食戟における審査員とはその一線に賭けられた対価と料理人の魂を背負い、判断を下さねばならない。その判定は絶対として扱われる以上、当然心変わや心情による変化があっていい筈はない。
それに何より今回の審査員は皆、遠月が誇る料理人達だ。普段ならともかく、料理に関してそれも食戟ならば実際に調理する者達以上に真剣に取り組む。それなのに、彼らが今胸を張って優劣を付けられる基準というものが此処にはない。
「ふむ、では先程の食戟は無効って感じですかね?いや、一度決着は付いたのに”客”の心を掴んでいなかった四宮さんに問題があるか」
「なん、だと………っ!?テメェ、何が言いたい?」
「うーん、ハッキリ言わせてもらいますけど。今の四宮さんは怖くないんですよね」
誤解の無いように言うと俺を睨みつけてくる四宮さんの顔は震え上がるほど怖い。こんな事を言っている際に考えるものではないが、俺はこの地下の厨房から再び地上の陽の光を見ることができるのだろうか。
そんな不安がよぎる中、それでもこの人に伝えなければいけないものがある。
「俺は遠月学園で一年の終わりから卒業式まで第十席の椅子を守り続けていました。元一席の四宮さんならお判りでしょうが、あの学園において十傑とそうではない生徒の間には目に見えるほどの差が存在する。その証拠に遠月の卒業生の殆どが十傑の席に座ったことのある人間です。そして、十傑とそれ以外のちょうど境目である第十席にはとある役割が存在する」
「知ってるよ。遠月十傑だった人間ならだれでも知っている下らないルールだ。俺はそんなもの受けた記憶は無いがな」
「じゃ、その時の十席の人も優秀だったんですね」
「違えよ。誰があんな条件を呑むかって話だ」
遠月において、十傑としての地位というのは一学生に与えられる権限を軽く超えている。
自分専用の施設を持つのは当たり前、望むなら学園や外部のスポンサーからの莫大な資金援助だって可能だ。十傑の中には学生時代からすでに自分のブランドや店を持っているものも少なくないし、知名度だって遠月を知る世界中の人間から注目されるまでになる。
当然、そんな席を手放したいと思うものは限られ、十傑以外の学生に食戟においてその席を賭けるに値する対価など早々用意できるものでは無い。十傑の地位を掛けた食戟は十傑内で行われるモノであり、それ以外の者にその場に参加する権利は与えられない。
「ま、そうですよね。今のえりなちゃんも噂だとまだ食戟じゃ負け無しな上に、自分から挑ませることは有っても挑む事は無いそうですし、俺の前任者はそもそも食戟自体否定的でしたから」
遠月学園における十傑への挑戦条件。
通常、食戟とは本人同士が同意した場合のみ発生するものだが、ただ一つ十傑に選ばれたものでさえ断る事が出来ない状態が存在する。
「『遠月十傑評議会 第十席に勝利した者は無条件での十傑に対する食戟が認められる』だったか。第十席ってのは大変だよなぁ。ま、実際は十席自体に挑むにも対価は必要なんでまずお目に掛かる事は無いが―――――」
「俺は受けましたよ?毎日ポストに送られてくる挑戦全部に。何故か最後ら辺は全くと言っていいほど来なくなりましたけど」
「酔狂な事だな。だが、それがこの勝負と何の関係がある?」
「…………まだ、わからないんですか?俺に挑み、負けた者達の中にはそのまま挫折し遠月を去ったもの者も多い。でもね、それでも必死に努力し、己を磨いて上を目指したものは確かにいたんだよ。何度も挑戦して、遂には俺の偶像も越えた彼らには確かにあった。勝利に対する貪欲な飢えがッ!生き残るための執念がッ!そして何より、目の前の客に対する精一杯の挑戦がッ!!」
「客への挑戦だと?」
「そう、客に対しどんな状況でも最高の料理を出すのは『最低条件』だ。でも、それは料理人にとっていつまでも考え続けなければならない『最大案件』でもあると俺は思います。料理人として、客として今
「四宮、最後にスタッフや客の意見を聞いたのはいつ?」
「水原?」
「確かにあなたの料理は完成している。でも、このルセットには不測の事態に陥った時の対応策が存在しない。料理人として、オーナーシェフとしてその事態が起こらないようにすることは大切な事よ?でも、それだけじゃいけない事を私は三年前に知った。卒業後、誰よりも早く戦場へと飛び立ったあなたがそれを知ったのはいつ?」
四宮小次郎という料理人について、今この場で最も理解している人間は水原冬実に他ならないだろう。
遠月学園第七十九期卒業生にして、在学中は第二席として最も近くで四宮小次郎を見てきた人間だ。誰よりも彼をライバル視し、同時で誰よりも認めている料理人としての盟友。
「お前、気づいてたのか――――」
「料理人としての完成は同時に料理人としての停滞を意味する。あなたが戦った榊奴操という料理人はレシピを通じてそれを創りだした人間を映し出す鏡よ。完璧な偶像を創りだし、客にそれがその料理の本来の味なのだと刻み付ける。だから、他の料理人は次にその客が同じ料理を食べるときに彼らを満足させるために、自ら作り出したレシピを超えなければいけない。でも、停滞した人間は――――そこが完成形だと、上を目指すことを諦めた人間は永遠に偶像を超える事は出来ないわ。私の集めたスタッフもそうだった。そして、四宮。あなたもこのままだとこの怪物に食い殺される」
水原さんが指し示すのはテーブルの上に置かれた二つのテリーヌ。
それは一見同じに見えるものだが、実はカリフラワーを調理する段階で俺のモノにはワインビネガーが使われている。それは今日の課題で田所さんが行い、他ならぬ四宮さん自身が否定した悪足掻き。だが、料理人として果たしてそれは間違っていただろうか?
