魔法少女リリカルなのは~FORTUNE LINKAGE~   作:桐谷立夏

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五話です、ここから少し更新のペースが落ちるかもです。


第五話~フェイト~

「っと危ない」

「なんだかややこしい事になってきましたね」

 人に見付かる寸前に転移出来たからぎりぎりバレていないだろう、なんとか海鳴市の方に跳べたらしく山の上にある公園に転移できていたようだ。

 もしかしたら転移したときギリギリ見られていたかも知れないが、その時はその時だ。

「説得できるかな、フェイトとアルフ、それとあの人を」

「りっくんならできるって」

「ああ、そうだな……あれ?」

 聞こえてきた声に違和感を覚えて振り返ると、そこにはアリシアが浮いていた。あまりの予想外の出来事に放心する。

 彼女はあの場所のように裸ではな水色のワンピースのような服を着ていて、髪をツーサイドアップに結っていた。

「あれ、どうしたの?」

「いやいやいやいや、どうしたのじゃないだろ。なんでここにいるんだ!?」

「……どうしてだろ?」

 手を握ろうとして手を伸ばすと彼女も手を伸ばした、やや小さな手だが温かく触れられる。

 アリシア本人もどうしてこうなっているのか理解していない様子だ。

「どーしたのマスター」

「独り言なんて珍しいですね」

「お前ら見えてないのか?」

「なにが~?」

 デバイスたちには彼女を認識できていない、となると見えているのは立夏だけ。傍から見れば独り言をいっている少し痛い子に見えるだろう。

 とりあえずクラウたちに今の状況説明をする。

「興味深い現象です」

「凄い凄い、これでお化けも居るって証明されたね」

「呑気な……」

「私は大丈夫だよ、とにかくりっくんと話すときは誰もいな所でしたほうがよさそうだね」

「そうだなぁ」

 りっくんと呼ばれることに反論しようかと思ったがこれはこれで愛称としていいだろうと自分に納得させ、とにかく今後はアリシアと話す時は誰もいない所でしようと真面目に思った。

「とりあえず帰って寝るかな、疲れた」

「りっくんの家かあ、楽しみかも」

 

 

「ただいま~」

 夕方、高町家になのはが帰宅した。中からは返事はなく靴を脱いで二階に上がり、部屋に入るとベッドには立夏が寝ていた。

「立夏くん?」

「今は疲れて寝てます」

「クラウ、ソラスもお疲れ様」

「ナノハもお疲れ様~」

 机の上に置いてあったクラウとソラスが返事をした、本当に疲れているらしく多少揺すっても起きない。

 にしても会ったときから本当によく寝る子だなぁと新ためて思う。

 立夏は何も用事がないときは大抵寝ている気がする。

「ユーノさんは捜索に出ました」

「うん、知ってる。レイジングハートさっき預かったから、私も行かなきゃ」

 リュックを置いて部屋を出ようとすると、立夏が目を覚ました

「……なのは?」

「あ、起こしちゃった?」

「ううん、俺も行くよ」

 立夏はアリシアを連れ家に帰ってすぐに眠ってしまった、何せ最近朝の鍛錬でかなり疲れていた。

「休んでなくて平気?」

「うん、じゃあ行こう」

 ベッドから降りてクラウ・ソラスを身に着け、先に出たなのはを追った。

 二人で歩くこと数十分、沿岸部付近にあるコンテナ置き場にたどり着いた、そこには一つのジュエルシードがあるように見えている。

(まずいなぁ、あれ確か)

(ナンバーⅦは私たちが持ってますから、あれはマスターが作った幻影ですね)

