【更新停止】転生して喜んでたけど原作キャラに出会って絶望した。…けど割と平凡に生きてます   作:ルルイ

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第四十四話 今日は猫盛だー!!

 

 

 

 先日、学校の帰りになのはちゃんにアリサちゃんとすずかちゃんを紹介された。

 その時にはやてちゃんに二人を紹介しようと息巻いていたが、二人は用事で来れずに顔合わせは次回となった。

 で、今回すずかちゃんからのお誘いでなのはちゃんとはやてちゃんとヴィータの四人で月村邸へお茶会に招待される事となった。

 アニメでフェイトの初登場の時と同じ様なものだな。

 

 ただし今回はユーノはおらず、動物組みに海鈴と久遠とザフィーラも連れての参加だ。

 流石にアリサちゃんとすずかちゃんは魔法関係を知らないので、海鈴と久遠とザフィーラには普通の動物のフリをして貰う事にしている。

 一応アリアを誘ってみたが、流石にペット扱いされてまで着いて来る気はなかったようだ。

 ザフィーラはペット扱いに不満の声を上げているが、はやての護衛と自称する事で自分を納得させたようだ。

 

 ヴィータも一緒なのははやてちゃんが誘った事と子供の集まりだからということらしい。

 一緒に行くのは構わないが子ども扱いされるのは気に食わないと言っていた。

 まあヴィータもザフィーラと同じくはやての護衛と称して自分を納得させていた。

 

 子供の集まりでふと気づいたが、俺も子供なんだなと今更ながら思い返した。

 確かに小学校に通ってて身長などもなのはちゃん達とそう変わらないので、何処からどう見ても普通の子供だ。

 そんな俺から見るとなのはちゃん達はかなり離れた年下の子供にしか見えない。(ヴィータは例外と一応認識)

 だから俺はなのはちゃん達には『ちゃん』とつけて、年下の子供扱いをしてしまっている。

 この年代の子達なら普通にそう呼んでるだろうけど、俺の場合はずっと変わらないだろな。

 初めから大人目線なんだから。

 

 

 

 

 

 月村家の大きな門を抜けて、月村邸のインターホンを押して出迎えを待っていた。

 

「ホンマにおっきい家やな~

 庭も広いし聖王教会行ったときみたいな豪邸や

 ここ、日本やろか

 途中で次元転送されとらへん?」

 

「されてねえって、はやて

 確かにこの家に比べたらあたし達の家って小さいな」

 

「グハッ!! ち、小さい…

 い、痛い所を突かんといてえな、ヴィータ…」

 

「え、あ、あたしなんか悪い事言ったか!?」

 

 ヴィータがどういう感覚を持って家の大きさを判断してるか分からないけど、八神家の大きさは普通だ。

 俺の家とそう変わらない大きさの平凡な家だ。

 決して一般より小さいわけではない。

 

「いいかヴィータ、ここの家の人はお金持ちで私は庶民なんや!!

 私の家が小さいんやない、この家が大きすぎるんや!!

 それから贅沢はあかん、私らは庶民なんやからな!!」

 

「お、おう…」

 

「はやてちゃん落ち着いて

 俺達は一般人なんだ

 下手をしないよう、粗相のない様にな」

 

「そ、そうやな…

 下手なもん壊して弁償なんて恐ろしいわ」

 

「なんか、花瓶とか肖像画とか飾ってそうだよな」

 

「聖王教会じゃ飾っとったで

 廊下の隅にポンと飾ってあるもんやから、なるだけ真ん中歩かなへんかった

 ヴィータ、下手に物を触ったらあかんで」

 

「はやて、それ、聖王教会でも言ってたぞ」

 

 どうやら聖王教会でもはやてちゃんはかなり窮屈な生活を強いられてたようだ。

 現状のはやてちゃんの様子からも想像出来るが、将来向こうに住むなんて出来るんだろうか…

 

「ちょっと大きな家くらいやと思っとったのに予想以上や

 なんか高価なお菓子でも持ってくるべきやったか」

 

「今更だけどお茶会って一体なんなんだろう

 普通に考えればお茶を飲むだけだろうけど、そうじゃないんだよな」

 

「私、作法なんて知らんで」

 

「俺も知らない

 ヤバイ、なんか緊張してきた」

 

「私はとっくに心臓バクバクや」

 

 月村邸を前にして急に緊張してきてしまった。

 目の前で見たらかなり大きな家で高級感に当てられてしまった。

 こんなデカイ建物なんて学校かどっかの施設にしか入ったことはない。

 なのにこれが家なんだぜ、信じられるか?

