ライザー三歳
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私は誰だ。
この私は誰だ。
私ではない私よ。
お前は誰だ。
「………………」
しんしんと雪降る夜の街を、一人の子供が歩いている。金の髪の幼児だ。身に纏っているのは、ボロボロの外套だった。その下の服からは、所々肌が見えている。零下何度でするような格好ではないだろう。
更に、日付が変わって暫らく。幼児が一人で出歩く時間ではない。しかし、その異様な幼児はそこにいた。
「……臭うな」
くん、と鼻を動かし、幼児、ライザー・フェニックスは入り組んだ裏道に足を踏み入れる。ペタペタと足音を立てて歩くこと百歩と少し。そこにいたのは、首を切られた女の死体と、それを犯す男であった。
「あんだあ? ガキじゃねえか」
「ああ、そうだな……そういうお前は、『はぐれ』だな?」
「ん? ああ、そうだけどよ、人がお楽しみの最中だっていうのに邪魔したことに侘びの一つもないのか? ガキィ……」
「お楽しみ、か。それは悪かったな……お前が何をやっているか興味がなかったものでね……」
異様な光景に悲鳴を上げるわけでも、
当然、そんな態度に気を良くするモノなどいない。はぐれ悪魔は激昂した。
「このクソガキがあ!」
頭を掴み、壁に叩きつける。ぶじゅりと出た血液が、壁に彩りを与える。僅かな月明かりがその血を照らしだした。
「あーっ……気味の悪いガキだったぜ」
はぐれ悪魔がそう吐き捨てる。お楽しみの興が削がれたことに、チッと舌打ちを溢し。
その後ろにライザーが立っていた。
「あ?」
フェニックスの紅蓮の炎が、ライザーの頭を覆う。その後には綺麗さっぱり傷のないライザーの姿があった。瞬間での蘇生。頭蓋を割られ、脳みそが溢れ出ようが、フェニックスが死ぬことなどない。
「どうやら、お前では私を殺せないらしいな……ちょいと痛かっただけだ……やれやれというやつだよ……いや、お前に期待したのも間違いだ……私のミスというやつだな」
「なんなんだ、てめえ!」
「……なんなんだ、か。ふっ……悪いが、それは私自身が求めているものなのだ」
不気味。はぐれ悪魔の瞳に、ライザーはそう映った。当然である。
こんな子供がどこにいるというのだろう。そう、言うなれば、化物だ。化物がそこにいた。
「
ライザーの右手がばちばちと音を立てる。漏れ出すのは金色の光。それは、太陽の光。
はぐれ悪魔が一歩下がるが、もう遅かった。
「――
ライザーは、はぐれ悪魔の心臓を正確に打ち抜く。幼児の手が、大柄な男の身体を貫通していた。
「えあ?」
「しからば、死ね」
倒れ込んだはぐれ悪魔の体が灰になってゆく。それをライザーはなんの感慨もなく――見つめることもせず、その場を後にしようとした時であった。
「ほう、悪魔が光の術を使うとは……奇っ怪なこともあるものだな。しかも、まだ乳臭い子供か……ますます持って奇々怪々と言ったところか……」
赤コートの男が立っていた。赤い帽子に、赤いサングラス。そんな身嗜みの、背の高い男。
「お前……悪魔……じゃあないな……だが、とても近しい……それでいて、このどこか懐かしい雰囲気……そうか。貴様、吸血鬼だな」
「ご明察だ、小さい悪魔よ」
「なに、吸血鬼とは昔から縁があってね……そのお陰でそういう気配には敏感なんだ……」
「子供が言う台詞ではないな。五歳にも及ばない
赤い吸血鬼はそう言う。
ライザーの見た目は、肉体年齢3歳に違いない見た目だ。この世に生を受けてから三年の間、付き合ってきた身体。小さな小さな、それでいて不老不死を秘めた身体。
「なぁに、これでも百年とちょいと生きているのさ……信じられんかもしれんがね」
「ほう、珍妙なことを言うものだ……」
「さて、それで、だ……私に何か用かね、吸血鬼。生憎、今の私は機嫌が悪いんだ……」
「奇遇だな。こちらは気分がいい」
両者睨み合うこと暫らく。
ライザーの肩に雪が落ち、瞬く間に蒸発した。
それが機であった。闘いの火蓋が切って落とされる。
