乙女はアイドルになる   作:s.s.t

15 / 20
本当は執筆に時間を割いてちゃいけないくらい修羅場の真っただ中なんですけど、我慢できなくて書いちゃいました。

来週と再来週は更新できないかもしれませんので、あらかじめご了承ください。



ガッツポーズ愛海ちゃん

「う~~トイレトイレ」

 

今トイレを求めて歩いている私はアイドルを目指して346プロに所属したごく一般的な女の子。

強いて違うところをあげるとすれば本当は女装してる男ってとこかな。

名前は小鳥遊有。

 

 

 

まあ向かってるのはハッテン著しい公園のトイレじゃなくて普通に事務所のトイレだけど。

 

人目に付かないに越したことはないから入り口付近に誰もいないことを確認してさっさと個室に入る。

 

最近はだんだんと寒くなって汗かかなくなったからお手洗いの回数が増えますわー。

346に所属してだいぶ経つからいいかげん隠れてトイレ行くのも慣れたけどね。

 

朝の出社時刻と昼休憩の時間、定時の退社時刻以外はトイレの利用者が格段に減ることをここ数ヶ月で学習したんで、その合間の時間で行ける時に行くようにしている。

これで8割方は誰にも会わずに済むってわけですよ。

 

 

 

用を足して手を洗っているとドアを開けて入ってくる人物がいた。

やっべー8割大丈夫とか言っといてさっそく見つかっちゃったよ。まーいっか。

 

「!? ここは男子トイレで……!」

「あ! 武Pさんご無沙汰してます」

「小鳥遊さんでしたか。久しぶりだったので驚きました」

 

女子トイレだと思った? 残念、男子トイレでした!

 

当然っちゃ当然のことだけど、職員の人は普通に俺の性別知ってるから女子トイレ使うわけにはいかんよね。

仮に女子トイレの方を使って女性職員さんと鉢合わせでもしたら気不味いってレベルじゃ済まないよ。

 

まあ男子トイレは男子トイレでさっきの武Pさんみたいにいちいちびっくりされてたんだけど、最近はみんな慣れたもんで普通にスルーしてくれてる。

腫物扱いしてるわけじゃないよね?

 

ちなみに事務所の外でどうしても我慢できなくなったら電車内のトイレとかコンビニのトイレを使う。そういうとこなら男女の区別ないし。

漫画やアニメによくある「どっちのトイレ使えばいいの!?」的なイベントは起こる前にフラグを徹底的に叩き潰す。

下手したら漏らすイベントなんてごめんだしそりゃ必死にもなりますわ。

 

 

 

トイレのことはさておき今は武Pさんの方が重要だ。やっと会えたんだから小一時間くらいはお話したい。

 

実を言うと武Pさんはお仕事で海外へ出張していたので2週間ほど顔を合わせていないのだ。

おかげでこの2週間俺の周りは女性ばかり。Pさんと一緒にいる時間も妙に長かった気がするし、じわじわとストレスが溜まっていく中でやっぱ武Pさんが唯一の癒しだと改めて思い知らされたぜ。

 

「ここしばらく会えなくて寂しかったですよー」

「昨日やっとLIVEツアーから帰って来られましたので」

「外国行ってたらしいですけど、どこで何してたんですか?」

「今回はフィンランド主要都市でのライブと、BD・DVD映像特典用の撮影を平行して行いました。私がしていたのはアイドルの皆さんのスケジュール管理や細々とした雑用です」

「へー。なんでまたフィンランドなんですか?」

 

名前は知ってるけど日本人からしたらあんまりメジャーな国じゃないし。

 

「………………」

「武Pさん?」

「……フィンランドは牛乳の摂取量が世界一位なのです」

「え、それだけ?」

「いえ、それから今回ツアーに参加したのが及川さんや向井さん、松本さんといった面々でして……」

「んー要領を得ないですね。なんか言いにくいことでも?」

 

346のイベントは毎回コンセプトがあるはずなんだけど、あんまり聞いたことがない人の名前ばっかで想像がつかない。

どっかのTV番組で見てるかもしれないけど名前まではちょっとなー。基本俺が知ってるのって元CPメンバーかバラエティによく出るアイドルだけだし。

 

「そこに棟方さんを加えたメンバーとなります」

「なるほど」

 

そうきたかぁ~~っ。

武Pさんその手の話題苦手みたいだしそりゃ中々言えないよね。

 