 

「はやてちゃんもたっくんも落ち着いて

 私も何度か来たことあるけどそんなに沢山壷とか絵とか飾ってないから」

 

「飾ってはあるんだ」

 

「私、胃が痛くなってきたかも

 帰ってこれて漸く治まっとったのに」

 

≪主、気を確かに≫

 

「大丈夫かよ、はやて」

 

 なのはちゃんが俺達二人を落ち着かせようとし、ザフィーラとヴィータが緊張で体調を崩しかけるはやてちゃんを気遣う。

 向こうで大変だったんだな、はやてちゃん。

 その上思った以上に長引かされたんだし。

 

「いらっしゃいませ、なのはお嬢様とご友人の方々」

 

「こんにちは、ノエルさん」

 

 その時、家の扉が開いて出迎えの人が着た。

 現れたのはショートカットのメイド服の女性。

 メイド服を着た人なんて、秋葉とかのメイド喫茶の雑誌でしかみたことないぞ。

 俺の主観でメイド喫茶のメイドさんなんて痛いだけだけど、目の前に現れたノエルさんは普通にメイドだ。

 メイド服だの萌だのを引っこ抜いてただ仕事着として着こなしているメイドさんだ。

 つまり本物のメイドさんということだ。

 

 別に俺に思い入れがあるわけじゃない。

 俺はメイド服がどうとかというより、可愛ければそれでいいと思う派だ

 ノエルさんは……普通に美人なんだろうな。

 それ以上に思う事はない。

 

「さあどうぞ、アリサお嬢様も既にいらっしゃってます」

 

「お邪魔しまーす」

 

「「お、お邪魔します」」

 

 普通に挨拶して入っていくなのはちゃんに続いて、俺とはやてちゃんも声を上ずらせながら入ってく。

 中を見ても広くてとても家だとは思えない感じだ。

 これが施設だと思えばどうって事ないけど、家だと思うと格の違いを思い知らされる感じだ。

 

「な、なのはちゃん、ここって靴脱ぐんやろうか?」

 

「そのまま入って頂いて構いませんよ」

 

 はやてちゃんがなのはちゃんに問いかけると、先にノエルさんが答えた。

 靴脱ぐ所がないからそのままでいいとは思ったけど、やっぱり日本の家じゃないよ、ここ。

 

「そ、そうですか、有難う御座います」

 

「はやてちゃん、流石に緊張しすぎだ

 ちょっと深呼吸でもして落ち着け」

 

「そ、そうやな」

 

 関西弁が抜けて敬語になって礼を言ってしまうくらい落ち着きを無くしている。

 俺も流石に落ち着かないといかんな。

 何度も来ているからか、なのはちゃんの平然とした様子を見てたら少しだけは落ち着いてきたし。

 はやてちゃんを少しでも落ち着かせながら、ノエルさんに案内されていく。

 

 

 

 案内された先には、先に来て待っていたアリサちゃんとすずかちゃん。

 それからすずかちゃんによく似た年上の女性と恭也さんがいた。

 

「お兄ちゃん、来てたの」

 

「ああ、忍に誘われてな」

 

「いらっしゃい、なのはちゃんに友達の皆」

 

「あ、えと、お招きに預かりどうも…」

 

 すずかちゃんに似た女性、忍さんにはやてちゃんが丁重に挨拶しようとする。

 だけどどうにもまだ緊張しててうまく応答が出来ていない感じだ。

 

「そんな緊張しなくてもいいわ

 すずかの新しい友達を見てみたかっただけだからもう行くから、あとは皆で楽しんでって

 恭也、私達は部屋に行きましょう」

 

「そうだな」

 

「私も下がらせていただきます

 皆さんごゆっくり」

 

 そう言ってさっさと二人は部屋を出て行ってしまった。

 ホントに顔を合わせるために待ってただけみたいだ。

 ノエルさんも二人に続いて部屋を出て行った。

 

「なのはちゃん、今お兄ちゃん言うとったけど…」

 

「うん、私のお兄ちゃんだよ

 一緒にいたのはすずかちゃんのお姉さんの忍さん

 二人は恋人同士なの」

 

「ほぉ~、あれが美由希さんの…

 たっくん」

 

「あいよ」

 

 はやてちゃんに名を呼ばれただけでどうするか直感的に悟り、行動に移す。

 携帯電話を取り出してアドレス帳から呼び出し。

 数回のコールの後、呼び出し相手が出た。

 

『たっくん、何かようかな?』

 

「あ、美由希か?

