【更新停止】転生して喜んでたけど原作キャラに出会って絶望した。…けど割と平凡に生きてます   作:ルルイ

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第三十七話 八神家の日々4

 

 

 

 

 

 先日なのはちゃんと八神家に繋がりが出来て、アナァゴの正体を暴露する事となったが特に問題もなく済んだ。

 アナァゴの正体の事は一応秘密にしておいてと頼んでおいた。

 式神の技術は一般的ではないけど完全に秘事されてる技術って訳じゃないから別にいいんだけど、結果的にはただの出任せばっか言ってましたってのはちょっと不味いからな。

 

 まあ町の人間として被害を被ったという文句自体は真実だけどね。

 ユーノを最初に預けた動物病院が俺の知り合いの人って言ったら、なのはちゃんも何も言えなくなった。

 良心にと弱みに付け込むようだけどごめんね、なのはちゃん。

 

 

 

 その後は事件の続きを話して管理局が来たりフェイトと一緒に封印したりして、フェイトとの最後の決闘。

 戦闘の内容は俺も見てたから、はやてちゃんに内容を判りやすく説明する。

 止めのバインドの上からSLBで倒したという説明は、相手を貼り付けにして身動きが取れない所を元気玉の様なチャージからかめはめ波を打ち込んだと、判りやすい例えで教えてあげた。

 SLBを無防備に受けたフェイトは、まるでかめはめ波に飲み込まれて消えていくセルみたいだったという感想を述べた。

 

 判りやすい例えに想像したはやてちゃんは戦慄し、なのはちゃんは心外だとばかりに否定していた。

 そこでなのはちゃんがはやてちゃんに自分なりの説明でフェイトとの戦いを解説するが、聞いている方は俺との説明の内容に差がなくて、はやてちゃんはなのはちゃんの止めの刺し方に戦(おのの)いた。

 怒らせない様にした方がええなと言うはやてちゃんに、なのはちゃんは何度も弁解をして否定するが事実と真実は変わらなかった。

 なのはちゃんにとってSLBかどういう認識なんだと思った。

 

 その日はゆっくりお話をしてなのはちゃんは何事もなく帰っていった。

 はやてちゃんの次にヴィータともそこそこ仲良くなれて楽しそうだった。

 ただしSLBの認識の違いはお互いに解けることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本日も八神家にやってくると、珍しくザフィーラとアリアも人型に成って全員で本を読んでいた。

 俺が来た事に気づいたはやてちゃんが近くまで寄ってくる。

 

「たっくん、いらっしゃい

 ちょっと聞きたいことがあるんやけどええかな?」

 

「なに?」

 

「たっくんてかめはめ波って撃てる?」

 

「は?」

 

 何を突然言ってくるのかと思えば、はやてちゃんの手にある本は漫画ドラゴンボール。

 見渡してみれば皆の手に持ってる本もドラゴンボールそれぞれの巻だった。

 

「主はやてに拓海の使っている気とは何か聞いてみたら、この本を紹介されてな」

 

「それでどういう本か皆で読んでみる事になったの」

 

「バラバラに読んでるけど結構面白いぜ

 後で最初から読んでみよっと」

 

「最初の方はそれほどでもないが、後の話ではなんと苛烈な戦いか

 かめはめ波、盾の守護獣である俺でも耐えられそうにない」

 

「衛星すら消し飛ばせるほどの力とは…

 お前はやっぱりすごいな、拓海」

 

 守護騎士の皆さん、気を完全に勘違いしていらっしゃる。

 概念は同じだけど、月を吹き飛ばせるほどのパワーなんて出ないよ!!

 さすがにアリアは信じてないようで、本を持ちながら呆れた様子で皆を見てる。

 

 はやてちゃんはこの様子に口を押さえながら笑いを堪えている。

 わかってて皆に説明してなかったな!!