「オラァ!」
「シィィ!」
ライザーの拳と吸血鬼の拳がぶつかり合う。ライザーが弾き飛ばされたという結果で、打ち合いは終了した。
当然である。ライザーの身体は幼児相当の重さしかない。一方の吸血鬼は大人のサイズであることに加え、吸血鬼――血を吸う鬼としての膂力がある。故に、このような事態になるのは、自明の理であった。
「……ほう」
吸血鬼は自分の腕を見た。そこにあるはずの手が消失していた。
焼け焦げた腕を一払いする。すると、どこからともなく蝙蝠が現れ、腕に集った。
そして――治っていた。手が無くなったことなどなかったかのように、そこには手が生えている。まるで、不死鳥と同じかのように。
「同じ
「ふん……生憎、賢いと言われる生き方をしたことはないのでな……吸血鬼」
「ほう。大分打撃を与えたはずなのだがな」
「このボディは特別製でな……そう易々とは殺されんよ……」
火が灯り、損傷のあった箇所を癒してゆく。
「悪魔。その耐久力。その炎……なるほど、フェニックスの縁者か」
「ライザー・フェニックス――それが今の俺の名だ」
「そうかい」
「そういう、貴様の名はなんだ」
「さて、な。捨ててしまったよ。今の私は、ただの吸血鬼だ」
吸血鬼と話しながらも、ライザーは頭を回転させていた。
(吸血鬼は吸血鬼でも、ただの吸血鬼ではないな……夜の王の中でも、破格の強さと言ったところか……)
ライザーは自分の戦闘手段を考える。
スタンド『
時止め……不可。一秒足りとも止められない。
フェニックスの炎……不可。攻撃出来るほど熟達していない。
体術……微妙。最も得意だが、身体が貧弱過ぎる。
波紋法……同上。対吸血鬼用最終技法だが、効果は薄い。
(ふむ……『この世界』と『かつての世界』では吸血鬼の特性も大きく異なるか……話に聞いた柱の男ともまた違う……ファンタジーの吸血鬼に限りなく近いようだ)
なれば、先の『はぐれ』と同じように心の臓腑を抜くか。ライザーはそう結論付ける。
(問題は、今の私にあれを打倒出来るほどの力を出せるかということだが……)
自然、ライザーの顔に、笑みが広がる。それも、凶悪な笑みだ。幼子がしていいような類のものではない。
そんな笑みを真正面から受けて、赤い吸血鬼は同じような笑いを浮かべる。
「吸血鬼。白状しよう。お前に対し、私は実に不利だ。お前に対して大打撃を与えられるほどのカードを持っていない。全くもって残念極まりないことにな……力不足という奴だ」
「それは残念だな。フェニックス。それで、どうする? 惨めったらしく命乞いでもしてみせるかね? どうするんだ、ライザー・フェニックス」
「そうだな、面白い」
ライザーの腕から、金色の光が漏れ出す。太陽光線と全く同じ波長の波紋だ。
「面白い……面白くなってきたぞ……! 吸血鬼……! 戯れにはぐれ悪魔を狩っていた甲斐があるというものだ……! 私は久方ぶりにぞくぞくしている……! 全くもって幸運と言わざるを得ないッ!」
「奇遇だな。私も丁度同じようだ……不老不死らしからぬ貴様は実に興味深い。届くのかね? 不死鳥」
「届かなければならないッ! この私には受け継いだものがあるッ!」
かつてのライザー、ジョシュア・ジョースターは受け継いだ人間であった。
対吸血鬼の技術。仙法、波紋法。それらを操る者たちを、波紋戦士と呼ぶ。ジョシュアは彼らが積み上げてきた研鑽の歴史を、背負って来たのだ。それは、転生をし、ライザー・フェニックスとなった今でも変わらない。
それは誇りであった。ジョシュア・ジョースターがジョシュア・ジョースター足る所以の一つであった。故に、遂行せねばならない。目の前の吸血鬼を斃さなければならない。
胸の内が勇気の泉となり、黄金よりも価値あるものがこんこんと湧いてくる。恐怖はない。しかしそれは、不死身だからという理由ではなかった。
ライザーは確信しているのだ。己の価値観の中で、己が正しき道の中にいることを確信している。
たとえここで死んだとしても、悔いはない。それは、不退転の覚悟!