 今なのはちゃんに誘われて月村邸にいるんだ」

 

「お姉ちゃん?」

 

 呼び出した相手は美由希。

 なのはちゃん達は何故突然美由希に電話をかけたのか疑問に思っており、はやてちゃんだけ分かってる様子でニマニマとニヤついている。

 まあ何時もの美由希弄りだ。

 皆にも聞こえるように携帯のスピーカーをオンにする

 

『月村邸って忍さんの家?』

 

「ああ、はやてちゃん達も一緒に来てるんだ

 そんで来てみたら恭也さんも来ていてな、初めてみたけど忍さんと仲良さそうにしてるな」

 

『そ、そうなんだ

 たっくんたら、またその事でからかって…』

 

「あ、二人だけで部屋に行くってさ

 ちょっと後をつけてみるな」

 

『ふ、二人だけで!?

 いやいやいや、たっくんダメだよ、そんなことしちゃ!!』

 

 当然、後をつけるなんて事はせずに、美由希に聞こえないように携帯のマイク部分を押さえる。

 そして、喉を抑えて声を帰る声帯模写の調整をする。

 

「あー、あー、あー、あー!!

 ≪はやてちゃん、こんな感じでどうかな≫」

 

「バッチリや!!

 さすがはたっくんやな」

 

「え!? お姉ちゃんの声!!」

 

「うそ、どうやったのよ?」

 

「たっくんの声が忍さんになっちゃった…」

 

「相変わらず面白い事が出来るよな、拓海」

 

 俺が声真似したのは忍さんの声。

 初めて聞いた声だったので一発で真似出来るか解らなかったが、周囲の反応を見る限り問題ないようだ。

 さて、また電話越しの劇場を始めるか。

 塞いでたマイク穴を開けて美由希に声をかける。

 

「部屋の前に着いたぞ

 扉に携帯押し当てるから様子を聞いてみるがいい」

 

『だからダメだって、私まだ心の準備が…』

 

 と、美由希に言葉は無視して完全アドリブで変えた声を出す準備をする。

 はやてちゃんは皆に喋らないように人差し指を口に当ててシーと喋らないように合図している。

 

「『恭也、ダメよ

 まだ昼間じゃない』」

 

『な、何がダメなの、忍さん』

 

「『いいじゃないか、忍

 この部屋には俺達二人しかいない』」

 

『ふ、二人だけ…』

 

「『けど、今は子供達が皆いるし』」

 

「『部屋は離れている

 声も何も聞こえやしないさ』」

 

『聞こえてる、聞こえてるよ恭ちゃん…』

 

「『じゃ、じゃあちょっとだけよ』」

 

「『ちょっとだけで済むか?

 それで何時も最後まで行くだろう』」

 

『さ、最後までって…』

 

「『だって恭也がすごすぎて』」

 

「『仕方ないだろ、お前が俺を本気にさせちまう』」

 

『ほ、本気にって恭ちゃん…』

 

「『もういいや、恭也早く…』」

 

「『ああ、俺もこれ以上我慢出来ない』」

 

『ダメだって恭ちゃん!!

 お願いだから待って!!』

 

「『もう準備万端だよ』」

 

「『ああ、じゃここからは…』」

 

『ダメーーーーー!!!』

 

「≪ここからは子供がいるので劇場を中断させて頂きます≫」

 

『へ?』

 

 俺が恭也さんの声で締めくくると美由希の気の抜けた声が聞こえた。

 周りを見渡してみるとはやてちゃんは口を押さえて笑いを堪えており、すずかちゃんアリサちゃんヴィータは顔を赤くしており、なのはちゃんだけは疑問符を浮かべて首を傾げている。

 最近の子はマセ過ぎているのか、或いはなのはちゃんが純粋すぎるのか。

 劇場を実行した俺が言うことではないが…

 

 ちなみに動物組みの三匹は動物姿なのでよくわからないが我関せずと言った感じで気にしていない様子だ。

 しまった、また久遠の前でこんなことやってしまった。

 これも美由希が弄り易すぎるのが悪いんだ。

 

『え? え? え?』

 

「だから今のは俺の声真似劇場

 美由希の憎愛劇第二章、相思相愛を目撃して嫉妬を募らせるの巻きだ」

 

