俺はなんだってこんなところに   作:駄作

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36話 黄水 8

「か、わい・・そう?

猿が・・よりによって日本猿が私に哀れみですって・・・」

 

怒りに身を震わせながら液体のスタンド、ショッキングブルーがマリスカの周りに集まっていく。

 

これは、不味いか?

 

「私の精神を犯したわね猿・・・許さない。

許さない、許さない、許さない、許さない!!

【ショッキングブルー】!奴をズタズタにして逆に犯し抜きなさい!!」

 

 

【ジャブ、ジャブ・・ジュビィーーーーンッ!!】

 

 

「自意識過剰だろって、これは!イッづぅ!?(いかんっ!?)」

 

ショッキングブルーから水のレーザーがこちらに向かってくる!

ウォーターカッターだ。

 

アレはステッペンウルフのバリアーだと防げない!

貫通だけじゃなく斬撃も入ってるアレは。

 

右肩に掠ってパックリ切れた!

取れる程ではないけど血が溢れる。

路地の建物の壁を貫通している事から殺意が高い。

 

バイクが衝撃とダメージで寄れて対象から外れマリスカの背後の壁へ向かう!

 

「くぅっ!」

 

なんとか立て直し、そのままスピードを殺さず、タイヤを壁に掛けて壁走りをする!

建物の屋上へ向かいながらもショッキングブルーが追いかけてくる!

 

「ちょこまかと本当に。本当にしつこいわね失礼な日本猿が・・・」

 

壁に背を預けて、余裕そうにこちらの様子を見ているマリスカ。

 

なんだ?

何であんなに自信満々なんだ?

 

「大樹、上だ!」

「・・!?」

 

ポルナレフの声に上をよく見る。

気が付けば建物を超えた屋上より上から、大量の水の塊が降ってくる!

いつの間にか用意していたようだ。

 

このトリックの道具は恐らくは貯水タンク!

前に容器に入った水で、そのまま飛ばして来たからな。

 

言ってる場合じゃねえ!?

 

「ぐぅ!くっそ・・!?」

「そのまま落ちなさい」

 

驚いた事で襲いかかる水の塊に腹から当たる!

バリアーで防いでも水の重さ、壁が水浸しになる事でスリップして落ちる!

10階相当の高さから、ステッペンウルフごと真っ逆さまで。

 

対策は当然だがされているのか!

 

「がっは!?」

「ダメ押し・・行くわよ!」

「・・!?」

「「大樹!?」」

 

地面に叩きつけられる俺。

バリアーの操作で急いで衝撃を逃す。

バイクを急速に起こして備えた。

 

だが、そのまま水の塊は俺達がやって来た道を塞ぐ。

他の道全てに設置されていた所から水が塞ぎ、洪水の様な有様になる!

 

その中には備品だけでなく自動車やタンクローリーまで。

 

「・・・(絶体絶命ってか、タンクローリー!?

まさか、アレに・・・)」

「お察ししてるでしょうけど。

タンクローリーには私のショッキングブルーが入っていたわ。

運転手の心を壊して操ることで自給自足に、ね」

「・・!何だと?」

 

マリスカの言葉に目を向けると、洪水に流されるタンクローリーに運転手が乗っている。

表情は白目で正気ではない。

 

運転手の肌は浅黒いようだがやった理由はまさか。

 

「フフ、日本猿を殺すのに役に立つのだから。

シンガポールの黒猿も喜びに満ち溢れるてわね」

「【ステッペンウルフ】!(冗談抜きでいかれてやがるぞ変態女!

思い通りにさせるか!)」

「・・!なんですって!?」

 

迫ってきた水の流れにバイクの上体を上げて、ウィリーしながら水の上を走る!

承太郎とポルナレフは危険を察知して、さがったので水に呑まれていない。

 

だが、運転手は別である。

 

このままだと人質に取られかねないので、タンクローリーに近づいてそのままドアを開け、背に乗せる事で脱出する。

 

「賞金稼ぎの癖に関係無い一般人を巻き込むかよ!

変態の上に最低の女だな、あんた」

「フフフ・・・」

「・・?」

 

俺が挑発しても怒らずにマリスカは妖艶ながらも不気味な笑みを浮かべる。

 

対策は乗り切ったはずなのにこの余裕は何だ?

 

「・・・・・がぼ、ががが、うぎ、うぎぎゲロォッ!」

「・・!なッ!?」

 

背に乗せていた運転手から漏れる音が聞こえ出す。

首を向けると口から液体が大量に溢れ、人型を成し至近距離で襲いかかってきた!

 

「ステッ、ぐっふぅッ!?!?」

「あのままでは!スタープラチナは距離が届かず間に合わん・・・」

「シルバーチャリオッツで狙いたいが位置が悪い!

あの女、徹底的に追い詰めつつも慢心していねえっ!!」

 

ステッペンウルフでバリアーを張ろうとしたが間に合わず俺の顔にへばり付く!

