義の刃足る己が身を 作:黒頭巾
第一シナリオ:黄巾の乱
主な諸侯:何進、張角、孫策、丁原
何進:将来の群雄になる人材が集結。人材の引き抜きに注意したい。張角を打ち破り、漢帝国の威光をしめそう。
張角:戦いは数よ、天和姉さん!
孫策:頑張れ。
丁原:配下にチートが二人いることが特徴。あと、訓練度100士気100なのはここだけだったりするので、速攻で攻めよう。
第二シナリオ:涼州の乱
主な諸侯:曹操、劉備、孫策、董卓
曹操:何進から独立。チート。選んだら負けない。多分。張遼と関籍をゲットしたら更にチート。劉備陣営を吸収したらクソゲーオブザイヤー。
劉備:何進から独立。将・軍師と共に充実している。兵力の少なさが最大の弱点だが、孔明に何とかしてもらおう。
董卓:何進から独立。呂布・かゆうま・賈駆など粒揃い。しかし領地で叛乱イベントが起こる。
張遼:君主の固有技能『戦鬼』(兵法必ずクリティカル判定)と、配下のチートが覚える固有技能『軍神』(兵法発動待機時間二十分の一、相手の戦法無効)を組み合わせれば戦いでまず負けはない。死ぬ気で攻めよう。
兵法二連鎖(来来→道を阻むか)で20k吹っ飛ぶ。
あと、異民族を自由に操れたりする。完全に魔王である。
※後漢の一尺は23センチです。
張遼は173センチ、関籍は二メートルとお考えください。
「籍やん、仕事終わったで」
返事は、ない。
居なくなったのかと思って振り返れば、そこには黒い朝服もどきを着た関籍が居た。
「籍やん、無視かいな」
心ここにあらずといった様子の関籍に声をかけるも、再び無反応。
いつもならば間髪入れずに某かの反応が返ってくることを考えると、やはり今日はどこか変だった。
「おい関籍、無視はいただけんなぁ、ああん?」
「…………ああ、文遠殿ですか」
完全に気の抜けた、誰が見ても異民族に天災の如く恐れられている豪傑の声とは思えないほどに弛んだ声にため息をつく。
かなり、重症だった。
「職務中やで、籍やん」
「失礼、張并州牧殿ですか」
「もう終わったわ」
「そうですか」
城に腕押し、泥に剣。つまるところは無駄である。
無味無乾燥な答えに辟易し、流石の張遼も押し黙った。
「…………何かあったんか?」
「拙者が裁いた官吏が三人、自殺しました」
「――――あぁ、賄賂と汚職しまくっとった馬鹿十五人の内の、か?」
一ヶ月前、従事の梁習が并州中の汚職を洗い出し、一覧にして提出したのである。
関籍が引っ張ってきた地元の名士こと、新規登用した官吏―――梁習は、非常に優秀だった。故に、巧妙な隠蔽が施された汚職・賄賂の仕組みを暴き、提出することができたのだ。
細かい決済は梁習に一任したが、そこそこ優秀でありながら汚職・賄賂を大量に行っていた十五人は関籍へ任せたのである。人事手腕を見てやろう、と言う思惑であった。
「で、どんな裁きを下したんや?」
「取った賄賂を全てを国庫に戻させた後、拙者の私財からその分を与えました。国の財貨を奪うことはまかりならんが、止むにやまれぬ事情があるならばその分を拙者が出してやろうということで。
『これから賄賂を取るならば拙者の私財を取りに来るがいい。その分をお主らに与えよう』と言ったのですが……一度も、誰も来てはくれませんでした」
「……何で首斬らんかったんか、とか、何で私財から出したのか、とか。色々聞きたいことはあるけど、我慢したるわ」
関籍が裁いた官吏は人が変わったように職務に励み、賄賂などに見向きもせずに清廉であらんとしている。
人格改造とも言える関籍の裁き方に気をよくし、何回かにわたって裁かせていたりしていた。
「それどころか、『生きていることが恥ずかしくなった』と遺言を残して自殺するものまで現れる始末」
「……まあ、恥は知っとんたんやろな」
「拙者の裁きの拙さ、苛烈さにより死者を出してしまったことを考えると中々に悔いが残り申す。
その事実に今日一日、囚われておりました。職務に過失があったことをこの関籍、百拝してお詫び申し上げます」
とか言いながらも自分がやるべき仕事はキッチリやっているわけだから、張遼は一々責めるわけにもいかないし、する気もなかった。
端から見ても、その巨躯が済まなさで縮んでいることがわかるからである。
「…………まあ、気にせえへんことやな。元々賄賂取っとった時点で死が決まっとったんや。籍やんの責任やないやろ」
「……そうでしょうか」
黒い朝服で腕を組みながら思案に耽る関籍を見つつ、張遼は静かにため息をついた。
孟子の教え、性善説。人の質は本来善なるものであり、人を信じることが肝要である、と言ったものである。
