気づいたら完成していた
リアスは従兄弟であるサイラオーグ・バアルの下へ訪れていた。
彼もまた、ライザーとの繋がりがあると、そう聞いたからだ。
「ライザー、か」
「ええ」
鍛練終わりなのだろう。汗を拭いながら、サイラオーグはリアスに語る。
「奴は俺の、そうだな……当面の目標だ」
「目標……」
「ああ、そうだ。あいつを打倒しない限り、最強の座はとれないからな」
「そうね。若手最強だと言われているわね」
「若手どころじゃない。奴は並み居る悪魔の中でも屈指の強さを誇る。四大魔王に迫るほどの実力は持っているだろう」
「……そうね。そうだったわ」
サーゼクス直々にそのデタラメさを教授された。なにせ、眷属なしで彼らと渡り合ったというから、驚きだ。
迫るどころではないのかもしれない。一瞬遠い目をしたあと、リアスはサイラオーグに視線を戻す。
「若手であっても、最強の名を冠するのは伊達ではないということだ。故に俺は奴を越えたい。越えねばならない。越えるべき壁なんだ」
「壁……」
サイオーグは語る。己が目標とした男の話を。
「すごいですね、坊ちゃん」
サーゼクス・ルシファーとの死闘を演じたライザー。結果そのものは引き分けという形で終わったが、しかし、アシュタロスという優秀な駒を手にすることが出来たのであった。勝負には勝った。上々である。
ところが、である。ライザーの手にしたものはそれだけではなかった。厳密には手にしてはいない。
それは、ただの噂であった。
否、ただの噂というには少々語弊というものがあったのだが……
「四大魔王 サーゼクス・ルシファーと引き分けた子供がいると、噂が飛び回っていますよ。今や冥界はその話で持ちきりです」
フェニックス邸。ライザーの部屋での会話――部屋といえども、異常なまでに広く、ライザーの趣味の美術品などが飾ってあったりと、非常に豪華である。城の一室と言ったほうがいいだろう。
そんなところに三人の人影がある。
「冥界には娯楽というものが少ないからな……ちょっとした出来事でもお祭り騒ぎになるわけだ」
「閣下。仮にも現役魔王と引き分けるのは、ちょっとした出来事ではありません」
当事者であるアシュタロスが言う。
そも、悪魔同士の総力戦は、新魔王制になってからというもの御法度であるはずである。
それでも噂になるということは、だ。
「そうか……ふむ、レーティングゲームで引き分けたとか、そういう煽りはくっついているのかな? セバスチャン」
「何もついていませんよ。ただ、魔王と引き分けた天才がいるというだけの話が広まっているようです」
「事実だな、紛れもなく……一般的に考えて、どうだろうな、レーティングゲームで引き分けたと、そう思うか?」
「『滅び』の力を誇る現代の魔王に、タイマンで、それも子供が引き分けると考える方がどうかしているかと、閣下」
「悪魔らしい手腕での印象操作か……いやらしいことだ」
嘘はいっていない、という奴である。悪魔ならば普通に使う手法だ。常套手段という奴である。
誰もがレーティングゲームで引き分けただろうと思うことだろう。まさか、真っ向勝負で引き分けをもぎ取ったと考えるものがいたら、そのものは間違いなく阿呆の烙印を捺される。
「他人の口に戸は立てられぬ……本当の方の――広まったら都合の悪い方の噂が広がる前に、偽物の噂を流したな、サーゼクス」
「完全に偽物ではない辺りが何とも言えませんね」
アシュタロスやセラフォルー・レヴィアタンのことが入っていないなど、諸々の都合の悪いところが削除されている辺り、その本気度が伺える。
「借りというほどの物でもないな、これは。とは言え、些か不愉快ではある」
「なにがです?」
「仮にレーティングゲームだとすれば、このライザーが勝っていた……それだけだ」
「素晴らしいですわ。閣下……」
アシュタロスはすっかりライザーに心酔していた。
「レーティングでは、ですか、坊ちゃん?」
「俺を何者だと思っている、セバスチャン」
「ええ。不死の鳥の体現でしょう……しかし、本当のところは、どうなんです?」