 

 

 

 

 

 流石に月は吹き飛ばせない。

 たぶん強さは魔導師の魔力と同じくらいじゃないかと守護騎士達の誤解を解いておいた。

 はやてちゃんには軽い拳骨を一発あげておいた。

 ほんとにドラゴンボール探しに行ったらどうするんだ。

 

 最初のはやてちゃんの質問に戻るが、たぶん見た目は同じ物なら撃てると思うと言った。

 街中じゃ危険だからとても試せないし、だからといって海や山でも撃つには派手すぎる。

 なので出来そうでも試した事はこれまで一度もなかった。

 

 そこではやてちゃんの鶴の一声で実地検証。

 この前と同じくシャマルさんに結界を張ってもらう事で検証場所を確保。

 八神一家が見守る中でかめはめ波を試す事になった。

 

「たっくん、かめはめ波を試す今の感想は?」

 

「正直オラ、ワックワクしてきたぞ!!」

 

 いやマジで。

 実のところ試したくてもずっと試せなくてちょっと残念だったんだ。

 かめはめ波はドラゴンボール見たことのある男の子達の憧れ。

 出来ることなら撃ってみたいじゃん。

 

 こっちの世界で気が使える様になった時は真っ先に思いついたな。

 けど使う環境も必要もなかったから練習する事もなかった。

 だけど漸く試せる環境が出来てちょっとドキドキしてきた。

 気功波系は最近操気弾の練習をしてるくらいで、大抵は海鈴を使った技に気を回してたからな。

 一応イメージし易いからやり方は大体想像が付く。

 どうせならアニメのなのはの結界破りSLBな感じにしたいな。

 

「結界の強度は出来る限り高めてます

 大抵の攻撃じゃ壊れることはないはずですよ

 月を吹き飛ばしちゃうほどの物だったら、どうにもなりませんけど…」

 

「いやシャマルさん、実際月なんて吹き飛ばせませんから

 現実的な考えで漫画の内容を判断してください」

 

「そ、そうですよね

 けどもしかしたらって思っちゃって…」

 

「そ、そうだな、流石に出来るはずがないな!!」

 

「あ、ああ、あれほどの戦士が存在しないのは残念だが、良く考えればいるはずないな!!」

 

「拓海ならもしかしらと思ってしまった…」

 

「けど、出来たらスゲーよな

 拓海、月ぶっ飛ばすくらいでやっちまえ!!」

 

 ヴィータ以外、信じてしまった事にちょっと恥ずかしがってる。

 だけどリインさん、ちょっと俺の評価高くないですか?

 最近割りと多くスキルを持っているけど、殆ど常識から外れるような物じゃないはずだぞ。

 古代ベルカには衛星吹き飛ばすような魔導師がいたんだろうか?

 

「まあ、ヴィータの言う通り全力でやってやるさ

 ハアアァァァァァ!!!」

 

「おおぉ!! たっくんからホントに炎みたいなオーラが出とる!!

 ホントにドラゴンボールっぽい!!」

 

「ついに出るのだな、かめはめ波が…」

 

「ああ、拓海が出すかめはめ波は一体どれほどの物か」

 

「私、ちょっと緊張してきました」

 

「拓海、お前ならきっと出来る」

 

「あれカッコイイな

 あたしにも出来ねーかな?」

 

 守護騎士が予想以上にドラゴンボールに嵌ってる気がする!?

 というかアニメを思い出す限り、あんたらも似たようなこと出来てなかったか?

 

 とり合えず雑念を捨てて、気を高める事に専念する。

 ハアァァなんて声出さなくても出来るんだけど、ノリでやりたくなってしまった。

 実際に気合も入るから悪くはないんだろうけどね。

 

 この気の高め方は何か強い技を試す時に大抵やっている。

 前に説明した通り、気を体外漏らさない絶をしながら錬をすることで体内の気に圧力をかけて質を向上させると同時に、かめはめ波に使う気を溜める事が出来る。

 その余りで漏れ出した気が炎のように成ってドラゴンボール風のオーラになる。

 実際は出ないほうが完璧なんだけど、絶の技量が上がっても錬の技量も上がるからイタチゴッコで結局漏れる。

 この炎のようなオーラは全力時には結局デフォルトになるらしい。

 

