【更新停止】転生して喜んでたけど原作キャラに出会って絶望した。…けど割と平凡に生きてます   作:ルルイ

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第七話 遭遇、そして飛翔

 

 

 

 

 

 魔法を使うには術式が必要だ。

 魔法を使いたいと思うたびにそういい訳付けてきたがもう飽きた。

 

「術式が無いなら作ればいいじゃないか!!」

 

 術式に使う言語は日本語や漢字にしよう。

 ミッド式は英語、ベルカ式はドイツ語らしいし。

 使い慣れた言語の方がやりやすいだろう。

 

 まず魔法陣をどういう物にするか決める。

 魔法陣の基本はやっぱり円、日本語の魔法といえば陰陽術だからそれに関わるものを組み込んでみる。

 陰陽術や五行思想とか名前は結構知ってるけど、詳しい意味は知らなかったからWIKIで調べておいた。

 その情報を元に、まず中心に陰陽の太極図を配置してその外側に二層目の円を書いて五行思想を表す五角形を書き込む。

 更に外側に三層目の円を書いて十二支を現す十二角形を書き込んだ。

 最初は十二支じゃなくて四神の四角形を書こうかと思ったが、調べたら五行思想に四神の意味も含まれてた。

 そして円の線上は帯状にしておいて、そこが術式の文字を書き込むスペースとなる。

 

 早速紙に書き上げてみたら、なかなか様になるかっこいい魔法陣になった。

 術式の部分にはそれぞれの術式が書き込まれるから開けてあるが、中心の太極には陰・陽、五角形の頂点には右回りで上から木・火・土・金・水、十二角形の頂点に子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥の文字が書きこんである。

 後はそれぞれ頂点に書かれた文字の意味を覚えて、術式を書き込んでいけば魔法が使えるようになる。

 この魔法陣で俺は大魔導師なる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 舞空術の進展が無くて魔法も魔力を放出するだけの日々にいろいろ溜まってたんだ。

 『ぼくがかんがえたさいきょうのまほう』、誰でこういうのは一度くらいはやったこと無い?

 イライラしてたからカッとなってやった、反省も後悔もしていない。

 

 

 

 というか勢いでやったけど陰陽五行思想で魔法を使うってほんとにうまくいきそうな気がするんだ。

 だから魔法陣も真面目に作成中。

 WIKIで陰陽五行思想を調べたら驚くほど情報が出てきて自分でもびっくりした。(実際マジで)

 ただそれぞれの意味や関連が多岐に渡っていて、覚えておかないといけない事が多すぎる。

 この世界に昔はホントに魔力で陰陽術を使う陰陽師居たんじゃないのかって思ったよ?

 

 陰陽五行思想については持ちネタ的な意味も含めて勉強中だ。

 こういうのは嫌いじゃないし、『努力すれば割とどうにかなる程度の能力』のおかげで前世より物の覚えがいいんだ。

 学校はさすがに小学校なので特に学び直すことも無いので、空き時間に集めた資料を読んで頭に入れていってる。

 実際に魔法として使えるようになるか分からないが、その過程を割と楽しんでいる。

 

 

 

 

 

 そんなこんなで小学校生活も一年が経ち二年生に進級した。

 進級しても特に変わったことも無く、平凡に過ごしながらも気の増強も忘れず行なっている。

 今日も今日とて週に一回の舞空術に使う気の出力測定。

 いつもの林に来て測ろうかとしたところで、周囲に何やら気配を感じた。

 

 散々気を使ってきただけあって、そう遠くなければ生き物の気配を感じることが出来る。

 さすがにドラゴンボールみたいに気だけで誰かを判別とまでは出来ないが、けっこう遠距離まで気の数くらいは数えられる。

 今回はそんなに遠くなくこの林の中に何かの生き物の気を感じた。

 

 周囲を見渡してみたが視界には何も生物は見当たらなかった。

 そこで俺は円を全力で展開して林の中をくまなく捜査した。

 日常的に練習してきただけあって、円は既に半径30メートルまで展開できるようになった。

 円の範囲内の情報も詳しい形を読み取ることすら出来る。

 

 展開した円に気を感じた生き物が引っかかった。

 大きさを探ると小さくて、どうにも人ではなく猫くらいの大きさだ。

 こちらに意識を向けていた様に感じたから、人だと思ったんだけどな・・・。

 

