文字通り絵に描いたような、あくまでドラゴンメインの高校生活   作:ぐにょり

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残酷な描写があるかもしれないので注意


四話 死を描き

夕暮れ時、夕食前の腹ごなしに近所の公園に散歩に行くと、何故だか死体ではないがもうほぼ死体と言ってもいい半死体が落ちていた。

死因は刃物に依る刺し傷からの出血多量、といったところだろうか。

 

『最近はこの街も治安悪ぅなっとるから、気ぃ付けて』

 

母さんと共に台所で料理をしていた日影さんの言葉を思い出し、納得する。

普段は割と人気のある公園、そのど真ん中で、こんな胸骨を破ってそのまま脊椎を割り裂きながら貫通させるような、いっそ思い切りが良すぎて爽やかさすら感じる猟奇殺人が起きてしまった。

この街で目立った活動を行ったはぐれ悪魔が長く存在できない以上通り魔的犯行ではないのだから、これはトリック一切なしの直情型計画殺人であると見ていいだろう。

直情型計画殺人とは、計画的に殺害対象をおびき寄せ、特に隠蔽工作を行うこともなく真正面から殺すタイプの殺人を指す。別名アチョー型殺人。

そして恐らくは、何処かの派閥に属している、もしくは所属しているつもりになっている悪魔か堕天使の仕業と見て間違いない。

流石に、心臓前後の骨を一撃で打ち抜き、その衝撃が周辺の肉をえぐり取るような真似を通りすがりの人間の通り魔ができる訳がない。

こういう雑な殺し方をして、なおかつ後始末は所属している組織がしてくれるだろう、とでも勘違いしている頭の中が春の日差しに数時間当て続けられた剥き出しの生肉の如く温かく熟成の進んだタイプの犯行だ。

 

「というか、よくもまぁこの状態で生きてる」

 

ちょっと感心する。

指紋が着くと面倒なので触ってこそ居ないが、視覚除く嗅覚聴覚及び六感七感その他もろもろの感覚が、彼の肉体が完膚なきまでに平凡で何の細工も施されていない並の男子学生レベルのものである事を伝えてきている。

普通ならこうしてしゃがみ込んで観察するよりも早く、この半死体は死ぬ筈だ。

だというのに、この半死体、まだ一、二分は死に切らないだろうと思えるほど活力に満ちている。

まぁ、常人にはそう見えるだろうというだけで、実際はあと三十秒持てばいいいかな? という程度か。

 

恐らく、中に封じられた神器から、ドラゴンの生命力が計測できるかできないか、というレベルで漏れだし、意味があるか無いか程度の延命になっているのだろう。

だが、肉体が平均的な日本の高校生男子のそれでしか無い為に受けきれず溢れ出し、数十秒分の延命と誤差レベルの見た目の余命を演出してしまっている。

まぁ、こんな状態になった人間を死ぬ前に治療できるような存在にとってみれば、さして意味のない誤差なのだが。

 

「ちょっと直しとくか」

 

グーグルアースでよく見る表紙の男──兵藤一誠。

彼には一方的に借りがある。

正確には彼自身ではなく、彼の神器の中身に借りがあるのだが、とりあえず宿主を治療すれば返したという事にしてもいいだろう。

まだ無事な全体骨格から正常時の全体像を類推、懐から取り出したスコップで土を掬って胸の傷口に流し込み、類推した破損前と同じ素材に転換。

派手に流れだした血液は面倒なので無視、代わりに、目を開いてスコップの先端で兵藤一誠という文字列の塊に一文追記。

 

【肉体的にドラゴンの影響を受け入れ易い】

 

血液を増やすよりこっちの方が手っ取り早い。死ににくくなるだろうし。

以上、九割九分死人な怪我人の簡単治療法でした。

全工程合わせて二秒弱。まだ遅い。

思考時間は短く済むが、懐からスコップを取り出して振るうまでの時間が長い。

父さんや日影さんに教わっていなかったら倍は掛かっていただろうとは思うのだが、まだまだ未熟だ。

 

「しかし、しっかり伝わってなかったのかね」

 