息ができない。

 

承太郎とポルナレフが黙ってられず、乱入しようとしたが距離が届かなかったり、操られた洪水で本体はガードされていて手が出せなくなっている。

運転手は放り投げられ、その場で倒れて動かない。

マリスカはゆっくりとこちらに近付くが、ガードを怠らず水で守られている!

 

そのつもりは無かったのに油断していた!

まさか、花京院のようにスタンドを潜ませるとは。

 

水の、ショッキングブルーに顔に巻き付かれッ!

このまま・・溺死させる気か・・・ッ!?

 

「さんざん馬鹿にするような事を言って弱いくせになにカッコつけているんだか。

ばっかじゃない、のッ!?」

「ゴボァ!?」

 

傍に来たマリスカは苛立ちを発散するかのように蹴り出す!

バリアーを張る余裕が無い俺は無防備でそれを体中に受ける。

 

ステッペンウルフが完全解除され、消えた為に地に足がつき膝まづく体制になる。

なんとか蹴りに耐えるが唇を釣り上げながら、気のせいでなく恍惚とした表情ですらりとした足のハイヒールを叩きつける!

凶器でもあるそれは執拗に繰り返され、水が血で赤く染まっていく。

 

大樹の血だ。

 

「く・・承太郎!」

「わかっている・・いや、大丈夫だ」

「ハアッ!?」

 

焦る2人だが承太郎は何かに気づいて安堵した。

ポルナレフは訳が分からない。

 

「アッハハハハ!あ・・?」

「・・・」

 

苦し紛れで立ち上がる大樹。

目の前がショッキングブルーと叩かれたダメージにより、霞んで見えない状態でグニュと何かに右手で大樹は触れる。

 

嬉しそな笑みから一気に引き攣った表情に変わるマリスカ。

 

「こ、このエロ日本猿が!

よくも私の胸に・・!グゲッブッファッ!?!?」

 

何かが炸裂した音が周りに響き渡り、糸が切れた操り人形のごとく倒れるマリスカ。

何が起きたのか解らず、ショッキングブルーが解除されて、洪水が治まり周りが水浸しの状態になる。

 

顔から水が無くなった大樹は唾を吐きながら、目の前に倒れてるマリスカにゴミを見るような冷たい眼光で見下ろす。

 

「さ、猿・・あんた・・・私が蹴っている時に・・・・。

力を集中して・・・・・圧縮したソレを・・・・叩き込むのを・・・・計って・・・・・・?」

「違うんだな、これが。

お前が調子に乗っている時、俺はその臭い足で変態そのものなSMプレイを興じながら自慰でも始められたら、近くにいる俺がバッチイ事になる。

それが嫌だと思っていただけさ、これが(言い返すのに承太郎の台詞が便利すぎるな、これが。

でも、体が痛い・・・)」

 

身動きがとれず、悔しさを浮かべるマリスカに冷たい目線のままで言い返す。

右手の中で風を纏わせ続け、圧縮し相手に悟らせず意識が朦朧としている振りで相手に触れて叩き込んだ。

目が見えない状態だからお互いに不幸な事になったが・・・。

 

古い忍者アニメを元にしたソレは効果が抜群だったようだ、これが。

 

「触れたくもないのに胸に触れちまったのが今回における最大の誤算だ。

この手は後で念入りに洗って消毒しておく事にするよ、これが。

じゃ あ な ド 変 態 女。

二度と会いたくないからスピードワゴン財団に連絡しよう」

「・・・・・(ぐくやじぃいいい、ビチグソがぁっ!

アレ・・でも何か今の状態が気持ちよくなって。

日本猿に精神だけでなく肉体も嬲られる・・・。

これ、イイ・・かも)」

「・・ビックゥッ!?(寒気!?)」

 

マリスカの再起不能を確認し、そのまま背を向けて粗大ゴミに出されるのを祈りながら離れる大樹に怨みの視線を向けていたが、知らぬ内に何かに目覚めさせてしまったらしい。

大樹としてはそんなつもりは一切無く、誤解もあるが心から軽蔑しただけ。

だが、寒気が感じて体が震える。

 

水に濡れたせいか?と疑問に思う。

 

無様かつ最後がアレ過ぎるが勝てた事に喜び、取りあえずホテルに帰る為に承太郎とポルナレフに合流する。

 

 

 

「任務は完了ですわDIO様・・・。

やはり私だけがあなたの期待に応えられる」

 

屋上から様子を見ていた白黒の服を着た女は。

やられたマリスカを尻目に屋内へと消えていった。

 

 

 

ポルナレフが褒めてくれる中で、無言で歩く承太郎に続いて行く大樹。

2、3歩で急に止まったので、何事かと思うと。

 

「今回は助かった、礼を言うぜ」

 

それは、なんでもないようなお礼の言葉だ。

再び歩き出す承太郎の背中を、呆けて大樹は見つめた後で慌てて付いて行く。

 

友達や仲間を助けるのは当然だ。

その当然を、前世だけでなく手段がある今世でさえ、上手く行く事が少なかった。

今回の事で自信が持てる。

 

でもそれ以上に。

仲間と一般人を守れたことが、何よりも嬉しかった。


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