 立夏は隠蔽魔法で姿を隠し、コンテナの上から下でフェイトと対峙しているなのはを見守っていた、少し離れた所にはアルフも見える。

「クラウ、ブレイクフォルム」

 漆黒のバリアジャケットを纏い、腰には以前のようにベルトは無く両腕には肘まである白銀色の手甲、両足にも脚甲が装着してある。

 今はすぐに動けるように用意を進めていると、隣でアリシアが心配そうな表情を浮かべていた。

「フェイト……」

「大丈夫だよアリシア」

 側に寄りそっていた彼女の頭を撫でて安心させる。

 やっぱり妹のことは心配らしい。

「マスター」

「なっ」

 クラウが何かに反応した瞬間、なのはとフェイトは同時に動き出した、アルフも動く気配は無い。

 だが、

「そこまでだ」

「っ!」

「えっ!?」

 突如二人の間に黒衣のバリアジャケットを纏った少年が割って入り、なのはとフェイトは拘束魔法を掛けられる。

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ」

「やっぱり介入してきたか」

 次元世界の法を司り遺失物を管理する時空管理局。遅かれ早かれ彼らが介入してくることはわかっていたがまさかこのタイミングとは思わなかった。

 しかし今動けば状況がややこしくなるだけ、彼がどう動くかそのまま見ていると。

「さて、事情を聞かせてもらおうか」

 突如オレンジ色の魔力弾がクロノを襲うが、瞬時に防御魔法陣を展開して防ぐ。

 素晴らしい状況判断力だ、不意打ちを防ぐとは相当クロノという少年はできる。

「フェイト、撤退するよ」

 有無を言わさずにアルフはクロノに向けて魔法を放つ、彼が弾雨を防いでいる間にフェイトの拘束魔法が解け、ジュエルシードを取りに走った。

 しかし届く寸前のところで青い魔力弾が彼女を直撃し、その衝撃で吹き飛ばされる。

「フェイトっ!」

 魔力弾を射ち止めてアルフがフェイトを抱きかかえる、爆風が晴れるとクロノがデバイスを二人に向けていた。

「ダメ! 撃っちゃだめ!」

「……」

 なのはの制止も聞かずクロノは撃った、自分の仕事を全うするために。

 だがそれは二人に届かなかった。

「危なかった」

「立夏……」

 二人の前で防御魔法を立夏が張り砲撃を防いでいた、さすがの出来事にアルフとフェイトは驚いているようにも見える。

「早く退いて」

「……ありがとう」

 フェイトを抱え直してアルフは思いっきり地面を蹴る、彼女らを逃がすまいとクロノは杖を空中へ向けるがその間に立夏が割って入る。

「撃たせないぞ」

「邪魔をしないでくれないか?」

「断わる」

 フェイト達に撃とうとしていた射砲撃を立夏に放つ、それを大ぶりのパンチで相殺してクロノへ近づく。

「なっ!?」

「はあ!!」

 間合いを一瞬で詰め中段蹴りを放つ。しかし流石管理局員というところか杖で防ぎ直撃は裂けた。

「これでさっきの砲撃はチャラでいいよ」

「僕は公務の妨害をされたわけなんだけど」

「俺は知り合いが襲われてたのを助けただけなんだけど?」

 彼と距離を開けて少し皮肉を込めて言い、しばらく睨みあうとクロノに通信が入った

「クロノ執務官お疲れ様」

「すみません艦長、片方逃がしました」

 現れたディスプレイには明るい緑色の髪をした女性が映っていた、どうやら地球に来ている次元航行艦の艦長らしい。

 艦船まで出しているということは今回の任務、ジュエルシードの件はかなり大事になってきているようだ。

(マスター、さすがに連れて行かれるのはまずいんじゃない? こっちの事情もあるし)

(そうだな、なのはとユーノには悪いけどここは離脱しよう。それにあのハラオウンだったら俺のことも知ってる可能性が高い)

