2015/07/14
誤字訂正
グリーフシード→ジュエルシード
/人■■■人\ボクと契約して未来を変えてよ!
二年の月日で白猫は成長した。
ふてぶてしくもボクの腹の上に寝転んでいるレシュを見ながら溜め息を吐き出す。
時計を見つめてみれば、まだ起きるには早い時間だ。
手を不届き者の上に乗せてみれば少しばかり身動ぎして、レシュにとってベストなポジションでどうやら落ち着いたらしい。
体重の重くなったレシュを撫でながらぼんやりと思考を巡らせる。
不死性は変わらずも不明。蘇生効果はある。そして不老ではない。成長も変わらないだろう。
問題として上げるならば、不老効果が全盛期に到達して効果が発揮されるモノなのか、どうか。言葉通り、『老いず』という事ならば、生物それぞれの『老い』を阻害するのならば成長はする。
問題点をもう一つ。あくまでボクが不死鳥の二世である事。それも純血ではなく、ハーフである点。父親が戻ってくればその辺りを詳しく、それはもう悪に対する方法を使いながら聞き出せるのだが、二年しても父は帰ってこない。前世を思い出した所で帰ってきた覚えはない。
結論として、あまり自分というモノが分からない、という事が分かった。前進だ。前進ったら前進。
どこか言い訳染みた思考に眉を寄せて半身を上げる。レシュが腹から降りてボクを非難するように一鳴き。
口をへの字に曲げて見せれば、レシュは知った事かと毛繕い。それに溜め息を吐き出してベッドの上で胡坐に。
深呼吸を繰り返し、瞼を閉じて心の中の炎を意識する。
次第に火力を強くしていき、体内にある魔力を精製していく。どこかの管理局のエースと呼ばれた人間よりも魔力の少ない"俺"は転生してもどうやら変化はない。
前世では肉体強化に重点に魔力を遣り繰りしていた。レシュを助けた際に用いた肉体強化もその延長、自分の中での最終形だと言えた。簡易且つ、消費も少なく、最低限である術式。
そんな少ない魔力を精製し、精錬して、純度を上げていく。
強化魔法を行使し、解除する。
虚脱感を味わいながら、瞼を上げて汗を拭う。
この力を前世のように用いるつもりは殆んどない。何度も言うように、正義の味方にはもう成りたくはない。
だからこそ、その象徴であった炎を顕現する事はない。
「にぁ」
「……ふぅ、準備をしようか」
撫でろよ、と言わんばかりに膝に頭を擦り付けてきたレシュの頭を軽く撫でる。実にモフモフである。
服を脱いで、制服を着る。三年着ているけれど一向に慣れる様子もないスカートを何度か正して鏡の前に立つ。
やっぱり、ズボンも穿いていこう。
未来を知っているボクは必然とこの先に待っている悲劇も知っている。
当然の事として、前世に置いてのボクと同じ行動をすれば、必然と未来は一緒に集束する事になる。
栗色の少女と相方とも言える金髪の少女。そしてもう一人の狸は悲劇を味わい、乗り越えて未来に生きるだろう。それでも悔いるのが人間というモノで、昔を思い出しては悲劇を回避出来たのでは無いか、なんて酒を飲んでは言うのだ。
それを覆すつもりはあまり無い。全部を助ける、なんて事は正義の味方がやるような事でボクはソレに当て嵌まってはいけない。
問題は月村さんだ。
未来が集束するというのなら、悲劇は起こる。例えボクが関わらなかったとしても、正義の味方が彼女の隣にいなかったとしても。
ソレは、避けるべきだ。誰の為でもなく、ボク自身の為に。
未来は本当に集束するのだろうか。覆す事は不可能なのだろうか。
レシュがボクの隣にいる時点で未来は微妙に違っている事は確かであるけれど、所詮は猫一匹。未来的に言えば誤差の範囲内かもしれない。
もしも、覆すに到る、誤差の範疇を越えてしまう行動をしたならば、未来はきっと変化する。変化した未来は確定事項が全て未確定事項になる。当然、そんな事は確定していないからこそ、油断は出来ない。
けれど、しかし、ボクの知る
「香取さん?」
「ああ、月村さん。おはよう」
「おはよう。どうしたの? 何か悩み事?」
「いいや。別に何でもないよ」
教室に入って数秒、視線は自然と彼女の座席に向き固まっていた。時間がまるで停止した様に、ボクの視線は彼女へと釘付けになり、当然時間は止まってないので数秒程ボクは彼女に見惚れていたという結果だけが残る。