「あの決闘でも勝とうと思えば勝てていたさ……」
アシュタロスは思い出す。
あの鮮烈なる炎を。
滅びに真正面から挑んだ焔を。
「だが、まだ時期ではない」
傲岸不遜。現魔王二人を下せると、ライザーは言う。
そして、恐ろしいことに、未だ十歳程度の彼には、それだけの力が確かにあった。
前世からの力が。今世での能力が。
「あのときの勝利条件は……サーゼクスやセラフォルーを殺すことではなく、アシュタロスを我が手中に収めることだったからな。あとのことは、いわゆる消化試合だ。もっとも、こうも噂になるとは思わんだがな」
「面白そうという理由かもしれませんね、サーゼクス・ルシファーが噂を流布しているのは」
最早三人とも、サーゼクスが噂を広めていると信じて疑わない。
愉快犯的側面を持つサーゼクスならば、さもありなんといったところであった。
なによりも、冥界には娯楽が少ないのである。暇つぶしという名目でいかにもサーゼクスが企みそうなことであった。
「ふん、そうかもしれないな……だが、所詮噂は噂だ……気にするようなことでもあるまい」
「坊ちゃんであると明言されてませんしね」
「そういうことだ」
「フラグ」
「うん……?」
「フラグ、立ちましたよ、今。厄介ごとのフラグが立ちました、坊ちゃん」
「厄介ごとなんぞいつものことだ。むしろ厄介ごとがない方が珍しいぞ」
「閣下……どんな生活をされていたんです?」
思わず、アシュタロスはそう零す。
「どうもこうもないさ。眷属を得る時には大体あんな感じだぞ……もっとも、流石に魔王相手に喧嘩を売ったのはあれが初めてだが」
「あんな感じなんですか……」
「あんな感じだ」
「あんな感じですね」
極めて恐ろしい話である。ライザー曰く、眷属の勧誘は基本、血を見るものらしい。
普通ではない。アシュタロスは何とも言えない表情になった。
とはいえ、メンツを思い浮かべてみれば、それも納得出来るもので。
「そんな眷属も、大分席を外していますがね」
「半数以上おらんな」
「よろしいのですか? 閣下」
「構わん、自由にさせておけばいいさ……眷属というのはあまり縛り付けておくものではない」
「ドラゴンもいませんね……」
「マグマ浴にでも行っているんだろう……」
「はあ」
「今は休養の時間だ。有事の際には、しっかりと働いてもらうがな」
御しきれていないわけではない。普段からわざわざ手綱を握る必要性はないと、ライザーは考えているのである。
「有事の際は有事の際で、好き勝手に働くだろう。ウチの連中は戦争狂(ウォーモンガー)ばかりだからな……」
「荒事は悪魔の華というものでしょう」
「荒事か」
「閣下?」
「今でこそ小さなうねりだが……いずれ、大戦争が始まるだろう。その時までのちょっとした休息だ」
「今の三大勢力を見る限り、そんな気配はしませんが……」
現四大魔王、ミカエル、アザゼル。三大勢力のトップその誰もが、好戦的ではない。
むしろ、時代は平和に向けて傾いているといっていいだろう。
だというのに、アシュタロスの王は、戦争が起きると断言する。
それが事実であるかのように。
「起きるさ、起きる……必ずな。悪魔だからじゃあない。人間? 天使? 堕天使? いいや違う。生命あるものは全て心の奥底では闘争を望むものだ……闘争の遺伝子が組み込まれている。故にだ、真の平和など訪れはしない! 決して、だ。……今はただ、戦争と戦争の間というだけに過ぎない」
「平和とは戦争の間の期間である……」
「そうだ。我々には肉体的な寿命というものはないからな。尚更だ。来るぞ、来る……戦争の時代は、絶対に来る」
「その時は閣下、私もお傍に」
「頼むぞ、我が僧侶……さあ、残りの眷属もどうにかして集めなくてはな……」
そう言い、ライザーは指で悪魔の駒を転がす。女王、僧侶1、騎士1――それが、ライザーの悪魔の駒の余りであった。
齢二桁になったばかりで、ここまで揃えているものはまずいない。ましてや、そのどれもが魔王たちとタメを張ることの出来る超級の駒であるなど。
「……生物の根源は闘争にあるのだ……」
