【更新停止】転生して喜んでたけど原作キャラに出会って絶望した。…けど割と平凡に生きてます   作:ルルイ

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第十一話 戦う力よりも楽しむ力がほしいな

 

 

 

 

 

 ぽかぽかした春が過ぎて、日差しの強い夏に入った。

 海鳴市も連日35度越えの日々が続いていた。

 

 今日も八束神社にて俺は久遠を抱いていて、一緒に那美姉さんの仕事を眺めていた。

 

「日差しが強いな、久遠。」

 

「クォン。」

 

「那美姉さん暑そうだな、久遠。」

 

「クォン。」

 

「ここは涼しいだろう、久遠。」

 

「クォン♪」

 

 こんな時のために使えるようになった気の冷気化。

 威力を強めれば一瞬で水を凍らせられるが、加減をして纏えばクーラー要らずの快適空間を維持できる。

 抱えている久遠も包むように冷気を纏っているので涼しそうだ。

 ただし那美姉さんは仕事のために日差しの下でがんばっている。

 

「那美姉さん、お仕事がんばってー。」

 

「クーー。」

 

「うぅ・・・・・・拓海くんずるい~。」

 

 ずるくないです。

 こんな日の為に開発した能力なんだから、文句言われる筋合いはありません。

 

「ううぅ~・・・・・・もう我慢できない!!

 拓海くん私もー!!」

 

 あんまり煽り過ぎて那美姉さんが我慢できず俺に抱きついてきちゃった。

 役得とは言わん、汗をかいて体温が上がっているので暑苦しいです。

 

「那美姉さん暑苦しいです。」

 

「クゥン・・・」

 

「あー、拓海くん冷たくて気持ちー。」

 

 那美姉さんが仕事にならないそうなので、冷気を使って円を神社一帯に広げてみました。

 円は薄く気を延ばすから高い威力は出ないけど、周囲の気温を下げるのにはちょうどいい力加減になった。

 翌日から仕事の時は那美姉さんに頼まれて、神社に冷気の円を張るように頼まれました。

 我ながら便利な能力を開発したものだと思った。

 

 

 

 

 

「久遠、お前どうやって人の姿に化けたり出来るんだ?」

 

「クー?(コテンッ)」

 

「わかんないのか?」

 

「クォン。(コクコク)」

 

「そっかー・・・。」

 

 俺は久遠と向き合って話をしていた。

 といっても久遠は喋れないので俺が一方的に話しかけて、久遠は仕草で応えるだけだが。

 そこへ那美姉さんがやってきた。

 

「久遠と何を話してるの?」

 

「久遠がどうやって化けてるのか知りたくって。

 それがわかったら逆に俺が久遠みたいな狐の姿に化けれるかもしれないでしょ。」

 

「拓海君ならほんとに出来ちゃいそうね・・・。」

 

 がんばれば出来ると思うな、能力的に。

 ユーノみたいな動物への変身魔法ってのもそういえばあったな。

 気や霊力でも術式がなきゃ出来なさそうだし。

 

 NARUTOの忍術みたいに変化や分身の術って気で出来ないだろうか・・・

 まあ、印を組んだところで出来るとは思えないけど、ネギまの分身は術を使ってた感じはしなかったな。

 気で擬似的な肉体を別に作るとか?

 んー・・・・・・やっぱ術がないと無理っぽいな。

 出来そうなのは頑張れば出来るって感じ出し、出来ないのは無理だってなんとなく分かるし。

 

 変化から分身に話がそれたけど、動物への変身ってちょっと楽しそうだろ。

 犬や猫でもいいからその視点でのんびりしてる感じを味わいたい。

 

「まあ久遠が化けるのはほんとに感覚的にやってるみたいだから、それだけじゃ俺も覚えられないよ。

 久遠みたいな狐の姿に化けるってのはちょっと面白そうだったんだけどな~。」

 

「拓海君ならいつか出来るようになりそうだな~。」

 

「久遠、もし出来るようになったら一緒にお昼寝しような。」

 

「クォン!!」

 

 また一つ不思議な力を使った夢が出来た。

 

 

 

 

 

「那美姉さん、ちょっとこれ見てくれない?」

 

「なにかな?」

 

「クゥ?」

 

 見せたのは俺が前々から作っているネタ魔法陣の書かれた画用紙。

 

「太極図に五行の相関図が書き込まれてるけど・・・

 他にもいろいろ字が書かれてるけど、これがどうかしたの?」

 

「俺が考えて作った魔法陣。

 これでいろんな魔法を使えるようになることが俺の目標なんだ。

 ちょっと見てて。」

 

 地面に魔法陣を敷いて更に魔力を込めてみる。

 すると魔法陣の図形と文字が魔力光を放つ。

 

「んーと、何をしようかな。

 とりあえず火でいいか。『火行、灯火』!!」

 