 確認の為、円を解除して気を体から漏らさないようにする普通の絶をする。

 絶もずっと鍛えていたおかげで酷絶に近いほど気配を消せるようになった。

 町内の野良猫達には成果の確認の為に大変お世話になりました。

 

 そして高められた絶の効果を今ココで証明してみせよう。

 一度猫らしき存在からこちらを確認出来ない距離まで気で体を強化して一気に移動する。

 気配は一瞬漏れるが瞬動まで使ったから、もう猫からは俺の姿は見えなくなっているだろう。

 

 以前も言ったが体内の身体強化であれば、ある程度までは絶と併用できる。

 外部に気を張る念能力系の技能は他には使えないが、隠密行動みたいな真似が簡単に出来る。

 円で感知した場所へ大きく迂回しながら近づいていく。

 気分は忍者かアサシン♪

 

 

 

 この辺りかと思い足音を立てないように注意しながら見回すと黄色い何かの後姿が見えた。

 小柄で尻尾が丸っこいモフモフで猫のものではない。

 さっき俺が居た方をキョロキョロ見渡していて探している。

 やはり俺の事を見ていたようだ。

 俺は静かにかつすばやく接近して、それを後ろから両手で掴み上げた。

 

「!? クーーー!!」

 

 俺を探していた生き物は掴み上げられて驚いた後泣き声を上げた。

 当然逃れようと手足をばたばたさせてもがくが、猫の時に慣れてるのでそのまま掴み続ける。

 ひっくり返して全容を見てみるとそれが何か分かった。

 

「・・・・・・きつね?」

 

「クーーー!! クーーーー!!」

 

 海鳴って狐も居たのか?

 確かに自然が多くて栗鼠とか見かけたこともあるけど。

 

 俺が観察している間も泣き声を上げて狐はもがき続けてる。

 もういいと思って下ろしてやると狐は一目散に走り出して俺から逃げていった。

 

 かと思ったら十分に距離をとった所で木の陰に隠れ再びこっちの様子を見ている。

 今度はお互いに視線があっているためか、狐の感情が気のせいか感じられた。

 狐の視線からは、先ほど掴み上げたことで恐がっているのと同時に気になるという好奇心を感じだ。

 

 

 

 こちらを見ている狐を見てつい悪戯心が働いてしまった。

 再び瞬動を使って狐の隠れた木の傍へ移動した。

 一瞬で近くまで来た俺にまた驚いて逃げようとするが、反応が遅かったのでまた捕み上げた。

 

「クーーーーーーー!!」

 

「オマエ、反応が遅いな。

 普通の野良猫でももうちょっと早く逃げ出すのに。

 どっかで飼われてるのか?」

 

 狐は当然また暴れるが、俺は片腕で抱くようにして捕まえて片手で頭を撫でてやる。

 

「ク? クー・・・」

 

 すると狐はあっという間に暴れるのをやめておとなしくなった。

 

 

 

 ふっふっふっ、実は俺はただ狐を撫でているわけじゃない。

 撫でる手に気を込めてるんだ。

 無論傷つけないように弱い力で込め、更に安らぎとか癒しとか落ち着けるような気持ちを気に込めてる。

 これを野良猫にやったら驚くほど素直に撫でられてたんだ。

 

 これが出来るようになった時は、気が使えるようになって一番うれしかった。

 簡単に動物の警戒を解くことのできる撫で方。

 ムツゴロウさんもびっくりの撫でっぷり、まさにゴッドハンドを手にしたって感じだ。

 

 

 俺は正直かわいい動物が大好きだ。

 特に子猫とかの子供が大好きで、現実に存在する癒しの生き物だと思ってる。

 だから意思疎通が出来て可愛がれる使い魔なんて最高じゃないかと欲している。

 原作には絶望しているが使い魔を作る方法を知るためだけに接触するのも悪くないと思っている。

 

 そういえば今考えているネタ魔法で式神とか作れないか?

 まあ理論も半分妄想で出来ているようなものだから無理だろうな・・・

 

 

 

 あ、それと原作のことで思い出した。

 なのはちゃんが聖祥小に入学したようです。

 ふと学校で見かけただけなので話をしたりはしてません。

 一月の付き合いももう数年前なので俺のこと覚えてるんでしょうか?

