文字通り絵に描いたような、あくまでドラゴンメインの高校生活   作:ぐにょり

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三十四話 私と貴方の立ち位置

「これは……また、派手にやられたな」

 

色、色、色、色。

禍の団の拠点──拠点跡に転移したヴァーリは、心なしか嬉しそうにそう呟いた。

目の前にある光景を事情を知らない誰かに見せたなら、廃墟を利用した現代アートか何かとしか思えないだろう。

半ばから崩れ落ち、バケツに入れた塗料をひたすらぶちまけ続けたかの様に色とりどりに染め上げられた、大きめの鉄筋コンクリート製の廃墟。

だがしかし、この場所が禍の団の数ある拠点の内の一つで、ほんの数時間前まではマイナーな宗教団体の施設にカモフラージュされたそれなりに新しい建物であった事、そして襲撃担当の魔術師以外にも多くの禍の団の構成員が詰めていた事を知っていれば話は違う。

人の気配が無いのは、少し前にこの場からは全ての生き残りの構成員が逃げ出して行ったから、というだけではない。

そこも、そして、塗りたくられている塗料も、ある男の情報を知っていれば、自ずと答えが見えてくる。

 

「幹部連中がそれほど詰めていなくて助かったぜぃ。……俺っちが生き残れたのだって、あいつが気まぐれに標的を選んでいたから、ってだけだろうしよぅ」

 

「そこまでのものか」

 

「嬉しそうに言われても困るんだがなぁ……」

 

苦笑する美猴に、しかしヴァーリは気にもせず廃墟に降り立ち、乾きかけの塗料の水溜りの中を歩く。

すぅ、っと、冷ややかなインクの香りに満たされたそこで何があったのか。

聞いていたニンジャの情報を元に考えれば、実に一方的な戦いだったのだろうと想像できる。

戦わずに逃げたのはもったいなかったか。

しかし、戦えば無事で済んだかどうか。

理性と本能がせめぎあう感触を楽しみながら、壁だった瓦礫に塗りたくられた塗料を指先で触る。

血や肉、骨などの人体を想起させる記号は、匂いも感触も残っていない。

 

「これは、何なんだろうな」

 

不思議な力だ。

戦いに直接関係する能力ではない。

かと言ってニンジャ、もしくは忍者としての仕事に必要な技能とも思えない。

聞いた話では、この惨状を作り出している最中、終始笑いっぱなしであったという。

趣味にしても実に悪趣味だ。

 

「ここに残ってるのはただの塗料でしか無いニャン」

 

誰に問いかけた訳でもないヴァーリの疑問に応えたのは、気配もなく瓦礫の影から姿を表した、着崩して胸元を大きく露わにした和服を身にまとった黒髪の女。

居たことに気付かずとも、居ても不思議ではないと思っていたのか、ヴァーリは特に驚きもしない。

 

「人間を材料にした、か?」

 

ヴァーリの再びの問いに、黒髪の女はふるふると首を振った。

 

「塗料、ってことしか分からないにゃん。……石も花も、勿論、人間が使われてるようにも見えない」

 

巫山戯るような『にゃん』という語尾をつける事すら忘れ、塗料を見詰める表情には怪しげな笑みが浮かんでいる。

そこに仲間を殺された哀しみや悔しさ、怒りといった感情を見出す事はできない。

ただ、不思議なものに対する、未知に対する好奇心と、野性的な悪戯心だけがありありと浮かんでいた。

 

「お前の仙術でもわからないか」

 

「てなると、もう手がかりは無し、と。いやはや、強敵じゃないの」

 

「なに、その方が挑み甲斐もある」

 

「まったくだぜぃ。……さ、そろそろ引き上げだ。いい加減、悪魔や堕天使だってやってくるだろうしな」

 

未だ相対せぬ強敵との戦いに意気を燃やす男二人に溜息を付き、黒髪の女は空を見た。

視線は空に、しかし、思う先は男達と同じ。

 

