不死鳥になりまして   作:かまぼこ

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Fate/EXTRAで軍団長閣下が参戦している夢を見た…クラス名?ライザーじゃね(適当)


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不死鳥と模擬戦Ⅱ

 修行。それは強くなるための手法。

 修行。それは勝利のための第一歩。

 修行。それは苦難の道なのである。

 

「だからって、荷物持ちっスか、部長~」

「何事も、基礎が大事ってことよ、イッセー。あなたの持つ『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』は、特にそれが顕著だわ。こうして基礎体力をつけるのが、一番効率的なのよ」

「わかってますけど……」

 

 『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』の効率を上げるために最も単純で有効な手は、所有者の肉体的な強化。イッセーがリアスから耳にタコが出来るほど聞いたものだ。その為、毎朝ランニングをして筋力の増加を図っているのだが、今回は少しばかり趣向が違う。

 なにせ、やっていることは山登りなのである。合宿に行くわよ。リアスの鶴の一声で決まった対ライザー戦の合宿。その道中の出来事であった。

 えんやこらと三人分の荷物を持ちながらなんとか山を登りきったイッセー。やっと休憩が出来る。そう思い、最後の一歩を踏んだ先に待っていたのは。

 

「赤龍帝のお出ましか」

 

 ライザーだった。

 

「ええええ! なんでだぁぁああ」

「なに、お前たち、修行をするようじゃあないか……そして、優秀なトレーナーを求めていると。その話がサーゼクスから来てな」

「お兄様のせいね……」

 

 リアスは額に手を当てた。溜息が一つ溢れる。

 明らかに狙ってのことだろう。兄もいらない気を回したものである。

 

「俺も忙しい身の上。お前たちも対戦相手から物を教わるのも複雑だろう。俺だってカンニングのような無様はしたくない……故に。今日の俺は運び屋だ」

「運び屋?」

「そうだ。大体、俺は何かを教えることはさして得意じゃあなくてね……そこで、俺の『騎士』と『僧侶』に作らせたのが『これ』だ」

 

 ライザーの手に、分厚い書類のようなものが現れる。ぎっしりと書かれた文字が、ミミズのように見えた。

 ライザーが宣戦布告を受けて一日しか経っていないのだが、そこはそれ。セバスチャンとアシュタロスの連携プレーである。

 

「この通りにやれば、最低でもゲームになるくらいには実力が付くという話だ」

「……感謝するわ。ライザー」

「なに、善意によるものじゃあないからな」

 

 リアスとその眷属を鍛える。そこにあるのは、リアスの為であるとかではなく、ライザーの闘争への欲求である。リアスの言う『可能性』。それがどれほどのものか。それを見定めようとしているのだ。

 つまるところ、完全に我欲であった。

 

「それでも、よ。何事も独学では限度があるわ。修行もそう。あなたの眷属によるものなら、百人力だわ」

 

 ライザーの介入には面食らったリアスだが、すぐさま落ち着きを取り戻す。

 セバスチャンとアシュタロス。その二人が用意したレシピ。今のリアスには、黄金にも勝る価値がある。あの二人には、チェスで勝ったことが殆どない。それが全てではないが、リアスよりも明晰な頭脳を持っていることは確かだ。

 

「それから、だ。俺が運び屋としてきたのには、もう一つばかり理由がある」

「もう一つ?」

「そうだ。まあ、実際見たほうが早いだろう……出ろ」

 

 ライザーのすぐそばで魔法陣が展開される。紅蓮の魔法陣から出てきたものは、みかんと書かれた段ボールであった。

 イッセーとアーシアは頭にクエッションマークを浮かべ、その他はああ、と納得する様子を見せる。

 

「リアス・グレモリー初のレーティングゲームだ……眷属一同でかかった方がよかろう。それに、対戦相手は俺と『兵士』だ。こいつも慣れているだろうよ……」

「ひぇぇぇ! ヴァレリーと遊んでたら呼び出されるなんてぇえぇええ!」

 

 ガタガタと揺れる段ボールから悲鳴が上がる。無論、ギャスパーであった。

 ライザーの眷属となり、保護観察という名の下、ライザー邸に住むようになったヴァレリー。彼女の魂の汚染を取り払うべく、ギャスパーがケアしていた、早い話がイチャイチャしていたのだが、こうして呼び出された次第である。