 十二分に溜めれるだけ溜めたらかめはめ波の体勢に入る。

 まず両腕を併せて前に突き出し、掌も半開きで前に向ける。

 

「か~…」

 

 続いて半開きの両手を右下から後ろに回して、前方から隠すようにする。

 同時に体に溜めた気を両手の掌の間に集めていく。

 

「め~…」

 

 そのままの体勢で両手の掌の間に気の弾を更に圧縮しながら作っていく。

 こうすることで弾の貫通力と威力は確実に上がるはずだ。

 

「は~…」

 

 気の圧縮は俺もまだまだ特訓中でどんどん向上している。

 どこまで行くかはわからないけど、圧縮が出来れば威力に際限はなくなると思う。

 そう思いながら掌の気の弾がソフトボールくらいのサイズになるまで気を送り続ける。

 同時にその間も気を高め続ける。

 これが出来なきゃかめはめ波にはならない。

 

「め~…」

 

 かめはめ波はただの放射型に見えるけど、たぶん気の弾をまず生成してからそれを撃ち出す推進力となる気を後から送り込むことで、敵を力尽くで撃ち抜くのだと思う。

 悟飯VSセルのかめはめ波の撃ち合いで後から気を追加して押し込む描写は有名だ。

 

 気の弾は万全、撃ち出す推進用の気も常に気を高めて生み出している。

 準備完了と感じたところで、俺は上空に向けて気の弾を両腕で押し出しながら、気を両手の掌から放射して気の弾を撃ち出した。

 

「波あああぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

-ギュオオオオォォォォォォォ!!!!-

 

 

 予測どおり、気の弾が掌からの気の放射に押し出されてまっすぐ飛んでいった。

 気の弾・・・いや、かめはめ波は真っ直ぐ上に飛んでいって結界の天井まで届く。

 そこで止まることなくかめはめ波は結界の天井を突き破っていった。

 両手の掌からの気の放射も、撃ってから五秒ほどでやめて撃ち終えた。

 

 流石かめはめ波を再現しただけあって結構気を使って疲れたが、気持ちはとてもすっきりしていた。

 唯の真似をするだけでも結構気持ちいいけど、実際に撃てるようになったのがとても気分よかった。

 普通に使う機会なんてまったくないだろうけど、とても満足した。

 気の圧縮や錬の向上で気の力自体上がるから、練習はそれだけやってればかめはめ波ももっと凄くなるだろう。

 基本だけで気は強くなれるから便利で助かる。

 他にもいろいろ何処でも出来る訓練法を考えておくか。

 

「…ホンマに撃てよった」

 

「というか、はやてちゃん信じてなかったの?」

 

「いや、たっくんが気を使えるゆう話は聞いてたけど、実際眼で見たことあらへんかったもん

 やけどまさにかめはめ波やったな~

 ホンマ凄かったわ」

 

「結界は壊れなかったけど突き抜けちゃったわ

 たぶんヴィータちゃんのギガントか、シグナムのファルケンに近い威力だと思う」

 

 へぇ、全力でやったとはいえそれに近いんだ。

 俺の気の力もかなりのものだと、ちょっとだけ自信が持てた。

 

 なのはちゃんのSLBが結界を破壊出来て、結界を突き抜けたけど破壊出来なかった俺のかめはめ波は、たぶん結界破壊の術式が無かったからだろうなと思った。

 多少結界に穴が開くだけなら直ぐ修復出来るんだろうけど、バリアブレイクみたいな対抗術式がアニメではSLBにも込められていたんだろう。

 

「それじゃあたっくん、次は元気玉試してみてくれへん?」

 

「いきなり次の注文か

 まあ、試してみてもいいけど」

 

 結界がまだ残ってるんだから試してみるのも悪くない。

 大気中には魔力素が存在している。

 それを吸収知ることで自身の魔力に変換できる。

 

 同じ様に草木などの生命からから溢れ出す気が大気中にも薄く広く拡散している。

 それを集めるようにすれば元気玉になるんじゃないかな?