「白音は随分と面白い男を捕まえたみたいにゃん。面白すぎて……お姉ちゃん、ちょっと心配だわ」

 

一度、確かめてあげないとね。

そう小さく呟き、猫の様にくしゃりと笑みを浮かべた。

 

―――――――――――――――――――

 

終業式も近づき、一学期も終わりが近いある日。

いつもの様に読手さんを誘ってオカ研に夜までの時間つぶしに行くと、部室に見慣れないし別に見慣れたいとも思わない姿があった。

着崩したスーツに身を包んだ、堕天使総督のアザゼルだ。

 

「そんな訳で、今日からこのオカルト研究部の顧問になることになった。総統でもアザゼル先生でも、好きなように呼んでくれ」

 

「じゃあ種なしカボチャって呼んでも良いですか」

 

「……アザゼル先生か、総統かで呼んでくれ。あとな、出来なかった訳じゃないぞ。大体は寿命で先に死んじまったし、やりまくって落ち着いた後は避妊もし始めたからな」

 

「へー」

 

「自分で言い出しておいて興味なしかい」

 

目の前でおもむろに始まった自己紹介コントを見ながら、部室の中に居る皆が困惑している。

私が部室に入った最後のメンバーのようだけれど、元から中に居た他の人にはここまで自己紹介もせずに部室の中に居座っていたのだろうか。

私が部室に入るのを確認すると前置きも無しに自己紹介を始める辺り肝が太いというか、そこまで行くともう少し繊細に生きてほしいとも思う。

 

で、その後の話を聞いた限りでは、オカ研、というか、グレモリー眷属に関わる為に生徒会長に頼んでこの学校に教師としてねじ込んで貰ったらしい。

なんでわざわざ、と、理由を聞けば、貴重な神滅具に特殊な禁手化をさせたイッセー先輩や、聖と魔の垣根を超えた禁手化を果たした祐斗先輩など、見どころのある新人を鍛えて神器の研究をするためとの事だ。

この間の襲撃を境に本格的に表で動き始めた禍の団とかいうテロ組織へのカウンターとしてイッセー先輩を、ひいてはグレモリー眷属を鍛えあげるという名目もあるのだとか。

 

「戦争かぁ」

 

「何、始まるのは当分先の話だ。お前らが学生の間は……そうだな、大学を卒業するまではそこまでの話にはならねぇ。せいぜいが小競り合いが増える程度か。だが、時間があるなら備えておくにこしたことはない」

 

「うう、ん……」

 

難しい顔で首を捻るイッセー先輩。

まぁ、当分先だろう、なんて言われても、戦争が起きると言われて落ち着いて居られる程私達は修羅場なれしている訳でもない。

言われてしまえばどうしても何処かで意識してしまうのも仕方がないのかもしれない。

 

「部外者の此方が言えたことじゃないですけど、別に先輩が難しく考える必要はありませんよ。兵藤先輩はグレモリー先輩の部下、しかも兵卒です。手足みたいなものです。戦争が起きたなら、どう動くか考えるのは部長さんの仕事、先輩の仕事はその場その場でがむしゃらに働くこと。ね?」

 

珍しく読手さんが自分に利益の無い事でイッセー先輩に助言をしている。

明日はペンキでも降ってくるんだろうか。

というか、何気に読手さんはイッセー先輩に対してもそれなりに親切な気がする。

この間の会議の時もパワーアップのきっかけは読手さんの言葉だったと聞くし。

祐斗先輩には希少なアーティファクトを無償で渡して居るし、ギャー君なんかはまた新しく魔眼殺しの眼鏡を貰ったらしい。

対して女性に対して何かあげてるのか、と言えば、一番付き合いのある私ですら魔術を教えられた事を除けばお菓子を分けてもらう程度。

まさか、ほ……

 

「ふにゃっ!」

 

「人をホモ扱いすると、ノンケだという事を貴方の身体で証明させてもらうことになりますよー」

 