 

「そっちは、治らなかったのね……」

 

 引きこもり兼人見知り。あわよくば改善されるかとリアスは思っていたのだが、そう美味い話があるはずもない。

 

「まあ、な。こっちはお前がなんとかしろ、リアス。『停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』はよっぽどの状況にならん限り、暴発はしないようになったんだ……後は、元々の主の手腕次第。まあ、合宿で距離でも縮めておくことだな」

「分かっているわ、ライザー」

 

 『神器(セイクリッド・ギア)』の問題に目星がついた。それは喜ばしいことである。そして、ギャスパーの精神状態は、元の主であるリアスが管理した方がいいというのは明白である。なにせ、一万年の付き合いになるかもしれないのだ。ライザーはその辺りも鑑みて一切対策を取らなかった。

 

「そうだ、兵藤一誠。お前は褒美がある方が気合の入るタイプと見た……どうだ?」

「そりゃあ、ご褒美ある方がいいっスけど……なんか貰えるんですか?」

「俺に一矢報いたのならば、綺麗なお姉さんがいっぱいいる店に連れていってやろう」

 

 ぴくり。イッセーの耳が動く。

 

「マジっすか! 本当っスか! 本当の本当っスか! ライザー様!」

 

 イッセー内におけるライザーの評価、鰻上りである。

 

「やはりスケベであったか……」

「ライザー。そんなことよりも、『綺麗なお姉さんがいっぱいいるお店』について聞きたいわ」

 

 リアスの背に修羅が見える。イッセーがひぃっと悲鳴を一つ零した。我らが『王』は怖いのである。

 

「サーゼクスに慰安だと言われて連れて行かれてな……俺にはあそこの楽しさが分からんが」

「そう……お義姉様に一報入れなくてはならないわね……」

 

 サーゼクス、ピンチである。

 頭に超と付くほどのピンチである。

 

「さて、俺は冥界に戻る……いつまでここにいても仕方あるまい……楽しみにしているぞ、リアス。窮鼠がどこまで噛み付けるものか」

「……ええ。見てちょうだい。私たちのちっぽけな牙を、あなたの喉に届かせるわ」

「いいだろう……」

 

 魔法陣が現れ、ライザーの姿が徐々に消えてゆく。

 

「ああ、それと。言い忘れたが」

「なにかしら」

「あんまり不甲斐ない結果だと、婚約解消も選択肢に入るかもしれん」

「はい?」

「ではな、リアス」

「ちょ、ま、ラ、ライザー!?」

 

 最後の最後に爆弾を置いて、ライザーは人間界を後にした。

 

 

        ――○●○――

 

 

「ぶ、部長……?」

「こ、婚約解消……? 婚約解消……婚約解消……! お、落ち着くのよ。リアス・グレモリー。まだそれが確定したわけじゃあないわ。不甲斐ない試合をしなければ……不甲斐ない試合って、どこまですれば甲斐のある試合になるというの……?」

「ダメだ。完全に別世界だ」

 

 ぶつぶつと呟き続けるリアスに、イッセーは首を振る。

 

「部長はライザー様にぞっこんですからね」

「うおおおお、思い出させないでください、朱乃さん。俺絶賛傷心中なんですから。部長に婚約者なんて嘘だぁー。部長のおっぱいを好き勝手してるなんて……妬みで人を殺せるなら……!」

「ライザー様はそういう意味での手出しはなされてないみたいですよ」

「え。そうなんですか?」

「そうなんです。ファーストキスもまだなんじゃないかしら」

「………………」

 

 それを聞いたイッセーは考えた。

 