瞼を閉じ、スコップの土を払い落として懐のホルダーに収め、その場を後にしながら首を捻る。

彼、兵藤一誠が有力な神器の持ち主であり、過激派の堕天使に命を狙われている、というのは、数日前に塔城さんに伝えたのだが。

眷属にするしないはともかくとして、彼の中に神器があるか、堕天使が彼の周りを彷徨いているか、堕天使に何処かに誘い出されていないかどうか、程度の事は片手間にも調べられる。

……情報源が、塔城さんの誘いを断って逃げた怪しい奴だったから、という事も無い筈だ。

調べるだけなら殆ど無害なのだから、調べない筈もない。

 

「……怪しすぎたかなぁ……」

 

隠蔽は完璧だ。

此方は誰がどう見ても普通の何の変哲もない一般人にしか見えない。そういう風にしてある。

……だから逆に、露骨に一般人ではありえない行動を取ってしまえば、そのギャップを怪しまれてしまう。

 

例えば、瞬きする間に匂いを消しながら少し離れた位置にある新校舎の屋上に飛び上がり気配を消したりするのはアウトだったろう。

例えば、塔城さんの耳元の空気だけを震わせて声を伝え、塔城さんが何やら必死な形相で土足で廊下を駆け抜けて校門を飛び出していくのを確認した後、ゆったりと教室に戻って荷物を纏め、何時もとは別ルートで帰ったりするのも、後から証言を拾われたりしたらアウトになる。

そもそもグレモリーの名前を聞いた時点で拒絶反応を示し、悪魔や堕天使、天使などの事情を知っていると仄めかしてしまうのも当然アウト。

我ながら見事なスリーアウトチェンジではないか。

 

だが仕方がない。

人の心はままならないものだ。

最適解を考えてみても、恐らく何処かで破綻していた。

あのまま大人しく付いて行けば、塔城さんとその主、及びその眷属の方々は自らが悪魔である事をカミングアウトしただろう。

自分達は人の世の常識に当てはまらない異常な存在である。

だから、貴方の異常性についてどうこう言うつもりはない、だから、庇護下に入ってはどうだろう、と。

我々のコミュニティの中であれば貴方の異常性は受け入れられる、と。

 

生憎と、リアス・グレモリーの人格についてはグーグルアースで見た時にある程度読み込んでいる。

眷属でなくても、庇護下にあれば身内の一部として扱うだろう。

露骨に言葉にする事は流石に無いにしても、『目を閉じている事』について、ああだこうだと理由を付けて触れてくるだろう。

触れられたくない部分を迂遠に気長に聞き出し、解きほぐし、優しく受け入れようとするだろう。

その慈悲深さ故に、彼女は身近に傷ついたままの誰かが居ることを許容しないのだ。

 

それは駄目だ、そして嫌だ。

何処かで此方の我慢は限界を迎えるだろう。

誰にだって触れてほしくない部分はある。

触れない、受け入れる、と言われたところで拒絶反応を示してしまう部分は絶対にあるのだ。

塔城さんの面倒くさい重い部分と同じだ。

あちらに面倒で重くてどうしようもない部分があるのと同じく、此方にだってそういう部分がある。

土足で踏み込んで欲しくない、なんて言わない。

たとえ靴を脱ごうが裸足だろうが、或いは浮遊して地に触れていなかろうが、嫌なものは嫌なのだ。

 

父さんが、母さんが、この異常を詳しく知ること無く、しかし無限なのではないかと思う程の親の愛故に受け入れてくれているとして。

何もかもとまでは行かなくとも、知られたくない、知っていてもらいたい多くの事を知っていて、受け入れて、傍らに居てくれる日影さんが居たとして。

詳しい事など知ること無く、しかし明らかにバレバレな此方の細目だという言い訳を、あるがまま受け入れて変わらず接してくれるクラスメイト達が居たとして。

 

此方の目に、視覚に、認識に、感覚質(クオリア)に、無神経に触れて欲しくない。

どれだけ心許す相手が増えたとして、それは決して譲れない一線だ。

 

「だから、まぁ」

 

遠く背後に離れた公園、発動した召喚陣の魔力を感じながら、思う。

その人で満足してくれ。

エロいところもある、というか、かなりエロい部分に比重が置かれているが、それでもその人は『この世界の主人公』だから。

十分だろう。

君達の面倒くさそうな、読者人気が出てかなり長続きしそうな此方の知らないストーリーは、その人が居れば十分に進む筈だ。

塔城さんの面倒くさそうな部分も、恐らく彼女の同胞たちも多く抱えているだろう重い重い過去も。

そいつにどうにかして貰って欲しい。きっとどうにかなる筈だから。

ならなくても知らんが、少なくとも、面倒そうな部分には巻き込まないで欲しい。

 