「―――――四宮さん。俺、実は昔貴方の店でこのテリーヌを食べた事があるんですよ。その時に一緒にいた人が言ったんですよ。「この人は天才だ。絶対に今より大きくなる」ってね。俺はその人を信頼しているんで、その言葉の通りだと絶対に勝てないって今でも思っています。でも、俺なんかの料理で今回貴方に傷を付けれてしまった。しかも、貴方が創ったルセット通りモノではなく、学生が土壇場で必死に考えだした苦肉の策で」
魔女の魔法は元になるレシピが優秀であれば優秀であるほど効果を発揮する。それは逆に言えばレシピの完成度が料理としての魅力に直結することを意味する。そういった面では申し訳ないが、田所さんの技術では「SHINO'S」で使われている料理の味を超える事は出来ないだろう。レシピとは幾分にも計算された芸術そのものなのだから。
「もう一度言います。料理人として客に最高の料理をお出しするのは最低条件であり、最大案件だ。――――四宮小次郎、アンタはいつから客の顔を見なくなった?」
「……………お前の料理、食べさせてみろ」
四宮さんが重い口を開く。
その視線はテーブルに置かれたもう一つのテリーヌに注がれていた。
第十席の制度については完全にオリジナルです。
現在の学園祭編を見ていると、こういうのが無いと十傑の入れ替わりって年度が切り替わって三年生が居なくならない限り内部の順位変動位しかなさそうだったので。まぁ、その内学期末あたりに新しい十傑の選定などはやるでしょうが。
因みに、この作品では主人公より後に十傑入りした人間は全員『魔女の後継者』の洗礼を受けています(遠月学園による主人公の能力の有効活用)。彼のせいで新年度開始から暫くは空席があったことでしょう。
後、主人公が第十席の座を守り通したとか言っていますが、こんなめんどくさい役職狙う人間が居なかったので食戟の対価として誰も選ばなかっただけです。そう、卒業式後に現れた最後の挑戦者以外は―――――。
今回は感想でも疑問を寄せられた主人公が今まで首になったお店の紹介を―――(いずれも現十傑第九席さんが関わっていたことはどうかご内密に)
これまでの主人公の栄光?の軌跡
店A「遠月の卒業生がこんな時期に余っている!?第十席か。だが、余り物には福がある!」
↓
店A「ナニコレー!」
店B「Aがやられたか…………だが、奴は我らの中でも最弱。どうれ、この私が雇ってやろう」
↓
店B「馬鹿な…………一週間も立たずにだ、と!?」
店C「皆さん遠月を舐めすぎなんですよ。数ヶ月前まで学生といえどあの地獄を生き残った猛者。生半可な覚悟で扱えると思わないことです。え、旅に出ている?ならば、こちらから出向くまで!」
↓
店C「――――なんで料理人がギアナ高地で修行しているの?」
主人公「俺より強い奴に会いに行く」
水原さん「もう少し、(料理の)修行したほうがいいよ?」
尚、三軒目は実地へ入ること無く、主人公も知らないうちに履歴書に傷が入った模様(遠月側が承認したけど、その場でオーナーから直々に解雇通知を渡された)。
番外編 とある人々による抵抗
叡山「そう、榊奴操だ。そう名乗る奴が来たらどんなに腕が立とうと採用するな。いいか、これは関係各所に通達しろ!」
久我「今年の学園祭こそはあの野郎の記録を抜く!全員、俺のコピー以上を叩き込むかんね!」
園果「こ、こんな事はしたくないんですけど…………。ボディーガードも雇いましたし、私のところへは来ないですよね?」
一色「うん、今日もいい野菜が採れた!そうだ、操先輩の所へ持っていこう!」