続きは反響があったら書くかも。そもそも反響があるのか心配。
壁に向かって発した声が跳ね返っても「反響」って呼ぶから、何もなくても書くかもしれないです。
その後、Pさんが上手いこと説明してくれてなんとかみんなは納得してくれた。
ついでに俺も素の状態でみんなと接することになった。
「これからは同じアイドル仲間にゃんだから、他人行儀なのはよくないにゃ!」
「うん、もう乙女モードはやらないことにする。これからは素の私を見せていくぜ!」
「その意気だ! 自分を偽るのはロックじゃないからね!」
「有は自分を曲げないよ!」
「みくのセリフをネタにしないでほしいにゃ!」
女装してる時点で思いっきり自分を偽ってるけど、だりーななら「女装はロックだぜ」って言っとけばごまかせる気がする。
「みくちゃんたちと小鳥遊さん、すごく仲良くなったね」
「ミクとても、輝いています。ノアと一緒の時みたいです」
「にゃん・にゃん・にゃんはみくをイジるための集まりみたいなものだからね。有の素には驚いたけど、のあさんと比べたらどっこいどっこいかも」
しぶりんよ。さすがに俺もあの人ほど不思議な存在ではない。
クールアイドルって普通はイメージ壊さないよう気をつけなきゃいけないのに、のあさんは何をしても許される空気があるからすごいよね。
「ところで増田さん。「乙女モード」ってどんなものなんですか?」
「いい質問ね美波ちゃん。乙女モードの有ちゃんは文字通り私の理想の乙女なの。容姿や性格から服装、細かな仕草に至るまで全てが私の仕込みよ! まだまだ完成には程遠いけどね」
そう、その通りなのだ。
Pさんが俺を拾ってくれたのは俺を気に入ってくれたからっていうのは前にも言ったけど、その一番の理由がこの「理想の乙女」なのである。
俺は男で、化粧しなきゃ女に見えない。
逆に言えば、一から理想の顔を作れる。
怠惰で受け身体質だから、命令されなきゃ動かない。
だけど命令されればその通りに動くから、キャラや立ち振る舞いを指導しやすい。
女の子の世界には無縁だったから、ファッションも女子的な趣味もない。
でもそれは、女の子としての自分を自由に生み出せるということでもある。
結論として、Pさんの俺に対する評価は「最高の原石」である。
良い意味で染まっていなくて、そのままでは値が付かないけれど、手塩にかけて育てれば必ず輝き出す。
だからこそPさんは、俺を選んだのである。
「この辺のことは全部有ちゃんにも話してあって、了承ももらってるわ」
「私としても全部Pさんがやってくれるんで楽でいいなーと思ってまーす」
「むちゃくちゃだにゃ……」
「まあ、本人たちが納得してるんだしいいんじゃない?」
「良いコンビ、なのかな?」
「でもオトメモードのユウは、とっても美人さん、でした」
「そうだね。私も強力なライバルが……、アイドルとして強力なライバルが現れたと思ったし」
「そう言ってもらえると私の理想も認められたみたいで嬉しいわ。でも有ちゃんは素の性格でデビューさせるわよ」
あれ? そうなん?
てっきりお前は本性隠せって意味でやらされてるのかと思ってた。
「ええー! それじゃこんな姿をファンにも見せるってこと!?」
「こんな姿でーす」
だりーなに「こんな」とか形容されちゃったけど、俺はただゴロンと横になっているだけである。
いいかげん体力が限界なんだよね。
しぶりん(を俺が)暴走(させた)事件のせいで余計に疲労したし。
「杏ちゃんが増えたみたい……」
「杏ちゃんより身長が高いぶんスペースとって邪魔だにゃ」
「なんだとこのやろー。猫耳へし折るぞ」
「怖いにゃ!」
寝転がりながらみくにゃんの頭に手を伸ばそうとしたけど全然届かないわ。
結局力が抜けてだらんと腕が床に落ちた。
「まあ、流石にここまでの惨状を見せるわけにはいかないけど、有ちゃんは見た目だけでも十分クール美人だから。ギャップを狙って売り出すつもりよ。乙女モードは私が見たいだけ」
「今見てるだけでも有は存在が面白いもんね」
「あえて隙を見せるのも、できるオンナのテクニック、というやつですね」
「これは隙がありすぎじゃないかな、あはは……」
存在が面白いは言いすぎじゃないですかねしぶりんさん。
武Pさん恋人疑惑があったせいか妙に俺への発言が厳しい気がする。
まさかまだ疑ってるわけじゃないよね?