うなじを指先でなぞられるぞわぞわする感触と共に読手さんに思考を遮られた。

反射的に反撃しようとするも、ギリギリの所でひらりと身を躱されて避けられてしまう。

更にイラつくのは部長や副部長含む他のメンバーの視線だ。

今のやり取りに何処ににやにやといやらしく笑う要素があったのだろうか。

 

「以心伝心ってやつね」

 

「一撫でであんな声を出させるなんて、普段からどんな付き合いをしてるのかしら、不純だわ」

 

「伝わってないですし付き合ってないですし不純でもないです……!」

 

が、言い返すのが精一杯だ。

なぞられた首筋の辺りを手でさすって気を落ち着ける。

指一本、数センチも撫でられていないのに、奇妙な程に背筋からお腹の下辺りまでを突き抜けるような感触が残っていて、怒り気味な声で無ければだらしない声になってしまうかもしれない。

肉体的な接触なんて殆ど無いのに、なんでここまで的確にくすぐったいポイントを当てられるのだろうか。

 

「お楽しみの所悪いんだけどな、お前も人事では済まされないんだよ」

 

「はい?」

 

「今更な話ではあるんだけどな。お前の力を危険視する声が高まってる」

 

……そこら辺は、本当に今さらだ。

彼は既に自分が戦う理由に関しては表明しているし、堕天使や悪魔や天使が真っ当に動いている間は害にならないだろう、と、そういう結論に至ってもいる。

だけど……、その結論を素直に受け入れる事ができないヒトたちが居るのも事実。

力があるなら、何時か自分達にとって害になるんじゃないか、なんて考えてしまう馬鹿なヒトたちが多いというのも、この世界に不幸が多い原因なんだと思う。

 

「会議じゃ結局有耶無耶になっちまったけどな、早い内に何処かの組織に身を預けねぇか? お前のその力を欲しがる連中は腐るほど居る。そして、その中には真っ当じゃない手段を使ってくる連中だって少なくはない筈だ」

 

「ああ、そういえばそんな話もありましたね」

 

「一応、真面目な話だからな? ……実際、適当なところに名前を預けておくだけでもかなり違ってくる筈だ」

 

「それなんですけどね?」

 

「あ、あああ、あの!」

 

アザゼル……先生と読手さんの会話に、部屋の隅で縮こまっていたギャー君が割り込んだ。

ここで何か口を挟むとは誰も思っていなかったからか、部屋中の視線が一斉にギャー君に集まる。

以前までのギャー君ならここで泣き叫びながらごめんなさいごめんなさいと謝り始めてしまうような状態。

でも、ギャー君は自分に突き刺さる視線に少し怯んで身体を小さくし、恥ずかしそうにするだけ。

何か、この間の会議の時から一気に成長したように見える。

友達としては嬉しいんですが……。

 

「書主さんが、悪魔の側に来てくれたら、う、嬉しいなぁ、なんて……」

 

言葉の最後に向かうに連れて声を蚊の鳴くような小ささにしつつも、しっかりと言い切るギャー君。

言い切った後に顔を真っ赤にして俯いてしまい、頭から湯気を出している所は、女の私から見ても思わず嫉妬してしまいそうになるほど可愛らしい。

まさにラブコメのヒロインといった王道のリアクションだ。

……彼が男で、その表情と仕草の原因が、同級生の同性の男の友人である、という点に目を瞑れば。

 

こういうラブコメ展開になる度に僅かな怒りと共に読手さんに嫉妬しているイッセー先輩ですら、どういうリアクションをしていいのか分からないといった複雑な顔で固まっている。