 なのはに目配りをして、ごめんと口に出さず言って立夏はミッド式を展開する。

「立夏くん?」

「おい君!!」

「任意同行は拒否させてもらう、ごめんな執務官どの」

 高速移動魔法を発動させ立夏は工場地帯から離脱し、途中から空を飛んで隣の遠見市まで一気に離れた。

 数分ほど飛んで薄暗い路地に降り索敵魔法を使う。幸いクロノが追いかけてきている気配もない、まあ向こうからすれば話を聞くのになのはとユーノが居るだけで十分なのだ。

「りっくん、大丈夫?」

「大丈夫だよ、それより移動中怖くなかった?」

 立夏と父で独自に開発した高速魔法『アクセルムーブ』は身体に魔力負荷を掛け、それを外に放出することによって加速する魔法だ。

 アリシアには腰に抱きついていてもらっていたのだが、あの速度で移動するのは慣れていないとかなり怖い。

 実際慣れるまでかなり怖かった思い出がある。

「大丈夫だったよ、むしろ楽しかったかも」

「凄いね~、アリシアはアクセルの素質あるかも」

 呑気に話すソラスとアリシア、確かにあの速度が大丈夫ならアクセルムーブが使えるかもしれない。彼女がポッドから出てきたときには教えてあげようと、

「ってんな呑気なこと考えてる場合じゃない、これからどうするかな」

 今の状況を改めて考えると公務執行妨害をして逃げてきたようなものだ、これからどうするか全く考えずクロノを蹴ってしまった。

「家に帰るのはどうですか?」

「局の手が回ってる可能性があるしな~」

「なんかそう言うと管理局が悪の組織みたい」

 とにかく立ち止まっているわけにもいかず表に出ようとすると一つの影が路地に降り立つ、咄嗟のことで構えを取ると。

「ちょ、ちょっと待った。あたしだよ」

「アルフ? どうしてこんなところに」

 よく見ると彼女だった、構えを解いて横を見るとアリシアは何も言わずこの状況を静観している。

「あそこにはサーチャーを置いてあってね、見たらあんたがあの局員を蹴飛ばして逃げたのを見てこっちに来るんじゃないかと見張ってたのさ」

 立夏がクロノを蹴飛ばしたシーンを見てこっちに逃げてくることを予想していたようだ、これも獣のカンだろうか。

「で、何か用?」

「あんたには助けてもらったから、少しはあたしたちも助けようと思ってね。とにかく付いてきなよ」

 と、アルフに言われるがまま彼女の後を着いて行くことにした。

 数分歩くとついこの前次元転移を行った高層マンションの一室に入れてもらう、ここがフェイト達の隠れ家のようだ。

 靴を脱いで上がり中に入る。

「お邪魔します」

(ここがフェイトの家……)