そんな停止したボクに対して少しばかり訝しな月村さんの声によりボクはニコリと笑みを張り付けて挨拶を交わす。
今日もどうやらいい日になりそうだ。という呟きは彼女には聞こえなかったらしい。聞こえなくてもいいのだが。
なんでもない、と言葉に出せば月村さんはどうやら不満顔である。不満顔、と言っても些細な変化であり月村さんをずっと見てきたボクでなければ分からないであろう差異である。
どちらにせよ、愛らしいことには変わりは無く、蕩けそうになる顔をどうにか苦笑に塗り潰す事に成功する。しかしながら勝手に動いて彼女の頭を撫でるこの右腕が実にけしからん。よくやった。
「大丈夫だよ。本当に困ったら頼るさ」
「本当に?」
「ああ、勿論。ボクが君に嘘を吐いた事があったかい?」
ある。こうしてそんな事を言っている事すらも嘘なのだ。張り付けた笑顔が歪んではないだろうか。彼女に嘘を吐く事すらボクの身を引き裂きそうな程苦痛だというのに、また一つ嘘を積み上げる。ボクは実はマゾだったのではないだろうか。いいや、そんな事はない。
ボクがマゾだったとするならば、すずかさんに踏まれて悦に浸ったり、物理的に尻に敷かれて喜んだり、挙句の果てに嗜虐的な笑みを浮かべられて快楽を覚えたりしただろう。具体的すぎる記憶を振り払う。そんな事は無かったのだ。
そんな前世を思考の端にある記憶の宝箱の中へと厳重に保管して、少しだけの日常会話を交わして月村さんと離れて自分の席に座る。
ニヤケそう。いやいや、落ち着け。ココは公共の場所であるのだから幾ら幼い頃のすずかさんが愛らしくても蕩けた面を晒すのは些か問題である。
◆◆
果てして未来は変える事が可能なのか、否か。
それほど記憶力の良くないと自負しているボクでも幾つかの事件は覚えている。それこそ、自分の関わった事件のある程度は覚えている。
日付、時刻を正確に覚えている訳ではない。それこそボクの仕事は荒事だった訳で、そういった細かい事……謂わば書類仕事はあまり得意ではなかったからして……まあ、その、事件の全容だけを覚えているだけである。
尤も分かりやすい事件。そしてその未来。
金色の彼女の未来を変える。
誰の為でもない。コレはボクの為だ。だからこそ、誰も救われないし、誰も救うつもりはない。ただボクは未来を変えたいが為に動き、そして
コレはその前準備。本当に未来を変える事が可能なのか。もしも未来を変化させる事が不可能ならば……不可能ならば、仕方が無い。
その時点を以ってして、彼女を燃やしてしまおう。
夜のガラスに薄らと映る少女の顔が少しだけ笑みを浮かべている。
笑みは重要だ。これから交渉するのだから。第一印象が重要なのだ。
「さて、未来を変えてみようか」
深呼吸をして一言呟いてみせる。
金色の閃光を視界に捕らえて足を踏み出す。思ったよりも足は素直に前に出た。
宙を蹴り飛ばし、自身の魔力である火炎の飛沫を散らしながら金色の肩に手を当てて、ソレを基点に宙返りをする。
彼女の前に存在していた菱形の石を手に取り、更に一歩空中を蹴り飛ばした。
「へぇ、地球にこんなモノがあったのか」
「ッ!?」
「誰だいっ! アンタ!」
「ボクかい? そうだね……君に協力したい人物さ」
なるべくニコヤカにボクは答えてあげた。
ああ、なんと懐かしい事か。まだ苗字が一つ少ない頃の友人と身長の縮んでいない狼。懐かしさに微笑みそうになるが、我慢する。今はその時ではないし、その時は絶対に来ないのだ。そう、絶対に。
「協力ゥ? 協力ってわりには封印したモノを横取りするんだねぇ!」
「まあまあ、コッチは君達に対しては丸腰で来ちゃったんだ。交渉する材料が必要だったから奪っただけさ。協力させてくれる、ってなれば返すよ」
「それはアンタを倒せば終わる話じゃないのかい?」
「…………アルフ」
「そうだね。でも、そうならない」
だって君達ではボクに手も足も出ないのだから。
そういう意味を含めて言葉を吐き出す。こうしてアルフが威嚇をしている事も、金色の彼女……フェイトがコチラの力量を探るように見ている事も、ボクにとっては無駄に等しい時間なのだけれど、彼女達に納得させる為にも少しばかり待とう。
