不死鳥になりまして   作:かまぼこ

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原作二巻突入。ちょいちょい変わる感じです

9/2誤字修正


不死鳥と模擬戦

 黒い軍服、軍帽、軍靴、そして軍刀を引っさげたものがいる。

 冥界において、それを纏える者はただ一人。冥界の軍団長、ライザー・フェニックスその人のみである。

 軍団長に就任して数年。山登りを初めとする毎日のハードなトレーニングは彼の身体を頑強かつしなやかに育て上げた。身長が伸び、妖艶な魅力も更に増す。次いで、魔力。これもまた、順調なる成長を遂げていた。はち切れんばかりの魔力が、ライザーの内側を渦巻いていた。

 何よりも忘れてならないのは、ライザーの魂の顕現、彼の分身、もうひとりのライザー、スタンド『神秘(アルカナ)』。その特殊能力である時止めは十秒の大台をとうに越え、驚愕の数十秒台へと踏み入れようとしていた。

 

「どれ……行くとするか……」

 

 ライザーの足元に魔法陣が展開される。グリモワールにも載る、フェニックスの紋章を模した魔法陣である。

 ライザーが炎の羽根を羽ばたかせると、世界は一変していた。

 そこは、いかにもな場所であった。壁天井に隙間なく書き連なれた文字。中央に描かれた巨大な魔法円。すわサバトの会場かと思えるような場所であったが、ソファやデスクなどの生活感漂うものが置いてあることで、妙に残念な仕上がりになっていた。

 混在(カオス)。この部屋に来るたびにライザーが思うことである。

 

「趣味が悪い」

 

 ぼそりと呟く。そんなライザーの耳に、水音が聞こえてきた。部屋の奥、シャワールームから聞こえてくる。キュッと栓を締める音が響き、しばらく。

 

「あら、ライザー」

 

 シャワールームから出てきたのは、一糸まとわぬ姿のリアスであった。

 

「久しぶり……言うほどでもないかリアス」

 

 ここは人間界におけるリアスの活動拠点。駒王町駒王学園旧校舎オカルト研究部部室である。

 

「ええ。そうね。けど、貴方の婚約者は意外と寂しがり屋なのよ?」

「釣った魚に、餌を与えるとするかね、リアス……」

 

 リアスの顎を上げ、ライザーは己の唇を寄せる。

 

「ばか」

「む」

 

 叩かれて阻止されたが。

 

「それで、ご用事は何かしら? 私の顔を見るため……だけじゃないわよね?」

「顔どころか、色々と見てしまったがな……お前は服を着るのが先決だと思うが?」

「あなただって、よく上半身裸じゃない。人のこと言えないわよ」

「男の上半身と、女の全裸は全く異なるだろう」

「安心して頂戴、あなたにしか見せたことないから」

「それは安心とは言わん……」

 

 なんだかんだで、リアスはかまってちゃんなのだ。

 

「義母君は知っているのかね……? お前が裸族であることを……」

「知らないわよ。知ってたら、何をされるか……」

 

 リアス・グレモリー。苦手なのは『亜麻髪の絶滅淑女(マダム・ザ・エクスティンクト)』――と言うか、母であった。

 グレモリー家のヒエラルキーは、母が頂点なのである。そして最下位は兄と父のダブルである。

 

「ちょっと、まさかとは思うけれど、言わないでよ。ライザー」

「そこまで狡くはないさ……だが、リアス。裸のみで誘惑できるのは、猿のみだと思え。お前の魅力というのは、そこだけではないのだからな」

「もう」

 

 ぺちぺちとライザーを叩くリアスであった。

 

「さて、本題だが……」

「待って、ライザー」

「なにかね」

「服を着るわ」

「そうか」

 

 リアスが駒王学園の服を着るのを待ち、ライザーはソファに腰掛けつつ、リアスの下に来た目的を話す。

 

「まあ、そう大したものではない。レイヴェルのことだ」

「妹さんの? 何かしら?」

「人間界に興味を持ったらしい……駒王学園への転入を希望している」

「あら、それはいいことだわ。人間界って素晴らしいもの」

「十中八九、お前の影響だろうな……見聞を広げることはいいことだ」

「そうね」

「だが、父親がだな……」

「? お義父様がどうかしたの?」

「レイヴェルが家出計画でもおっ立てたかのような狼狽振りでな」

 

 親バカここに極まれり。フェニックス家唯一の女子だから尚更かもしれないが。ライザーが幼くして家を出たこととも、無関係ではないだろう。

 