 アリシアが周りを見ながら入っていく、妹がどういう生活をしているか気になっている様子だ。

「フェイト、無茶しちゃ駄目だよ!!」

 丁度リビングから繋がる階段をフェイトが降りてきてアルフが駆け寄った、片腕に包帯を巻きかなり辛そうにしている。

 あの射撃魔法の直撃を受けたのがかなり身体へ影響が出ているみたいだ。

「ごめんね立夏……」

「気にするなよ、俺が独断で動いたんだ。それと無茶するな」

「うん」

 アルフに抱えられてベットに戻る、とりあえず彼女が戻るまでの間ソファーで待たせてもらう。

「ごめんね待たせて」

「ううん、それよりフェイトは大丈夫なのか?」

 アリシアが隣でかなり心配そうにしていたので容体を聞いてみる。

「一応は大丈夫だよ」

「よかった……」

 特に傷が大きくないようで安心するアリシア、これには立夏も安心した。

「それよりこれからどうするんだい」

「なのはたちと連絡が取れるのが一番なんだけどな、今は管理局の艦船の中だろうし迂闊に連絡ができないし」

 仮に通信ができたとしても会話の内容を傍受されるのはよろしくない。

「それならしばらく家に居なよ。二、三日くらいならだけど」

「そうですね、私もその案には賛成です」

「今はここで待機していた方がいいよ」

 デバイスたちもアルフの案には賛成のようだ、それに今は寝泊まりする場所も無いしこの申し出を断る理由も無かった。

「じゃあお言葉に甘えさせてもらうよ、じゃあ世話になるついでに夕飯でも作るかな」

「べ、別にいいよ。一応お客様なんだから」

 お客様だからだよ、とアルフをソファーに座らせてキッチンに入る。

 冷蔵庫を開けて材料をパッと見てそのまま適当に中身を取り出し、そのまま調理に取り掛かった。

「ふう、ご馳走様。美味しかったよ」

「口に合ってなによりだ」

 夕食を作り終えてアルフには先に食べてもらった、かなり空腹だったらしくお代わりまで所望され立夏の分まで食べてしまったからだ。

 今はキッチンで自分の分とフェイトの分を余っていた食材でまた調理中である。

 食べ終えたアルフはそのまま風呂に入るとリビングを後にした。

「ねえねえ、これはなにつくってるの?」

 ふとアリシアが質問をしてきた。

「チャーハンって言う炒めご飯の一種だよ、よし完成」

「美味しそう、いいなぁ」

 食べれるのが羨ましそうに見る、あのポッドに入ってからは食事もしていないのだから当たり前だろう。

 確かに見ているだけで食べれないのはちょっと可哀そうだ。

「今度作ってやるから」

「やった、ありがとう!」

 絶対にあそこから出てきたらアリシアに作ってやろうと立夏は思った。

 皿に二人分の盛りつけをして先に洗い物を済ませ、スプーンを出してフェイトの居る二階へ向かう。

「フェイト起きれるか?」

「うん」

 ベッドで寝ていた彼女を起こし、テーブルに皿を置いて近くにあった椅子に座る。

「食べれる?」

「大丈夫だよ、ありがとう」

 スプーンを手に取り一口食べると、余程美味しかったのかまた一口と食べ続けた。

 その様子を見て立夏も食べ始める、やっぱり作った料理を美味しく食べてもらえるのは嬉しい。母から料理を教わった甲斐があったというものだ。

 それから食べ終えて食器を片づけた後、再びフェイトの居る所へ上がる。

「美味しかった、ありがとう立夏」

「おう、それより傷痛むか?」

「ちょっとだけ、でも動けないほどじゃないから」

「そうか」

 それだけ話して会話が途切れる、何を話そうか考えているとフェイトがくすっと笑う。

「な、なんだよ」

「ううん、何を話そうか考えてくれてたんだよね? 視線があっちこっちしてたからそれがおかしくて」

 くすくすと笑うフェイトの表情は初めて見た、今思うと彼女と会う時は大体無表情なことが多かったが、たまに見せる笑顔は凄く眩しい。

 しかしこれほど長く笑っているフェイトが見れてなぜか嬉しかった。

「フェイトも笑ってる時の表情の方が可愛いな」

「っ……そ、そう?」

「うん」

 立夏がそう言うと、顔を真っ赤にして横を向くフェイト。

 なにか悪いことを言っただろうか?

「りっくん、今の素で言ったの?」

「なにがさ」

「……天然なのかジゴロなのか、怖いね」

「マスターの女ったらし」

「女性の敵ですね」

「?」

 なにか悪いことを言っていない筈なのにアリシアたちからは酷い言われようだ、思ったことをフェイトに言っただけなのにどうしてだろう?