「……アナタの目的は何ですか?」
「ボクの目的? 実はボクは君の母親のファンでね。君達の協力をしようとしている訳じゃなく、君の母親に会いたいのさ」
「母さんを知ってるんですか?」
「いいや、会ったことはないよ。……けれど、そうだな。君達だけではボクの協力を判断できないかもしれない。君の母親……プレシア・テスタロッサにボクの話をしてくれないかい? そうだね、君の娘を助ける事が出来るかも知れないってね」
「……私を?」
「もしも断られたらどうするんだい?」
「その時は仕方ない。この石なんて持っていても仕方ないから、君達に返すよ」
その時は仕方が無い。別の方法を取るしかない。
コレでも元悪の代名詞だ。好きなように、プレシアの目に止まる様に動いてみせるさ。
「期日は明日。この時間にココにしよう」
「あ、待て!」
「また明日会おう。フェイト・テスタロッサ」
後ろに倒れるように落下し、街の中へと紛れ込む。時折壁に触れる事で魔力の残滓を僅かに残して存在を隠蔽していく。
まさか、悪人としての逃亡行動がこんな所で生きるとは、まったく人生とは中々分からないモノだ。
◇◇
「ふむ、ココが君達の居城か。随分と立派な城を構えているじゃないか……まあ、外に見える景色が淀んで見える事は頂けないけどね」
ニコヤカに会話を楽しもうとしているというのに、ボクの前を歩くフェイトは随分と不機嫌を顕わにしている。不機嫌、というよりはボクを警戒しているのだろうけれど。
翌日となり、ボクは宣言通りに同じ場所へと足を運び、そしてフェイトに連れられてココへとやって来た。その際に至極無駄な会話を幾つかフェイトに投げかけてみせたが、その反応は皆無に等しい。
コチラとしては鼻歌の一つでも歌ってやりたいほど計画が順調に進んでいるというのに、どうした事か。どうしてそんなに不機嫌なのだろうか。プレシア・テスタロッサがボクを拒絶したのなら未来に生きていた金髪の彼女は墓の下だったというのに、嬉しくないのだろうか。
「無駄口を叩くんじゃないよ」
「狼さん。その言葉は聞き飽きたよ。ココに来るまでに随分聞かされたからね」
「じゃあ、喋るんじゃないよ」
「別に問題ないだろう? それこそ、この言葉に催眠効果がある訳でもなし。それともこの声が耳を塞ぎたくなるほど聞き苦しい声だって言うのかい?」
「そこまでは言って無いよ。ただアイツに気に入られたいなら静かにした方が賢明だよ」
「ご忠告感謝するよ。けれど、ボクはプレシア・テスタロッサに気に入られたい訳ではないんだよ。嫌われたい、という訳でもないけれどね」
「着きました」
アルフが何かを聞こうとしていたけれど、その言葉は口から出る前にフェイトの言葉で飲み込まれた。
自然と開かれた扉の向こうには一人の女性が立っていた。黒い髪を波打たせ、病気でも患っているのかと不安になるほど白い肌。鋭い目付きに長い杖。正しく彼女は魔導士だ。
「ハジメマシテ。プレシア・テスタロッサ。この度は」
「御託はいいわ……。アナタ、どうして知っているのかしら?」
「おや。果たしてドレの事を言っているのかな? この子の事? それともアルハザードを目指す理由? それとももう一人の事かな?」
「…………何者?」
「では、一応自己紹介をしておくよ。ボクは香取 明。このクソッタレな世界を壊したい人間の一人だよ」
尤も、人間であるなんて胸を張っていえないのだけれど。それこそ、今は瑣末な問題だ。どうでもいい。
訝しげにコチラを睨むプレシアにボクは笑みをたやさない。ココまで入り込んだ事で、ボクの目的の半分は確約されたも同然なのだ。
決して自分の力を過信している訳ではないけれど、それでも今のボクでもこの金髪少女ぐらいは吹き飛ばす程度は出来る。当然、その近くにいる狼娘も含めての話。
「そう……それで、アナタが私に協力したとして、私に何の利があるのかしら?」
「ボクの特異性がアナタの研究に役立つ……かも知れないね」
「『かも』ですって?」
「ボクだって確定した事を言いたいけれど、自分の特異性ながら随分とオカルト的でね。けれど、立証はした」
「……それで、そのオカルト染みた特異性とやらは?」
「死者の蘇生」
ピクリとプレシアの眉が動く。釣れた。