「不穏ですね、坊ちゃん。魔王にでも聞かれていたら大変ですよ」
「ああ、気を付けることにしよう……」
と、そこで。戸を叩くものがいた。
「この扉の叩き方は――レイヴェルか」
「ちいにいさま!」
扉を開けて入ってきたのは、金髪ツインテールの女子であった。いかにもお嬢様然とした格好をしているのは、レイヴェル・フェニックス。ライザーの妹であり、フェニックス家の第四子である。
「どうした、レイヴェル……吸血鬼を打倒した人間の話でも聞きに来たのかな?」
「ききたいですわ! ああ! じゃなくて……ちいにいさまにおきゃくさまが……」
「客?」
ライザーはセバスチャンを見やる。
首を振られた。どうやら、予期せぬ訪問者であるらしい。
「わざわざ俺を訪ねてきたというんだ……会ってやるとするか」
レイヴェルにたどたどしく案内されたのは、フェニックス邸の外であった。
そこに立っている人影が一つ。少年がいた。黒髪の少年だ。年齢はライザーとさして変わらないだろう。
そして、ライザーには見覚えがない少年であった。
「誰だ、君は……俺が忘れてしまっているだけかな? 物覚えはいい方だと自負しているんだがね……」
「いや、初対面だ」
「そうか……わざわざここまで来たんだ。茶の一つでも飲んでいくか――」
「俺の名は」
ライザーの申し出を、その男子は切った。レイヴェルはそんな無礼とも言える態度に、まあ、と漏らす。
「サイラオーグ――サイラオーグ・バアル」
「バアル……そうか、バアル家の血統か」
悪魔の大王バアル。その名を知らなければ、冥界ではもぐり呼ばわりされても仕方ないだろう。
それほどのビッグネームであった。
「確か、滅びの魔力を持つ血族だったな……」
即ち、サーゼクスの血縁者でもある。
「そういえば風の噂で聞いたことがあるぞ。バアルの家に、滅びの力は愚か、魔力すら持たない子供が生まれたと……」
「それが俺だ」
静かにサイラオーグは答えた。
「ほう、そうかね……で、だ」
ライザーの雰囲気が変わった。静から動へと、纏うものが変容してゆく。雰囲気が重くなり、赤の髪と赤金の瞳の輝きが増す。
「君はなにをしにきたのかな。このライザーのもとへ」
「お前が、同世代最強の悪魔だと聞いた」
「齢一桁から卒業したばかりの尻の青いガキのナンバーワンと言われてもな、誇れるものではあるまい」
「悪魔としての才能は若手を加味しても抜きん出ていると聞いている……彼のサーゼクスと引き分けたとも」
「噂には誰と引き分けたかなんてなかったはずだが?」
「魔王と引き分ける子供なんて、お前くらいしかいないだろう、ライザー・フェニックス」
それこそ、子供でも分かることだとサイラオーグは言う。
その通りであった。魔王相手に引き分ける。それが出来るのは、事実上、ライザーしかいない。
「恍ける必要もないか。ああ、そうだとも。俺が、その噂の主だ。して、それを知った貴様は……どうするというんだ?」
「お前を倒して、俺が最強である証明とする!」
「結構なことだ。フフフ……いいぞ、貴様。やる気か……中庭に来い! そこで相手をしてやろう……存分にな」
レイヴェルにここからは男の時間であるといい、下がらせる。
フェニックス邸の中庭にて、二人の少年は対峙した。お互いに得物は持っていない。完全な殴り合いの様相であった。
「俺は最強だ……確かにな」
風が一迅、吹き抜ける。ライザーの赤い髪を揺らす。
「なぜ、求める。最強という称号を」
「己が道の証明のため!」
サイラオーグは拳を握る。その手には、鍛錬で出来たのであろう豆が散見された。
「若い、な……よし、一つ宣言をしようじゃあないか……俺は今から魔力を使わない。フェニックスの炎も使わない。ただ、自分の肉体だけを使うことをここに誓うとしよう……」
「なんだと……!」
それは挑発にも似た言葉であった。己自身で、みすみす選択肢を絞る愚行。
ライザーの線は細い。戦えるだけの膂力があるようには見えない。舐められているのか? そんな疑問がサイラオーグの胸で鎌首を持ち上げるが、即座に否定した。魔王と引き分けるだけの人物がそんなことをするだろうかと考えれば、おのずと答えは出た。