 この疑問が解決するのはまた数年後である。

「ふぁ……ん」

 フェイトが欠伸を堪える、お腹もいっぱいになって眠くなったのだろうか。

「眠いなら寝ちゃった方がいいぞ」

「うん、そうする」

 シーツに潜り寝そべる様子を見て立夏は椅子から立ち上がり下に降りようとすると、

「あっ……」

「ん、どうした?」

 いきなりフェイトに手を掴まれた。

「あの、ええと……」

 スタンドライトに照らされ、頬を紅潮させなにかを言おうとしながらこっちを見上げるフェイトの姿に、不覚にもどきっとしてしまった。

 そこで一瞬、なのはと同じようにこの光景が脳内に過った。

 いったい自分の体になにがおきているのだろう、なのはやフェイトに会うのは初めてなのに前にも会ったことのあるこの感覚は。

「立夏?」

「お、おう。なんだ?」

 ぼーっとしていたらしく、フェイトが目の前まで起きて近づいてきたことにまったく気がつかなかった。

「あの、眠るまで手を握ってもらってもいい……かな」

「…………う、うん」

 そんな上目使いで言われて断われるわけなかった。

 椅子に再び座るとすぐにフェイトはシーツの中に入って立夏の手を握る、女の子の手は柔らかくてなんだか気持いい。

「立夏の手温かい」

「そうか?」

「うん……」

 気持ち良さそうにして数分、規則正しい寝息が聞こえ始めた。

 スタンドライトを消して立ち上がろうとするとフェイトの手がギュッと掴んで離さなかった。

「え、マジ?」

「諦めた方がよさそうだね、ふわぁ~……」

 空中でふわふわしながら苦笑いするアリシア、彼女も眠くなってきたのか欠伸をする。

「わたしも寝よっかな、りっくん手握らせて?」

「姉妹揃って……しょうがないな」

 空いていた手で頭を掻きアリシアの手を握る、するとフェイトの隣に寝そべりすぐ眠りについた。

 こうしてみるとフェイトの方がお姉さんに見えるとは本人に言わないほうがいいのだろう。

「これどうするかな」

「どうしたんだい?」

 アルフが階段から上がって来て、この現状を見て珍しそうな表情をした。

「ふ~ん、フェイトにずいぶん懐かれてるみたいだね」

「そ、そうなのか?」

「うん、とりあえず朝まで我慢してあげて」

 と、タオルケットを持ってくると言って一階に戻っていった。

 しかしこの状況で立夏はどう寝ようかと思わずには居られなかった、以前温泉に泊まりに言った時にもなのはが布団に潜り込んできたことがあったが、あの時は一緒に寝る形でなんとかなった。

 しかし今回は一緒に寝る訳にもいかない。

「弱ったなぁ」

「マスターマスター」

 二人を起こさないよう小さな声でソラスが話しかけてくる、なぜか嫌な予感しかしない。

「その1、一緒に寝る。その2、やっぱり一緒に寝る、そのさ」

「ないからないから」

「え~、つまんないの」

 本当にデバイスなんだろうかと思うくらいフレンドリーなデバイスだ、友達みたいに話せるのは楽だがこういうノリをされても困る。

 とりあえずはこの姉妹に手を握られながら寝ようと努力を始めた。

 そして翌朝。

「ふわ……」

 日が昇り始めたころに目を覚ました、この頃朝練が日課になってきていたせいかかなり早起きの習慣が身に着いている。

 しかし起きたのはいいが昨日寝たときの状況と視界が異なる、座ったまま寝た筈だが何故か体勢は仰向けの状態だ。そしてこう身体が柔らかい何かに抱きしめられているこの感触、なにか嫌な予感がして横を見るとフェイトの顔が目の前にあった。

 正確には抱きしめられていた。

「なん、だと」

 どうしてベッドで寝ているのか激しく疑問になったが、今はそんなことよりこの状況をどう脱出するかだ。アリシアは何故か空中でふわふわしながら寝ていて、実に器用だというか彼女しかこんなことできない。