「……あぁ、いやだいやだ」

 

我ながら心の中まで愚痴っぽい。

せっかくの散歩だというのに気分が暗くなってしまった。

少しコンビニに寄って、気晴らしになりそうな本かおやつかジュースでも買って帰ろう。

 

―――――――――――――――――――

 

やはり、誰とでもコンビになってくれる緑のコンビニは良い。

タピオカ系飲料はあそこで買うのが一番良い。

今日は夕食前なので買わなかったが、ホットスナックも何だかんだであそこが一番手頃で無難でなおかつ美味しい。

アニメコラボ系では青色が並んで、ホットスナックではちっさいところに劣るが、それでもバランスが取れていて安定感がある。

しかし、それは全国に展開するその他同系列店全てに言えることだ。

この家から少し離れた町外れのコンビニ、実は更に隠された良い点がある。

 

「いい廃屋だ」

 

目を開け内装を眺めながら、しみじみしてしまう。

絵に描いたような廃屋。

それも当然、実はここ、自室程ではないが多少手を入れ、外観、内装共に多少厚めの挿絵が張り付いている。

この中だと少しは目を開けても気にならない。

そして、廃屋として存在感を増したこの廃屋は、色々な物を呼び寄せる。

廃墟マニアが来る程ではない。

だが人気のない町外れの廃屋という好条件から後ろ暗い連中が集まり、後ろ暗い取引をしていたりする。

世に言う堅気ではない連中だ。

だが、基本的に彼らは此方には直接関係ない。

 

「そう思いませんか、貴女も」

 

────────ケタケタケタケタケタケタケタケタ!

 

廃墟の奥、構造上どうしても影になる部分から、けたたましく耳障りで不快な笑い声が響く。

不穏な気配を感じたから来てみたが、大当たりも大当たりだったようだ。

 

 

「いいなぁ、美味そうな匂いだ。不味そうな匂いだ。お前は甘いのかい、苦いのかい?」

 

ぞわり、と、影になった部分から女性的輪郭を持った文字の塊が溢れ出る。

不自然に高い所に現れた文字の塊、次いで、奇妙な獣のような体が現れる。

 

【氏名・バイサー】

【種族・転生悪魔(はぐれ)】

【元種族──】

 

見るまでもない、どうでもいい文字列。

流し読む事もない。あまりにもどうでもいい。

必要最低限の部分だけ読み、頬に手を当てて溜息。

 

「これぞ駄文、といった感じですねぇ……」

 

うっとり。

いい悪魔だ。

ここ最近はそれほど多くない、完全にコミュニティから抜け出し、誰の庇護下にも無く、身よりも友も、親しい者も惜しむ者も遺される者も無い。

絵に描いたような、主を殺して欲望のままに生きる典型的なはぐれ悪魔。

これぞ正しく此方が許容する、面倒でない、簡単な事情と簡単な生き方をした、後腐れのない悪魔。

 

「どぉしたぁ? 怖くて怖くて頭がイカレでもしたかぁ?」

 

薄い挿絵を背景に、文字列の塊の表面が挿絵で包まれる。

四足の獣に近いシルエット、しかし、四足の大まかな作りは人に似たつるりとした肌。

独立して動く蛇形の尻尾。

一糸まとわぬ女性の上半身、作り物地味て美しい典型的な美女の顔。

そして見よ、両手には槍めいた凶器を一本ずつ構えているではないか。

────これが世に言う、ドヤガオ・ダブルランス・スタイルである。

 

「ブッフォっ」

 

思わず噴出す。

基本的に、挿絵は意味もなく挿入されるものではない。

それは、本人が、或いは周囲が『これだ!』と定めたとしか思えない、いわゆる人間で言うキメ顔に相当するタイミングで現れる場合が多い。

故に、自己紹介や運動時の気合を入れる場面などでは挿絵が挿入される機会が多くなる訳だが……。

ドヤ顔で両手に槍を構えた全裸美女の姿をいきなり見せられたら、それはもう、口の中が吹き出してしまうのも仕方がない事ではないだろうか。

 

