当方小五ロリ   作:真暇 日間

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輝針城~アマノジャク
57 私はこうしてタレコミをする


 

 さて、覚えている方はいるだろうか。私が突然なんとなくイライラして様々な相手に対して色々とやってしまったことを。

 具体的には、守矢の軍神を洩矢の祟り神の伴侶にしてしまったり、外の世界にガンキャノン信仰が広まってしまっている夢を見せてしまったり、どこかの白黒シーフに限らず泥棒相手のセキリュティとして魔導書を何冊か作り上げてしまった時のことだ。

 その時、私は明らかに不自然に感情に波ができていた。結果としてあのような殺す気はともかく、無事で済ませる気なんて欠片も存在しないような凶悪なセキュリティと、そもそもの内容からしてまずい物を作り上げてしまったわけだ。

 そして、それ以来妙に感情が揺らぐような事はこいしから希望の面をもらうまではなかった。こころが原因かと思ったけれど、こころにはそんなことをした記憶は無いため犯人ではない。

 では、誰なのか。少し気になって調べてみたところ───どうやら実行犯らしき存在を発見することができた。ちなみに邪仙も見付けたが、ただこちらを見ているだけで妙に満足しているようだったので流しておく。ここ暫く感じていた視線の犯人もついでに見つかったようだ。

 視線の犯人は八雲紫かその式である八雲藍だと思っていたのだが、どうやらこの邪仙だったようだ。暇なのだろうか?

 

 ……それはそれとして、私の精神を弄くった実行犯だが───その名を鬼人正邪と言うらしい。

 種族は天邪鬼。能力は『なんでもひっくり返す程度の能力』。幻想郷の支配体制をひっくり返そうとひっくり返す者(レジスタンス)を自称し、しかし自身に力がないことは熟知しているようでそれを何とかするために小人族の末裔であるらしい少名針妙丸を騙して打出の小槌を使わせようと画策しているらしい。

 まあ、目的のためにあらゆる手を尽くそうとするその姿勢は嫌いではないが、その内容が問題だ。安定を嫌い、危険に身を曝したいと言うならば勝手にすればいいと思うのだが、結果的に私はともかくこいしやフラン、こころやペットたちは死にかねない。

 そして恐らくだが、それを実行して成功してしまった場合はこの鬼人正邪と言う天邪鬼は消滅するだろう。残るものは様々なものが幾度となくひっくり返ったせいで荒れに荒れた幻想郷だけ。最悪、外の人間が幻想郷に入り込もうとしてくる可能性がある。

 

 そして、幻想郷の崩壊と共に人里に住む人間達や幻想郷の無数の妖怪達は、妖怪や神といった幻想の存在を否定する概念に満ちた外の世界に放り出されることになる。

 ……まあ、させるつもりはありませんけれど。

 基本は霊夢さん達にお任せ。幻想郷において、異変の解決は博霊の巫女の仕事であり、人間達の仕事。人間生まれの魔法使いや元人間と言った存在が異変を解決するべきであり、妖怪が直接手を下すのは最終手段でなければならない。

 だが、この計画が実行されたのならば間違いなく『最終手段』を使うに値する結果になるだろう。八雲紫がその気になり、幻想郷の名だたる存在が天邪鬼の討伐に名乗りをあげる。

 ……恐らく私にも声がかかるだろうが、私が殺すために本気でやるなら遠隔で姿を見せずに殺す。なので、恐らく行くとなるとお燐とお空。もしかするとこいし、フラン、こころの三人も参加することになる。

 当然の話をするけれど、幻想郷をひっくり返して破滅させようなどと言う事をしようとした上に、その目的のために何も知らない方を騙して利用するだけ利用して骨までしゃぶり尽くした挙げ句に大切なものを盗んで本人は囮として使い捨てるような奴の近くに、可愛い妹達とペット達を保護者もつけずに出したりするわけがないですよね?