「あら」

「困ったものだ……子離れできない親というものにもな」

「いいじゃない。それだけ家族の絆が深いってことでしょう? それに――」

 

 ライザーが書類を見ていると、後ろからリアスが腕を回してきた。

 柔らかい感触が、ライザーを包み込むが、表情はピクリともしない。

 そのことに少しだけむくれるリアスは、話を続ける。

 

「こうしてライザーと会えるわけだし……私としては、いい感じだわ」

「そうかね」

「それに、わざわざ妹のために、こうして人間界にまで来るあなたも中々だとも思うわよ」

「ふん……」

「素直じゃないわね……人はそれをツンデレというらしいわ」

「やめてもらおうか、リアス」

 

 やれやれと首を振るライザー。リアスはくすくすと笑いながら、身体を滑らせ、ライザーの膝に乗る。擬似的な横抱きが出来上がった。

 

「ふふふ」

「上機嫌だな。随分と」

「それはそうよ。ライザーがいるんだもの」

「……婚約者冥利につきるな」

 

 自然と顔が近づき。

 ――と、そこで。廊下の方がにわかに騒がしくなった。リアスは小さなため息と共に、顔を離す。

 

「こんにちはー。部活しに……誰ェェエェエ! 部長になにしてやがる!」

「イッセーさん?」

「どうしたんだい……」

「なんですか……」

「あらあら」

 

 軍団長閣下! と声が重なった。慌てて礼を取ろうとする三人を、ライザーは片手で制する。

 

「いい。楽にしろ。こんな格好だが、公務で訪れているわけでもない」

「ぐ、軍団長……?」

「冥界の最高戦力とも呼ばれている御方だよ」

「冥界の最高戦力……?」

 

 先ほど叫んだ少年が、復唱する。

 

「次にお前は、こんなヤツが!? と言う!」

「こんなヤツが!? ……ハッ!」

「更にお前は、まさか『神器(セイクリッド・ギア)』か!? と言う!」

「まさか『神器(セイクリッド・ギア)』か!? ……またぁ!? どうなってんだよ!」

「単純に貴様がゆるいだけだ……」

 

 そう言って、ライザーはリアスの方に振り向いた。

 

「新しい眷属かね、リアス……」

「ええ。イッセーっていうの。仲良くしてあげてちょうだい」

「お前の趣味はどうなってるんだ……こんなものを眷属にして……」

「こんなもんってなんだ! ていうか、あんた、部長に馴れ馴れしく触んな! 部長のおっぱいは俺のものだ!」

「残念だが。リアスは髪の先からつま先まで、俺のものだ……無論、魂もな」

 

 と言うか。リアスの価値はおっぱいだけなのだろうか。煩悩丸出しというのは悪魔らしいといえばらしいが。思わずライザーは半眼になる。

 

「いや、イッセーくん、その人は……」

 

 金髪の美男子、木場祐斗が、暴走する少年兵藤一誠を止めようとするが、イッセーは止まらない。

 

「死に晒せ痴漢!」

 

 拳が振り上げられた瞬間であった。

 イッセーは部屋の隅のゴミ箱に顔を突っ込んでいた。

 

「イッセーさん!」

「な、なんじゃこりゃあ!」

「……くさい」

 

 金髪のシスターアーシア・アルジェントの心配はともかく、白髪の美少女塔城小猫の素直な感想が、イッセーの心をえぐる。リアスの『女王』姫島朱乃はあらあらと笑っていた。

 

「生き残るためには、彼我との戦闘力の差を感じ取らなければならない。その点、お前は零点だ……今の瞬間、俺はお前を百回ほど殺すことが出来た……」

「イッセー。この人はライザー・フェニックス。冥界の軍団長にして、私の婚約者よ」

「はい? こんやくしゃ?」

「ええ」

 

 イッセーの動きが固まる。停止すること数秒。

 

「ぬるぬるで独特の食感がある夜のお供の?」

「それはこんにゃくだよ」

「外国語を訳す?」

「それは翻訳ね、きっと」

「こ……」

 

 やっと、イッセーの脳味噌が事実を認める。

 

「婚約者ぁああああ!?」

 

 窓ガラスが割れるのではないかと思うくらいの大声であった。

 ライザーが予言をしなくとも、この展開は、部室内の誰にでも予想出来たことだろう。

 

「そう、婚約者だ……リアスの下僕」

「かわいいでしょう?」

「どこがだ。お前の趣味は少々理解しがたいな……」

 

 ライザーには、愛でることのできる対象には全く見えない。否、元々何かを愛でるタイプではないのだが。

 