「カカカカカ! 恐怖の余り笑うしか無いか! なあぁに、安心しろぉ。折角の獲物、ゆっくりと甚振りながら……」

 

だが話はつまらない。

典型的で、テンプレで、変わったことを口にする訳でもない。

挿絵も消え、後に残るのは『誰にとってもどうでもいい、死んでも誰も困らない』見るに耐えない文字の塊だ。

キメ顔を精一杯利用した一発芸は面白かったが、別に好んで生かしておく程の事でもない。

飲み物などが入ったコンビニの袋を、内装を上書きする時にこっそり設置したフックにひっかける。

 

恐怖を煽っているつもりなのか、文字列の塊はじりじりと勿体つけるように此方に歩み寄ってくる。

逃げ出せば即座にその四足からくる高速機動で捉え、その手の中でじわじわと傷めつけながら獲物を食いちぎる、そんな思惑が見て取れる。というか、書いてある。

まずはそのありきたりな文字列からだ。

 

足元から拾った小石を投げつける。

ジャイロ回転しながらバイサーなる文字列目掛けて飛んだ小石は一瞬で音の数十倍の速度を超え、強靭であるらしいはぐれ悪魔の肉体を貫通する。

本来なら大気との摩擦で石は熔け蒸発し、更に音速の壁を破った衝撃で廃屋や此方の服もどうにかなっている筈なのだが、そうはならない。

熱や衝撃波が着弾時にしか発生しない特殊な投法なのだ。

速度は段違いだが、これは父さんもできる。

マキウ・ジツ。

古くから父さんの故郷に伝わる伝統的かつ現実的な暗殺用凶器投擲法なのだそうだ。

何もおかしくはない。

もう一度言う、現実的でおかしなところは一切無い。

 

「ギ、」

 

聞くに堪えない悲鳴。

これから此方がこの文字列に行う事に対して何の意味も持たない無駄な音声。

いわゆるノイズだ。

だが時刻は夕暮れ、まだ一般家庭はご飯を作っているような時間帯。

とりあえず空気の音の伝わり方を調整し、音を出せなくする。

無音のまま、表情を苦悶と屈辱に歪めているらしい文章になった文字列が蠢き、此方に目掛けて動き出す。

 

穴が開いただけで、その文字列の塊には大きな変化は無い。

それが許せない。

のそのそと、恐らく高速で此方に突撃してくる文字列。

 

手の中に先日追加した機能で魔剣を作り出す。

片手に三本、両手で六本。

此方の気分次第で切れ味を変えられ、折れない。

たったそれだけの機能を込めた刀のような魔剣を手に、歩き出す。

目の前の文字列の塊目掛けて。

 

見難く、目障りで、不快だ。

何故分かりやすい形をしていないのか。

何故文字の塊にしか見えないのか。

実に不快で、愉快だ。

目の前にある、動き喋り生命活動を行っている理解不能な文字列の塊。

こんな不愉快で不気味で許しがたく許容しかねどうしようもなく慣れる事のない物体ですらない見難く醜く好きになれず嫌いなこれを。

思う様、叩き潰し、刳り潰し、斬り潰し、磨り潰し、動かなくして、死なせて、殺して、文字列ですら無い細切れの文章にして。

『見れる程度の死体』に『描き潰す』事ができるなんて。

 

「ああ、ああ」

 

すれ違い様、右腕相当の文字列を刻む。

傷の状態を、材質を、死んだ細胞の数を、生きている細胞の数を、生命オーラの形質と残量を、魔力量を、それまで蓄積したありとあらゆる情報を示した肉片相当の文字列が宙を舞う。

二度三度四度五度────文字通りの塵、血霞となるまで斬りつける。

目を凝らさなければ読むことも出来ない程に細かく刻み続ける。

 

幸せだ。

至福の時だ。

どうしようもなくシンプルで、難しい事がなく、意味も無く、八つ当たりでしかなく。

でも、実に気が晴れる時間だ。

適度な運動で夕食前には持ってこいだ。

日影さんが伝え教えてくれた、父さんが細かい体捌きの指導をしてくれた六爪流で。

他の誰もが望まない誰かを、誰に咎められる事もなく、消し去る。

 

「──────!──────────!」

 

