「急がなければ!」
現在10階、虫をマジシャンズレッドで燃やしながらアヴドゥルは下の階に行く度に周りを注意しながら広いところで炎の探知能力を発動して確認する。
だが、それでも発見できない。
むしろ、虫ばかりでスタンド使いのエネルギーの流れが何処から来ているのか大雑把にしか解らない。
しかも、下に行くほど虫が増えていってる気がする。
やがて、9階に来た時。
「アヴドゥル!」
「・・!」
呼び止められた声に反応して振り向くとポルナレフがシルバーチャリオッツで虫を斬りながら近付いて来る。
「そっちもスタンド使いの襲撃があったのか?」
「ポルナレフ・・ああ、どうやら3人のスタンド使いがこの件に関わっているらしい。
お前も血が流れている所を見ると手ごわかったのか?」
「1人目のデーボはちょろかったと思ったら廊下に虫の大群がやって来て。
大樹がいる部屋に逃げたら更に人間大の人形が来て襲いかかられて、小さな人形を放り投げたらそれも襲いかかってきて危なかった・・・。
しかし、3人?
あの人間大の人形はデーボのじゃ無かったのか?」
「・・よりによって裏社会で有名な暗殺者を捕らえていたのか。
まあ、それは今となっては良い方だな。
12階にでかい方の人形を幾つも操るスタンド使いがいてな。
人形にガソリンが仕込まれているわ虫も襲って来るわでこちらも大変だった・・・」
「なるほどな。そりゃあ連絡がつかない」
状況の説明に2人は修羅場と鉄火場に同情と襲ってきたスタンド使いに対する怒りが沸いていた。
「とにかく大きい人形の方はジョースターさんが相手取ってる。
JOJO達は来ないところを見ると足止めを食らっているのかもしれない。
我々は虫のスタンド使いを倒さなければ!」
「おう、わかったぜ!大樹がエネルギー切れで倒れたからこのまま続くと危ないかもしれねえ。
承太郎と花京院なら俺が来る途中で会った。
ジョースターさんに虫の方をお願いされたようだったがちょうど良かったんで眠ってる大樹を預けた。
短期間は心配はいらねえ」
「よし、いくぞ!」
意を決した2人は階段を降りていく。
虫は下の階を降りていく程、やはり増えてるようだ。
警戒しながら行くと5階辺りで虫たちが突然に消え去った!
「「何が起こった!?」」
2人は当然だが困惑した。
「JOJO、これは?」
「油断するな花京院。まだ何かあるかもしれねぇ・・・」
12階から9階にジョセフからの指示で降りていた承太郎と花京院は其々スタンドを出しながら周りを警戒する。
虫たちが消えたのはここもだった。
「ポルナレフの野郎、話をまともに聞かずに行きやがって・・・」
「それだけ慌てていたんだろうけど今となっては悪手だったのかそうでないのか・・・誰にも解らないよ」
話し合う承太郎と花京院。
其々に呆れが浮かんでいる。
承太郎の背中には。
「・・・スヤァ・・・・・ぐ~・・・・・・・・」
呑気に寝ている大樹の姿が。
「ファッ!?ま、まさかケイトちゃんがッ!」
虫たちが消えたのは12階も同様。
そして。
「今だ!【ハーミットパープル】!
そして【サンライトイエローオーバードライヴ(山吹色の波紋疾走)】!」
「うげげッ!なんて奴だ・・・・・ッ!」
「・・!こ、これは!」
ハーミットパープルの引き寄せで波紋入りの拳を食らわせるジョセフ。
だが、ジョーイの身体が崩れていくのに驚愕する。
「だが次は こうはイカネー ゼッ !」
やがて完全に崩れて首が取れた!