『………………………そ』

 

「ん?」

 

 長い沈黙の後美由希の声が僅かに漏れる。

 何時もの美由希から創造するにこの後の行動は…

 

『そんなこったろうと思ったよーーーーーーーー!!!!』

 

 美由希の絶叫がスピーカーを通じて部屋に響く。

 まあ、こんな感じで爆発するだろうとは思っていた。

 経験で解っているのかわかっていないのかは知らないけど、必ずこういうのには引っかかるんだよな。

 

 美由希の絶叫が響いたところではやてちゃんが限界を超えて笑い始める。

 こうやってはやてちゃんが大笑いするのも何時ものことだ。

 最近二人でいる時は美由希弄りが神掛かってきてる。

 

 

 

 

 

「ったく、いきなり電話かけて何をやりだすと思ったら悪戯だなんて」

 

「ホントびっくりしたよ、拓海君の声がお姉ちゃんと恭也さんになるんだもの」

 

「し、ししし、しかも、あ、あんな内容を!!」

 

「あはははは……(真っ赤)」

 

 確かに初めてお邪魔した家でやるようなことじゃなかったな。

 はやてちゃんのフリに乗せられて勢いでやってしまったこと少し反省している。

 

「つい、いつもの勢いでやってしまった

 悪かった、ごめん」

 

「流石に他所様の家でやることやなかったわ

 ホンマにすいません」

 

「はやては普段はしっかりしてるのに、時々羽目外すよな

 ほどほどにしろよ」

 

『自重してください、主』

 

 謝った俺達にヴィータとザフィーラに注意されてしまう。

 主にはやてちゃんへの注意だが皆の視線は俺達二人に訴えるように向いている。

 ただ一人、なのはちゃんだけは目をキョロキョロさせた様子で…

 

「ねえアリサちゃん、あんな内容ってなんなの?

 たっくんがお姉ちゃんに悪戯したのはわかるんだけど、お兄ちゃんと忍さんの声で何がしたかったの?」

 

「「なのは(ちゃん)…」」

 

「かわええな、なのはちゃん」

 

「ガキだな、なのはは!!」

 

「むー、ヴィータちゃんだって子供じゃない!!」

 

 皆反応はそれぞれだがなのはちゃんの疑問符に呆れ気味だ。

 まあこの年頃の子供ならこういう反応のほうがあってるだろう。

 子供の集まりでそんな反応だったのがなのはちゃんだけだったのは少々冷汗物だが…

 

「まあ、それはもう置いといて

 改めて自己紹介させてもらうけど、アリサ・バニングスよ」

 

「私は月村すずか

 よろしくねはやてちゃん、ヴィータちゃん」

 

「八神はやてや

 車椅子に乗っとるけど、今は歩けるようになるためにリハビリ中や

 今は休学中やけど歩けるようなったら学校にいくつもりや

 一緒のクラスになったらよろしくな」

 

 なのはちゃんの疑問はアリサちゃんに置いていかれて、改めて自己紹介に入る。

 二人の自己紹介に対して、はやてちゃんがいつも以上に気合を入れて応える。

 今は車椅子には乗っているが足はだいぶ動かせるようになってきたそうだ。

 まだ立つ事は出来ないけど、半年もすれば歩くだけの筋力を取り戻せるらしい。

 なのでこの手の話をすると気はとても嬉しそうに話す。

 学校への復学も楽しみにしてるみたいだ。

 

「ほんでこっちの子はヴィータや

 遠い親戚の子で一緒に暮らしとる家族や」

 

「ヴィータだ」

 

「ヴィータはちょっと人見知りでな

 初対面やとどうしても仏頂面になってまうんよ

 ほんでもええ子やから仲良くしたってな」

 

「や、やめろよ、はやてぇ」

 

 ふざけてる時は年相応のはやてちゃんだが、守護騎士達の事になると保護者姿勢になる。

 こちらのはやてちゃんは年相応とは思えないほどだが、守護騎士達の主であると同時に家長としての責任感を自然と持ってるって感じだな。

 決して無理している感じではなく、家族が大事だからこそ世話を焼きたがってるようだ。

 

 もっとも世話をされてるヴィータはそうやって紹介されるのが恥ずかしいようで顔を赤くして困っている。

 決して嫌がってるわけではないんだろうが、ヴィータはそういう性格だからな。

 

「そんで、こっちがザフィーラや

 おっきい犬やけどとても大人しいんよ」

 

「プッ、犬」

 

≪黙れ、ヴィータ≫

 

 はやてちゃんが紹介した後にヴィータがザフィーラを茶化す。

 それに対して魔法を知らない二人が居るので表立って文句を言えないから、ザフィーラは睨みながらも念話で文句を言い返す。

 やはりはやてちゃんに犬とは言われるのは我慢出来ても、他の物には言われたくないらしい。

 一応狼らしいし。

 

「大きな犬ね

 私の家は犬を沢山飼ってるからいろいろ知ってたつもりだけど、この子の種類は知らないわ

 はやて、この子の品種は?」

 

「え、えと、どうなんやろう?

