真・恋姫†無双~徐庶っぽいのに転生しました~   作:キアズマ

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はい、と言うわけで主人公視点です。
今回第四話の表パートは二番目にぶっこんでいます。
投稿ミスではないです、ご了承下さい。

尚、前半は司馬徽先生パートと同時系列、後半は雛里(朱里)パートと同時系列となっております。
それではどうぞ。


第四話 旅立ちの日

あ、ども、単福です。姓が単で・・・ってこれはもういいですね。

 

前回の後、鳳統の叫び声に他の生徒まで集まってしまい、僕が男であることが学院全体に知れ渡ってしまいました。

 

いやもうむしろ今までのバレなかった方が不思議なくらいだったんですけどね。

 

僕が男であると知った学院生は、大半は何故女学院に男が!?と驚きを表すだけでしたが、中には僕のことを強く罵ったり、あるいは泣き出したりする人もいて、ちょっとした混乱状態になりました。

その後、騒ぎを聞き付けた司馬徽先生の執り成しによって生徒たちも落ち着きを取り戻し、なんとか収まることになりました。

 

そんなわけで今、司馬徽先生と二人きりの部屋で向かい合って座っているのですが・・・。

 

 

「・・・・・・」

 

 

・・・・・・。

先程から向かい合うだけで何も言って下さりません。

 

あれですよね、これ完全に怒ってますよね。

あれだけ他の生徒に気づかれないようにって言い含められていたのに関わらずバレてしまったわけですし。

 

この程度の試練も達成できぬとは、やはりお前は我が教え子の中でも最弱・・・四天王の面汚しよ、て思われても無理は無いですよね。

いや、四天王って何だよとか、残りの三人は誰だよって聞かれても僕も知らないですけど。

 

話が脱線しましたが、とにかく現状先生は怒っている、これは間違えないでしょう。

 

故に僕は先生に謝罪しました。

 

この度は先生の期待に応えられず、申し訳ありませんでした、と。

 

そして、先生にこの家を出ることを伝えます。

予定よりも早い出立となってしまいましたが、今さら学院に戻っても気まずいだけですし、丁度良い切っ掛けでしょう。

 

14年間、棄児だった僕を育てて頂き、ありがとうございました、僕は最後にそう占めて司馬徽先生に頭を下げます。

 

うん、完璧です。

出来るだけの事はやれました。

後は先生の反応を待つばかりですが・・・。

 

 

「・・・・・・」

 

 

・・・あの先生?そろそろ何か仰って頂けないでしょうか?

 

ていうか、この体勢先生の顔が見えないのでものすごく不安なんですけど?

もしかして僕、何か間違ってました?

 

はっ!まさかこれは、こうやって放置して相手を不安な気持ちにすることで、会話の優位に立つという上等テクニックなのでは!?

さ、流石水鏡先生!伊達に臥竜・鳳雛の師を務めただけ・・・

 

 

「一つ、聞いても良いかしら?」

 

 

あ、はい、なんでしょうか?

とりあえずやっと話しかけられたので顔を上げてみます。

 

すると、司馬徽先生は深刻そうな顔で僕を見つめていた。

その顔は、どこか悲痛に塗れて、今にも泣きだしそうな印象を受けました。

 

一体どうしたのでしょうか?

そう疑問に思っていた僕でしたが、やがて先生は絞り出すように・・・

 

 

「あなたは、ここを出て・・・どうするつもりなの?」

 

 

そう尋ねてきた。

 

ふむ・・・どうする、ですか。

随分と漠然な質問だと思いましたが、恐らくはここを出てどのように過ごすつもりなのかと尋ねているのでしょう。

 

一応、当面の目標はとにかく生き延びること、です。

せっかくの第二の人生ですし、今度は長生きしたいと思ってますので。

その為にも乱世に巻き込まれるのだけは絶対に避けなければなりません。

表舞台で大活躍なんて論外です。師匠みたいな武人が蔓延る世界なんて誰が行きますか・・・。

 

黄巾の乱も近いことですし、それが始まる前にまずは商人にでもなって資産を溜め込んでそれに備え(・ ・)、乱が起きたら、ほとぼりが覚めるまでどこか遠くで静かに暮らすことが当面の人生プランですかね。

 

もっとも、乱世が怖いので適当に稼いでから楽隠居します、なんて言っても体裁が悪いですので、そこら辺を適当に暈して言いましたけど。

 

すると先生は、何かに気づいたかのような顔をし、急に物思いにふけています。

かと思いきや、急に決心したような顔をして立ち上がり、書机の方へ向かって何かを探し始めました。

 

えっと先生?いきなりどうしたんですか?