棟方愛海。通称師匠。

女性の体の特定部位を指して「女の子のやわらかーい部分」「お宝」「お山」などと呼び、その卓越した指使いで女体の神秘を探求する求道者。ぶっちゃけると乳揉み。

世の男たちからは畏敬の念を込めて師匠と呼ばれている。

その裏では(主にネットで)淫獣って呼ばれてるけど。

 

逆輸入で淫獣が師匠の名で呼ばれることもある。

魔女っ子アニメのマスコットがヒロインとお風呂に入るシーンとか「まーた棟方が出たよ」「師匠化不可避」「海よりお山を愛してる」みたいな反応であふれてたなー。

 

当然ながら俺も師匠のことは知ってた。

なぜならバラエティ番組によく出ているから。師匠ったら女性タレント向けの罰ゲーム担当として大活躍してるんだもん。今じゃどの局でも引っ張りだこだよ。

カメラの前で師匠に胸揉まれるのはかなり精神的なダメージになるらしく、罰ゲームを嫌がって本気になるうえにいざ負けても絵面はそこまでひどくないということでアイドルや女優も罰ゲーム付きの企画に参加できるようになったんだよね。

 

これまでは罰ゲーム有りで綺麗どころの女性が負けるとどうしてもイメージダウンになるから、芸人が笑いを取りにいく体でわざと負けるのがお約束だった。

しかし罰ゲームが師匠になると逆に好感度が上がったりするんだなこれが。おかげでアイドル対芸人とかでもガチンコで競わせることが可能になったってわけ。

結果として男は冷却ガス噴射でも臭気砲でもセンブリ茶でもなんでもいいが、女は師匠が罰ゲームという構図が出来上がってしまった。ある意味で師匠はバラエティの歴史を変えたのである。

 

いろんな番組が師匠を多用するから「局も女性タレントも師匠に頼り過ぎ」みたいな声もあるにはある。

でもそこは346の上手いところで、師匠自身にはヘイトを向けさせず番組を作るTV局や罰ゲームを受ける女性タレントに矛先が向かうよう世論を操作した。さらに346のバラエティ担当アイドルには体を張った罰ゲーム(バンジーとか)をやらせることで他事務所との差別化を図っている。

 

師匠自身に関してもポテンシャルがあったのか人気の落ちる気配はなく、むしろ着々とファンを増やしているようである。

あれで容姿はピカイチだしアイドルとしての能力も高いから、映画版ジャイアンの法則で真面目にしてるところを見ると一気に好感度が上がるんだよね。

まさに向かうところ敵無しのアイドル。

 

 

「ーーそんな感じの棟方さんですよね?」

「ええその通りです。しかしその、失礼ですが小鳥遊さんがそれほどアイドルに詳しいとは意外でした」

「いや実際アイドルのことは全然知らないですよ? 私が詳しいのはバラエティに出てる人だけです」

「ああなるほど。納得しました」

 

昔からバラエティはよく見てたからね。

誰でも自分の趣味のことなら詳しくなるんだから別に驚くようなことじゃない。コーラを飲んだらゲップが出るくらい自然なことだ。

 

まあ事務所に入ってからはアイドルのことも多少は知る機会が増えた。どれくらい知ってるかってゆーと、だりーながロックのことを知ってるくらいには知ってる。

やっぱり趣味でも詳しくない人はいるか。

 

 

 

長々と師匠の話をしてる間に武Pさんも用を済ませたので2人でトイレを出た。

ちょうどお昼時ということで久方ぶりに昼食を共にすることに決まり、並んで廊下を歩く。

 

 

 

「しかし師匠が参加してたってことは……すばりテーマは巨乳ですね」

「んんっ。確かにそのような身体的特徴を備えたメンバーではありますが、一応テーマは『牛乳大好き ミルクツアー』となっていますので違います」

「自分で一応とか言っちゃってるじゃん」

「失言でした。忘れてください」

「まあまあ。プロデューサーとしては実情がどうあれ建前は守らなきゃいけないんでしょうけど私の前でくらい構えないでください」

「小鳥遊さん……」

 

常に態度が硬い分どこかでリラックスしなきゃね。

普段はこっちがお世話になってるからどうせなら武Pさんにとっても俺が気の置けない存在になったら嬉しい。

今までは俺もまだ遠慮してるところがあったけどこれからはもっと踏み込んで行こうかな。

 

「武Pさんは大きい胸が好きなんですか?」

「急に何を、言って、その」

「ほらほら。同性同士なんだし気にせずyou言っちゃいなよー」

「勘弁していただけないでしょうか……」

 

踏み込み失敗!