祐斗先輩はニコニコ笑いながら我関せず、一番安定している気がする。

通販で買ったゴテゴテした籠手を嬉しそうに磨いている事を気にしなければだけど。

部長は神妙に成り行きを見守っている……ふりをしている。

けれど、なんだか妙に興味深そうに瞳を輝かせているのはなんでですか学園のお姉さま(笑)。

副部長もあらあらあらとか言いながら嬉しそうに頬に手をあてている。

そのリアクション前にも見たけど前と同じ感じじゃないですよ男の子同士ですよ。

あとゼノヴィアさん、何か『閃いた!』みたいな表情してますけど閃かなくていいですきっと碌でもない思いつきですそれは。

そんな中純粋にハラハラと心配そうな表情で状況を見守っているアーシア先輩。

もしかして天使かもしれない。悪魔なのに聖女で天使とか、さすアーです。

 

「あー……ゴメン、ギャスパー。実は、もう大きめの組織に所属しているから、悪魔側に所属する訳にはいかないんだ」

 

「そ、そうなんですか?」

 

「うん、籍だけ置いてるようなものだけど、単純に学業を終えるまで仮ってだけで、事実上内定貰ってるようなもんだし、今も小さな仕事とか任されてるから。今更不義理はできないよ」

 

言われ、しょんぼりとダンボールの中に座り込んで落ち込んでしまったギャー君の前で膝を付き、読手さんがナチュラルに頭を撫で、柔らかく微笑みかけた。

たらしかな、と、ついつい勘ぐってしまうと同時に、同性の同級生にそんな行動を躊躇いなくできるという事実に戦慄を覚える。

 

「でも、所属が違っても、此方とギャスパーの関係が変わるわけじゃない。そうだろ?」

 

「う、うん!」

 

……ギャー君の表情に喜び以外にも、こう、複雑な……。

友達のままかぁ、でも、これから変えていけばいいよね! みたいなものが含まれているように感じるのは気のせいでしょうか。

いや、それはひとまず置いておくとして、もう一つの方が重要だ。

 

「それを先に言っておきゃ、ここまで話を引っ張らずに済んだんだけどなぁ。……で、その所属している組織ってのは何処だよ。小さな組織、って訳じゃねぇんだろ?」

 

「何を期待されてるかはわかりませんが、悪魔とか天使とか、そういうファンタジーな勢力じゃないですからね」

 

「ハハハ、ニンジャが何か言ってるぜ」

 

「コントはいいですから。……それで、読手さんは何処に所属してるんですか」

 

できれば同じ陣営で、卒業後も友人として日常的に、と思っていたけど、少なくとも彼の所属はこれで明らかになる。

ギャー君が言われていた通り、会う機会が少なくなったとしても友人としての交流は残るんだ。

それに、まだ入学したばかりの今、そんな先の事を考えてうじうじするのは勿体無い。

読手さんが大きな組織から狙われやすい、立場の危ういフリーでない事がわかっただけでも儲けものと思う事にしよう。

 

「此方が身を置いている組織は────」

 

―――――――――――――――――――

 

流石に『え、何処?』みたいなリアクションこそ無かったけれど、あの場に居た大半のリアクションは『え、其処?』みたいなものだった。

けど、仕方がないとも思う。

悪魔や天使などのファンタジーな連中に対しては極めて高いレベルでの隠蔽工作を行っていた筈だし、知っていたとして余程高い地位に居る、貴重な情報を預かる連中に限るだろう。

世間的に見れば、ただの世界規模の大企業でしかなく、裏の戦場に関わる組織とは思われていない筈だ。

首を傾げる大半の連中の中、『おお、大企業じゃないか!』と素直に感心してくれた兵藤先輩はなんだか癒し系の素養がある様な気がする。

グレ森さんが彼を気に入っているのは、ああいう素朴なところに可愛らしさを感じるからなのだろうなぁ。

 

「っと、そうだそうだ」

 

重ね書きされた挿絵で出来た机の引き出しから、仕事用の携帯を取り出す。

仮に身を置いている組織から渡されたものだ。

まだまだ此方からすればバイト感覚で仕事をさせてもらっている身でありながら、貸出でなく譲与されたこのやたらと高機能で頑丈な携帯だが、ここ数ヶ月ほど存在を忘れていた。