 俺の意思でそれを集める事が出来るかわからないけど。

 とり合えず両腕を上に掲げて、元気玉の真似をしてみる。

 

 

 

「…………あ、ごめん無理だわ」

 

「あ、そうなんか

 やっぱりたっくんでも元気玉は無理なんか」

 

「いや、結界内だから他の生命が居ないから気を集められない」

 

「あー、なるほどな」

 

 元気玉に意外な弱点発覚。

 

 

 

 その後はせっかくなので守護騎士達の技の披露会になった。

 とはいっても、補助専門のシャマルさんと現在魔法があまり使えないリインさんは見てるだけになった。

 シグナムさんがレヴァンティンの三形態からの技を見せ、ヴィータがグラーフアイゼンの形状の割に多彩で汎用性ある魔法を使い、ザフィーラが盾の守護獣の名を見せるべく二人の数々の技を受け抜いた。

 その結果にザフィーラも結構な評価がされたが、二人の大技は受けきれないと断念。

 シグナムがボーゲンフォルムからのシュツルムファルケン、ヴィータがギガントフォルムからのギガントシュラークで締めとなった。

 どっちもすごい威力だったけど、迫力の差でヴィータの勝ちとはやてちゃんは判定。

 ヴィータはその結果に勝ち誇り、シグナムさんは少々悔しそうにしていた。

 

 ああ、あと結界が解けた後に試した元気玉だけど、円の範囲内の周囲の気だけは集めることが出来た。

 周囲から集めた気だけあって不思議な感じのする気だったけど、大きさはバレーボールくらいにしかならなかった。

 見た目に関わらずすごい威力というわけでもなさそうで、どうやらたいした力はなさそうだ。

 円の範囲内の制御されてない気だけしか集められないので、あまり威力の向上も期待出来ない。

 地球中の元気を集めるとか、まあ当然無理だろうな。

 もしかしたらどこかで使えるかもしれない程度の、気の収集技としか思えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この日は久々に神社に新しい技の練習をしていた。

 かめはめ波を試すことが出来たのでもうちょっとドラゴンボール系の技から試してみる。

 試してみるのは前にも言った操気弾を基本とした、誘導あるいは自動で追尾する気弾だ。

 魔法的にはなのはちゃんの使ってたディバインシューターみたいな物だ。

 

 始めは操作に苦労するかと考えてたけど、この前覚えた分身の術を応用すれば容易に出来るようになった。

 一つの気弾を作り出して集中しないと操作できないと思ってたけど、式神を作る感じで気弾を作ればある程度自立させて飛んでくれるし、意思を伝えればいつでも操作出来て操る事が出来る半自立性のあるものになった。

 出せる式神の数=操作気弾の数と言う方式も出来上がった。

 

 それで早速操作訓練を行って技を磨くことにした。

 最大数の気弾を維持し続ければ使い慣れて増やせるし、それは同時に式神の操作数を増やせる事を意味する。

 もっとも維持するだけでなく瞬時に作成できるようにしておかないと、戦闘などでは使えないだろう。

 

 戦闘したくないという意思は変わらないけど、使いこなしておけるようにとは考えている。

 斬魔剣も直死の魔眼もちゃんと使えたからこそ緊急時の対応が出来たといえる。

 今後使えるようになった技は即座に使える程度に極めておく事にしている。

 備え在れば憂い無しには違いないからな。

 

 

 

 そういうわけで操作弾の練習に最大数を維持しながら、全弾を林の中に向けて飛ばした。

 木々の隙間に飛ばして当たらないようにしながら潜り抜ける事を繰り返している。

 同時に常に舞空術で宙に浮んでいる。

 舞空術も自然に出来ないと空中戦なんて無理だからな。

 

