真・恋姫†無双~徐庶っぽいのに転生しました~   作:キアズマ

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第二話 女学院での日々

・・・・・・あ、ども単福です。姓が単、名が福です。字はまだありません。

今年で14になりました。あれから二年、時の流れは早いものです。

 

さて、今現在僕は水鏡女学院で下宿しています。女装して。

 

ええ、女装しています。バッチリと。

女学院という名だけあって、周りの人は女性オンリーです。その中に男の僕一人。女装して紛れ込む男、ひとり。

 

 

・・・何故、こんなことになってしまったのでしょう?

 

 

まあ、最初の頃こそは、女装がバレないかとか、女性ばかりの場違いな雰囲気とかにずっとビクビクして、授業中は無心となって己を消し、授業が終われば速攻で教室を出て自室に籠る生活を繰り返していましたけど、数か月もすると次第に慣れていって今ではそれなりに楽しい生活を送れています。級友もなんとか出来ましたしね。

 

しかし、流石は司馬徽先生の教え子たちだけあって、歴史上に名を残した人物をちらほらと見かけました。

その中でも最もビッグネームな人と言えば・・・

 

 

「福さん福さん!少しよろしいでしゅか!?」

 

「福さん!少しお時間いたじゃけないでしょか!?」

 

 

と、後ろから二人分の声を掛けられました。しかも噛み噛みで。

ふと振り向くと、金髪に大きなリボンを付けた幼女と紫髪に魔女のような帽子をかぶった幼女が、何やら興奮気味でこちらに近づいてきました。

 

そう、この二人こそはかの有名な伏龍・諸葛亮と鳳雛・鳳統(ホウは鳳じゃなくてまだれに龍だった気が?)ご本人だそうです。

見た目が幼女と侮るなかれ、将来的に蜀が誇る知力チートとなるこの二名。その頭の良さは伊達じゃないです。

彼女たち三人で何度か議論を交わしたりしますが、その知識の引き出しはどこから?ってレベルでバンバン意見が飛んできます。

 

・・・いやもうほんと、正直自分の頭の悪さが際立つレベルです。一応彼女たちって僕の一つ下なんですけど。

 

そんな気の滅入る事を考えつつ、彼女たちに何用かと尋ねます。

 

 

「は、はい!福さんが書いたこの三才図会についてなんですが!」

 

「聞きたいことがあるので教えてください!」

 

 

あ、はい、やっぱりそれ(・ ・)関連ですよね。毎度のことながら良く飽きませんね。

 

三才図会とは、実際に存在するそれとは全く関係なく、私の前世の知識や先生から習った知識を頼りに世界の事柄やらを適当に書いたものでして、地動説、地球球体説等といった天文学的な分野から始め、人体の構造、病気、薬剤と言った医学的な物、宮廷知識、動植物、地理、果てには農具や兵器といった道具などなど、この時代では定番な事からオーパーツな物まで様々な知識を取り纏めた図鑑となっています。

 

何故それを彼女たちが持っているのかといいますと、水鏡女学院に入ったのは良いものの、既に先生から教えを施された僕は今更授業で学ぶものはなく、授業中は有態に言わせて貰えば退屈なものでして。

 

先生からは授業にはなるべく参加するように言われていたためサボるわけにもいかないわけでして。

 

正直暇だった僕は、せっかくだからこの時間使って前世の知識をフルに使って三才図会よろしくのイラスト付き辞典とか作ったら面白くない?という、良くわからない思考にたどり着き、ノリノリで書いていたところを彼女たちに見つかってしまったわけでして。

 

後世まで語り継がれるような天才軍師の彼女たちがこの本に書かれてる未知なる知識を見逃すはずもなく、拝見させてほしいと鬼気迫る表情でお願いされまして。

 

それがあまりにも怖かったからとりあえず既に出来上がっている巻を渡してしまったわけでして。

 

 

それ以来、疑問がある度にこのように質問攻めをしてくる毎日となってしまったわけでして・・・。

 

 

いやまあ、確かに若気の至りと言いますか、こんなものを作ってしまった私も悪かったですけど、別に誰かに見てもらうつもりはなかったと言いますか、あくまで自分用に作って後で見返してニヤニヤするつもりだったと言いますか、まさかこんな大変な事になるとは思いませんでしたよちくせう。

 

といいますか、前世の知識に関してはうろ覚えな部分も多々ありますのであまり突っ込まれると困るんですけど・・・。

正直、答えにくい部分に関しては、僕の憶測も含まれています・・・と言って逃げてます。

事実、本物の三才図会も憶測で書かれた様な荒唐無稽なものも含まれていたそうですし、ましてやこの時代の科学的検証なんて有って無いようなものですし、答えにくい部分は憶測ということにしといたって構いませんよね?ね?

 

 

「はわわ!た、確かにそう考えると理に適ってます!」

 

「す、すごいです!さすがは福さんです!」

 

 

というわけで、今回も何とか色々煙に巻きつつ質問に答え終えたわけですが、何故か最後には必ず彼女たちに称賛されます。

いやあの、僕はただ前世の知識を流用してるだけですし、むしろすごいのは僕の適当な説明で理解してくれるあなた達の方かと思うのですが・・・。

 

まあともかく、怒涛の質問タイムも終わったことですし、そろそろ彼女たちと別れようと思います。

 

 

「あ、待ってください!実はもう一つだけ聞きたいことが!」

 

 

が、何故か引き留められました。

まだ質問し忘れてたところでも見つかったのでしょうか?

 

 

「い、いえ・・・聞きたいこととはこの本に関することではなくてですね・・・」

 

 

どうやら私の予想とは違ったようですが、何やら彼女たちにしては随分と歯切れの悪いです。

どうしたのでしょうか?