儒教にもこの孟子の思想に似たものはあり、関籍の寛容さはこれに由来していた。
つまるところ、甘いのである。
「さぁて、行こか」
「はっ」
留守中の職務を梁習に委任し、軍事は雁門の郝昭に委任。
青騎兵五千と、黒騎兵二千。替え馬を用意し、兵糧も潤沢に用意した。
鮮卑から度々動物の皮などの貢物があり、そのお返しとして関籍に金穀を運ばせて返礼とし、皮を加工。高価な服として洛陽の市場に流し、并州はそこそこの利益を上げている。
鮮卑の侵攻がない分、回されてくる対異民族予算を街の復興に回せたことも大きかった。
侵攻してくる異民族は鮮卑だけではないが、それ以外の異民族も并州には来にくくなっていたのである。
「……感無量、やな」
「はい」
平和だった。并州はいつになく平和であり、民は二年間もの平穏を喜んでいる。
一年前まで黄巾と戦っていた。しかし、并州はそのあいだも乱されることなく平和だった。
道行く人の笑顔とこちらに向ける明るい礼を受けて、笑みが溢れる。
「あなたの善政の賜物です、張并州牧」
馬を常に一駒分下がらせながら、関籍は言った。
彼も、自分もこの統治に少しは役に立っていると言う自負がある。
民の笑顔を見て、悪い気がするわけはなかった。
「そう言われると……悪い気はせえへんな」
軽く手を振って礼に応えながら、張遼はいつものように明るく笑った。
彼女の明るさが、その統治にも大きく影響を与えていたのである。
「涼州はどうなっているのでしょうか?」
「……ま、悪いようにはされてないと思うで。董仲穎も中々の民政家やしな」
張遼、関籍、梁習の并州組も、善政は敷こうとしている。しかし、その政もあくまで丁原が築いた土台の上に建てたものだし、何よりも『異民族の侵攻がない』と言う点に支えられていた。
「…………やはり、涼州は叛くことをやめられないのでしょうか?」
「一時的にとは言え生活が楽になるんやから、やろうとする奴は尽きんのやろな。盗みが無くなんないのと一緒や」
「我々の敷いた政も生まれた笑顔も、一時的なものに過ぎないと言うのはわかります。しかし、叛で笑うのは一部の者―――やはり、許すべきではありません」
「善政敷いても悪人は泣くんやけどな」
理想論、と言うのか。
異民族から天災を怖れるが如き信仰を得られるのは、関籍くらいなものだろう。
そして、関籍が死んだら異民族はまた攻めてくる。戦いは終わらない。
そうしたならば、また泣く民が現れるのだろう。
「文遠殿は、為政者ですな」
「まあ、地に足付けてないとやってらへんしな」
理想を抱き、現実にするには擦り合わせなければならない。それが関籍にはできている。
しかし、ともすれば暴走しそうなところもあるので、自分が地に足をつけていなければならないのだ。
「拙者はまだ、中途半端なのだと思います」
「中途半端ってのは、偏り過ぎてないってことやろ?
ええことやん、中途半端。ウチは好きやで」
理想論だけで、政治はできない。
現実主義だけで、政治はできない。
一歩一歩、飛躍することなく進んでいかなければならないのだ。
「拙者は、理想に焦がれます」
軍人は、現実を見てから仮定を積む。積んだ仮定と兵力で策を立て、如何に効率よく敵を殺すかを考えなければならない。
政治家としての関籍は理想主義だが、軍人としての関籍は現実主義。頭の中を政治家としての関籍と軍人としての関籍が半々くらいで領域を分割しているが故に中途半端なのである。
「ウチもまあ、着いて行きたくはなるわ。なろうとは思わへんけどな」
張遼はあくまでも軍人であり、頭の中を九割が軍人としての張遼が占めていた。
即ちそれは、現実主義に偏っていると言える。
「……まぁ、籍やんはそのままでも――――」
「張并州牧!」
何かを言いかけた途端、一騎の騎馬武者が駆け込んでくる。
鎧は青。青騎兵であった。
「一兵卒でもいいから軍列の端にでも加えてほしいと言う者が来たのですが、相当な使い手と見ましたので連れて参りました」
青騎兵の後ろに続くは、一騎の武者。
関籍のと似た青龍偃月刀に、長い黒髪。宿る意志の強さは、並みの将など比較にならないものだった。
「名は?」
薄々気づきながらも、問う。
それは、思わず吹き出しそうになる自分を律しながらの問い掛けだった。
「劉玄徳が家臣、関雲長と申します」
* *
* + 嘘です
n ∧_∧ n
+ (ヨ(* ´∀`)E)
Y Y *
あと、評価・感想いただき、幸いです。
作者は嬉しくなると、つい書いちゃうんだぁ!