 呪文自体は適当だが魔法陣の五行のうちの一つ、火行の力を出すような意味を込めて唱える。

 気と同じで魔力も意思を汲み取って、力に変えることが出来るらしい。

 その際呪文などのように何でもいいので意味を含めた言葉を唱えるとよりしっかりと力が篭る。

 言霊というやつだろう。

 

 魔法陣に込められた魔力が言葉と陣に力の方向性を決められて、陣の中心に小さな明かり程度の灯が灯る。

 

「まだこういうのしか出来ないんだけど、いつかもっとすごい術を使えるようになりたいんだ。

 那美姉さんって術式とかの組み方について何か知らない?」

 

「えっと、拓海君魔力も使えたの?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「クゥン?」

 

 そういえば、気の事は教えたけど魔力については教えてなかったっけ?

 魔力は魔力素吸収と全力放出の訓練くらいしかしてなかったからあまり意識してなかったからな。

 魔法陣を使って火とか出せれるようになったの、ついこの前だったし。

 

 魔法陣や術式については那美姉さんはあまり知らないそうで情報を得られなかった。

 実家のほうなら何か分かるかもしれないといわれたけど、そこまでするほど重要なことでもないので迷惑はかけられないと遠慮しておいた。

 

 

 

 ある日、那美姉さんに誘われて自分の住んでる寮に連れてきてもらった。

 住んでる寮の名前がさざなみ寮と聞いて、とらハシリーズの舞台の一つかと思い出した。

 

 住んでいる人たちを紹介してもらうと、病院でお世話になったフィリス先生の姉のリスティさんという人がいた。

 その繋がりで那美姉さんを紹介されたのかと思い、やっぱりあの人もとらハのキャラの一人かと確信した。

 リスティの話でこの寮の半数の人が異能や怪異に関わったりしてたりする人ばかりだと教えられる。

 後は異能の暴露大会とケモノ耳が生えたり羽が生えたりとまさにカオスだった。

 

 この女子寮の管理人が男の人で、この人が主人公かとすぐに分かった。

 既に結婚しているそうで奥さんと一緒に住んでいるが、住んでいるのは結婚前からだろう。

 年頃の女性と仮にも一緒に住んでいるんだからと「皆さん愛人さんですか?」と冗談で言ったら、管理人さんは面白いほど狼狽して、奥さんは涼しい顔をしていた。

 正確には涼しいというより寒さを感じて管理人さんに迫っていき、管理人さんの狼狽っぷりはひどくなる一方だった。

 

 ただ何人かが俺の冗談に何人か満更ではない表情をしていたのを俺は見た。

 修羅場は近い、あるいは日頃から昼ドラ的展開になっているのだろうか?

 とりあえず那美姉さんに気をつけてと言っておいたが、なんだか分かっていない様子だった。

 やっぱりこの人天然だろう。

 

 

 

 常識からだんだん外れつつあるが、割と平凡な日々を送っていた。

 声帯模写みたいな思いついた技能は異能であるなしに限らず練習して習得して、気は舞空術を使える前と同じ基礎訓練をし、魔力は魔法陣の試行錯誤を続けつつ基礎訓練、霊力はソーサーの操作と展開数を増やしていき、栄光の手っぽいのを作れるようになった。

 

 当たり前のように続く平凡な日々が続きまた一年が過ぎ去っていき、また桜の季節が来た。

 そういえばなのはちゃんが魔法少女になるのは春じゃなかっただろうか?

 正確な時間は覚えてないけど、魔法少女になるのは三年生だったはずだ。

 今は俺が三年生でなのはちゃんは二年生になったはずだ。

 

 学校は同じでも学年が違うから接触する機会は殆どない。

 接触しようとも避けようとも思ってないから、気づいたらすれ違っていたりする時もあった。

 向こうも気づいていないようだから、以前の公園のことは本当に忘れてしまってるんだろう。

 

 原作・・・・・・いや、あえてジュエルシードの件と言うが、関わろうかどうかまだ決心していない。

 放っておいたらなのはちゃんが解決してくれるのだから、下手に手を出さないほうがいいのではとも考える。

 だが実際小学三年生の子供に物事を押し付けるのはどうだろうかと思う。

 原作キャラとの接触なんて既に興味はない。

 

 ただ平凡で割と不思議のあるこの生活を護るために手を貸すべきかとも思っている。

 まあまだ一年ほどの時間はある。

 今の自分が、そしてこれからの自分が何が出来るようになるか考えて、それが分かってからでも十分だろう。

 

 

 

 そう思っていたが、割と身近にあった騒動の種がもうすぐ芽吹きそうになっていたのを俺は知らなかった。

 

 

 

 

 

●円の応用を思いついた(冷気クーラー)。

●魔法陣が少しだけ使えるようになった。

●(似せ)栄光の手を使えるようになった。

●さまざまな隠し芸技を覚えた。


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