一部を切り落とされた蠢く文字列が体をうねらせ何かを絶叫している。

無意味。

どうでもいい。

そんなものは無価値だ。

六本の刀、その先端からは既に此方にしか見えないインクが滴っている。

地面に液体の様に散った文字列に向かってインクを飛ばす。

散らばった文字列を塗りつぶし、無数の色のインクが入り混じったサイケデリックな水たまりが出来上がった。

 

先程まで満ち溢れていた血臭は消え去り、インクの涼しい匂いが廃屋内に溢れかえる。

心地よい匂い。

しかし、匂いよりも何よりも。

 

「ぁ、ああ、あああ、いい、実に、綺麗だ」

 

分かりやすい絵だ。

単純にインクをぶちまけただけの、アートとも言えない、落書き。

だがそれでいい。

文字の塊が蠢くのに比べれば、何倍も良い。

口の端が釣り上がる。

目尻が垂れ下がる。

頬が熱く紅潮するのがわかる。

幸せを感じた時、人は意識せずとも笑うことができるのだ。

 

「む、こら、逃げないでくださいよ」

 

此方の姿を見て、大きな文字列の塊が踵を返して逃げていく。

まぁ、逃げないで、とは言ったが、逃げようはない。

此方も振り向く。

するとどうだろう、逃げてきたのとは反対側から、先程の文字列が現れたではないか。

辺りを見回し、此方の姿を見て、錯乱する様に無音で蠢く文字列。

 

「ここの物理法則、建物の端から端をループ構造にしてありますから。終わるまで外に出られませんよ?」

 

その言葉に、体を僅かに震わせ、胸部表面に魔法陣を浮かべてビームの様な何かを射出してくる。

だが、当然ながら正面から撃たれた狼狽え弾などが当たる理由もない。

体を逸し、すれ違い様にビーム的な何かにペン先──刀の切っ先を当て、塗りつぶす。

極限まで薄くした赤。

市販のレーザーポインタの光程度に収まったそれは壁や床を焼くことすらしない。

この廃屋を派手に壊される訳にはいかないのだ。

折角、お前みたいなのが寄ってくるようなベストプレイスにしたのだから、繰り返し使って行きたい。

 

【その表情は屈辱から恐怖を経由し、ついには絶望と呼べるそれへと変化していた】

 

文字列が更新されている。

見れば四足の獣の股間相当の部分から、アンモニアや水分を主体とする文字列が異臭と共に地面に流れ始めている。

ああ、臭い。

描き直さなければ。

ああ、嬉しい。

描き潰せる文字列が増えた。

 

「さあ、掛かって来て下さい。もしくは、大人しく斬られて下さい。さもなければ、抵抗して殺されて下さい。そうでなければ、逃げて後ろからすり潰されて下さい」

 

歩み寄る。

この文字列の反応速度でも十分に歩いている様に見える速度で。

目まぐるしく文字列の感情や表情、細かな仕草を表す部分が更新されていく。

そして再び浮かび上がる挿絵。

涙に、鼻水に、涎に、よくわからない体液が顔の穴という穴から溢れ出し、美しい顔面構造は極まった感情によって歪みきっている。

整った顔立ちをしていただけに殊更に醜い。

だが、文字列よりはマシだ。ずっとずっとマシだ。

だから、どんな形であれ、

 

「今よりは、見れるラクガキにしてあげましょう」

 

跡形も遺さず、塗り潰してしまおう。

 




腕切り落とされる

一瞬で血霞になる

地面に落ちたと思ったら極彩色のインクになってる

しかもそれを見て凄く恍惚としてる


普通は逃げる
逃げれないとなったら漏らしもする


※この物語は何か心に一線を引いたり、世の中の構造やら文章やらに不満がある主人公の心をメインヒロイン小猫ちゃんがどうにかこうにか解きほぐしたりできたらいいな、という物語です!
※一応、この主人公を放置しても原作の物語には支障は殆ど出ません!
※悪党が舞台裏でごっそり死ぬ可能性は上がりますが無害です!

つまり頑張れ小猫さん
はぐれ悪魔や野良堕天使や過激派やテロリスト達や一部上位悪魔や神族などの命とか生命の尊厳は君の友情パワーにかかっている。

あと、感想あると嬉しいです。
感想返信もやっていきたいです。

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