 たぶん雑種やないかな?」

 

「ざ、雑種…(プルプル)」

 

≪ヴィータァ!!≫

 

 誤魔化すためとはいえ色々ザフィーラの尊厳を傷つけるはやてちゃん。

 ヴィータはそれがだんだんツボに嵌ったのか笑いを堪え始めて、ザフィーラは念話で怒鳴りながら睨む事しか出来ずにいる。

 まあ、怒りながら一見大人しくしているように見えるのは流石ザフィーラと言っておこう。

 

「ねえ、拓海くん、その子達の名前は?」

 

 アリサちゃんがザフィーラに興味を持ったのに対して、すずかちゃんは俺の連れている久遠と海鈴が気になったようだ。

 アリサちゃんは犬を、すずかちゃんは猫を沢山飼ってるらしいので、それで興味が分かれたらしい。

 

「この狐が久遠で猫の方が海鈴

 久遠の飼い主は俺じゃないけど、最近はよく一緒にいるから連れてきた

 海鈴は俺のだけど」

 

「クォン」

 

「ニャー」

 

 二匹は普通の動物を演じるため、喋らずに鳴き声をあげる。

 久遠はもともとキツネだけど海鈴は容姿を変えただけの偽者の猫だ。

 ここに来る前に猫の鳴き声をリハーサルをしたら、微妙な鳴き声だったので来るまでに少々練習をすることになった。

 とりあえず鳴き声を上げるのは違和感を持たれない程度にするようにして、あまり鳴かない様に言っておいた。

 気づかれることは早々ないと思うけど

 

「拓海君も猫を飼ってたんだね

 私も家で沢山猫を飼ってるから、後で紹介するね

 こんにちわ、久遠、海鈴」

 

 挨拶するとすずかちゃんは二匹の頭をそれぞれの手で撫でて上げる。

 自分で生み出したとはいえ海鈴の猫姿もなかなか可愛いし、久遠は独特の愛らしさがある。

 撫でたくなるのは当然だよな。

 

「え?」

 

「ん、どうかした?」

 

 撫でていた手を止めて突然疑問の声を上げたすずかちゃん。

 

「えっと………ううん、なんでもない」

 

「ん、そうか」

 

 そのままそこで二匹の頭を撫でるのを辞めたすずかちゃん。

 もしかして普通の動物じゃない事に気づいたか?

 この家もとらはでは普通の家じゃないって設定だったと思うし。

 

 まあ、だからってどうってことない話なんだけどな。

 そうだとしても一般人なのはアリサちゃん一人だけだし。

 むしろ何も知らないアリサちゃんが知ってしまったら涙目だ。

 

 

 

 

 

 とりあえずこちら側の動物組も含めた自己紹介が終わった後、お茶会の準備をしている庭に移る事になった。

 そこには外用の白いテーブルと人数分の椅子があり、テーブルの上に洋風のお茶菓子とティーカップが既に用意されていた。

 その周りには月村邸で飼われてる猫たちをすずかちゃんに紹介された。

 一匹一匹名前を教えられたけど、とりあえず覚えきれないほど数だったと言っておこう。

 

 ここまでいるからにはゴッドハンドで猫の群れをヘブン状態にせずにはいられない。

 初めて見る人間には大抵警戒心を持って近づいてこないのが猫で、当然初めて来た俺には一定以上近寄っては来ない。

 それでも警戒心の低い猫はいるので、サッと素早く近づいて撫で回す。

 

 

-……ニャ~ン♪-

 

 

 今日も俺のゴッドハンドは冴え渡っているようだ。

 10秒と経たない内に気持ち良さそうに横になって俺にされるがままになる。

 一匹を篭絡すると近くいた他の猫に移って撫で回し、また篭絡する。

 

