乙女はアイドルになる   作:s.s.t

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あ、今さらですけどたまに淫夢ネタ入ってるので苦手な方は注意。


小鳥遊有女の子説

なんか346プロに拾ってもらえた。

 

とりあえず杏ちゃんの所属事務所で業界でも類を見ないほどたくさんのアイドルを抱えてるって話だから応募してみたんだけど、俺のことを気に入ってくれたらしいプロデューサーさんがいて採用が決まった。

 

面接の質問で正直に「なんか就活が上手く行かなくてもうどうでもいいやって思ったんでアイドル目指してみようと思いました」って答えたのが功を奏したんだろうか。

俺を気に入った人はどっか頭のネジが外れてるんじゃないかと心配になる。

 

 

まあでも? 別に容姿は悪くないつもりだし?

ぼっちだけどそこそこ教養はあるつもりだし?

運動神経もけっこう良い方だし?

やる気がないことを除けばそこそこ見所はあるから勝算がなかったわけじゃないんだよ? ほんとだよ?

やる気がない時点で致命傷じゃんとか思ってなかったよ?

 

 

ぶっちゃけ俺が一番驚いてるけどまあ受かったからいいやとも思ってる。

これで俺もアイドルの卵だぜ!

何すればいいか全然わからんけどPさんがなんとかしてくれるって信じてる。

頭はおかしいかもしれないけど仕事は早いんだぜ? 早速俺のプロフィールも作ってくれたしね。

なんかこういうの見るとゲームみたいでワクワクする。

ぼっちは他人から自分がどう見えるか知る機会がないからこういう診断書的なものでもちょっと嬉しくなっちゃうんだぜ。

 

 

いくぜ、ステータスオープン! (ただのプロフィール)

 

 

 

【名前】小鳥遊有

【ふりがな】たかなしゆう

【性別】♀

【タイプ】クール

【年齢】22歳

【身長】165cm

【体重】49kg

【スリーサイズ】?/?/?

【誕生日】8月30日

【星座】乙女座

【血液型】O型

【利き手】右

【出身地】茨城県

【趣味】ネットサーフィン

 

 

 

はい、このプロフィールの中に間違いが1つあります。

それはなんでしょーか?

 

 

 

せ い べ つ お ん な

 

 

 

やっぱ俺のプロデューサー頭おかしいわ。

 

 

 

自分の未来に影が差す光景を幻視していると、件のプロデューサーがやって来た。

 

ちなみに今俺がいるのは馬鹿でかい346の建物内でクール部署のプロデューサーが集まっているオフィスだ。

アイドルの子たちが集まる部屋もあるらしいけど今日は今後の方針を決める打ち合わせのためにPさんに会いにここに来た。

 

 

「あら、有ちゃん早いのね。待たせちゃったかしら?」

 

この黒いスーツがよく似合う20代後半ぐらいの女性はPさん。面接で戯けた返答をしたダメ人間を拾ってくれた俺の担当プロデューサーである。

そのダメ人間を女性として売り出そうとするぶっちぎりでイカれた女でもある。

 

 

「Pさん。なぜ私は女の子なんでしょうか……」

「それはあなたが美しい乙女になる素質を秘めているからよ。あとあたしが女装男子とか好きだから」

 

「なぜ性別を偽ることを誰も問題にしないんでしょうか……」

「それはあなたが女性アイドルとして活動することを自分で承諾したからよ。あとあたしが事務所を説得したから」

 

「なぜ346に所属している他のアイドルにも私が男だと明かしてはいけないのでしょうか……」

「それはあなたが女性らしさを磨くため。事務所内でバレないレベルになればデビューしても問題ないでしょう? あとあたしが面白いから」

 

 

そういえばそんな感じだった。

本当は面接で落とされそうになったんだけど面接官の1人だったPさんが女の子アイドルとしてだったらプロデュースしてもいいって言ってくれたんだよね。

 

これ以上就活したくないしOKしちゃった★

 

俺の頭もだいぶイカれてるらしい。

 

「それにしても俺は自分が女顔なんて全然意識してなかったんですけどね」

「有ちゃん、『俺』じゃなくて『私』でしょ」

「はいはい、私は女の子です」

「性格はそのままでもギャップがあっていいんだけど、一人称だけは気を付けてね」

「わかりました」

「あとあなたが女顔を意識したことがないのはぼっちだから顔の話をされたことないからでしょ」

「そうでした」

 

知ってるかい? 何もしなくても友達ができるのって中学までなんだぜ?