「寝取りってどう思います?」

「……サイテーです」

「ですよねー」

 小猫に冷たい視線を送られたイッセーであった。

「そもそも、寝取れるほど先輩は魅力的じゃありません」

「ぐふっ」

「私はあの二人の関係をよく知りませんが、それでも並大抵な絆ではないことくらい分かりますよ」

「ま、まあな……」

 サンドバッグの気持ちが少し分かったイッセーである。

「にしても婚約破棄かー。俺ならそんな勿体ないことしないけどなー」

「勿体ないとか、そういう次元じゃないと思うけどな、イッセー君」

「ライザー様はこういうところで嘘や冗談を言いませんから……」

 もぞもぞと段ボールが動く。なんとも名状しがたい光景であった。

「うおお! 気持ち悪う!」

「……ギャー君。出て」

「い、いやですよぉ……いやですぅぅうう」

「……えい」

 抵抗したギャスパーであったが、所詮は『僧侶』。『戦車』である小猫に勝てるはずもなかった。

 以前よりも抵抗が強くなっていることから、なるほど成長しているなと小猫は思う。

 しかし、思うだけである。

 べりべりと無情な音を立て、段ボールはオープンされた。

「ひぃいん!」

「金髪メイドだと……!? 流行る!」

 段ボールから出されたギャスパーは、ライザー邸仕様のメイド服を着ていた。

「イッセーさんがそういうのなら、私も着ます!」

「まじかアーシア。着てくれるのか!?」

「着ます!」

 ふんす、とアーシアは気合いを入れる。

「でもメイド服ってどこで売っているんでしょうか?」

「俺が用意しよう!」

 ダメダメな会話だった。

「ああ、イッセーくん、ダメージが少ない内に言っておこう。その子は男子だよ」

「え? いやいやいや、どっからどう見てもパーフェクトな女の子じゃないか、木場。さては俺をからかってんだろ。そうだろ!」

「女装趣味があるのですよ」

「え? マジですか、朱乃さん」

「なんでそんなに聞き分けが違うんだい……」

 それは木場がイケメン(モテない男の敵)だからである。兵藤一誠は己の欲望に忠実だからだ。

「嘘だといってよ、バーニィィィィイィ!」

「ひぃいいぃいん! ごめんなさいぃぃいいい」

「それで、なぜメイド服を?」

 朱乃が言う。

「ライザー様にお世話になっている間、ライザー様のメイドさんにもお世話になったんですぅ……」

「ですぅ……じゃねえよ! 女装似合いすぎなんだよ! 下手な女の子よりかわいいよ! なんでだよ! 真実が残酷すぎるぜ! こんなの絶対おかしいよ!」

 オーノーとイッセーは頭を抱え叫んだ。夢とはとてもとても儚いものなのである。

「と、と、ところで、この方たちは誰なんですか? 部長」

「え、あ。ええ、そうね。紹介がまだだったわね。あなたがライザーの下で鍛えられている間に眷属になった二人よ。『兵士』の兵藤一誠とあなたと同じ『僧侶』のアーシア・アルジェント。イッセー、アーシア。この子はギャスパー・ヴラディ。元ダンピールの転生悪魔よ」

「よろしくお願いしますね!」

「ひぃいいん! 人が増えてるー! やだー!」

 

 段ボールに戻るギャスパーであった。

 そんなギャスパーに、リアスはため息を吐く。

「ライザーとの戦いに、貴方が必要なのよ。段ボールから出てちょうだい、ギャスパー」

「えええええええええええええええええええええ! ライザー様と対決ぅ!? 無理! 無理ですよう! 無理無理無理ですー!」

 段ボールがガタゴトと揺れる。年単位でライザーと共にいたギャスパーである。ライザーの出鱈目な実力はいやというほど見てきた。

「うるせー! 戦うって決まっちゃったんだからしょうがねえだろ! 俺だってやだよ! あんな人と戦うなんて!」

「……ヘタレ」

 ぐふう。痛いところを突かれたイッセーは謎の液体を吐き出した。というか、血であった。

 小猫の容赦ない単刀直入な言葉はイッセーの精神をガリガリと削る。

「でも小猫ちゃん、実際に戦ってみてどうだったよ。俺には勝てるビジョンが思い浮かばねえ! ていうか、一発入れる想像すらできないね!」

「それは、そうですが……」

「ライザー様は伊達や酔狂で軍団長をやってませんよう。下級悪魔の僕たちが対決するなんて、初期装備レベル1の状態で大魔王と決戦するのと同じくらい無謀ですぅ……」

 段ボールの取手から目だけを覗かせながら、ギャスパーは言う。

「言い得て妙だね。僕も、相当厳しい戦いを強いられると、そう思うよ」

「厳しいで済みゃいいけどな」

 なにも出来ずに敗北した昨日のことを、全員で思い出す。お互いに全力であったわけではない。

 それでも、『差』を実感した。体感したのである。

 ――これが差だ。

 ぶるりと寒いものがイッセーの背を通り抜けていった。

「ダメね、これは……戦う前から負けているわ……」

「仕方ないですわ。部長。ライザー様の強さをその身で体験したのですから」

「ギャスパーを送ってきたのは、士気を落とすタメではないでしょう……あっちの情報を持っているあの子を上手く使いなさいと、そういうことだわ。決して勝てはしない勝負に突っ込まなくてはならない……ライザーも無理を言ってくれるわね」