 気持ち良さそうに篭絡されてしまう猫を見て、警戒心を持ってた猫たちも少しずつ俺の傍に寄ってきて、手の届く所まで来た猫から順繰りに撫で回して篭絡していく。

 一匹一匹やっていたが近くにいる猫が増えてきたので片手ずつ二匹同時に撫で回し始めたが、初めに撫でていた猫達が催促のように顔を擦り付けてくるので、手が全然足りなくなった。

 すずかちゃんとアリサちゃんがいなければ分身をして足りない手を増やすところなんだが、それも出来ない。

 

 そこで思いついたんだがゴッドハンドは気に敵意の無い安らぐ様な意思を込めて相手に伝える、いわば終の太刀の亜種だ。

 なら別に撫でる必要もなく、撫でるのはどちらかと言うと俺が撫でたいだけだったりするからだ。

 だから何時もゴッドハンドに込めている気持ちを纏で纏って座り込み、俺の周りに猫達を寄せてみた。

 すると…

 

 

 

 撫で始めて十分もしない内に、ゴッドハンド・纏バージョンの影響を受けた猫が自然と俺に寄り添ってきて、最後には猫で俺の下半身は完全に埋まって、肩や頭にも乗れる者は乗っかっている。

 子猫から大きな猫まで大小様々だが、もう重なり合うように俺の体を埋め尽くしているのでどれがどの子やら。

 ちなみに久遠と海鈴も山盛りの猫達の一部になっている。

 

 モコモコした猫達の毛並みと暖かい体温に囲まれて気持ちがほんわかして非常に和む。

 現実的にハーレムなんてありえないなんて考えてたけど、動物ハーレムなんていいかもな。

 将来、次元世界の可愛い動物を集めて俺だけの動物ハーレム王国作りたい。

 

 

 

 そんな時に席に座りながらこちらの様子を伺っていたアリサちゃんが声を掛けてきた。

 他の四人も椅子に座っており、お茶やお菓子に手を伸ばしている。

 特にヴィータのお菓子に手が伸びる早さが際立っている。

 ちなみにザフィーラははやてちゃんの傍で忠犬の様に座っている。

 やっぱり犬にしか見えん。

 

「ちょっと拓海、せっかくのお茶会なんだから猫とばかり遊んでないでこっち来なさいよ

 というかあんた猫に懐かれすぎよ!!

 どうやったらそんな簡単に埋もれるくらい懐かれるのよ!!」

 

「家の子達が全部懐いちゃった

 他所の人には全然懐かない子もいるのに」

 

「相変わらず動物に対する手際の良さには驚かされるわ

(思えばアリアの時が一番凄かったわ

 あれが人の姿になってるアリアやったら…………アカン、あれはエロ過ぎや)」

 

「たっくんって猫に好かれやすいんだね」

 

≪いやなのは、あれは拓海がなんかの力を使ってるらしいぞ≫

 

≪え、そうなの?

 魔法だったら私も教えて欲しいな≫

 

 反応は色々だが、流石に猫の山盛りに埋まっては驚かれるらしい。

 思った以上に猫がいたからこうなってしまったが後悔はない。

 少々埋まりすぎてしまったが、それでも動物に囲まれるというものはいいものだと思ったからだ。

 

 俺も一応お茶会と判って一緒に来たのだが、よく考えてみれば男は俺一人なんだ。(ザフィーラは動物型なので数に入らない)

 どう考えても女の子の話についていけないだろう?

 だからあえて話に混ざらないようにも(・)していたんだが…

 

「やれることをやったらこうなってしまった

 モコモコで暖かいから気持ちいいんだけど、これじゃあなかなか動けないから

 まあ、俺の事はこのままでいいから、お茶会進めといてくれ」

 

「そういう訳にはいかないわ

 あんたも招待されたんだから参加しなさい」

 

「そうだよ、たっくんも一緒にお話しよ

 猫退かしてあげるから『ニャア!!』わっ!!」

 

 なのはちゃんが俺に乗っかってる猫を退かそう抱き上げたら、その猫が鳴き声を上げて嫌がって身を捩り腕から逃れると、また俺の傍に寄って来て猫盛の一部になる。

 

「あうぅ、普段なら私が抱き上げても怒んないのに」

 

「そんなに拓海君に懐いちゃってるんだ」

 

「まあ、そんなわけだから俺はこっちで猫と待ったりしてるから

 それに面子的に男女の比率がキツイから」

 

「……あーそう、つまり恥ずかしいわけね」

 