 

「矢文とか、口頭の方が機密性高いからなぁ」

 

これも様々な暗号化等の技術によってかなり安全に通信できるけど、傍受される可能性が無いとは言い切れない。

でも、まぁ、もうそろそろ夕ご飯の時間だし、偶には使わないと、もし要りようになった時にいつの間にか壊れてて使えませんでした、じゃ、話にならないしな。

 

「ええと、何処らへんの情報を売ろうか」

 

入学前までは滅多な事で買い取ってもらえるような情報は手に入らなかったけど、入学してからは結構色々な話を耳にした。

何処までを上司に対する忠誠の証として売り渡すか、何処からを自分の武器として懐に収めておくか。

その取捨選択が社会で生きていく上で重要なのだ、と、父さんが言っていた。

母さんは組織を捨てて吸血鬼ハンターしたり路地裏生活したりネカフェ生活したりの自由人だから余り好まないようだけど、この考え方はニンジャが生き残るのには大切な心構えだと思う。

メール形式のアプリで、幾つかの情報を入力し、相手に送信。

あとは査定が終わるのを待つだけだ。

 

夕飯ができるまでの時間が少しあるので、宿題でもやっておくか。

そう思い、机の脇に掛けていた鞄に手を伸ばした所で、仕事用の携帯から着信音が鳴り響いた。

メールの着信音ではない、滅多に聞かない、仕事用携帯の電話の方の着信音だ。

 

「しかもこの着信音……はい、もしもし」

 

携帯から聞こえてくる、理知的な声。

丁寧に日本語で喋ってくれているけれど、どこか外国語の訛りがほのかに感じられるこの声の持ち主が、此方の、引いては父さんの勤め先の一番偉い人。

なんていうか、本当に滅多に掛けてこない人だ。当然だけど。

彼の妹とか弟ならたまに話すんだけど、彼本人が電話を掛けてきたとか、かなり査定に期待できる。

 

「はい、はい。…………ええ、そうですね。もう和平は成立したそうですよ。…………嘘じゃないですよぅ。白龍皇の……そうそう、テロリストに……旧魔王派とかいうとこも…………おお、それは、ありがとうございます。……ええ、勿論……そうなんですよ。だから髪留めとか作りたくて、材料費が欲しかったんですよね」

 

しかし、それでいてまだアルバイト同然で、正社員である父さんの息子という立場の方がしっくりくる此方の人間関係とか、給料の使い方とかもしっかり把握し、オマケに話しやすい。

思わず偉い人と喋っているんだという事を忘れてしまいそうになり、口調も気持ち緩くなってしまう。

挙句それを笑って許してくれる度量もある。

これがカリスマという奴なのだろう。ニンジャ的にはともかく、忍者的には仕える主が有能なのは嬉しい限りだ。

しかも金払いも良い!

 

「そうですそうです。その先輩が実にエロくてですね」

 

現代の赤龍帝の話から、その人格、半ば世間話の様になって来た所で、ドアを開けて日影さんがひょこっと顔を出してきた。

 

「書主さん、義母さんが、ご飯できたから降りてこいて」

 

「ありゃ、もうそんな時間か。ごめん日影さん。すぐ行くから。……すみません。そんな訳で今日はそろそろ……ええ、はい」

 

通話先に軽く謝りを入れて、電話を切る寸前、ふと伝え忘れていた事を思い出した。

 

「そうそう、堕天使の方のアザゼルさんに会いましたよ。……いやぁ、見た感じはチョイ悪親父って感じで、でも威厳はともかくカリスマはあるみたいでしたよ?」

 

再び通話を再開した此方に、扉の隙間からじぃっと視線を向ける日影さんに片手を立てて頭を下げ、指先であと少しだけ、と伝える。

仕方ないなあ、みたいな呆れ気味の微表情で「先いっとるで」と言って扉を閉めたのを見ながら、早めに切り上げないとなぁ、と思いつつ会話を続けてしまう。

 

