食戟のソーマ―愚才の料理人―   作:fukayu

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 主人公は中国の捜査官と共に秘密結社『シャドルー』を追っていた。しかし、豊富な資金源を持つ彼らは末端の戦闘員にまで『デュエルターミナル』製のカードを配布しており…………。

???「お前も融合の手先か!!!」

 異国の地で料理人と捜査官、そしてたまたま居合わせた謎の不審者が立ち向かう!

 次回、食戟ファイターARC-V
「反逆の翼!レイドラプターズ!」
 お 前 も LDSか?








主人公の知り合いの決闘者とストリートファイターでかなりの感想を頂いたのでフランスでの主人公の活躍の一部を考えました。


必敗の戦場へ

「全く、今日は懐かしい言葉を何回も聞くな」

 

「受けてくれますか?」

 

「ま、そこのガキよりは魅力的な提案だな。たった数十分でそれだけの客が手に入るなら、受けないほうがおかしい」

 

 四宮さんの態度は変わらず。

 先程よりは多少勝負になるだろうが、勝敗は揺るぎないと完全に直感している。

 

 それはそうだろう。

 一応同じ元十傑とは言え、第一席(最強)第十席(最低)だ。その差は間に挟まる八人という数以上に広い。

 

「勝てるとは思ってはいませんよ。俺は精々第十席の座を高々”二年間”守り続ける事で限界だった。”上”を目指せなかった人間が卒業したからって頂点に叶うはずが無い。だから、一応俺が勝てば創真くんのの目的である田所さんの退学の取り消しを求めますが、ハンデは貰いたい」

 

「判定のやり直しだっけか?別に構わねえよ。何度やったって同じだ。料理を作る時間がもったいないほどにな」

 

「いえ、別に食戟をやり直せって言っているわけじゃない。ただ、お三方にこの食戟が終わった後四宮さんと田所さん、どちらが作った料理が魅力的だったか。改めて判定してもらえればいい」

 

「…………どういうことだ?まさかこいつらが同情で票を入れ直すとでも思っているのか?」

 

 料理人として、先輩として後輩達の判定を否定されたと感じたのか四宮さんの視線が鋭くなる。

 でも、残念ながらここで引くわけにはいかない。

 

「さぁ?でも料理人なら、皿で語るものでしょう?」

 

「フン、いいだろう」

 

 先輩に対して非常に失礼な物言いだが、この食戟に関しては全力と行かないまでも完全なナメプをされても困るので調子に乗った格下を潰すくらいの感覚で来てもらわなければいかない。

 

「あ、あの!」

 

「ん、恵さ――――っ、田所さんだったかな?」

 

「はい!あの、どうして四宮さんに食戟を――――」

 

 当然の疑問だろう。

 

 絶体絶命のピンチに全く接点のない先輩が突然自分の為に強敵に立ち向かってくれた。

 改めて彼女の視点から考えるとご都合主義もいいところだが、自分から「私の為に――――」とは言わない奥ゆかしさは好感に価するよ。日向子さんやドナートさんが気に入るだけのことはある。

 

「ま、ひとつはそこで縛られている日向子さんに君によろしくって言われてたことかな。君が知らぬ間に理不尽な理由で退学してたら気分が悪いだろ?後は、そこの創真くんがラーメン奢ってあげたのにその借りを返される前に勝手に学園からいなくなりそうだったから咄嗟にってのもあるかも――――」

 

「そ、それだけですか?」

 

「それだけとは酷いな。これでもあの怖い四宮さん(先輩)に勇気を振り絞ったのに。時期的にも被ってないから殆ど絡んだことなかったんだぜ?」

 

「す、すみません!!でも、」

 

 言いたいことはわかる。

 それでも、それ以上は彼女の口から言わせてはならない。

 

「これは俺からの投資だ。君は勘違いしているようだけど創真くんは勿論、田所さんも遠月の未来には必要な才能だよ?少なくても俺はそう思っているから…………。そんな大切な芽をここで潰すわけにはいかない」

 

「榊奴さん―――」

 

「お礼も謝罪も創真くんに言うんだね。彼がいなければ俺はここに来ていないし、第一俺は別にこの食戟に彼ほどのものは賭けてない。基本的にギャンブルは向いてないらしくてね、万が一負けても知り合いに連絡を掛けるだけでいい。…………問題は携帯を持ってない連中が多すぎるってことだけど」