ボクは笑みを深めて言葉を続ける。
「正確には死にかけた猫を復活させた。だけれど、研究するには十二分の価値があるんじゃないかな?」
「…………アナタ自身に何の得があるのかしら?」
「さぁ? 損得で動いた訳じゃないし。人助けだと思ってくれても構わないよ」
「……建前はいいわ」
「本音なんだけどね。まあ、信じられないだろうから三つ程コチラの要求を呑んでほしいかな」
「要求?」
「一つ。一ヶ月……いや、三週間以内にボクの特異性の使用方法を確立する事」
「随分急ぐのね」
「時間が無いのはアナタも一緒だからね。アナタも生きていればボクとしても嬉しいけれど」
「反吐が出るわ」
「ご尤も。ボクも同じ気分さ。
二つ目。ジュエルシード集めは続行する事。コレは保険でもあるし、ボク自身も手を貸すよ。生憎、研究を手伝える程立派な頭じゃないからね」
「もう一つは?」
「……デバイスを一つ譲って欲しい」
「デバイスを?」
「そう。変哲も無い。訓練用のデバイスでも、容量の少ないストレージデバイスでもいい」
「…………わかったわ。準備するのに時間が必要だけれど」
「ソレは構わないよ。それこそ準備は片手間でも構わない。今のままでもソコにいる彼女程度には負けないからね」
後ろでムッとしているだろう彼女を思い浮かべてワザとらしく肩を竦めてみせる。プレシアは張り詰めていた空気を少しばかり弛緩させて苦笑を一瞬だけ浮かべた。
そんな様子にボクは更に笑みを深めてしまう。深めた笑みを訝しげに睨んだプレシアに苦笑して言葉を吐き出す。
「いいや。聞いていた通り。アナタは随分と娘想いだったんだな、と」
「一体誰に聞いたのかしら?」
「アナタを助けたかった、と言っていた人さ。尤も、彼女は生きていないけれど」
睨みを更にキツクさせたプレシアを流すようにボクは笑みを浮かべる。彼女はもう居ない。後ろにいる彼女と同一であろう少女は決して彼女には成らない。
「それで、交渉は成立かな?」
「……アナタの特異性の結果次第ね」
「不確定だからね。構わないよ。結果を待とう」
「なら、交渉成立よ」
「ああ、よかった。断られたらどうしようかと思ったよ」
本当に、断られたら未来を強制的に捻じ曲げるしかないのだから。その方法は本当に最後の手段であるべきだ。いいや、最後の一つ前の手段だった。
「ああ、それと。一応パートナーである彼女の力を知りたいんだけど」
「……フェイト、この娘を訓練場に連れて行きなさい」
「……はい」
「その確認が終われば、コチラに来てもらうわよ」
「そりゃ契約の内だからね。なるべくスグに終らせるよ」
ボクの言葉に律儀に反応して睨んでくる彼女。ドコまで彼女は弱いのだろうか。昔を少しだけ思い出して心が躍る。
◇◇
ボクが落胆するには実に簡単な話であった。
思わず溜め息が溢れてしまった。
「ぐっ」
そんなボクの溜め息を尻の下で聞いていたフェイト・テスタロッサは憎々しいほど真っ直ぐな瞳でボクを睨んでいる。
ボロボロの状態で。
弱い。弱すぎる。予想していた力量よりも二割減に弱い。ボク自身の性質を感じるまでもなく、手合わせが終わってしまった。散々に羨んだ天才の彼女も子供ならばこの程度なのか。
いいや、それとも彼女だからこそ、子供ながらにこれ程の実力を有していると言った方が正しいのだろうか。
羨んだ彼女に楽勝してしまった。そして落胆したのはきっとボクが未だに彼女の事を羨んでいた証拠だろう。同時に子供に何を求めているんだと自分にも落胆した。
「仕方ないか」
座り心地の悪い椅子から腰を上げてボクは彼女に手を伸ばす。落胆したその表情を笑顔に変化させてフェイトを見てやれば、目を伏せて「一人で立てます」と呟いた。
強情な事で。どうやら人に甘える事が出来ないのは今も一緒らしい。
「さて、フェイト・テスタロッサ・……あー、いや。ふむ」
「?」
「なんでも無いさ。君の攻撃がボクに当たらない理由を述べよ」
「……アナタの方が速いから」
「違うよ。ボク自身は君の攻撃よりも鈍い。攻撃方法も単発の魔法弾と近接だけ」
「…………私の攻撃が単調だった」
「正解。あんなに真っ直ぐな攻撃ばかりじゃ避けてください、と言っている様なモノだし……。君自身わかっているという事はその理由も分かっているんだろう。じゃあ、コレに関してはお終い。次に君がボクの攻撃を避けれなかった理由だ」