「いや、別に改名はいいんじゃないですか? ほら、人間の女に絆されて力を貸しちゃう、ってとこは似たような……あはは! そうですね、シルバーさんとかには怒られるかも」

 

「あ、そうだ、父さんは今そっちに……ああ、やっぱり。父さんに会ったら、あんまりグリーンおじさんを虐めるもんじゃないよって言ってあげてくださいな。グリーンおじさん、ただでさえメンタル弱めなんだから、色々引きずるし…………ええ、わかりました。それじゃあ、また」

 

通話を終了し、仕事用の携帯をそのままポケットに突っ込む。

今回のお給料はかなり弾んで貰えそうだし、ブラックさんに言われたなら、仕事用の携帯を持ち歩く事も吝かじゃない。

いやホント、ここまで大金貰えたのって結構久しぶりじゃないだろうか。

 

「いやぁ、エグリゴリ様々だね」

 

何処かのグリゴリとは、一文字違いで大違い。

互いにある程度腹の中わかってるから回りくどい探りあいなんて必要ないし。

やはり長い付き合いというのは大きい要素になるものだ。

 

「フミヌシ、早く来なさい。ご飯が冷めてしまいますよ!」

 

「はーい!」

 

台所から聞こえてくる母さんの呼び声に答えながら、瞼を瞑りつつ部屋を出る。

……まぁ、悪魔だの堕天使だの組織立った部分は置いておくとしても、そこに出来た友達との交友は続けていきたいものだ。

そうして長い付き合いになれば、きっと今より良い関係を築けるだろうし。

プライベート用の携帯の入ったポケットに手を当てながら、そんな事を考えた。

 




ジャック・ザ・リッパーって髪の色と長さが小猫さんに似てますよね
……閃いた!
と、ジャックリリース前から今後のエロ展開を色々とどうするか考えて少し遅れてしまった三十四話でした
発情期があるキャラって便利ですねぇ……色々パターンが浮かびます
あえて恋愛感情にまで達していない状態で抑えきれない生理現象を解消するために主人公を頼るパターンが個人的に一番いい感じに葛藤を含んだ背徳エロスに持っていけそうなんですがどうですか皆さん!
と、まぁ、来年の事を話すと鬼が笑うといいますので、とりあえず未来の話は置いておいて、一歩一歩着実に進めていきたいと思います

因みにアンケ的なアレではないです
だって、誰かのリクに応えて書くとか今まで出来た試しがないので……!


★魔皇霊斬
ライトノベル、スレイヤーズに登場する魔法
本来はそこらの剣に使うだけで優れた魔剣相当の威力を与え、魔族に対しても有効になるという魔法
拳に込める同種の魔法で霊王結魔弾(ヴィス・ファランク)という魔法があるが、こちらは小猫さんの頭に刷り込まれた魔術の知識には含まれていなかったので使用不能
因みに小猫さんの魔術知識はスペシャル時点のリナ相当

★翔風界
同ラノベの高速飛行魔法
制御が難しく、この魔法を使いながら他の魔法を使うのは至難の業
風よけとして割と頑丈な結界が張られ、弱い魔術なら弾き返せるとかどうとか

★烈火球
ストーンゴーレムくらいなら軽々溶かしてしまうえげつない火力の炎魔法
が、その真価は魔術の発生地点がある程度任意で、手元から射出するのではなく、いきなり相手の目の前とかに出現させられることかもしれない
範囲も広く、無難な高火力魔法

★イッセーだけの進化
現在のイッセーは肉体的に、ややドライグ寄りかつアルビオンメインな属性を持つ
しかし、それでいてどちらでもない『兵藤一誠という龍』という新ジャンルに生まれ変わった
神滅具を持ったドライグとアルビオンのハーフの様な存在であり、そんな彼が纏う神器も特別な存在であると言える