地元離れたら知り合いいないし自分から動かないと誰も寄ってこないんだ。

 

面倒臭がってたら孤立してたとか、よくあるよね。

 

 

「じゃあ今日の予定だけど、午前中は事務所の中を案内して、午後からはレッスンをしましょう」

「あれ? これからの方針とか決めるんじゃなかったんですか?」

「方針も何も有ちゃんアイドルのことあんまり知らないし、怠惰の化身みたいな性格してるからどうせあたしに丸投げするでしょ」

「さすが、短い付き合いなのによくわかってらっしゃる」

 

これが敏腕プロデューサーの洞察力ってやつか。

 

「有ちゃんは最初からそんな感じだったじゃない。一切取り繕わないんだから誰でもわかるわよ」

 

違ったみたいだ。

 

「それじゃ今日はPさんの予定に従うとして、レッスンって何やるんですか?」

「メイクのレッスン」

「へーそうなんですか」

 

アイドルのレッスンってそんなこともやるんだなー。

 

「もうちょっと興味持ちなさい」

「なんですか?」

「いい? 有ちゃんにとってメイクの技術はとても重要なの。あなたのスッピンは中性的だけどどっちかというと男寄りの顔だから、メイクで完璧な女に見せる必要があるの」

 

なんとそうだったのか。どうりで今まで女に間違えられたことがないわけだ。

まあそもそも誰も話しかけてこないから間違えられたことがあるかどうか確かめる方法がないんだけどね。

 

「初めは私やメイクさんがやってあげてもいいんだけど、後々のことを考えたら自分で出来るようにならないとね。最終的には女装した状態で事務所に通ってもらうわよ」

「了解です」

「ウチの事務所は大きい分いろんなスタッフがいるからね。他にも女の子として必要なスキルを教えてくれる人材が揃っているから安心してね」

「ほどほどに頑張ります」

 

正直女装スキル磨いてどうすんだとか思わないでもないけど、自分が必要とされている感覚が嬉しくなくもない。

あとなんでも指示してくれるから楽。

ぼっちはこういうところでチョロいから気を付けないとね。

ホイホイ心を許していたら3日後にはPさんのことを親友と呼んでいるなんてこともあるかもしれない。

 

 




人物紹介のコーナー。

●小鳥遊有(たかなしゆう)
この作品の主人公。れっきとしたオス。
名前の由来は「上はないけど下はある」的な意味から。あと中性的な名前を選んだ。某腐った事務員さんとは関係ない。

主人公のイメージはネット上に存在するいわゆる「お前ら」のテンプレ要素と巷で流行りらしい「男の娘」のテンプレ要素を組み合わせて作られた。
「お前ら」要素としてはニート気質とぼっち。
「男の娘」要素としては容姿や声が女の子としても違和感なくて女装スキルを身に付けるのが早いご都合主義。
うちの主人公はテンプレ主人公です(迫真)

他にもいくつか主人公を構成する要素はあるが、内訳を見るとぼっちが2割、ニートが5割で残りは女装、アイドル、ギャグ属性が1割ずつ。
お前ら要素が強すぎるけど仕方ないね。

ぼっちなので脳内会話と一人ツッコミはデフォ。
趣味のネットサーフィンは伊達ではなく彼の頭の中にはネットで拾ったネタやスラングが詰め込まれている。
スマホが手放せなくて「生きるための心の栄養はネットでだいたい事足りる」と思っているが、バイタリティに欠けるあたり全然足りてない。

ちなみに、主人公がアイドルをやる経緯はとある人の漫画をパクっているのでパクリだと思った人は当たってます。



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