ライザーの覚悟が完了したと同時に、右腕から放たれる波紋の勢いが増す。暗き夜の中輝くそれは、勇壮さと華麗さを兼ね備えていた。
「征くぞ吸血鬼!」
「来い」
ライザーは走り出す。一直線に向かい、吸血鬼を殺しにかかる。
上から降ってくるものがある。それは、手刀であった。吸血鬼の怪力でもって振り下ろされるそれは間違いなく断頭の一撃。
しかし、ライザーはそれを利用する。
手刀を皮一枚のところで交わし、その腕を使って吸血鬼の頭を狙う。
「
吸血鬼が頭を逸らす。所詮は三歳児の攻撃。そのリーチはとても短い。だが、そこで吸血鬼にとって、計算外のことが起きる。
それは、ライザーの分身であった。魂の形、
スタンドとは、自らの精神の写身。黄金に輝く精神に火が灯った今、スタンド『
ライザーの腕から伸びた腕が、吸血鬼の頭を捉える。
波紋をたっぷりと含んだ『
「これで終わりじゃあないんだろう? 吸血鬼!」
「……無論だ」
吸血鬼の頭が瞬時に再生される。その速度は、不死鳥足るライザーに肉薄するものであった。
「ククク……中々骨があるじゃあないか……一回死んだのは中々久しぶりだぞ」
ギチッと、吸血鬼の歯が鳴る。
「まだだ!」
今度は両腕が輝き出す。先と遜色のない輝きが空間を満たす。その輝きは、ライザー自身にも毒になる。体全体が痛みを訴えるが、ライザーはそれを断った。
「歯を食いしばれ――」
ライザーの双腕が唸りを上げた。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」
「ハァアアア……」
吸血鬼もまた拳で応じる。超回復力と超回復力の戦い。
殴った端から治ってゆく不死鳥と吸血鬼の乱打戦。
その勝者は――吸血鬼であった。
「グ、ゥッ……」
「どうした不死鳥。取るんだろう? この首を。狩るのだろう? この私を」
再生が追いつかないほどに叩き込まれる暴虐の拳の嵐。止めは、蹴り。ライザーは直線を引いて吹き飛ばされる。着地点は、壁であった。
ずるずるとライザーの小さな体が落ちる。脳が揺れ、意識が朦朧とする。
(身体が、動かん……)
指先がぴくりとも動かない。脳も回らない。
「まあ、よくやった方だろう。頭を吹っ飛ばされたのは随分と久しぶりだ……」
吸血鬼にライザーは襟首を掴まれる。
吸血鬼の口ががばりと開いた。
喰らうつもりだ。不老不死の血を。
(ぅ……)
意識が沈んでゆく。
沈む、沈む、沈む。
そして。
『やれやれだぜ』
沈んだ先に、人がいた。
(ッ!?)
『あんたらしくもねえな。いつものあんたなら、吸血鬼なんてモンはもうぶっ飛ばしているだろうよ』
(なんだ、これは……夢か? 幻か?)
なぜならば、彼はいないはずの存在だ。既に別れた存在のはずだった。だが、ここにこうしている。
『最強の波紋使いなんだろう?』
(ああ、そうだったな……)
そして。もう一人いる。
『貴様はこの俺の血統なのだ……』
(ああ、そうだな……)
『無様を曝してくれるなよ?』
(分かっているさ……やることは一つッ!)
「『『ぶちかます!』』」
吸血鬼の牙がライザーの首元に突き刺さろうとした瞬間であった。
ライザーの手が金色の光を宿す。
「
「ぐぅ……!」
吸血鬼の腕が焼け落ちた。
「ハハハ、あの状態から再生するか」
「私には受け継いだモノがあるッ! この身には、誇り高き黄金の精神と比類なき漆黒の意思が宿っているのだッ! 受け継いだものは、更に先へ進めなければならない……! 貴様を斃すことで、私は遥かなる高みへ、更なる先へと足を進める!」
ライザーの身体から金色混じりの火焔が巻き上がる。
吸血鬼は、眼を見張った。目の前の子供は、明らかに成長している!