★新たな禁手
暫定名『赫赫たる救乳龍帝』
イッセーの世にある全ての乳に対する愛が生み出した奇跡の形態
倍加制限解除、本来の禁手と同様の方式で倍加が可能になると同時に、アルビオンの力を得たイッセーの力が神器に逆流し、一部白龍皇と同様の機能を備える
アルビオンの力でなくアルビオンと同種の力を得たイッセーの力である為反発することなく混ざり合い、生み出されるのは綺麗に混ざり合った桜色のオーラ
……イッセー的には部長の乳首の色なのだが、ドライグの涙ながらの説得により表向き桜色、という事にしてある
なお、主人公の目で読むと本来赤龍帝と記されている部分が全て乳龍帝に置き換わっており、乳にまつわる様々な特殊機構が搭載れているらしい

★木場先輩が嬉しそうに磨いているゴテゴテした籠手
休日、オークションサイト巡り
「あ、これ、格好いい」
「五万……いや、でも、もしかした売れちゃうかもしれないし」
「でもこれは明らかに実戦向きじゃあない……でも……」
主人公へメール
『僕はどうすればいいんだ……』
主人公からメール
『使うなら補強くらいはしますよ』
 ら く さ つ !
なお、やっぱり剣を振る時には邪魔になると気づいたけど一切後悔はしていないらしい
普段は鞄に入れて持ち歩いているけど、部屋にいる時は専用のアクリルケースに入れて飾っている
次は仮面とか欲しがるかもしれない

★小猫さんの首筋
適度な触り方でのみ反応する極めて発見し難い性感帯
主人公曰く、制服状態で表に露出している性感帯はまだ腐るほどあるらしい

★ギャスパーくん
主人公に対して抱いているのは友人に対する好感
……だと、本人はまだそう思っている
表情の変化は無自覚な本心から来るものだったとかどうとか
可愛らしい女物の勝負パンツを新しく購入したけど特に害は無い

★シルバーさん
主人公の父親の会社の幹部
ガチ戦闘系の人らしい
すっごいビームとか撃つビーム脳
技術進歩により自分のビームで熔けたりはしなくなった

★グリーンおじさん
主人公の父親の会社の幹部
でも主人公の父親の直属の上司という訳ではなく、主人公の父親に対して苦手意識を持つ
空間系能力者だから防御無視とかできて凄い筈なんです
ただ、完全上位互換が部下に居るだけで
主人公が生まれる数年前に振られたカツミという女性に未だに未練がある
こいつだけおじさん呼ばわりなのは彼の能力が元を正せば父親の異能を元に作られた為である

★ブラックさん
主人公の父親の会社の一番偉い人
くっそ強いドチート野郎
父親の亡霊的な残留人格が宿っていたのも今は昔
ビーム打つわ空間操るわナノマシン破壊するわ単分子ブレード振るわやりたい放題だけど部下からの信頼はやたら厚い
ブルーさんという共同経営者が居るが、二人はとっても仲良し!

★エグリゴリ
グリゴリではない
世界規模の大企業、ブルーメンという子会社もあったりする
幹部は全員血縁のある家族だとか
ホワイトさんという先代が経営していた時はブラックだったが、現在のブラックさんが会社を継いでからは超優良ホワイト企業
別に世界を影から操ったりなんかしない、しないったらしない
アザゼルさんと同じ名前の何かが起業の鍵になったとかどうとか

★父親
強い能力者だったけど忍者の里がニンジャの里だった為に特にグレる事無く育つ
空間殺法とか使うし転移とかしちゃう。千里眼的な目も持つ
でも体術オンリーのお兄さんには何故か勝てない
やはりカラテが足りないのかもしれない

次の巻は夏休み!
今は真冬だけど夏休みですよ!
でも最初は主人公別行動ルートです
ちょっぴりだけ主人公ルートと小猫さんルート同時進行して
で、早めに合流して待望の小猫さんヒロインなイベントですよ
関係が進展するとかしないとか
お楽しみにお待ちいただければ幸いです

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