「フェイントに引っ掛かった」
「あれだけ分かりやすいフェイントに引っ掛かるようなら君は永遠にそのスピードを生かせないかもね」
引っ掛かる様に動いたのだから、当然と言えば当然だろう。フェイントまで見切られるとボクの立つ瀬が無くなる。それこそ何度も彼女とは戦ったのだ。自分が悪になり一番拳を交わしたと言ってもいいかも知れない。まあ相手は鎌であり大剣でもあったけれど。
まあ、それはいい。だからこそ、ボクは彼女の癖を覚えているし、覚えなければ捕まって罰を下されていた事だろう。いいや、それこそどうでもいい話になってしまった。
「ともかくとして、君には才能がある。足りないモノは多いけれどね」
「足りない、モノ……」
「別にソレを心構えだとか、覚悟だとか、恨みだとか、決意だとか、まあそういったモノを言う訳じゃないよ。それこそ
「目的……?」
「……ふむ。じゃあ、少しだけそっちの話だ。君はどうして戦う? ジュエルシードの回収には相応の戦闘が予想されているだろう?」
「それは、母さんが欲しがってるから」
「そうだね。コレが目的だ。君は母の為に戦闘を行なう。たったコレだけの話だよ。けれど、ソレすらも分からずに動くのは愚かな事だ。大切な母親を助ける為、褒められる為、認められる為、君は戦う……故に、君はなるべく怪我をしてはいけない」
「どうして?」
「君が母親を想う様に……いや、たぶん君よりもプレシアは君の事を想っているからだ。プレシアが怪我をしたら嫌だよね?」
「……うん」
「じゃあ、そういう事だよ。さて話が脱線した。では、君がジュエルシードの回収で怪我をしなくても良いようにどうすべきか。それは戦闘を巧くこなす事が重要だ。加えて、撤退の時を見誤らない事。さっきの模擬戦で分かったけれど、君はどうやら激情に身を任せてしまうようだ」
「そんなこと」
「無いとは言わせないよ。平時での君ならきっとボクのフェイントなんて釣られないし、スピードでの撹乱も出来た筈だ。それでもボクが勝っていたけれど」
「むぅ」
「アッハッハ、拗ねてもどうしようもないさ。さて、長い前置きがあったけれど、君に決定的に足りないモノは戦闘経験だ」
「……はい」
ボクがそう言って拳を握って構えれば、どうやら分かったようで彼女は杖を構える。金色の刃が三日月を形成し、杖が鎌へと変わった。
そういえば、この時の彼女は大剣型を使っていなかったのだっけ。あれは夜天事件中だっけか? やっぱり記憶が曖昧だ。
いいや、どうでもいい事だ。
今思い出すべきは彼女自身がどうやって強くなったのか。その訓練方法。それを十全に辿る事は出来ないけれど、幾分かはマシになるだろう。それこそ、プレシア・テスタロッサが管理局に攻撃をしない様に。
「さあ、仕合おうか」
アキラの思考順序
すずかさん大好き!→心配させたくない→正義の味方には成らない→人を助けない→すずかさんは助けたい→未来を変えよう!→大きな事象を変化させて実験ダ!→プレシアさんを生存させてやる!→ジュエルシードの一つを交渉材料しよう→フェイトが釣れたゾ!→釣れなかったら殺して未来を矯正ダ!→交渉の場に案内された!→無理だったら全部壊して事件を発生させなければ問題ナイネ!→ヤッタ!ヤッタヨ!アハハハハハハハ!!
こんな感じです。すずかさんが居れば彼女は満足ですからね。現在のフェイトをガオンッしてしまってもすずかさんは幸せなので問題アリマセン。
小ネタの説明
>>やっぱりズボンも
スカートはスースーする。穿いたことのある本人がいうから間違いない(確信
>>マゾだったのでは?
前世の記憶参照
>>未来変化が不可能な場合
>>懐かしさに微笑む事など絶対に来ない
未来を懐かしむ事は出来ない
>>この声が耳を塞ぎたくなるほど聞き苦しい声だって言うのかい?
悪魔である『フェネクス』の伝承
>>研究者釣り
目的を遂行するオカルトの研究。実験後に実行出来るから研究者としては魅力的な餌
>>プレシアの想い
わかりにくいツンデレ(実害有)。未来に置いての金髪ボインが酒の席でアウアウいいながら後悔とかを吐露した程度の情報で主人公は動いていたりする