 

 この戦いは必敗の食戟。

 四宮さんと俺と料理人としても社会人としても十年の差がある。それは容易に埋めることはできないし、才能の差的に俺では一生使っても追い抜くことは不可能だろう。

 

「それでも、まずは一時的にも追い付かないとね。田所さん、課題で使ったっていうレシピ(ルセット)ってまだ持ってる?」

 

「え?」

 

 凡人が天才に追い付くにはそれ相応の切り札が必要になる。

 まずはそれを用意することにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『才能ですか?』

 

 様々な花が咲き乱れるいつもの庭園で、俺はあの人の言葉に首をかしげる。

 

『そうですよ。みーくんはもう少し自分の才能を誇ったほうがいいんです」

 

『…………センパイがそう言うなら俺はそうしますけど、実際この学園には俺なんかよりも才能のある奴なんて山ほどいますよ?」

 

 実際問題、秋の選抜で予選落ちした俺には他人に言われるまでもなくよくわかっていることだった。

 

 上には上がいる。

 凡人が一生を使って辿り着く場所は天才にとっての通過点でしかない。

 凡人(俺達)必死に努力して九十八点を取ったとしても、天才(彼等)は用意に百二十点を叩き出してくるのだ。そんな相手の存在を知って誇れるほど俺の心は強くない。

 

『それでも、です!みーくんにはみーくんの才能がある。実際、私はそれで助けられてますし。人間生きてる内は日々ギャンブルですよ?』

 

『このお嬢様、無茶苦茶を言いやがる…………』

 

 この庭園で日傘を差しながら優雅に紅茶を飲むだけで絵になるような外見の癖に無類の賭け好きとは、俺や木久知、タキちゃんと言う灰汁の強いメンバーを束ねるだけある。

 

『私は信じてますよ。みーくんの才能を。だから、みーくんはその才能を極めればいいんです。その結果、誰がなんと言おうと私だけは貴方の味方です」

 

 不意に、その柔らかな両手で手を包まれて身体が熱くなる。そのまま耳まで赤くなりそうになり、もうすぐ木久知がここにやってくることを思い出し焦る。

 いつもはこちらがからかう側だが、最近身体のごく一部が急成長中のあのほんわかにこの光景が見つからば強烈な反撃に見舞われるだろう。

 

『わかりましたよ。でも、俺は自分より才能がある奴を見つけたらそっちを優先しますからね』

 

『ええ、それでこそ私のみーくんです!』

 

『全く、この人たらしの魔女は―――――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レディースエーンジェントルメーン!今宵集まって下さった皆様にはこれより『レギュムの魔術師』四宮小次郎様と(わたくし)『魔女の後継者』こと榊奴操の世紀の食戟決闘(バトル)をご覧に入れます」

 

「わぁーい!!」

 

「――――これは、乾様。声援感謝致します。尚、不肖(わたくし)にはもう一つ忌名がございますが、この場でに相応しくないのものですのでご了承願います!」

 

 地下に位置する暗い厨房に二筋の光が差し、俺と四宮さんの双方を照らす。

 四宮さんのそれは舞台で挨拶するある種の役者のようで、俺は張り合ってもしょうがないのでサーカスに出てくるピエロでも演じることにする。

 

「この食戟は先程と同じく、この堂島銀が預からせてもらう!」

 

「堂島先輩、ありがとうございます!これで何かあっても心置きなく先輩の名前を出して逃れられますね!」

 

「うむ、存分にやるといい」

 

 堂島さんの宣言により最後にして最大の憂いはなくなった。

 後は、この食戟に己の魂をかけるだけだ。

 

「四宮さん、手は抜かないでくださいね?」

 

「当たり前だ。俺も同じ道を歩いてきた後輩にそこまで失礼な真似はしねえよ」

 

「安心しました、それでは声を揃えてぇ―――――」

 

「「決闘(デュエル) !!!!」」




???「そう、確実に存在する。食戟次元も」

 前振りに一話使ってしまった。
 感想などで一話一話が短いと言われますが、これ以上長くすると更新ペースが遅くなるのですみませんがご了承ください。

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