これ以上は体が保たないんですけど。
疲れたよしぶラッシュ。
「Pさーん。もうわりと限界なんで寝てもいいですか」
「午後もレッスンだから駄目」
「おにーきちくー」
「と言いたいところだけど、初めてのダンスレッスンで力尽きそうだったから午後は予定無くしといたわ。そういえばそれを伝えに来たんだったわね」
「てんしーきちくー」
「それでも半分は鬼なのね、まあいいけど」
「じゃあ寝ていいですか」
「さっきヘルプ呼んだからいいわよ」
「わーい」
Pさんの許可が下りたんで俺は睡魔に身を任せ眠りについた。
ぐー。
睡魔は……悪魔の仲間だから……鬼とは別物なんだよ…………鬼は……俺を起こしにくる人だから…………
「もう寝ちゃったにゃ」
「レッスン室で寝るのはロッ」
「クじゃないにゃ」
「気持ちよさそうだね」
「カワイイ、寝顔です」
「ヘルプって誰なの?」
「もうすぐ来るわよ。って、ちょうど来たわね」
「失礼します」
「にゃにゃ! Pちゃんだにゃ!」
「プロデューサー、何しに来たの?」
「前川さん、多田さん。こんにちわ。ここへは増田さんに呼ばれて来たのですが」
「武内君お疲れ様。有ちゃんが寝ちゃったからまたお願いできる?」
「お疲れ様です。ああ、またですか。わかりました」
「それじゃ、みんなは午後も予定あるだろうから頑張ってね」
「みなさんの予定は既に伝達していますが、わからないことがあれば後でオフィスに来てください。それでは」
「Pちゃんが有ちゃん肩に担いで行っちゃったにゃ」
「なんかすっごい慣れてる感じだったね」
「杏が運ばれてるところ思い出したよ。完全に物扱いだよね。恋人とか疑ってたのが馬鹿馬鹿しくなったかも」
「アレが、お姫様抱っこ、肩車に並ぶ、女の子の憧れ『俵担ぎ』ですね」
「アーニャちゃん。なんかもう、全然違うよ」
その日は結局武Pさんに運んでもらったらしく、夕方まで仮眠室でずっと寝てた。
あ、ダンスの評価はベテトレさんいわく「素人にしてはマシな方」だったって。
やったぜ。
「イケメンに物みたいに扱われてみたい!」
「いっぱいごはんを食べる女の子が好きですね」
→はっ! 閃いた!
人物紹介のコーナー。とりあえず今回が最後。長いので注意。
●Pさん(ぴーさん)
名字は増田。「マスター」からとっている。
最初は名字を決めていなくて、主人公が一番呼ぶ回数多い人間だろうと思って打ちやすい「Pさん」にした。
でもやっぱり武内Pとの区別が難しいので名前を付けた人。下の名前はたぶん永遠に不明。
以前の話で「女装男子が好き」と宣言しているが、正確には理想化された女の子像を気に入っている。
男の娘とか女装男子とか詳しくない人には全然違いがわからないだろうけど、彼女は現実味の無い完全にフィクションの存在である男の娘にはあまり興味が無い。
ちなみに作者は男の娘とか女装男子とかTSとか、そのへんのジャンルを全てひっくるめて楽しんでいる人間。ただしガチでBL臭いのはNG。
きっかけは「第三の性別」という言葉を最初に生み出したキャラだったと思うけど、エサが少なすぎて他のフィールドにも手を出した結果今みたいになった。
増田Pの話に戻るがプロデューサーとしては非常に優秀で、テンプレ男の娘要素を持つ主人公には付き物であるテンプレサポート要員である。
テンプレといえばタイトルにある「乙女」もそれ系の作品によく使われるキーワードなのだが果たして釣られた読者はいるのだろうか。
主人公に鬼と言われまくっているが実際はそこまで鬼ではないということもなくそこそこの鬼である。
鬼女と言いつつも独身。
続き書くかわからないのでここで先に言っておくが主人公以外のアイドルも担当している。
ただ、彼女はクールの大人組担当なので、他の担当アイドルはみんな自立している。
しっかりしすぎていて仕事も自分で取ってくる状態なので、担当以外のアイドルにちょっかい出して暇を潰していた。そのため顔は広い。
主人公の出現は彼女にとってはまさに宝物を見つけたような気分だったのかもしれない。
●多田李衣奈(ただりいな)
作者が知っているのはにわかロッカーでウッヒョーという名言を持っていることくらい。
アニメでアスタリスクの尊さは作者も感じたものの、実際に自分が書いてみると思ってた以上に動かしにくかった。ロック以外のネタが思いつかない。
一人称が私だし目上に対しては丁寧語でしゃべるし、砕けた態度になった後は無駄にテンション高くしないと誰だかわからないしで一番苦戦したかもしれない。
●前川みく(まえかわみく)
アニメで株が爆上げしたアイドル。作者も好き。
ファンなら「元々かわいかっただろ!」って怒るかもしれないけど正直ネタ要員のイメージが強かった。
でもイジられるみくにゃんもかわいいよね?
語尾に「にゃ」が付くという最強のチートを持っているのでここまでに登場した原作アイドルの中でも一番の活躍を見せてくれた。
あまりにもしゃべらせやすいので作者の中の好感度が武内Pを抜きそうな勢いである。ちなみに主人公は3番手以降で確定。
続きを書くとしたらアーニャと合わせてレギュラー化もありうる。というかにゃん・にゃん・にゃんとして登場させると思う。
●今後の話
前書きにも書きましたが反響があれば続きを書くかもしれません。
一応ここまでの話だけでも主人公が(ベテトレさんに評価してもらうという)目標を立てて達成するまでを書くことができたので一区切りできたと思います。ですから続きがなければここで完結です。
またお会いする機会があるかどうかわかりませんが、ひとまずここまで読んでいただいた読者の方には感謝を。
ありがとうございました。