 

あまりの気迫に、声を掛ける訳にもいかず、呆然としてその様子を見ていましたが、やがて作業を終えた先生は再び僕の前に向き合います。

そして・・・

 

 

「私塾水鏡女学院塾長、司馬徳操よりあなたに、この証書を授与します」

 

 

と言いながら先生は、僕に一枚の紙を手渡しました。

とりあえず、手渡された以上、それを受け取り、内容を確認してみますけど・・・。

 

水鏡女学院卒業・・・相当証書?

 

思わず口に出して読んでしまいましたけど、一体何でしょうかこれは?

 

 

「残念だけど、水鏡女学院の卒業証書は学院の規定により全ての授業日程を完了させてない人に渡すわけにはいかないの。塾長としてもこれを覆すわけにはいけないのよ」

 

 

僕の疑問を聞き入れたのか、先生が解説を始めました。

 

 

「でもあなたは既にこの学院を卒業した子とも決して劣らない知識を既に持っている。あなたを師事した私が保証するわ」

 

 

なるほど、だから卒業相当(・ ・)証書なのですね。

しかし、何故これを僕に?

 

 

「正直、こんな特例は初めての試みだから、それがどの程度通用してくれるか私にも分からないの」

 

 

ふむふむ・・・。ん?通用?

 

 

「それでも、何も無いよりはマシだと思うわ。いつか、あなたの才を見てくれる人がきっと居るから、だから・・・」

 

 

・・・いやいや、あの司馬徽先生?

ちょっと待ってください?

 

 

「どうか諦めずに、その才でこの国を、民を救って欲しい!」

 

 

司馬徽先生は力強い意志を込め、そう僕に言いました。

 

・・・うん、とりあえず一つ良いですか?

 

 

何でこんなことになってしまったのでしょう?

 

 

あのー、何で卒業証書とかの話になっているんですか?

ていいますか民を救うってどういうことです!?

僕は先ほども言った通り、普通に静かに暮らすだけで十分なんですけど!?

 

と、とりあえず、こんなものは要らないのでお返しする方向で・・・あ、駄目みたいですね、見てくださいよあの司馬徽先生マジな顔。

わざわざ書いてあげたんだから、私に泥でも塗ったら・・・分かってるわよね?って感じの顔ですよあれ絶対。

これはあれですか?自分だけ勝手に乱世から逃げるなと?暗にそう言いたいのですか、先生?

 

 

とにかく、素直に頂いておかないと危険が危ない気がしましたのでお礼を良いながら丁寧に頭を下げます。

若干声が上擦ってしまいましたが、どうやらバレずに済んだようです。

 

頭を上げ、念のためもう一度証書を見てみると、名前の欄が目に入りそこに書かれている文字に驚きました。

なんとそこには単福の二文字の代わりに「徐庶」という字が書かれているのですから。

 

 

「そう、あなたは徐庶。単福という仮の名前を捨てて、今日から徐庶と名乗りなさい」

 

 

あ、はい、やっぱり僕って徐庶だったんですね。単福の時点でそんな気がしていましたけど。

 

そして、字は自分で決めて良いと言われましたので、即決で元直にしました。

そりゃ徐庶って言われたら元直と答えるしかありませんよね!

 

最後に、今まで知らされてなかった僕の真名も司馬徽先生に教えていただきました。

どうやら僕は蒿藜と言うそうです。

ふむ、ヨモギとアカザですか。

思ってたのと全然違ってて何か意表を突かれた感じですね。無論嫌いではありませんが。

 

なんて思っていたら、何故か先生に真名を変えるつもりはないかって聞かれました。

 

ああ確かに、、蒿藜って「貧困」の意味があるってどっかの詩で見たような気がしますけど、ヨモギは血行改善、アカザは歯痛や健胃と、どちらも生薬になる植物ですので、決して悪い事ばかりじゃないと思いますよ?