 操作弾が木に当たる可能性もあったから込めた気はほとんど威力の無いもので、一度林を抜ければ消えてしまうほどに押さえた物だ。

 威力の心配もあるが作成速度も上げる為に、毎回消えては作ってを繰り返している。

 それと木々を速く潜り抜けるようにも気弾に命じている。

 遅い操作弾だと当たらないからな。

 

 

 

 割と一度にいろいろな成果を得られる気弾操作の練習を、今日はシグナムさんとヴィータが見学していた。

 前日にこっちで訓練を行うと言ったら見に来てしまった。

 はやてちゃんや他の守護騎士達もまた来るものかと思ったが、邪魔になるのとはやてちゃんも魔法の練習をリインと一緒に家で行ってるらしい。

 俺がいろいろ訓練しているのに触発されたかな?

 

 そうして見学してたのは別に構わなかったんだけど、偶然とは思えぬタイミングでまた美由希がやってきた。

 何故来たのか聞いてみると、なんとなく俺がここに来ている様な気がしたんだと。

 妙な直感が発達してないか?

 気を感知してきたんならともかく。

 

 俺は今日は気弾の操作練習だから相手する気はなかったけど、見学していた者にシグナムさんがいたのが不味かった。

 美由希の持ち物には何時もの木刀小太刀、シグナムさんの手にははやてちゃんに買ってもらったという竹刀袋があった。

 二人の目が合った瞬間、どうなるかなんとなくわかってしまった。

 ヴィータもシグナムさんの顔を見て呆れ気味にどうなるのか予想出来たようだ。

 

 シグナムさんが竹刀袋から竹刀を出せば、美由希も木刀小太刀を二本取り出して構えた。

 後で聞いてみればシグナムさんは前に会った時から美由希に目をつけてたらしい。

 初めに会った時は皆がいたから遠慮していたらしい。

 この場でも遠慮して欲しかったが、もう止めても止まらないだろうと諦めた。

 とりあえず周りに気を配ってやれとだけ言って放っておく。

 

 ヴィータにもし周りに被害が出そうになったら結界を頼むと言っておいた。

 美由希は気は使えるけど魔力はないから、結界に取り込む際は注意してくれとも言っておいた。

 魔法の使えないやつの前で魔法使っていいのかと聞かれたけど、美由希なら別に問題ないだろう。

 気が使えてる時点で一般人じゃないし、俺の式神も知ってるんだし気にするほどではない。

 

「確か高町美由希だったな

 手合わせ願おうか」

 

「なんとなく剣士だなーって感じがしてたんですよ

 もしかしたらたっくんの剣の先生かなって」

 

「そういうわけではない

 一度手合わせした程度だ

 もっとも拓海が望むなら剣の指南も吝(やぶさ)かではないが…」

 

「気に入ってるんですね、たっくんの事

 私もたっくんのとの手合わせが結構楽しいんですよ

 手段選ばない戦い方もするけど、正攻法でも結構強いし

 ちょっと意地悪だけど」

 

「ふっ、そうか

 拓海とよく剣を交えるというお前との手合わせも楽しみだ」

 

 そしてシグナムさんと美由希がお互いに名乗りあう。

 

「八神はやてが騎士、シグナム」

 

「永全不動八門一派・御神真刀流、高町美由希」

 

『参る!!』

 

 同時に駆け出しお互いの模擬刀がぶつかりあう。

 まだお互い相手の見極め段階だろうが、俺からみてもかなり早い殺陣。

 俺にはついていけないとは言わないけど、多少剣術を収めたおかげか一閃の鋭さが違うように見えた。

 やっぱり修練した時間が違うからなのだろう、力技の剣が多い俺とは違う感じがした。

 戦いたいとは積極的には思わないのに、あれくらい出来るようになりたいと思うのはどうなんだろう。

 

 今の俺には見てるだけで何かを学べるほどの経験を持ってないし、一応操作気弾の訓練中だったので視線を気弾の方に戻す。

 もう少し俺も剣術の腕を上げたいなと思い、また今度二人との手合わせを受けてみるかなと考えた。

 まあ純粋に気や魔法を使わないなら剣術の練習になるだろう。

 

「そういうわけだから、ヴィータ

 二人のことは任せたぞ」

 

「まかせんなよ!!