「ほ、本当なんですか、部長……本当の本当に、婚約者なんですかァ~~~ッ!?」

「ええ、本当よ。親公認……というか、親が結んだ婚約ね」

「普通、そういうのは、こう、不満とかありますよね! 無理矢理の婚約とか!」

「ライザーにはないかしらね……それに、私も貴族なんだし、政略結婚にはある程度納得してるわ」

「ないんですか! 天は我を見捨てたぁああ! あ、痛えっ」

「悪魔が天だの神だの言うかね……」

「うるせー!」

 

 ライザーはリアスの髪を弄りながらイッセーを見る。

 

「ふーむ……」

 

 その後、ぐるりとリアスの眷属を眺めた。

 

「リアス」

「なにかしら、ライザー」

「君の眷属はポンコツが多いなァ」

「失礼ね!」

「と言うか、全員力不足だ。このまま公式レーティングゲームに参加してみろ。やってくるのは敗北の山積みだ」

「そんなことはないわ! あなたが茶化したイッセーなんて赤龍帝なのよ! 『兵士』の駒八つ消費! すごいのよ!」

「ぶ、部長……!」

 

 感動するイッセーだが。

 

「そいつはゴミ箱にシュートされたがな。てんでダメだ。まるでおままごとよ……」

「くそおおお」

 

 そも、リアスの誤解とでも言うべきか。駒の消費はポテンシャルなども含むので、本人の単純な強さによるものでなかったりする。

 ライザーの目には、おもちゃ(神器)を貰ってはしゃぐ子供にしか見えないのだ。

 

「しかし、赤龍帝、赤龍帝ね……」

 

 赤龍帝。神をも滅ぼすと言われ、『神滅具(ロンギヌス)』と呼ばれる危険極まりない十三種の『神器(セイクリッド・ギア)。ライザーの『僧侶』、ヴァレリーが持つ『幽世の聖杯(セフィロト・グラール)』と同じカテゴライズされるモノ。

 その中の一つ。『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』。二天龍の片割れ『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』ドライグを封じ込めた『神器(セイクリッド・ギア)』を得たモノの通称だ。

 ライザーの眷属であるミラボレアスと同格の凄まじいドラゴンが封じられているだけあって、その能力の高さは破格である。所有者の能力を十秒ごとに倍加するというのがその能力。二十秒で四倍、三十秒で八倍という風に、倍々ゲームで強化されてゆくのは、単純だが、それゆえ強力な能力なのである。

 とは言え、倍加される元の能力が0.1などになると、目も当てられない悲惨さになるのだが。

 

「リアス。お前の情愛の深さは美徳だが、それだけではお前の目的は果たせんぞ」

「分かっているわ……けど、私の下僕たちを馬鹿にしないで頂戴」

「だが、俺と戦えるだけの力はないな……全くもって、ない。皆無だ。論ずるだけ無駄よ。無駄無駄」

「あんた、さっきから聞いてりゃ、そんなに強いのかよ! 冥界の最高戦力かなんか知らないけど、みんなを馬鹿にすんなら、ぶっ飛ばす!」

「ぶっ飛ばす、か……」

 

 ソファに肘を突いたまま、ライザーはイッセーを見る。

 イッセーの手には『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』が発現していた。

 

「仮にも軍団長に下級悪魔がよく吠えたものだ……無謀……いや、無知なだけか……」

 

 その気になれば、ここでイッセーの首を刎ねることができる。それも、それなりに合法的に、だ。それだけの格差がライザーとイッセーの間にはあった。しかし、それでは面白くない。

 リアスの駒を徒に減らすのも憚られるし、そもそも、ライザーの趣味でもない。

 

「そうだな……ここは一つ、お前に選択肢をやろう……」

「せ、選択肢?」

「そう、選択肢だ……助かりたければ、二歩下がれ。そして、もしも、もしもだ。お前が俺と対峙するというのならば、一歩進め……」

(ど、どういうことだ……? 二歩下がれ? 一歩進め? 訳がわからねえ……だ、だが! 部長をいいようにしているアイツは許せねえ! イケメンで、お偉いさんで、部長の婚約者だなんて、万国非モテ委員会会員の俺には納得いかねー! 一歩進む! んで、一発殴る! 目に指を入れて、殴り抜いてやるぜぇ!)

 

 当初の目的はどこにやら。完全に私怨である。残念な男、兵藤一誠であった。

 

(それに、こっそり溜めた、『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』のブーストもある。油断してるところ悪いが、一気に行かせてもらうぞ! 軍団長殿! まずは一歩!)