 納得いったという感じと共に嫌らしい笑みを浮かべるアリサちゃん。

 エロい意味じゃなくて悪戯的な意味の嫌らしい笑みだからな。

 

「まっ、それじゃあしょうがないわね

 こっちに入るって事は、こんな美少女達に囲まれるって事だもの」

 

「うんうん、そやな

 たっくんも男の子なんやから」

 

 自慢気に言うアリサちゃんに頷きながら賛同するはやてちゃん。

 俺の美的感覚が可笑しくなければ、他の三人も含めて何も知らずに初見であれば、普通に可愛い女の子だとは思う。

 無論アニメ描写じゃなくて現実的に見た描写だぞ。

 いやまあ間違ってないと思うけど、自分達で美少女って言ってそれに同意するってのはなんだかな。

 

 すずかちゃんは困ったように乾いた笑いを出して、ヴィータは特に気にせずにティーカップを口につけて、皆の様子になんだかよくわかってないようななのはちゃんは首を傾げている。

 最近仕草が妙に可愛らしく思えてきたな、なのはちゃんは。

 久遠と同じ様な感じの可愛らしさだが。

 

 女の子に囲まれるのは気恥ずかしくあるが、俺には子供であって異性とは見ていない。

 一応価値観は大人の物だから、そういう対象には見る気はない。

 だから俺が二人の自己評価に対して出来ることは…

 

「……ふぅ」

 

「何でそこで溜め息が出るのよ!!」

 

「いや、ごめん

 正直どう反応していいか判らん

 美少女であるかどうかはともかく、自称してたらとても美少女とは思えんぞ

 まあ、見方によっては微笑ましくあるがな」

 

「なぁ!?」

 

 いかにも微笑ましげな笑みを浮かべながらアリサちゃんに言う

 バカにされたと思ったのか、或いは微笑ましいと言われて恥ずかしくなったのかは知らないが、アリサちゃんは顔を赤くする。

 

「たっくんの反応、面白くないわ

 もうちょっと恥ずかしがったり照れたりせえへん?」

 

「そうは言っても実際にどうとも思わんからな

 まあ、後十年経ったら違ってると思うけど」

 

 もし初対面がSTSの時代だったら色々違っただろうな。

 子供とは見れなかっただろうし、普通の女の子としたには見れなかっただろう。

 そうなるとやっぱりSTS時代には魔法少女はタイトル的に間違ってるな。

 

「まったく失礼ね!!

 一つ年上だからって子供扱いして

 小学生でも立派な乙女なのよ」

 

「そうか、それは悪かったな」

 

「全然悪いと思ってないじゃない!!

 ふんっ!!」

 

 俺は特に悪びれた様子を見せずに謝る。

 相手にされてないとわかったのか、少々機嫌を悪くして踏ん反り返ってそっぽを向くアリサちゃん。

 別にアリサちゃんとの仲を拗らせようと思ってこういう話し方をしてる訳ではなく、これも冗談を含めた俺なりの付き合い方だ。

 アリサちゃんもからかわれてるのは判ってても悪意がないのは気づいてる様子なので、そのままどかっと席に座った。

 

 だけどその様子を見て、なのはちゃんは仲を拗らせたと思ったらしい。

 慌てた様子で仲裁に入ってきた。

 

「アリサちゃん、たっくん、喧嘩はダメなの!!

 せっかくのお茶会なんだから仲良くしようよ」

 

「「え?」」

 

「…え?」

 

 なのはちゃんの慌てた様子に本気で喧嘩をしていたと思われてたと事に気づいて、その様子になのはちゃんも何か変だと気づいて声を漏らした。

 

「なのはちゃん、俺達は別に喧嘩してないぞ」

 

「そうよ、これくらい冗談を交えた他愛のない会話じゃない」

 

「そ、そうだったんだ

 私、早とちりしちゃった…」

 

「やっぱりなのはちゃん達くらいの子は微笑ましいな」

 

「あうぅ…」

 

 さっきから猫を撫で回してたせいか、ついそのままなのはちゃんの頭を撫でてしまう。

 そうすると恥ずかしげに唸り声を上げるなのはちゃん。 

 

「やったらたっくんはどんな女の子が好みなんや?