 とりあえず現実逃避は終了してフェイトの腕をそっと剥がすのを試みる、幸い右腕は外れ次は左腕へチャレンジ。

 そのまま起き上がり、なんとか腕を外してベッドから降りて1階に向かう。

「はぁ……無駄に朝から疲れた」

「おはよう立夏」

 アルフがパンを食べながら周囲にディスプレイを展開してソファーに座っていた、ジュエルシードの探索をしているらしくすぐ視線を元に戻す。

「おはよ」

「フェイトに抱きしめられててどうだった?」

「犯人はお前か!?」

 思わぬ人が犯人でツッコミをいれる、流石に予想外だった。

「寝辛そうだったからベッドに運んだんだけど、すぐにフェイトが抱き枕にしちゃってね、でも役得じゃないか」

「お陰で朝から変に疲れたけどね」

「そうだ、これ鳴ってたよ」

 携帯をこっちに投げて受け取ると、十件くらい士郎から電話が来ていた。

 これは不味いと本能が察した。

「……………………うわあ」

「どうしたんだい?」

 凄く気不味そうな表情をする立夏にアルフが気になって様子を見に来る。

「電話誰からだい?」

「しろ……父さんから」

「あ~、帰った方がよさそうだね」

「悪い、もう帰るよ」

 帰ったらどんな説教が待っているのか正直想像もしたくない、無断で一日帰らなかったのがやっぱり仇となったようだ。

 二階に上がってそっとアリシアを起こし、フェイトに置手紙をして遠見市を後にした。

 朝靄に包まれた高町家はやたらと静かだったが家の中からは人の気配がする、そっと玄関を開け恐る恐るリビングに入ると士郎がソファーに座っていた。

「た、ただいま」

「おかえり、立夏こっちにおいで」

 少し怒気を含んだような口調に、背筋に寒気が走りすぐに士郎の隣に座る。

「どうして昨日は帰ってこなかった?」

「……言えません」

 正直言うわけにもいかない、だから何も言わない選択肢を選んだ。立夏の目をじっと士郎は見て厳しかった表情は緩んでいく。

「そうか、半端なことで帰らなった訳じゃないんだな?」

「え、えーと、そうです」

 あの場で管理局の船に乗るわけにもいかなかったし、かといって家に帰ったとしても局員が居れば連れて行かれた可能性もある。士郎は遊んでいたりで帰らなかったのかと思っていたのだろう。

「ならいい、それよりよかったよ。お前が連れ去られたりしていないか心配だったんだぞ」

「……ごめんなさい」

 そうだった、立夏はまだ九歳で子供が帰ってこなければ親が心配するのは当たり前だ。それを連絡もなしに無断外泊しなのだから怒るのは当然だろう、安心したのか士郎は立ち上がり。

「じゃあ朝練を始めよう、今日は手厳しく行くぞ」

「は、はい」

 これから二時間、みっちり扱かれた立夏であった。

 朝練を終え、シャワーを浴びて朝食を食べにリビングに降りるとなのはが居ないことに気がつく。

「あれ、なのはは?」

「え~とね、リンディさんっていう人の所に行ってるよ~」

「そ、そうですか」

 美由希から昨日のことを聞く、どうやらリンディという女性が家に来たらしい。

 なのはは預かるという名目で管理局の艦船に言っているようだ、これからどう動こうかパンをかじりながら考えているとピンポーンとチャイムが鳴る。

「は~い」

 桃子がパタパタと駆け足で玄関に向かう、しばらくして知らない女の人の声が聞こえ。

「立夏~、リンディさんよ~」

 呼ばれて玄関に向かうと、昨日クロノと話していた女性が玄関先に立っていた。

 優しそうな表情を浮かべてそっとお辞儀をする。

「初めまして。リンディ・ハラオウンです、昨日は息子がお世話になりました」

「月島立夏です、その節はどうも」

 お辞儀を返すと念話での会話が始まる。

(こちらとしては危害を加えるつもりはありません、ただこちらに来てくれるととっても嬉しいです)

(……なのはとユーノもそっちに居るんですよね)

 こくんと頷いて桃子と話を続けるリンディ、あくまで任意同行のようだ。昨日は断わった手前、艦長自ら出てこられると断わり辛い。

(分かりました、ではそっちに話を合わせます)

(助かります)

 今は着いて行くしかないだろうと今は話を合わせ、数日の泊まる準備をして立夏は家を出た。

 




タイトル通りフェイト回です、あとこれからアリシアが鍵になって行きます。

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