 

 イッセーが足を動かした。

 

「二歩……下がったな」

「え?」

 

 一歩進んだはず……しかし、イッセーの位置は違っていた。後ろに下がっているのだ、それもきっちり二歩分も!

 

「そーかそーか。それならば仕方がない。俺は寛大な心を信条としている……咎めはしない」

「ちょっと待て!」

 

 イッセーは二歩、進んだ。

 

(二歩、進めた……俺はおかしくなったわけじゃない!)

 

 さて、とライザーは言う。

 

「もう一回、するかね? 助かりたければ、二歩――」

「一歩だよ!」

 

 イッセーは足を踏み出し――

 

「二歩……下がったな」

「なんでだああああ!」

 

 イッセーは叫ぶ。その足は、先と同じように、二歩下がっていたのだ。

 

「イッセーくん、何をやっているんだい……?」

「あ……ありのまま、今起こった事を話すぜ! 『俺が奴を殴ろうと思ったらいつのまにか後ろに下がっていた』……な……何を言ってるのかわからねーと思うが、俺も何をされたのかわからなかった……頭がどうにかなりそうだった……催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ、断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……」

「さて、もう一回やるかね……? 兵藤一誠……」

「う……」

 

 ライザーは余裕だ。遊んでいると言っても過言ではない。目の前の少年は『入門』出来ない。決して。

 この一連の行動も、暇つぶしと言っていい。

 

「ライザー。うちの子をあんまり、からかわないで。その子は最近悪魔になったばかりなの。実力不足は仕方ないわ」

「フ……だが、リアス。それをいつまで言い続けるつもりだ? 最近だのどうだのは関係ないのだ……言わば、お前の怠慢よ……仕方ないと言い続けることは簡単だ。それを言うよりも、するべきことはあるんじゃあないか……今の眷属連中を見れば、そうだな……我が『兵士』……『兵士』一人だけで十分だ。殲滅出来る。それも余裕でな」

「『兵士』一人……アーカード……ね」

 

 『兵士』は『兵士』でも、駒八つ消費。駒の価値から言えば、準『女王』の化物であるが。

 

「むしろ俺一人で余裕だ。この状態からでもな」

 

 ソファに深く腰掛け、リアスを抱えながらも、リアス・グレモリーの眷属を一人で相手出来るのだとライザーは言う。

 

「来い。リアス眷属諸君。このライザーが少しばかり遊んでやろう……」

 

 誰も飛び出さない。相手が軍団長という立場ある悪魔だからとか、そんな理由ではない。単純に、凄味。ライザーから放たれる凄味が踏み出すことを躊躇させているのだ。

 イッセー達は思う。格が違うと!

 

「………………ッ」

 

 誰のものか分からない汗が、頬を伝い部室の床に落ちる。

 

「来ないのかね。ほら、纏めてかかってこい……」

 

 エロでスケベで変態、ついでにヘタレなイッセーであるが、それでも一人の男である。心の奥底にある、男の部分が叫んでいた。

 ここで引いたら最後だと。二度と立ち向かえないと。一生苦い敗北を引きずったままになると!

 

「う、おおおおお!」

 

 『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』によるブーストを受けながら、踊り出るイッセー。それをきっかけに、各人が動き出す。

 

「よかろう」

 

 ライザーは腰に差した軍刀の柄を、左手で弾く。勢いよく射出された軍刀は、イッセーの額に直撃した。

 

「うがッ」

 

 くるくると回る軍刀。それをライザー目にも止めず掴み取る。そして、向かってきた小猫の喉を柄で突く。

 

「クッ」

 

 木場の作り出した双剣を一閃で斬り飛ばし。

 

「なっ」

 

 振った勢いを利用し、朱乃のすぐ傍に軍刀を飛ばす。

 

「……っ」

 

 最後は真っ二つになった木場の魔剣が、アーシアの目の前に突き刺さって終了であった。

 

「ひぃ」

 

 あっという間であった。時にして一秒未満の早業。それだけでリアスの眷属は沈黙した。

 

「これが差だ」

 

 それが当然であるかのように、ライザーは言う。特殊な能力は微塵も使っていない。純粋なる身体能力でのみの制圧。朝飯前もいいところであった。

 

「彼の赤龍帝と言えども、担い手がこの調子ではな……」

 

 『神器(セイクリッド・ギア)』とは道具である。道具とは使い方によってその有り様を変える。今のイッセーは、その強大な力に振り回されているに過ぎない。

 宝の持ち腐れとも言える。

 