 ちょ~っと興味あるなぁ」

 

「そうね、同年代の男子の好みには興味あるわね

 すずかもそう思わない?」

 

「えっと、私は別に…」

 

 非常に答え辛い事を聞いてくるな。

 正直好みと言われても、前世でも誰かと付き合ったことなんてなかったからな。

 すずかちゃんは遠慮してる感じに見えるが俺に注目してるし、ヴィータはまだお菓子をモグモグと食べ続けている。

 というか、食べすぎじゃないか?

 

「好みと言われても正直答えづらいな

 とりあえず俺と同年代の子はあまり興味が湧かないとだけ言っておく」

 

「つまり年上が好みちゅうわけやな

 もしかして美由希さんとかが実は好みやとか?」

 

「それは絶対ない……と普段は言うところだけどどうだろうな

 今のところ、そういうこと自体に興味がないからな

 仲が良いのは事実だから将来的なことなんてわからん」

 

「うーん、曖昧な答えやな

 こんなんじゃからかい様がないわ」

 

 この子達からすれば恋愛というも自体に興味を持つ年頃だが、俺は前世があるので改めて持つようなこともない。

 この世界に来た時は原作キャラに興味はあったけど、恋愛対象としては今では違うと言い切れる。

 例えるならアイドルや芸能人に会ってみたかったといったところだ。

 会ってみれば美人ではあるが普通の人達だからな。

 

「まあ、俺が一般的な小学生の反応とは思わんでくれ

 普通は異性に興味があるもんだと思うから

 皆だってそういうのに興味があるから聞いたんだろ?」

 

「えっとまあ、たしかにそうね…」

 

「私もまあ興味はないことはないんやけど…」

 

「私達って学校では仲の良い男の子っていないよね」

 

「そうね、なのはが紹介した拓海が初めてなんじゃないかしら

 そうでしょ、なのは」

 

 アリサちゃんがなのはちゃんに話を振ると、視線がなのはちゃんに集まる。

 そこで気づいたが俺の手がなのはちゃんの頭に乗って撫でっぱなしだった。

 そして話を振られたなのはちゃんはというと…

 

「……ふにゃぁ?」

 

「「「「…………」」」」

 

「もぐもぐ」

 

 猫になってた。

 

 いや、実際に猫になってたわけじゃなくて、俺の周りで寛いでいる猫達と同じ様にダレていた。

 そういえば全身でゴッドハンドしっぱなしだったから、なのはちゃんをゴッドハンドで撫でていたような物だった。

 どうやら人にも効果はあるらしいな。

 とりあえず俺は撫でるのをやめて手を退かす。

 

「おーい、なのはちゃん」

 

「ポケー………え?

 えっと、なになに?」

 

「なのは、あんた今話聞いてた?

 ていうか、聞こえてなかったわよね」

 

「ご、ごめんアリサちゃん!!

 たっくんに撫でられてたらなんだか気持ちよくてポカポカしてきちゃって…」

 

「ふーん、そう

 拓海、もっかいやってみて」

 

「あいよ」

 

 俺はアリサちゃんに言われるままに、またなのはちゃんを撫で始める。

 

「あうあうぅ…………ふにゃぁ~…」

 

 ちょこっと撫で始めただけで戸惑いからすぐに安息状態に変わって表情がダレた猫と同じような状態になった。

 やはり人にも効果がある程度あるみたいだ。

 猫っぽいのはまあなのはちゃんだからと思っておこう。

 

「恋愛云々はともかく、このなのはちゃんは可愛いなあと思ったのは俺の素直な気持ちだ」

 

「そうね、今のなのはには私も負けるとだけ言っておくわ」

 

「なのはちゃん、かわいい」

 

「なのはちゃん、お菓子やでー

 あーんや」

 

「メイドさん、このお菓子のお代わりくれ」

 

 

 

 この後、意識をはっきりさせたなのはちゃんがとても恥ずかしがってたのを皆で笑っていた。

 ただヴィータもいくらでもあるからってお菓子食べすぎだ。

 他所の家なんだからと度が過ぎたと思われた辺りではやてちゃんに叱られてた。

 

 俺も猫に埋もれながらも話に加わってお茶会は楽しく進んでいった。

 魔法関係の話はアリサちゃん達がいるから話題に上げられないから、普通の日常の話題ばかりだった。

 そこで俺自身があまり普通の話題を持ってないことに気づいた。

 ずっと力の練習とか技を考えるなどで一般的な遊びに手を出してなかったから。

 今度久遠とでも技の練習とか抜きに普通の遊びにチャレンジしてみようかな。

 

 

 

 

 

●ゴッドハンド:纏、その他応用が可能に


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