 あれをあたし一人で止めろってのか?

 魔法使えばともかく口で言って止まるやつじゃないぜ、シグナムは」

 

「まあ、どうにかなるんじゃない?」

 

 話して止まるとは思ってないからもう投げやりに諦めて、こっちの訓練を再開する。

 ヴィータが何か言ってるが俺にもどうすることも出来ないんだから無視する。

 他にも模擬刀同士がぶつかりあう音が聞こえるか、もう気にせずに操作気弾について考える。

 

 良く考えたら操作気弾を何度も作成して生成速度上げるのはいいけど、威力が弱い分気をそれほど込めなくていいから、このままじゃダメなんじゃないかと考え直した。

 なので十分な威力になる操作気弾を作ってみると数秒もかけてしまった。

 これでは使えないと思い、最大数を維持しながら一個を残して林抜けを行う。

 残した一個は気を無駄にしないように体に吸収し直し、再び作成を繰り返して使える操作気弾の生成速度を上げることに専念する。

 

 一個の生成速度が十分になったら、二個三個と一度に作る数も増やしていこう。

 一度に作成出来なきゃ包囲攻撃とかも即座に出来ないもんな。

 分身の応用で全てうまくいくと思ったら、実際に使うときの事を考えると問題がどんどん出てくる。

 そう簡単には何でもうまくいくって訳じゃないかー。

 

 

 

 

 

 操作気弾を実際使用したときの事を考えながら練習をして、ゆっくりだけど着実に操作性も生成速度も向上している。

 何度も思うが【能力】の成果をすごいなと思っていたら、強い魔力の立ち昇りを感じてしまった。

 嫌な予感をなんとなく想像してそちらを見てみると、シグナムさんから魔力が炎熱変換によって炎として立ち昇り、それを見た美由希が警戒して気が高まっていく。

 

「想像以上の速さと手数だ

 これは本気で侮れんな」

 

「し、シグナムさんから炎のようなオーラが見える!!

 これは本気の一撃が来るってことね」

 

 訂正、美由希はシグナムさんの炎を自分の感じた威圧感が見せていると勘違いしてる。

 ほんとに炎が出てるんだよ!!

 出してるほうも自分が魔力を炎にしてるのが無意識だったのか気づいていない。

 戦いになったら手に負えないって、まさに本物だな。

 

「(美由希から感じる威圧感が更に強まった

 この感じは拓海と同じ気の力だろう

 本気で来るという事か

 ならば出し惜しみはせん)」

 

 シグナムさんが無意識に出していた炎の魔力が蠢いて、手に持っていた竹刀に集まっていく。

 って、まさか紫電一閃やるのか!?

 カートリッジがないし竹刀だから、俺の時より威力は低くても更に高まる魔力を感じる限り普通の威力じゃない。

 もう無意識とか言うレベルじゃなくて本気で魔力使ってる。

 

「(炎のオーラが竹刀に集まった!?

 もしかしてあれって拓海君が使う炎気ってやつ?

 気の力は感じないのに

 だけど普通の攻撃じゃないってのはシグナムさんからの威圧感で判る

 なら私も本気で迎え撃たなきゃ)」

 

 美由希もシグナムさんの魔力の向上に合わせて気が高まっていく。

 お互いのぶつかり合いで力が向上するって話はあるけど、状況は悪循環だ。

 

 ここは普通の神社なんだよ。

 人が来る気配がないか常に気を配ってるけど、こんな力でぶつかり合ったら大きな音と周りに被害が出る。

 二人とも場所と状況を考えなくなってる。

 止めるのは無理でも早く結界を!!

 

「ヴィータ、早く結界!!」

 

「おう!!