武Pさんも素直じゃないなぁ。人に好かれる要素をいっぱい持ってるのに自分から距離置いちゃうんだからもー。

いい男がもったいないぜ。

 

まあ答えにくい質問した俺が悪いんだけどね。

 

「そ、それよりも小鳥遊さんの方で変わったことはありませんでしたか?」

「変わったことですか。そういえば下着がついに女物になりました」

「!? ……その、何と言っていいものかわかりませんが、あまり気を落とさないでください」

 

ふん。落ちこんでなんかないもんねー。

むしろ女装バレのリスクが減って安心したくらいだし?

この状態も前向きに受け入れようとしてるし?

 

それよりも露骨に話題転換しようとした武Pさんを逃がすわけにはいかない。世の中そう甘くはないのだ。

 

「武Pさん、私を見て何か気づきませんか?」

「? 小鳥遊さんの外見に変化があるということでしょうか」

「ヒントはさっきまでの話題と同じです」

「先ほどまでの…………!!」

 

ふふっ。そんなに目を見開いたらどこを見たのか視線でバレバレだぜ武Pさん。

ちょっと怖かったけど我慢。

 

「そう、ブラジャーを着けさせられたついでにパッドも導入しました」

「なんとなく違和感はありましたが……以前はゆったりした服ばかりだったのに今日は体型の出るファッションなのですね」

「その通り。Pさんいわくパッドの触り心地は本物と遜色ないらしいですよ。触ります?」

「いえ結構です」

「私の胸、触りますか?」

「なぜ言い直しを……。また他のアイドルの皆さんに誤解されかねないのでそういった発言は控えてください」

「別に遠慮しなくてもいいのに。あ、もしかして本物触ったことがないとか?」

「ご想像にお任せします」

 

まあ武Pさんは第一印象で怖がられるタイプだし、中々女性と仲良くなる機会はなかったのかもね。

そもそもぼっちの俺が言えた義理じゃないし。

 

でも結局このパッドの感触って本当に実物に近いのかな。

ファッションの幅が広がってヒラヒラの服を着なくてもよくなったから役には立ってるんだけどねー。

実体験がないので俺も武Pさんもパッドの触り心地を確かめる術がない。

 

「代わりに誰か揉んでくれればいいのに」

「っ! 小鳥遊さん危ない!」

「へ? わひゃあ!」

 

あやややややや! 背後から胸を揉まれてるでござる! いや実際揉まれてるのはパッドだけど!

小声でつぶやいただけなのに言ったそばからほんとに実行してきたこいつ誰だよ。

ほとんど抱きつかれてる体勢だから後ろが見えん。

 

「うひひひひひひ。揉んでほしいという声が聞こえて飛んできました」

「くっ! 離れてください棟方さん!」

「きゃっ」

 

ああやっぱり師匠か。まあ普通に考えていきなり他人の胸揉む人間なんてこの人しかいないよね。

つーかやべーよ女装バレてないかな。

武Pさんが迅速に引き剥がしてくれたけど、師匠ほどの百戦錬磨ならあのわずかな時間揉んだだけで気づく可能性も高そう。

 

「いたた。武内さんがそこまで必死に邪魔するなんて意外だね。LIVEツアー中にあたしが雫さんや沙理奈さんに突撃しても躊躇って傍観してたのに」

「す、すみません。新人の小鳥遊さんにショックを与えないようにと焦りすぎたようです」

「新人? そういえば武内さんと良い雰囲気の小鳥遊って新人さんがいるとかみくちゃんたちが言ってたような」

「アッハイ。その小鳥遊有です」

「あの小鳥遊さん、いささかくっつき過ぎでは?」

 

武Pさんの後ろからこんにちわ。

また揉まれちゃたまらないんで武Pさんの背中に隠れさせてもらってる。ついでにパッドを押しつけるイタズラもしている。

背中にパッドが触れた瞬間ほんの少し身体が硬直したのを俺は見逃さなかった。

 

「ふー。つまり有さんのお山は武内さんが登頂済みってこと? しかたない、あたしは引き下がるよ」

「それは誤解です! アイドルのプロデューサーとしてそのような行為は許されるものではありませんし、そもそも私と小鳥遊さんはそのような関係ではありません」

「そうなの? それじゃありがたくいっただきまーす♪」

「ちょ、武Pさん!」

「あ、いえ! だからといって小鳥遊さんに手を出されては困ります。自重してください」

 

ほんと頼みますよー。

俺が本気で嫌がると怪しまれる可能性があるし師匠との仲も険悪になるかもしれない。だからこの場を収められるのはアイドルを守る大義名分がある武Pさんしかいないのだ。

 

頑張れ武Pさん! 俺の女装バレを防げるのはあなただけだ!