「動きはドのつく素人、元は一般人か……いや、今の時代、有り触れているといえば、有り触れているか。それでも立ち向かってきたことは評価出来るな……蛮勇……だが、立ち向かう勇気がなければ勝てないのも事実」

 

 ふむ、とライザーは頷いた。

 

「ライザー。私の眷属は、あなたの最初から完成した眷属とは違うわ。あなたから見れば、私を含め眷属たちは『未熟』かもしれない。けど、私からしてみれば、それは『可能性』と言うものなの」

「『可能性』、か。言ったものだな、リアス。だが、それは、『可能性』を見せつけた者のみが言える言葉よ……」

「ええ。だから、見せてあげましょう。私たちの『可能性』を!」

 

 リアスが立ち上がる。ライザーは座ったままだ。

 

「手袋を投げようか……」

「いいえ、結構! 売られた喧嘩は真っ向から受けるわ! ライザー!」

「よかろう。ならばやってみろ。十日だ……十日、くれてやる。その間にお前たちの『可能性』を見せてみるがいい――」

「望むところよ」

「そうだな……レーティングゲームと洒落込もうか。無論、公式のものじゃあない。身内での非公式なやつだ……俺は『兵士』一人! お前は眷属全員! それで勝負よ……」

「舐められたものね、ライザー……」

「むしろ、過剰戦力だ。俺一人でいいくらいだ。今のようにな」

 

 そう言うだけの差がある。間違いなく。闘争に溺れるライザーと、学生生活に身を置くリアスたちでは環境が違う。

 あって当然の差……と言うよりも、悪魔的に赤子と言われても仕方ないほど若いライザーが前線に立っているのがイレギュラーなだけなのだが。

 それがレギュラーであれ、イレギュラーであれ、才能以前の土壌があまりにも違い過ぎる。

 

「その『可能性』と言うものを見せてみろ、リアス」

「ええ。必ず」

 

 おもむろに立ち上がったライザーは壁に刺さった軍刀を抜き、移動用の魔法陣を展開する。

 

「――ああ、レイヴェルの件、よろしく頼むぞ」

「分かっているわ」

 

 そう言い、ライザーは姿を消した。

 

 

――○●○――

 

 

「さて……」

 

 リアスは息を吐く。

 

「どうしようかしら……」

 

 そしてぱったりとソファに倒れ込んだ。ライザーがいなくなったことで、部屋の空気が一気に緩む。

 イッセーはばったりと仰向けに倒れた。

 

「ぶはぁ! なんだったんだありゃ……」

 

 恐怖。それがイッセーの抱いた感情であった。

 堕天使と戦ったことのあるイッセーだが、それとは較べものにならないほどの覇気。物怖じするのも仕方がない。

 

「よく立ち向かっていけたね、イッセーくん……」

「そりゃあ、部長のおっぱいがかかっていたからな!」

 

 あ、そう。リアス眷属の内心が一致した瞬間だった。

 

「全く……軍団長閣下におっぱいで立ち向かっていけるなんて、君だけだよ」

「結局、軍団長ってなんなんだ?」

「冥界きっての武闘派ですわ。主にはぐれ悪魔の殲滅、テロの迎撃などを行っていますの」

 

 自衛隊みたいなものかと、イッセーは思った。

 

「ライザーはそこのトップ……冥界の中でもトップクラスの実力者よ。性格に難はあるけれどね。今日は遊んでいただけみたい……」

「あれで遊んでいただけって……」

 

 つい先ほどの蹂躙劇。イッセーにはなにが起きていたか分からなかった。そこまでレベル差があるのだ。

 

「ライザーは十日、私たちに時間を寄越したわ。期日までに修行といきましょう」

「でも部長、あんなのに勝てる自信ないですよ……」

「勝てなくてもいいわ。ライザーが見たいのは『可能性』。『勝利』ではないの。いえ、『勝利』が出来ればパーフェクトだけど、私たちにはそんなことはまだ無理よ。ともかく、今、私たちに必要なのは優秀なトレーナーだわ。お兄様になんとか融通してもらおうかしら……」

「部長、なんでそんなにやる気満々なんですか?」

「ライザーを打倒する。それが私の目標だからよ」

 

 

 

 

 




Q ライザーとリアスべったべたじゃねえか
A もう結婚すればいいと思う

Q イッセー、ポルポルくんなんすけど
A このネタは挟み込むしかないッ!

Q また旦那
A また旦那。頑張れリアス一派

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