 まあ原作のことは特に気にしてないのでスルーです。

 

 

 

 ところでさっきから撫でっぱなしの狐はすっかり落ち着いている。

 撫でるのをやめて降ろしてやっても逃げる様子は無かった。

 つぶらな瞳で俺を見上げているのが可愛いじゃないか。

 

「お前、この辺りに住んでるのか?」

 

「クー。(フルフル)」

 

 狐が首を横に振る。

 

「お前、誰かに飼われてるのか?」

 

「クォン。(コクコク)」

 

 狐が首を縦に振る。

 

「・・・・・・お前、人の言葉が分かるのか?」

 

「!! クーーーー!!」

 

 狐は逃げ出した。

 

 つい話しかけて見たけど、普通に首を振って返答してたよな。

 気のせいじゃなければ、人の言葉を間違いなく理解していた。

 言葉を理解できると知られたらなんか逃げ出したし。

 まさか誰かの使い魔だったりしたのか?

 あるいは妖狐だったとか。

 

 

 

 ん? 妖狐?

 あっ!! もしかして今のって久遠てやつか!?

 元祖リリなので、とらは3のおまけストーリーでなのはのお供だったっていう。

 とらハシリーズはやったこと無かったからあまり詳しく知らないんだよな。

 二次創作でたまに出てくる存在だから知ってたくらいだ。

 

 確か人に化けたり話したり出来たはずだ。

 とらハシリーズはリリなのと同じ海鳴が舞台だから設定が生きているのか。

 なのはちゃんの兄の恭也もギャルゲ的展開でリア充状態なんだろうか?

 正直見てみたいような見てみたくないような・・・。

 現実の修羅場なんて生々しいだけだからな~。

 

 

 

 翌週、舞空術の練習でいつもの林に行ってみたら、先週の狐・・・恐らく久遠・・・が昼寝をしていた。

 再び悪戯心で絶をして近づいてゴットハンドで撫でてやると驚いて起きたが、後はそのまま撫でられていた。

 ある程度撫でててから開放してやると、ハッとなって走り出し逃げていってしまった。

 逃げるの遅すぎだろう。 いや、ゴットハンドが凄過ぎるのか?

 自分ではどんな感じかわかんないからなぁ・・・

 

 

 

 

 

 久遠が居なくなった後に舞空術の確認をしたが、特にこれといった大きな変化も無く終わってしまった。

 初めの内は舞空術の確認をするたびに落ち込んでいたが、それにももう慣れてしまった。

 

 帰り道、舞空術に何が足りないのかこれまで何度も考えてきたことを思い直していた。

 浮き上がってはいるんだが飛べるとまではどうしてもいかない。

 気の放出でホバーリングくらいは出来るんだが、俺の目標は空中で自在に飛べるようなる事。

 何かもう一工夫必要なんじゃないかと思ってるんだがそれが何か分からない。

 

 斬魔剣のときみたいに気に意思を込めてみる?

 いや、意思によって性質は変化しても出力は気の量で決まるからそれほど変わらない。

 爆発的な威力を出すにはやっぱり気の増幅量を上げるしかないのか・・・。

 

 

 

 いろいろ思い返しながら歩いていると、とある住宅地の前を通りかかった。

 いつも通っている場所なので普通に歩いていたが、ある家で子供がホースを使って花壇に水をやっている光景が目に付いた。

 ふと子供が手に持ってるホースにハッとなって立ち止まった。

 

 ホースの先からは当然水が出ている。

 花に水をやるなら大抵はホースの先にシャワーノズルが付いてるがそこには付いていなかった。

 なので水をかけてる子供はホースの先をつまんで水飛沫になって吹き出るようにしていた。

 そしてホースの先からは普通に水を出すより何倍も勢いよく飛び出していた。

 

 

 

(これだ!!)