本気なのである。本気で、サイラオーグに対し徒手空拳で臨もうとしているのだ。
「バカにしているわけでは、ないようだな……!」
「当然だ。そこまで惚けてはいない。十分だと言っているんだ。これでな――さて、立会人はセバスチャン、お前に任せるとしよう」
「イエス マイ ロード」
どこからともなく現れたセバスチャンに審判を任せる。
ライザーが首をこきりと鳴らす。
「それでは――始め!」
初撃はライザーであった。
サイラオーグの鳩尾に肘が入っていた。この間、一秒と経っていない。
「吹っ飛ぶことだな」
「ごがっ」
ライザーの宣言通り、サイラオーグの身体は、激流の中の木の葉のように飛ばされた。バウンドし、壁面にぶつかれば、人型に凹む。
一撃である。たったの一撃で、その実力差は現れ、そして決定づけていた。
それが、最強の証明であった。それこそがライザーであった。
「終了だ」
「いえ、坊ちゃん。彼はまだやる気のようですよ」
「ふむ……」
「まだだ……」
サイラオーグは立ち上がった。口から血を垂らしながらも、その瞳からは闘志が消えていない。
そんな彼の姿を見て、ライザーは目を細める。
「まだ、終わっていないぞ!」
「ほう、来るか」
サイラオーグは再び飛びかかる。
少年にしては速い。だが、ライザーからしてみれば――魔王と引き分けるような存在からすれば――蠅が止まるかのようなスピードである。
「沈め」
ライザーが選んだのは、踵落としであった。
サイラオーグの脳天に叩き込む断頭の斧。中庭にちょっとしたへこみが出来るほどの威力。
「児戯にも等しきことよ。無駄だ、無駄無駄」
だが、それでもサイラオーグは諦めない。目が死んでいない。
ライザーの口角がつり上がった。
(おや、いけませんね。坊ちゃんの悪い癖が)
ライザーの中で嗜虐趣味がむくむくと起き上がっているのを、セバスチャンは感じ取った。
可哀想に、と思っていないことを内心でつぶやきながら、やはり内心で合掌する。
(ここまで……)
拳を振るうよりも速く殴られ。
(ここまで遠いのか)
一歩踏み出せば蹴りを入れられ。
(こんなにも遠いのか)
見上げれば叩き落とされる。
(最強とは、こんなにも……!)
それは壁であった。大いなる壁であった。魔力を微塵も使っていないというのに、この差である。
サイラオーグは、例え滅びの力や魔力がなくとも、肉体を限界まで鍛えれば勝つことが出来るという考えを持っていた。
その努力もまだ足りていないという自覚はある。時期が早い。そんなことは分かっている。それでも、サイラオーグがライザーに挑んだのは、滾ったからであった。
自分と歳の変わらない少年。だというのに最強の名を冠し、魔王と同等の戦いを繰り広げられる。
最強との手合わせ。今の自分はどこまで食いつけるか。
しかし、その壁はあまりにも大きすぎた。高すぎた。
まるで、歴戦の戦士を相手しているかのように。
戦い慣れをしているのだ。
「ぐぅ……」
「腕がちぎれたぞ、サイラオーグ。足は折れたぞ、サイラオーグ。さて、どうするかね?」
「が、あ……」
開始十分。サイラオーグはついに声も出なくなった。
だが、その目は諦めていない。朦朧としているが、死んではいない。眼光は常にライザーを捉えている。
「ふむ」
それを見たライザーは、目を抉りとった。
己の目を、である。
右目に指を突っ込み、ぐりゅりと真っ白な眼球を取り出した。
眼球からぽたぽたと落ちる液体を、サイラオーグの口に流し込む。
「ほうら、怪我は治ったぞ」
「こ、これは……怪我が、怪我が消えて……い、いや、治っている! 傷痕一つ残さずに! 治っている!」
「フェニックスの涙だ……それも原液のな。身体に対する怪我は、全て治ると思っていい。さて、どうする? サイラオーグ……」
「語るに及ばず……!」
サイラオーグは立ち上がる。立ち上がり、立ち向かってくる。
ライザーの顔には喜悦の表情が浮かんでいた。
「それでこそ、それでこそだ。サイラオーグ。だが、歯を食いしばれ」