 

そもそも悪い名前とか言われても、前世の中学生の時に付けられたあだ名の方がよっぽど・・・いえ、この話は止めておきましょう。

 

とにかく変に大層な真名を付けられるよりはこれ位の方がよほど自分にあっていると思います。

そう伝えると司馬徽先生は納得して頂いたようで、しきりに頷いていました。

 

 

その後はと言いますと、司馬徽先生と詳しい日程や路銀や旅糧についてなどより詳しい話を詰め終わりました。

そして、僕は荷造りを始めるために、今日のところは司馬徽先生の部屋を後にすることにしました。

 

 

 

 

 

右手に例の証書が入った封書を持って。

・・・正直これ、どうしたら良いと思います?

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

3日後の早朝、日が出るか出ないかという時間に必要最低限の荷物を持った僕は、水鏡女学院の門の前で最後の別れを告げます。

 

見送りは先生と師匠だけです。

他の生徒達が起きていない時間を狙いましたからね。

あのような事件の後ですから、今さら男の僕を見送ってくれる人なんて居ないでしょうし。

 

先生からは、体に気をつけて、辛くなったら帰ってきなさい、と有難い言葉を頂き、師匠からは、鍛練をサボったら半殺しな、とアリガタイ言葉を頂きました。

 

さて、別れも済んだことですしそろそろ行きましょうか。

僕は踵を返し、門の外へと進みます。

 

 

「「待ってください!!」」

 

 

と思った瞬間、後ろから聞き覚えのある二人分の声がきこえてきました。

 

振り返ると、案の定諸葛亮、鳳統の二人がそこに立っていました。

 

ああ、うん、会ってしまいましたか・・・。

正直、この二人・・・特に鳳統に関しては、色々と気まずい思いが募っていますが、それをなるべくおくびに出さないようにして、彼女たちに何用か尋ねます。

 

 

「雛里ちゃん・・・」

 

「・・・うん、大丈夫」

 

 

二人がなにやら以心伝心すると、鳳統が一歩前に出ます。

どうやら彼女が何かしら言いたいことがあるようです。

 

この時僕は、三日前に最後に見た鳳統の姿を思い返していました。

あの騒動の最中、彼女は青い顔をして呆然と立っていたのが印象的でした。

そりゃショックですよね、ずっと女性だと思ってた人が男性だって知りでもしましたら。

 

これから伝える事もきっと、それに関することだろうな、と思いつつ、どんな文句だろうと甘んじて受けようと覚悟していました。

 

しかし・・・

 

 

「ごめんなさい!!」

 

 

と、彼女から謝罪の言葉を伝えられる。

予想外の反応に驚いた僕は、すわ誉め殺しならぬ謝罪殺しか!?新手の精神攻撃か!?と逆に狼狽えてしまいました。

 

 

「私、福さんのことずっと女性だって思ってて、男性だったなんて全然知らなくて・・・!!」

 

 

ですが、その後のたどたどしいながらも必死な弁に、それが本心からの言葉であることを悟りました。

 

 

「福しゃんは私達が知らないことを何でも知っていて、あの時私を助けて貰ってじゅっとお礼を言わなくちゃって思っちぇて、だけどあんなことににゃっちゃって・・・それで・・・それで・・・!!」

 

 

・・・ああ、ほんとに良い子ですね、鳳統は。

君たちの事を騙していた僕なんかのために涙を流してくれるのだから。

 

僕は彼女の頭まで手が伸ばし、ポンッ、と軽く撫でました。

やましい気持ちは一切無く、ただ彼女を愛おしく思った行動でした。

 

ありがとう、思わずそんな言葉が零れます。

 

ありがとう、僕の友達のままいてくれて、嫌わないでいてくれて。

 

 

鳳統は僕の腰辺りに顔を埋め、ワンワンと泣き続けました。

 

 

「福さん・・・」

 

 

そんな様子を静かに見守っていた諸葛亮が僕を呼びます。

 

 

「例えあなたが男性であろうと、あなたの才能には関係ない事ですし、私達が尊敬して止まない人である事にも変わりありません」

 

 

残念なことに、そう考える人はこの国において少数ですが・・・と諸葛亮は言います。

 

 

「ですが、あなたほどの才を天が見放す筈がありません!必ず報われる日が来る筈ですので、どうか頑張って下さい!」

 

 