僅かな期間での成長! それは、悪魔には乏しいものだ。
その成長幅! まるで人間ではないか!
その飛躍を、吸血鬼は眩しいものを見るかのような目で見る。
なによりも、その瞳だ。赤金の瞳には、諦めなどただの微塵もない。
「素敵だ……悪魔にしておくには勿体無いくらいに」
「礼を、言おうか……最高の褒め言葉だ……!」
ライザーの姿が消える。刹那、吸血鬼の腹に大穴が開いた。
波紋と焔の混成は、吸血鬼の肉体に大打撃を与える。
「そしてもう一つ!」
金の髪が、赤き髪へとその姿を変える。焔の揺らめきの如き赤髪へと。
「理 解 し た ぞ ! この焔は魂が焔! 我が魂の火焔!」
吸血鬼が気付いた時。その時には、既に遅い。吸血鬼の動体視力を上回る勢いで、ライザーはその懐へ潜り込んでいた。
「本日二度目といこうか!」
「ふっ……」
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」
吸血鬼もそのラッシュに応じる。だが、ライザーのラッシュは一度目とは段違いの威力と速度を誇っていた。
吸血鬼の再生力を抜き去り、圧倒的な拳の嵐をライザーは叩き込む。
手を裂き、腕を割り、肩を爆ぜさせる。
もはや進むのみ。もはや斃すのみ。
吸血鬼の心臓に手が届かんとした時であった。
「まだだ……」
吸血鬼の姿が揺らぐ。彼の者は影へと姿を変えていた。ライザーの一撃は、心の臓を捉えられない。
「WRYYYYYYYYY!」
ライザーの身体から発せられる焔が更に火勢を増す。
ライザーは焔の塊と化していた。
「吸血鬼ィィイイ!」
「不死鳥……ッ!」
影と焔がぶつかり合う。対極の力と力が押し合い、その余波だけで、周囲が異常な変化をきたしていた。
夜よりも暗い影と、夜を照らす焔。
一瞬の後に、大爆発を起こした。
――○●○――
ライザーと吸血鬼。その激突の跡は更地になっていた。
その中央に立つ二人の姿がある。
ライザーと吸血鬼であった。双方ともにボロボロの姿であるが、既に再生が始まっていた。互いの馬鹿げた再生能力を削ることはついぞ、出来なかったのである。
「引き分け……か。吸血鬼」
「そうだな……引き分けだ。お前には私を斃すことは出来ん」
化物を倒すのはいつだって人間だと、吸血鬼は言う。
「名無しの吸血鬼よ。私に――否、俺に、ついてこないか?」
「酔狂な奴だ……お前はどこに向かう?」
「絶え間無き修羅の先を」
「フェニックスのお前の征く先か」
「そうだ……我が征く無道よ……!」
身体の傷が癒える。ライザーは口に溜まった血を吐き出した。
「ククク、無道かね……不死鳥よ」
「この世界には悪魔がいる、天使がいる、堕天使がいる……神がいる。なによりも人間がいるのだッ……! ならば、この無道の先にあるのは、『可能性』だろう。俺を、お前を暇にさせない『可能性』が眠っているだろう……!」
「全世界に戦争でも仕掛ける気か」
「どうしようもない我らにはどうしようもない対象が必要だ。幕は上がったぞ、吸血鬼。今この瞬間にだ……!」
この時まで、ライザーの、否、『ジョシュア・ジョースター』の心にあったのは、コンプレックスであった。それは、不死鳥の無限とも言える寿命、夢幻とも言える不老不死性への、『人間』でなくなったことへの劣等感であった。
しかし、確信したのだ! 肉体が人間でなくとも、その精神は、その魂は、その想いは、間違いなく自分自身であると!
死線を潜り抜けたその刹那に!