 

 

 

しばらく武Pさんの説得は続いた。

しかし師匠が胸を揉むことを諦める様子はなく、いいかげん武Pさんが次の言葉を探すのも難しくなってくると師匠はもういいとでも言いたげにため息を吐いた。

 

「武内さん、それ以上はごまかさなくていいよ。色々理由は付けてたけど、本当は有さんの真実を隠そうとしてたんでしょ?」

「! 決してそのようなことは」

「あたしは最初から有さんの秘密に気づいてたよ」

 

え、マジ?

バレちゃってたの? ヤバくない?

 

「あたしの目は騙せても指は誤魔化せない! 本物によく似せてはいるけど揉んでみてすぐにわかったよ。有さんの胸はニセモノだ!」

 

うわーガチでバレてる!

これってどうなるの? Pさんに報告? 口封じ?

どうすんの? どうすんの俺!? どうすんのよ!

 

「さあそのパッドをはずして真実のお山を晒け出して! そしてあたしにわきわきさせて!」

 

あ、セーフだった。

師匠がお山のことしか考えてない人でよかったわ。パッドはバレたけど男という発想には至らなかったみたいだ。

お山を知り尽くしているがゆえにパッドには気付いたけれども逆にお山への執念が目を曇らせてしまったか。皮肉なものよ。

 

つーかこのパッド師匠をして本物に似ていると言わせるほどの出来だったのね。ウチのアイドルの科学力すげーわ。

 

 

(首の皮一枚つながりましたね)

(確かに最悪の事態は避けられましたが状況は変わってません。油断は禁物です)

「わきわきー」

 

 

どっちにしろもう1度胸を揉まれるのはマズイか。なんとかして師匠を沈静化させるしかない。

 

「お山は大きさじゃないんだよ。恥じることなんて何もない。だから有さんもありのままのお山でいいんだよ!」

 

いやいやいやダメでしょ。

俺の場合ありのままのお山はお山じゃないから。

お山っつーか女形だから。

男っぱいだからこれ。

 

「武Pさん。ツアーの時は師匠にどう対処してたんですか」

「残念ながら私1人の力で棟方さんを抑えることはできませんでした。力尽くというわけにもいきませんし、アイドルの皆さんは自力で回避する方法を心得ているようでしたので」

「だから傍観ですか。そうなると打つ手がないですね」

 

俺が考えつく策なんて精々他の生贄を差し出すくらいことくらいしかない。

しかし人気のない廊下じゃ都合よく誰かが通りかかることは期待できないなー。

生贄候補もいることはいるんだけどムリそうなんだよね。

 

うーんダメ元で試してみる?

 

「師匠」

「お、あたしを師匠と呼ぶのは女の人じゃ初めてかもね。なにかな有さん?」

「私なんかよりも魅力的なお山があるからそっちにしない? しかも抵抗しないから好きなだけわきわきできるよ?」

「ふーん面白いね。誰のことなのか聞くだけ聞いてあげようか」

「じゃ、武Pさんよろしく」

「私ですか!?」

「まさか武内さんが魅力的なお山だっていうの? そりゃあたしはお山の貴賤は問わないけどさ、武内さんと有さんだったら有さんを選ぶに決まってるよ」

 

やっぱり失敗かな?