 それがどれだけ辛いことか。負けると分かって尚、戦わなくてはならない。リアスは頭痛がする思いだった。

 自分はまだいい。ライザーとの婚約破棄という、マイナスの報酬がある。しかし、眷属たちは違う。

 優しい眷属たちだから、戦ってはくれるだろうが、それでも、モチベーションにするには一手、足りないだろう。

 特に、イッセーとか。綺麗なお姉さんのいるお店で少しはやる気になっているようではあるけれども。

 

「とりあえず、だ。向こうは『兵士』一人なんだろ? だったら、その『兵士』一人だけでも……」

「無理ですよぉ~~~ライザー様の『兵士』はただお一人、『吸血鬼』アーカード様だけなんですぅううう」

「そんなに強いのか? そのアーカードって人」

「ライザー様が『兵士』8駒消費してまで眷属に引き入れた、正真正銘のミディアンなんです……うう、おっかない」

 同じ吸血鬼ということで、様々なことを文字通り叩き込まれた。ギャスパーのもう一人の師である。

 感謝はすれども、どっこい、おっかなさの方が勝っていた。

「『兵士』8!? 俺とおんなじかよ……」

「いや、厳密には同じではないよ、イッセー君」

「なんでだ?」

「イッセーくんは『神器(セイクリッド・ギア)』の影響で駒8消費だけど、吸血鬼であるアーカード氏が駒8消費ってことは、彼単体の実力だけでその領域に達したってことだと思うよ。ね? ギャスパー」