「目指すは頂上だ……! この手で掴み取るのだ……! 未だ誰も至ったことのない頂上よ……!」
「王には従僕が必要だ」
吸血鬼が立ち上がりながら言う。
「安心しろ。お前が一番目だ。吸血鬼……」
「ほう、吹かすな……」
「お前は、『引力』を信じるか?」
ライザーが立ち上がりながら言ったそれは、唐突とでも言うべき言葉であった。
「『引力』?」
「そう、『引力』だ。とは言っても、物理的なモノじゃあない。自身と他者を引き寄せ、結びつける『力』のことだ……類が友を呼ぶように、『強者』は『強者』を呼ぶ……! スタンド使いとスタンド使いが引かれるように! 血縁と血縁が巡り合うように! 『縁』とでも言うべき力が、俺とお前を結んだのだ……! こうして遭遇したことには、何かしらの『意味』が介在するのだッ……!」
「運命論か。ファンタジックなことだ」
「そう取ってくれても構わない。吸血鬼。だが、だ。俺はいずれ、ただ一人の魔王となる存在だ。お前はその駒に相応しい……!」
「……丁度暇を持て余していたところだ……いいだろう! お前を主として認識する! 精々気張ることだ!」
眼光が交じり合う。双方の顔面には笑みが浮かんでいる。
もっとも、それは笑みというには、凶悪過ぎたかもしれない。
「そうなると、名前が必要だな。いつまでも吸血鬼と呼ぶわけにもいかん……吸血鬼。そうだな、吸血鬼、吸血鬼……ああ、そうだ。アーカード(ARUCARD)! お前の名は今からアーカードだ! フフフ、ハハハハハハ!」
「認識した、我が主」
ライザーは高らかに笑う。今の今まで吸血鬼を殺す対象として見ていた己が、全てを翻し、こうして手を組もうとしている。
それは、最早狂気の域であった。
幼子とは思えぬ笑いが、空間を満たしてゆく。
それは何の笑いなのか。それは、ライザーのみが知るのだろう。
ひとしきり笑った後、ライザーはぴたりと笑いを止めた。そして、更地の一点を見つめる。そこには、一羽の鴉がいた。
『これはこれは。悪魔と吸血鬼が手を組む瞬間を見ることになろうとは……実に興味深いですね』
「何者だ」
『通りすがりの悪魔ですよ。貴方と同じ、ね』
「敵ではないのか?」
『敵ではありませんね』
「敵ではないのか……」
『そこでがっかりするあたり、貴方も大概です』
「なに……敵であった方が面白かったというだけだ……それで? お前は、何をしに来た……」
『貴方の夢に感銘を受けましてね』
「胡散臭いな」
「ああ。胡散臭いな」
『おや、手厳しい。まあ、貴方の夢と、何よりも貴方自身が興味深いのです。人間そのものな魂を持つ貴方が』
「名も名乗らぬ、姿も見せぬものに言われてもな」
『それは失礼。セバスチャン・ミカエリス。しがない普通の悪魔ですよ』
「……ふざけた名前だ」
セバスチャン・ミカエリス。エクソシストの大御所の名前である。そんな名を語るものが、並大抵の悪魔であるはずもない。鴉越しだが、確かに悪魔としての力を感じる。
「お前は臣下になると、そういうのかね?」
『貴方の行く末を見られる席であるのならば』
「目的は?」
『吸血鬼とさして変わりませんよ。長い長い悪魔人生、貴方とならば、楽しめそうというだけです』
「退屈は俺も嫌いだ……あらゆる感覚を鈍らせ、己を殺しにかかってくる……」
『ええ、そうでしょう』
ライザーは、赤き髪を揺らめかせ、歩きだす。
『?』
「ついてこないのか?」
『やれやれ。貴方は本当に面白い……』
「王一人に、臣下二人とは。なんとも心細いことだな、オウサマ」
「無能の臣下百人よりは余程マシというものだ……」
アーカードとセバスチャン。この二人との出逢いは、ライザーの躍進を、飛躍を促すものとなる。
Q ライザーは結局何をしていたのさ
A 家出
Q 三歳で魔王目指すの?
A 俺は 大魔王になる男だ!
ど ん !!
Q アーカードもラッシュ持ちですか
A 旦那もオラオララッシュの使い手だったようです
Q ARUCARD?
A 本来は“l”のはずだが、原作準拠で
Q 原作開始は?
A 次回から原作軸