いや武Pさん自体を嫌がってるわけじゃないみたいだから説得の余地はあるはず。

 

「もっとよく考えてみて。私のお山はこの先いくらでも狙えるでしょ。でも武Pさんのお山に触れるチャンスなんてこれを逃したらもう絶対に来ないんだよ?」

「む、むー」

「あの、そんな反応をされると困ります」

「武Pさんが抵抗したら師匠は力じゃ敵わないけど、今なら自由にできるんだよ?」

「そう言われるともったいないような……」

「そもそも私は男なのですが」

「甘いよ武Pさん! 師匠が女の子のお山だけで満足するはずない。師匠ならさらなる高みへ登りつめられる。今がその時だ!」

「さらなる高みへ……お山のその先へ……」

 

なんかてきとうなこと言ってただけなのに師匠が洗脳されてる。というより俺の言葉をきっかけに覚醒しようとしてるのかも。

 

もしかしたらさらなる怪物を生み出してしまったのかもわからんね。

でも今は我が身が可愛いからためらうことはしない。

 

「さあ師匠! いざ新境地へ!」

「わかったよ! あたし武Pさんをわきわきする!」

「本気、なのですね……」

 

武Pさんもおとなしく犠牲になってくれるようだ。女装を隠すためとはいえごめんね。

 

おわびにもならないけど今日の昼食は俺が奢ってあげよ。

 

 

 

 

 

そのあと俺の前でどんな光景が繰り広げられたのか。

それは筆舌に尽くしがたいものだったが1つだけ言えるとすれば、全てを終えた後師匠のとったガッツポーズがとても力強く、輝いて見えたということだ。

 

結果としては師匠を満足させることができた。生贄作戦成功である。

武Pさんも精神ダメージは受けたものの深刻なトラウマにはならずに済んだようだし、一件落着だね。

 

 

せっかくなので師匠も昼食に誘って、3人で社食にやって来た。

 

 

「武Pさん大丈夫ですか? さっきはすみませんでした」

「お気になさらず……。アイドルを守るのはプロデューサーとして当然ですから」

「せめて昼食はおごらせてください。師匠もどうぞ」

「あたしもいいの? じゃあ冷奴定食で!」

 

なにそのヘルシーなメニュー。そんなものあったんか。

 

「武Pさんはハンバーグ定食でいいですか?」

「あの、お金は私が」

「もう食券買っちゃいました」

 

券売機から出てきた食券を2人に手渡す。

社食なんてたいした金額じゃないんだから気にしなくていいのに律儀だなー。

 

ちょっとは師匠を見習ってもいいだろうに。

俺たちを放ってさっさとカウンター行っちゃってんだぜあの人。欲望に忠実なのはある意味美徳だよね。

お山探求にしたって自分のやりたいことを貫いてるんだからほんと芯が通ってるというか、ブレないよね。

 

「冷奴定食お願いします! あ、豆腐は木綿じゃなくて絹ごしでね!」

「私はとろろそばで」

「ハンバーグ定食です」

 

注文したメニューが出来上がったらトレーを持って4人掛けのテーブルについた。

何気に事務所のアイドルと一緒に昼食とるのは初めてかもね。

 

「ところでさっき豆腐に注文付けてたけどなんか理由あるの?」

「あるよー。木綿は縁起が悪いんだよね」

「木綿豆腐にそのようなジンクスはなかったように思うのですが」

「だって『揉めん』だなんて響きが不吉でしょ! お山を愛する者としては気軽に食べられないよ!」

「さすが師匠」

 

やっぱブレないわー。

 

 




愛海ちゃん完全勝利。


人物紹介のコーナー。

●棟方愛海(むなかたあつみ)
女性の胸を揉むことに命を懸けた驚異の14歳。この年齢で深い業を背負ってしまったアイドル。
たぶん揉み払い師とかが愛読書。

なんといってもキャラが全くブレないのが特徴。登場した全カードに「わきわき」「おさわり」といったワードが含まれており、どんなイベントでも彼女の目的が一貫しているとわかる。
どっかのメガキチでさえ猫好きという側面があるのに、師匠は趣味でさえ指の運動という徹底ぶり。まさに師匠と呼ぶにふさわしい。

お山を求めて色々なアイドルを襲うのだが成功率はそこまで高くない。慣れた者は注意を反らすアイテムを利用したり話術で丸めこめるので、襲撃時の師匠はお山に集中しすぎて頭が回っていないのかもしれない。

清良さんや木場さんなどの天敵が存在するが、ssだとたまに立場が逆転することもある。

ちなみに今回の話にちらっと出てきたLIVEツアーの舞台であるフィンランドは肥満率が低くて平均バストサイズが大きい国、つまりスタイルの良い巨乳が多い国である。おそらく師匠は思う存分フィンランドを堪能したことだろう。

なお、武Pさんのお山もしっかり堪能した模様。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。