人形に本体の振りをさせていたらしい・・・。
見た目はふざけていてもかなり用心深いらしい。
「・・なんとも厄介な奴だ。儂も行かなければ」
ジョセフは人形の跡を見ずに状況を理解するために階段を下りていった。
「どうだアヴドゥル?」
「スタンドもそうだが生命反応が客しか無いので解らん」
とりあえず、警戒は解かずに1階ずつ探索していく。
すると。
「・・!看護婦が気絶している?」
「このホテルでか?誰かコールでもしたのかよ・・・。
うお!美人だ」
2階でアヴドゥルが倒れた看護婦を見つけて介抱の準備、ポルナレフはリゾートホテルにわざわざアレ目的で呼ぶ馬鹿がいるのかと思い顔を顰めた。
だが、看護婦の顔を見て直ぐに笑みに戻る。
それにアヴドゥルは少し呆れたが。
「・・!アル・・ハート・・・・!」
「な!?」
目が覚めたらしい看護婦は近くに居たアヴドゥルにいきなり緑色の蜂を飛ばしてくる!
「・・!シルバーチャリオッツ!
この看護婦があの虫達の使い手か!?」
少し離れた位置にいたポルナレフがフォローに入る。
信じられないと言いたげな表情を浮かべる。
シルバーチャリオッツに切られ蜂が落ちると看護婦は呻き声のようなものを漏らす。
「でぃ・・DIO様・・・・・申し訳・・・・・あり・・・・・・」
がっくりと倒れた看護婦。
どうやらさっきの行動は最後の一撃だったらしい。
スタンド名【アルハート】再起不能
「この女性はDIOの配下だったのか。
いったい誰にここまでやられたと言うんだ・・・?」
今も死んではいないがズタボロだった。
アヴドゥルが看護服をよく見ると濡れている事に気づく。
ホテルの中で?
プールの近くでもない廊下で?
疑問が多く出たが情報が少なくて解りそうにない。
やがて承太郎と花京院にジョセフがやってきたのを見て相談した後にスピードワゴン財団にこの女性を引き渡すことになった。
「良かったのか?」
シンガポールの路地裏で眼光の鋭いバンダナを被った男が呟く。
気のせいか右手に何処かで見た変態っぽい表情をした男がボコボコで人形の腕を持ったまま気絶している。
「本当はお前も一緒にアイツ等と行きたいんじゃないのか?
俺を今回、助けてくれた事には感謝しているんだが・・・」
「だからこそよ・・・」
どうやら相手は女性らしい。
長い金髪にケープを被り、布を身体に纏って全貌がよく解らないがその眼に優しさがある。
どうやら気絶した男には触れない・・・触れたくないらしい。
「私は助けられたと勘違いして半場で死に恐ろしい結末を招いてしまったわ。
よくよく考えれば迂闊だったのにね・・・。
先の解らない運命で結果を示した今の私はせめて、あの母親の妄念を阻止する事しか出来そうにない。
干渉すると私という結果に引き寄せられる。
なによりあの・・・」
「お前曰く【8人目】か・・・」
二人共遠い何かを見るように呟いている。
「大亜君、自身もそうだけどスタンドを含めて今までに無かった現象が起きてる。
内容が同じように見えても改変されつつある・・・私はその可能性に賭けてみたい」
「俺をお前が助けられ、アイツ等を影から助けられた事、このジョーイと言う愉快犯な敵スタンド使いを早々に倒せた時間があったみたいにか?
どれだけ危ういかはこの先を知っている俺もお前にも解ってると思うんだが」
女性の言葉にやれやれと言いたげに返答する男。
「拙くとも私には希望に成りうると思ったもの。
一方的なものでなく、あの子も誰にも運命の先がわからない物になっていく・・・。
勝手ながらだけど出来る限り手助けをしたい」
「お前がそう言うなら俺は構わないがな。
俺自身、あいつからもお前と似ている部分があるのに違うものを感じるしな。
なによりあの女に意趣返しが出来る。
運命の奴隷に自ら成り下がり、他者ばかり犠牲を強いるあの女を・・・」
女性の答えに頷く男。
どこか、儚さと怒りを感じる。
「出身不明・・・一矢報いる者。
【8人目のスタンド使い】・・・大亜大樹。
JOJO達をお願い」