 

 俺はそう確信していつもの林に向かって引き返した。

 気の内部強化を無意識に使っていて、普通の子供では出せない速さで走っていたが気にならなかった。

 神社の石段を駆け上ってすぐ林に中に入っていった。 

 周囲を見渡し同時に円を使って確認するがどうやら久遠は戻って来ていないようだ。

 

 さっきのホースを見てもしかしたらと思いついた。

 気の放出量は同じでも気の出口を絞り圧力をかけてやれば、放出する威力はぐっと上がるのではないかと。

 先ほどの舞空術の練習でだいぶ気を使ってしまっていたが、全力で放出して出力を確認しただけなのでたぶん大丈夫だろう。

 

 俺は気を全力で練ると同時に圧力を掛けるために、気が体外に出るのを抑える・・・すなわち絶と同じことをやった。

 全力で気を練っているので本来の絶の役割が果たされず、漏れ出した気が炎のように立ち昇り、この前やったドラゴンボール風の気溜めになった。

 

 というかこの気溜めって舞空術の前提状態にあたるじゃないか。

 舞空術に足りないのは気の量だと思ってて考えてもいなかった。

 この前出来た時に気づけよ俺!!

 

 

 十分に気が体の中に溢れて、これ以上は練っても気が溜まるより体から漏れるといったところで準備完了。

 下に向かって体に押し込められている気が開放されるように絶を一部解除した。

 

 

--ドオォォォンッ!!!!--

 

 

「うわぁぁぁぁ!!」

 

 圧力のかかった気が地面に向かって爆発するかのように放たれ、俺は反動で飛び上がるというより吹き飛ぶ様に空へ打ち上げられた。

 気の放出はまだ続いており上昇する勢いが止まらなかったので、慌てて気を抑えて放出を止めた。

 

「びっくりたぁ・・・・・・って、あわわわわ。」

 

 気の放出を止めたことで上昇する勢いは止まったが、重力に従って今度は落ち始めた。

 再び焦りだしたが、先ほどは予想以上の気の出力で暴発させたが、今度は気の放出口を少しずつ開けて出力を調整しながら落ちる方向に気を放った。

 初めての空中だが日頃からの気の操作のおかげで、慌てていてもしっかりとコントロールして落下するのを抑えた。

 圧力のかかった気の出力具合を測りながら、空中でバランスを整えて何とかその場に停止した。

 

「・・・・・・出来た。」

 

 空中で足場も無くバランスを取りにくいが、気の放出を続けてその場に留まっている。

 気の出力を少し上げればすぐに上昇して、下げれば少しずつ重力にしたがって降下した。

 

「で、で、で、出来たああぁぁあぁぁ!!!!」

 

 漸く出来るようになった舞空術に歓声を上げてしまう俺。

 放出している気は勢いはすごいが、いつも全力で放出していた時に比べ圧倒的に気の消費量は少ない。

 圧力を掛けるなんてこれまで思いつかなかったけど、ここまで違うとは思わなかった。

 舞空術の練習初期より気の量が格段に増えているとはいえ、これに気づいていれば割と最初の内に出来ていたかもしれない。

 

 気はほんとに使い方次第だと思った。

 他にもまだまだ気づいていない画期的な使い方があるかもしれない。

 戦闘系の技は使う気が無いから手を出してこなかったけど、そこから新たな使用法が発見できるかもしれない。

 舞空術の制御も完璧にして自由に飛べるようになったらいろいろ試そうと心に決めた。

 

 

 

 そしてそろそろ林の中に降りようとして、下を見下ろしたら神社の境内に人影が見えた。

 目を凝らすと自然と凝をしてしまうようになって、視力が強化されるとよりはっきりと見える。

 竹箒を抱えて掃除をしていたのであろう緋袴(ひばかま)を着た巫女さんと目がパッチリと合った。

 パッチリと・・・・・・

 

(・・・・・・ヤバイ!!)

 

 見られた!!と思った瞬間、気を放出して一気に降下して、地面にぶつかる直前気を落下方向に放出し着地の反動を殆ど無くして林の中に降り経つ。

 漸く飛べるようになったばかりでこんな精密な飛行は出来ないはずなのに、火事場のバカ力か出来てしまった。

 そんなこと気にしてる余裕も無く、頭は先ほど上空に飛び上がった時よりパニックになっている。

 今は早く逃げようと神社の境内と反対方向に全力で走り出し、迂回しながら神社の敷地内から離れていった。

 

【あれは何だ?鳥か?飛行機か?いや飛行(非行)少年だ!!】

 

 俺の頭の中には明日の朝刊の一面を飾るであろう内容が映し出されていた。

 

 

 

 

 

●拓海は魔法陣の作成を始めた。

●ゴッドハンドを習得した。

●気に圧力を掛けることを覚えた。

●舞空術を習得した。


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