はは、僕はほんとに幸せ者ですね。

後の蜀の二大軍師と・・・いえ、大好きな二人と疎遠にならずにここまで慕って頂いてるのですから。

 

僕は二人の朋友の想いを受け取った印に、今の姓と名と字、そして真名を伝える事にしました。

二人は僕の変わった真名に微妙な顔をしましたが、そう悪いものではない事を教えると、そういう物かと納得した顔になりました。

 

 

「ありがとうございます。既に知ってるかと思いますが私の真名は朱里と言います。ほら、雛里ちゃんも!」

 

「ぐす・・・私の真名は雛里でしゅ。どうか受け取って下さい」

 

 

うん、やっと二人と真名の交換が出来ました。

今まで何度か機会はあったのですが、僕の真名が分からなかったので、交換出来なかったんですよね。

これで二人を真名呼びする事が出来そうです。

 

 

さて、いつまでもこのままで居たいような気持ちになりましたが、残念ながらそろそろお別れの時間となってしまいました。

 

 

「蒿藜さん・・・また会えますよね?」

 

 

雛里が不安そうな口調で僕に言いました。

無論、それに対する答えは考えるまでも無いでしょう。

 

僕は名残惜しい気持ちを振り切って水鏡女学院の門を出ました。

 

 

 

 

暫く歩き、ふと後ろを振り返ってみると、学院がほとんど見えなくなっていました。

思えば授業そっちのけで殆ど鍛錬と自主研究の毎日でしたけど、二人と一緒にあれこれ楽しんだ二年間は案外悪くありませんでしたね。

 

ですが、そんな学院生活も終わったわけですし、目下とりあえず・・・

 

 

 

 

商いでも始めますか。

 

まずは、司隷辺りで種銭稼いだら商隊組んで全国巡ってお金を増やしまくりましょう。

幸い売れそうな物品の作り方はおさえてますからね、紙とか硝子とか。

とにかく、黄巾の乱が始まる前までが勝負、後は銭を金に変えてどこか遠くで争いのない国を旅しましょうかね。

 

 

え、士官?ご冗談を。

司馬徽先生には悪いですが、僕は乱世から逃げます。だって怖いですし。

 

う~ん、夢が広がります!

 

 

 

「~~!!~~~~~~~~ッ!!!!」

 

「・・・・・・・・~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!!!」

 

僕は遠くの方から微かに朱里と雛里の声が聞こえたような気がしました。

きっと僕の行く末を案じてくれているのでしょう。

 

僕は学院があった方を向き、大きく手を降りました。




次回第五話予告


時は後漢末期、崩れゆく漢王朝の真っ最中、これを商機と荒稼ぐ一人の商人が居た!


「しめて十万銭、一括払い、びた一文負けるつもりはありませんよ?」

「ぼ、暴利だ!そんな大金こんな村に用意出来るわけ・・・!」


駆け引きありきの交渉、生き馬の目を抜く商売


「・・・ならこの話はなかった事に、私はこの村から去ります」

「な!?頼む!それを、それを譲ってくれえ!!」


間抜けなものから搾取され、最も狡賢いものこそが全てを手に入れる


「おーっほっほっほ!!袁家に掛かればそれくらい払ってやりますわ」

「ええ、毎度ありがとうございます(・・・ちょろいですね)」


だからこそ彼は突き進む
ただ、銭だけを求めて

「現在この国を取り巻く慢性的な通貨不足、そして此度の中央の失策」

「最近できた新五銖銭とやらですがー、小さい軽い脆いと市井の間で大不評でしてー。
目下貨幣の信用ダダ下がりですねー。」

「華琳様、もはや漢は・・・」

「ええ、滅ぶわ・・・たった一人の男によって、ね」


そして最後に笑うのは一体誰か!?
物語は、新たな展開へと向かう!!



真・恋姫†無双~徐庶っぽいのに転生しました~

       改め

真・商売†無双~守銭奴徐庶の逆襲~


乞うご期待下さい!






「何で・・・ですか?何でこんなことが出来るんですか?・・・答えてください!蒿藜さん!!」


「――――雛里、良く聞きなさい」




「金は・・・命よりも重いのです・・・ッ!!」


to be continued...


~~~~~~~~~~~~~~~~~

嘘です。
てかなんだよこれ・・・?

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