 何やってんだよ、あいつらはよぉ!!」

 

「行くぞ、美由希!! 紫電一閃!!!」

 

「迎え撃つ!!」(御神流、雷徹)

 

 

-ガアアアァァァァァン!!!!-

 

 

 二人がぶつかりあう直前にヴィータが何とか結界を張って周囲の被害を無くすが出来た。

 間一髪だった。

 

 そしてぶつかりあった二人はというと…

 

「……!! しまった!?

 主はやてに買っていただいた竹刀が!!」

 

「アチャチャチャチャチャ!!

 小太刀が折れて燃えたぁ!!」

 

 相打ちになったらしい。

 これは俺も流石に説教せにゃならんな。

 

 

 

 反論を許さずに今回は俺がシグナムさんと美由希をその場に正座させる。

 俺の横にはヴィータがいて流石文句を言いたげな顔をしている。

 

「た、たっくん、ここ石畳の上なんだけど…」

 

「反省せねばならんのは分かるが、せめて家のほうで…」

 

「黙れ、このバトルジャンキーども!!

 もうちょっと加減というものを覚えろ!!」

 

「お前ら馬鹿じゃねえのか!!

 あたしが結界張らなかったらどうするつもりだったんだよ!!」

 

「め、面目無い…」

 

「あれ、そういえば周りの風景が…

 これどうなってるの?」

 

「シャラップだ!!」

 

「アウッ!?」

 

「み、美由希!?」

 

 先ほどから練習で出して上空浮ばせたままの操作気弾を、美由希の頭に一発叩き込む。

 拳骨程度の威力に抑えてあるが、美由希は気弾の直撃によって強制的に土下座体勢になる。

 そのような事になった美由希にシグナムさんが驚きの声を上げる。

 

「事情は後で説明してやるがまずは説教だ

 黙って聞け!!」

 

「わ、わかった…」

 

「ぼ、暴力反対…」

 

「お前が言う資格はないわ!!」

 

「フギャ!!」

 

「待て拓海、せめてそれくらいでカッ!?」

 

 バカな反論をした美由希に更に一発落とし、美由希を庇おうとしたシグナムさんにも遠慮なく一発叩き込む。

 俺は少々切れているのか二人に対してかなり強気だ。

 減った分の操作気弾を追加で生成して上に浮ばせる。

 せっかくだから操作気弾の練習台にしてくれる。

 

「口答えは許さん

 今は反省の時間

 反省以外のことは出来ると思うな!!」

 

「「は、はい…」」

 

 その後は暴走した二人の起こしかけた被害や日頃のさまざまな文句をヴィータと共にしつこく言い続け、時にバカな反論をしたりすれば容赦なく操作気弾を頭の上に叩き込んでいった。

 気や魔力で防御したらグラーフアイゼンが唸ると言って、ヴィータがセットアップした所を美由希が尋ねたところも操作気弾を叩き込んだ。

 実際シグナムさんがとっさに魔法で防御してしまったところに、グラーフアイゼンが叩き込まれた。

 美由希が我慢出来なくなって逃げ出そうとした時には、操作気弾で包囲して集中砲火してやった。

 おかげで操作気弾の相手を傷つけない手加減を出来るようになってしまった。

 それだけは美由希とシグナムさんに感謝だ。

 

 ある程度説教と操作気弾を撃ち込みまくって満足したら、開放してやると石畳の固さに足が痺れていて、ヴィータと一緒に突きまくって俺たちの最後の罰を与えてやった。

 だけどそれは最後の俺たちの罰で、すべてはまだ終わっていない。

 はやてちゃんにはヴィータから今回のことを伝え、美由希にはなのはちゃんからいろいろやらかした事を家族に伝えるように頼んでおいた。

 

 どうなったかは後は知らない。

 二人とも剣を鍛えるより、自制心を鍛えるべきなんだ。

 

 

 

 

 

●かめはめ波を成功、類似技も恐らく使用可能

●元気玉、微妙な威力で作成可能

●操作気弾、分身の数と同じで作成可能。 あらゆる面で能力向上中


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