 そう言うことで、保護者として幽香さんと勇儀さんを起用。あの子達も幽香さん達の事は嫌いではないようですし、ちゃんと仲良くやってくれるでしょう。

 肝心の幽香さんや勇儀さんも子供は嫌いではないようですし、恐らく請けてくれるはず。報酬は何を用意すればいいですかね? 幽香さんあたりはいらないと言いそうですが、それでも依頼には報酬が必要なのです。

 ……まあ、その事についてはまた今度考えることにしましょう。まずは八雲紫にでもこの事を伝えて警戒してもらわなければいけない。天邪鬼の策は、運が彼女の味方につけば本当に幻想郷をひっくり返すことができてしまう可能性がある。いくら八雲紫が面倒臭がりで一日最低十二時間眠らないと調子が出ないと普段から豪語するような者だったとしても、八雲紫にとって大事な大事な幻想郷の危機だと言う話をすれば起きるだろう。起きなかったら式の方にでも伝えておくことにすれば問題はないでしょう。まあ、起きないと言うことはないでしょうがね。

 

 今はまず、天邪鬼の計画の内容を全て書き下ろす作業に入りましょうか。読んだ内容からしてかなりの危険思想の持ち主だと言うことはわかっているし、そんな天邪鬼の記憶を読み取ってぶちまけても本人以外からは文句は出ないだろう。

 出ても聞きゃしませんけどね。必要ならばいくらでもやりますとも。

 

 ではまず、今回起こるだろう異変の名前から決めておきましょう。

 逆転異変、反転異変、天邪鬼異変───と言うのは悪くはないのですが、あまりにも目的の方に目が行ってしまっていますね。もっと内容の方に視点を向けなければ。

 レミリア・スカーレットが起こしたと言われる紅霧異変。住民から見れば『紅色の霧が出た』と言う異変であり、起こした当人が何を考えてそんなことをしたのかはわからないからつけられている。

 亡霊姫の起こした春雪異変は、文字通りに春が来ているはずなのに雪が降り続けていると言う異変。実際には西行寺家の庭に植わっている巨大な化け桜を満開にさせる事が目的であり、もしもそれが成功していれば異変の名は『春雪異変』から『死桜異変』等に変わっていただろう。

 つまり、異変の名前とは大多数の存在から見てわかりやすい物でなければならない。例えその異変が何と呼ばれているのか知らなくとも、一度聞けば多くの者が「ああ、あの異変ね」とわかるようなものであれば、それがその異変の名前として定着させられる。

 わかりやすい例はすでに挙げたが、一番わかりやすいのは最近では『永夜異変』だろうか。

 実際には『夜を長引かせる異変』ではなく『月を別のものに取り換えることで月と幻想郷の間の通行をできないようにしようとした異変』であったが、多くの民衆にはそんなことはわからない。わかっていたことはただ夜が長く続いたと言うことと、博麗の巫女たちが解決したということ。そして犯人は竹林の奥に住んでいる永遠亭の住人たちだということくらいだろう。

 実際に夜を長引かせたのは八雲紫であって永遠亭の者たちではない。しかし一般にそういうことになっているということは、それだけで歴史という形で残ってしまう。現実的に考えて、それを事実だと思い込んでしまえばそれが真実となってしまうのが人間の認識の世界であり、人間の社会というものだが、世界に記録された事実までは覆せない。

 まあ、要するに名前は大切なものだ、と言う所に収まるのだけれど。

 そして今回起こされるだろう異変。その内容は道具による反乱と、鬼の魔力を受けて凶暴化し、強化された『弱者』達による蜂起のようなもの。これらを総合して考えれば、『反具異変』といったところだろうか。

 人間たちにとっては、凶暴化した弱い妖怪たちに出会うようなことはまずない。故にわかるのは『道具が勝手に動き出した』と言うことのみ。ならばわざわざ必要以上の情報を与えてやる必要はないし、情報は最低限にしておいたほうがある程度楽だ。特に『既に解決している異変』の話ならば、なおさらに。

 続いている異変ならば情報が必要になったかもしれないけれど、終わった異変、過去の異変についていつまでも記録として残しているのは、人里の名家である稗田の当主と人里に住む半人半獣くらいなものだろう。過去を記憶としてから記録に移し、そしてその記録を歴史として編纂する。基本的に個人として見た物と大衆として見た物という差はあるが、二人の役職は意外に似ていたりするのかもしれない。まあ、似ているからどうしたという話なのだが。

 

 ……あ、考え事しながら書いていたら書き損じた。失敗失敗。

 


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