「は、はぃぃ……」

「化物の眷属は化物かよ……」

 『兵士』8駒。駒の戦力としてみるのならば、『女王』に次ぐ実力となる。勿論、そう単純な仕組みではない目安なのだが。

「ライザーの眷属は誰しも強力だわ。『兵士』だからといって舐めてかかると、即『再起不能(リタイア)』。医務室に運ばれるわよ」

「う……」

「正直なところ、安堵している自分がいるの。相手は相当手を抜いてくれるわ。再起不能はあっても、デッド エンドはありえない。心置きなく負けにいけるでしょう」

 レーティングゲームで事故で死者が出るのは稀にあることだ。その稀が起きるのは、実力が拮抗している時。

 ライザーの眷属は誰もが強者だ。下級悪魔など木っ端のように吹き飛ばせるだろう。それだけの差があって、良かったとも言える。

「負け決定っスか」

「確定と言ってもいいわ」

「確定……」

「冥界最高クラスの相手と戦えるのよ。私たちに出来るのは、私たちに出来ることを精一杯やること」

「つまり?」

「作戦、当たって砕けましょう」

 堂々と、リアスは宣言した。

「えー……」

 それは作戦なのか。イッセーは内心で思う。しかも、砕ける前提である。

「早い話、蟻と象の決闘よ。無論、私たちが蟻よ」

「俺たち虫けらッスか……女王蟻様……」

 弱い弱い言われるイッセーであるが、流石に虫扱いされたのは初めてである。

「腐らないで、イッセー。一寸の虫にも五分の魂と言うわ。あなたの目指すハーレム王の夢のためにも、トップクラスとの戦闘はいい刺激になると、そう思うの」

「うう、頑張りますわ、部長」

「その意気よ」

 深くリアスは頷く。

「その、言いにくいことなんですが、今の皆さんだと、十秒もたないですよぉ……」

「せっかくやる気出たのに、余計なこと言うなよギャスパー!」

「ひぃいん、ごめんなさいぃぃ」

 十秒。一発KOもいいところである。

「とはいえ、ライザー様に修行を付けてもらっていた子なんですから、相手のことはよく分かっているはずですわ」

「いやですぅ。アーカード様はライザー様の眷属の中でも最古参の方ですよぉ」

「しっかりトラウマになっているのね……」

「だってだって、アーカード様は棺桶に乗って走り回るんですよぉ。ひーん! こっち来ないでぇえええ」

 トラウマが蘇ったのか、ガタガタと震えるギャスパー。そして段ボール。

 僕にとっては段ボールが棺桶ですよぉと訳のわからないことをギャスパーは言う。

「いや、どんな吸血鬼だよ。棺桶って大事じゃなかったっけか」

 オカルトに詳しくないイッセーでもそれくらいは知っているのだ。

「ベッドに乗ってブイブイ言わせる感じね。そんなファンシーじゃないけれど」

 リアスも思わず半眼になるエピソードであった。

「とりあえず、『王』と『兵士』の情報をあるだけ言ってもらうのはどうでしょう、部長」

「それもそうね。ライザーとアーカードの資料もあることだし、休憩がてら対策を練りましょう」

「資料?」

「レーティングゲームの映像よ。これほど明確な資料はないでしょう?」

「部長はライザー様のレーティングゲームをコレクトしていますからね」

「マジっすか部長……」

「……朱乃。その情報は今必要なのかしら?」

「あらあら」

 とぼけた風に言う副部長をリアスは睨む。ほほほと朱乃は笑っていた。

「ア―カード様の基本の戦闘手段は大型拳銃『ジャッカル』か、吸血鬼の膂力を利用した体術になります……」

「拳銃って物騒だな」

 悪魔や吸血鬼らしからぬ攻撃手段にイッセーは目を白黒させる。蝙蝠やらなにやらなイメージがあるのだが、最近の吸血鬼はそうでもないのだろうか、とイッセーは考えた。

 アーカードが物騒なだけなのだが。

「しかもいわゆる魔除けの術式がたっぷりと含まれてますから、当たり所が悪いと、死んじゃいますぅ」

「物騒すぎんだろ!」

「す、す、すみませぇぇえん」

「いや、謝んなくていいよ」

 というか、なぜ謝っているのか。

「更には百万発入りのコスモガン、リロードは気分という噂も……」

「なにそれこわい」

 無論、噂は噂である。

「でも、これ以上の問題が拘束術式の解放ですぅ。これを発動されてしまえば、無理ゲーなアーカード様突破がコンボイ並みの無理ゲーになっちゃいますよぉぉぉ」

「つまり瞬殺ってことか」

「はいぃ……」

 聞けば聞くほど、恐ろしい。イッセーの頭の中では、アーカードの姿は化物と化していた。しかし、そう間違っていないのが、アーカードの恐ろしいところか。

「ライザー様はライザー様で恐ろしい方ですぅ。攻撃手段が多すぎて、どう対処すればいいのか、さっぱりなんですぅぅぅ」

「いっぱいって、どれくらいあるんだ?」

「体術、剣術、魔術、超能力(スタンド)仙法(波紋法)、フェニックスの炎……そのどれもが一級品なんですよぉ……」

「いやいや、やばすぎだろ。なにそれチート? チートなの? チートなんですか?」

 軍団長閣下こえーな。などと冗談を言っている場合でもない。そんな化物を超える化物に挑まなくてはならないのである。

「最も危険なのは、時止めです……これはヤバいとか、そんなものじゃないですよぉ……」

「と、時止め?」

「はいぃ……現実時間換算十八秒の時間停止の術を、ライザー様は所有してますぅ……」

「なんじゃそりゃ……どう勝てっていうんだ?」

 諦観の域を通り過ぎ、達観の境地に入り込むイッセー。そんなイッセーを、リアスは懐かしいものを見る目で見る。

 自分も味わったことのある、そんな境地であった。

「言ったでしょう? 負けは確定だと。けれど、そこで諦めてはダメよ。諦めは魂を殺すわ。模擬戦もいいところだけど、得るものは沢山あるはず。それなりの戦果を上げられたら、ご褒美も検討するわ」

「おっぱい触らせてください!」

「……膝枕くらいなら」

「いよっしゃあ!」

 

 単純なイッセーであった。

 

 

 




Q セバスとアシュタロス、チェスするんだ
A 亀の甲より年の功。元々頭脳派っぽいので。リアスもまだまだ

Q 婚約破棄?
A するつもりは毛頭ない、けれど本気である。

Q やっぱり無理ゲーすぎる
A ラスボスに一回負けるのは王道


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