 

 

「あの、依然頼みました・・・例の本の具合を・・・お聞きしたいと・・・」

 

 

と、もじもじしながら途切れ途切れに彼女は語ります。

 

はて、例の本?と数瞬の間思案し、ああ、もしかして!と思い、懐から一冊の本(・ ・ ・ ・)を取り出し彼女たちに見せます。

 

 

「はわわ!そ、それです!」

 

「もう完成してましたか!早いです!来ました!主要小説来ました!これで勝てます!」

 

 

「それ」を彼女たちに見せると、一瞬でテンションMAXになりました。

なんか鳳統が興奮しすぎて口調がおかしくなっていますけど、僕は気にしません。

 

彼女たちに見せたのは僕が書いた自作小説でして、これも授業中の暇潰しとして書き始めたものです。

もともと前世でもSSとかを書くのが大好きでして、ネットに上に何度か駄文を乗せたこともあり、せっかくだから現世でも続けてみた次第です。

この時代、娯楽に当たるものが少ないらしく、素人の僕が書いた駄文でも中々の好評を頂いています。

まあ自作小説とは言いつつも、前世のあれやこれやをパクリスペクトしてる部分も多々ありますが、問題ないでしょう。オリジナルなんて存在しない時代ですし、そもそも著作権すらないですし、おすし。

 

もっとも、今回の作品はいつもとは違って彼女たちのリクエスト通りに作ったものとなっているため、彼女たち自身もいつも以上に楽しみにしてたというわけですが・・・。

 

 

「ひ、雛里ちゃん!これすごい!しゅごいよ!?」

 

「あわわわわわわ!こ、こんなことまで書かれちぇちぇ!?」

 

 

なんか食い入るように熟読しているのが気になるのですけど、まあ軍師たるものそういう(・ ・ ・ ・)知識を仕入れるのも重要な事なのでしょう。

 

とりあえず、読み終わったら感想を言ってもらうことと、なるべく司馬徽先生に見られないことを伝えつつ、彼女たちと別れることにしました。

読書に集中してて返事が無かったですけと、彼女たちは賢いですし大丈夫ですよね。

 

 

 

授業中の物書きの他に、水鏡女学院に入ってから新しく出来た日課がもう一つあります。

 

なんと、僕の撃剣を本格的に教えてくれる先生が付くようになりました。

どうやら司馬徽先生が僕のために武術に精通する方を呼んで頂いたみたいです。

 

その時僕は初めてこの世界の武人というものを見たわけですが、一言で言い表すとしたら化け物でした。

武術の先生は妙齢の女性の方でしたが、挨拶代わりに人ひとりくらいの大きさの岩を突き一発で砕いて見せてくれました。

余りに衝撃的過ぎて暫くの間全く反応出来なかったんですが、大抵の武人ならこれくらい出来ると言われた時は、余計に愕然としました。

 

詳しく話を聞くと、どうやらこの世界には「気」というものが存在し、これを戦闘で用いることで通常では考えられないほどの力を生み出すことが出来るそうなんですが、闘気を練ることが出来るのは一部の女性だけらしく、男性には全く出来ないそうです。

つまり力関係を簡潔に表すと、闘気を練れる女性>>越えられない壁>>男性>女性であり、男である以上どんなに頑張ったとしても武人として大成するのは難しいそうです。

一般的に見れば男性の方が女性よりも力強いのに、何故兵卒を除いて武人といえば女性ばかりなのかと疑問に思って居たのですが、こういう絡繰りだったというわけですね。

 

まあ、そういったわけでどうやら僕に武人の道は無理だそうです。

正直、岩砕きとかめちゃくちゃかっこいいからやってみたいなーって思ってたんですけどね。

 

それでも、念願の教官の付いた本格的な訓練が出来るようになったため、僕の武術の腕も日に日に上がってきているのが実感しました。

この二年の間で、武術の先生から「そこら辺の一般人(もの)」には負けない程度の技術は身についているとお墨付きをもらえましたし、一応当初の目標である護身用としての武は身についたのではないかなと思います。

この状態を維持するためにも、鍛錬は今後も続ける予定ですがね。

 

 

そんなこんなで、この二年間それなりに充実した生活を迎えることが出来ました。

このまま何事もなく卒業まで過ごしていけたらいいですね。

 

 

 

 

・・・なんて思っていた時期も、僕にはありました。




真名
恋姫無双の世界には史実にもある姓・名・字に加えて、真名という別に付けられる名があります。
これは、その人が心から許した人にしかこの名を呼ぶことを許されず、許可なく口にすれば、殺されても仕方ないくらい失礼に当たるという風習(設定)だそうです。
諸葛亮が鳳統の事を「雛里」と呼んでいたのは、この真名で呼んだからというわけです。

・・・何でこんなところで真名についての説明をしているのかって?
どこで説明をぶっこむべきが分からなかったからだよ!(逆ギレ)

まあ、真名について知らない恋姫SS初心者さんが私如きの作品を読んでるとは思えませんが、一応ここに記しておきます。


ちなみに武術の先生は、主人公が男である事をちゃんと知っています。
それに関しては第二話・裏その2の武術の先生視点で色々分かるかと思います。


05/22追記(本文にも一部紛らわしい表現があったため訂正)
ちなみに、男性は「闘気」を練る事が出来ませんが、「気」自体は扱える男性はちゃんといます。誰かとはあえてここでは言いませんが。

一応これも原作にはない独自設定ですね。似たような設定を他のSSでも何度か見たことありますからまったくのオリジナルって訳ではないでしょうけど。

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