「なに……?」
「次の攻撃はすこしばかり響くぞ」
サイラオーグがそれが何かを問う前に。ライザーは一撃を放っていた。
「オゥラ!」
顔面に突き刺す一撃目。
だが、その一発で終わりではない。
本命はここから始まるのだ。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」
目にも止まらぬ連撃。雨霰のように叩き込む殴打の嵐。
何発殴ったのかは、繰り出した本人の意識外になるほどの速度とそれに追随する重み。
怒涛のラッシュが終わる頃には、ライザーの手からは、煙が立ち上っていた。
「ふむ、やはり熱がこもるな」
「坊ちゃん、やりすぎでは?」
「殺しちゃあいないさ……ちゃんと加減はした。死んではいない」
「そのようですね」
サイラオーグは立ち上がった。生まれたての小鹿のように足を震わせながらも、全身に火傷を負いながらも、サイラオーグは立っている。
「礼を、言う……ライザー……フェニックス」
「ほう? なににだね」
「魔力なしでもそこまで至ることが出来ると、その証明をしてくれたことに、だ……!」
「フフフ、フハ! フハハハハハハハ! 聞いたかセバスチャン! こいつは俺に殴られながらも! なによりも強欲に、俺の技を盗もうとしているぞ!」
「ええ。聞いておりますよ、坊ちゃん」
サイラオーグのその姿勢に、ライザーは尊敬の念すら抱いていた。圧倒的な実力差が存在するにも関わらず、サイラオーグはむしろそれを利用しようとすらしていたのだ。
「いい……実にいい! 気に入ったぞ! サイラオーグ・バアル! どうだろう、一つ、俺の眷属にならないか」
ライザーは一つ駒を取り出した。騎士の駒である。それを、サイラオーグにつきつけた。
「断る!」
「ほう、なぜだ」
「俺はいずれ、お前を越える男だ……眷属の方が強いだなんて恥、お前は晒したくないだろう……」
「フハ! どこまでもふかす若造だ……いいだろう! この勝負はお前に預けるとしようじゃあないか……俺を倒すと! そう言ったのならば! 実行してみせよ! この俺を超えてみるがいい! サイラオーグ・バアル!」
「ああ、約束……しよ……う……」
サイラオーグは、気絶していた。立ったままである。立ったまま、その意識を失っていた。
「いいな、欲しいな……」
治療し(目玉を口に突っ込み)ながら、ライザーは呟く。
「坊っちゃん、子供ですか」
「まだ俺は十歳なのだがな、セバスチャン」
「あなたのような十歳児がいますか」
「これが、俺の知るライザーという男だ」
「なんてデタラメなの……知っていたけど」
「悪魔として、あれだけ貪欲であり、同時に禁欲的でもあるものを他には知らない」
高みにいながら尚、更なる高みを目指す男。それが、ライザーであるとサイラオーグは語る。
「ちなみに、これがそのとき渡されたライザーの眼球だ」
「ひぃ!」
サイラオーグの手に乗っていたのは、今取り出されたばかりのような瑞々しい眼球であった。リアスとばっちり視線が合っている。
「なんてものを持っているのよあなた!」
「無尽蔵にフェニックスの涙を生成するようなんだ……これを口に含めば、たちまちの内に外傷が癒える。ハードなトレーニングには欠かせない。思えば、これはライザーからの挑戦状なのだろうな」
「そ、そう」
「いずれ、ライザーを地に墜とすまで、この屈辱も甘んじて受け取ろう……」
「が、頑張ってちょうだい……」
男とはわからないものである。リアスの結論であった。
Q、これって本当にライザー?
A、ぼくのかんがえたかっこいいらいざー(笑)
Q、アーカードの駒消費おかしくね?
A、これでも原作より弱いアーカードだったり。リップ 伊達男は勿論、猫も入っていないので
原作よりも大幅強化されているライザーの「不死」と「再生」のポテンシャルがちょっと弱い旦那の「不老不死」「魂吸収」と釣り合っていると駒が判断した模様
Q、あれ、サーゼクスとの戦いは?
A、キンクリ。総力戦だったので、物語根幹のネタバレ回避もかねて。楽しみはとっておく趣味なんです。ご勘弁ください