魔法少女リリカルなのは~FORTUNE LINKAGE~   作:桐谷立夏

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昔書いていたなのはのSSをまた書いてみようと思い投稿しました。

キャラ崩壊等はないと思いますが、アニメと映画の話を織り交ぜ一応原作に沿いつつオリジナル展開になるので、気になった方はお付き合いいただけると嬉しいです。




無印編
第一話~邂逅~


第97管理外世界地球、海鳴市

 

「派手に戦ってるな~あの子、これ大丈夫か?」

「そうですね、ですが結界がありますから民間人には分かりませんし」

 空から黒のロングコートを纏った少年は、真下で戦っている少女を見ていた。

 白い防護服、バリアジャケットを装備している少女は雲の様な物体を追い掛けている、それは暴走しているある遺失物だ。

「ロストロギア、ジュエルシード。手に入れるのは容易じゃなさそうだ」

「暴走もしていますね、加勢しますか?」

「そうだな……」

 少し悩むように下を見たあと、右手に片手では持つのが少し大きい大剣が握られる。

 少年のデバイスでありその戦闘形態の一つだ。

「行くぞ、クラウ」

「はい、マスター」

 今は加勢することにして、少年は空から落下するように少女の元へと向かった。

「う~」

「落ち着いてください、まだ捕まえられます」

 少女とデバイスは必死にジュエルシードを追い掛けていた、中々速いが一体だけなのが幸いだろう。

 その向かう先に、黒のコートを着た少年が居るのを見つける。

「あ、危ないよ! 逃げて!」

「逃げて、ねえ」

 少年は剣を腰の横まで持っていき抜き打ちの構えを取ると、雲の化け物は少年に殺到した。

 その刹那、腕を袈裟掛けに振ると斬線上に斬撃が放たれ、化け物達は吹き飛ぶ。

「今だ、封印しろ」

「え、はい!」

「カノンモード」

 少女のデバイスが砲撃形態へ変わり、矛先から砲撃の閃光が駆ける。

 化け物、ジュエルシードの異相体は二つの宝石になり少女がそれを手にした。

「封印完了か」

「そうですね」

「挨拶にでも行くか」

 ゆっくりと少女の元へと向かう、綺麗な亜麻色の髪が風で揺れていて少し綺麗に見えた。

 左手には杖型のデバイスが握られている。

「さっきはありがとうございます、わたし高町なのはって言います。この子はレイジングハート」

「月島立夏だ、こいつはクラウ」

 フードを取るとやや短い黒髪をツンツンさせた少年の素顔が現れる。瞳の色も黒、身長もさほど高くないがなのはは同じくらいの年齢だろうと思った。

「えっと、立夏くんも魔法使いなの?」

「魔法使いか、まぁそうだな」

「そうだ、下に友達が居るんだけど一緒に行かないかな?」

「そうだな、話も聞きたいし行くよ」

 詳しく話も聞きたかったのもあり、立夏はなのはに着いて行く。ビルの屋上ではフェレット、ユーノ・スクライアが待っていた。

 ジュエルシードを発見した張本人で、面識は無いが名前等は聞いた事がある。

「さっきは手伝ってくれてありがとう、それと君は」

「管理局じゃないから心配はするな、俺は通りかがりの魔導……」

「うにゃあ!?」

 ぐぎゅ~、と腹を鳴らしながら立夏は倒れた。

 

数時間後

 

「美味しいです!」

「そう? どんと食べなさい!」

 立夏は高町家で夕食をご馳走になっていた、腹を空かせて丸二日は凄く辛かった。

 それに、凄く美味しいご飯を食べれて幸せである。

 なのはが近くの道を通りかがった時に倒れていたと言う説明をして最初は冷や冷やしたが、普通は警察に連絡するだろうと思った、しかし。

「大変だったでしょう? 家に居てもいいわよ」

「弟ができたような感じだな」

「なんかうれしいね」

 意外にも高町一家は立夏のことをなにも聞かず、厄介になることになった。

 夕食を終え、なのはの部屋ではユーノがジュエルシードの説明を始める。

「ちょっとしたきっかけで暴走してさっきみたいになる、危険なエネルギー結晶体なんです」

「そ、そんな、そんなものがなんで家の近所に?」

「ユーノが手配した管理局の次元船が事故で破壊されこの世界に散らばった、だろ?」

 余りにも詳しく話す立夏に、ユーノは少し驚きを隠せなかった。

「なんでそのことを? 立夏、君は」

「言ったろ、通りすがりの魔導師だ」

 あまり外に知られていない情報を持っている立夏にユーノは疑問を持つ、ジュエルシードが散逸したのを知っているのは一部の人間と管理局のだけの筈だ。

 ポーカーフェイスを維持しているのか、中々表情を崩さないところを見ると隠し事が得意な性格らしい。追及しても無駄だろうとユーノはこれ以上なにかを聞くのは諦めることにした。

「そうだ、立夏くんは地球の出身なの? 名前漢字だし」

「ああ、実質的に魔導師……になったのも最近だけどな」

 一瞬だけ、なのはは少し寂しげな表情をする立夏を見逃さなかったがあえて触れず。

「じゃあ私の先輩だね」

 話を逸らす、何故か聞いてはいけないことだろうと思った。

「だな、レイジングハートだったか、なのはの愛機と一緒に魔法とか教えるよ」

「うん! よろしくね」

 これが、高町家で過ごしていく日の始まりだった。そして戦いへ身を投じて行く日の始まり。

 その日の夜中、立夏はそっと道場に入る。この日はなのはの部屋で寝ることになったが中々寝つけなかった。それもそうだ、女の子の部屋で一緒に寝るなど緊張して中々できない。

 立夏もお年頃なので異性への興味が無いわけではない。とりあえず気持ちを落ち着かせるために道場へ来た。

 高町家は意外と大きい家だったが、道場があると聞いたときは少しびっくりした。

「ふぅ~」

 左手を上げ親指を折って手のひらを正面に向け、そこから右手で高速の掌底を打つ。

 その勢いで前方に体を浮かして一回転し二連の踵落とし、最後に地面に手をつき小さくなりながら片手で逆立してそこから蹴り上げる。

「おみごとです」

「まだまだだよ、母さんには」

「立夏は武術を嗜んでいるのか」

「!」

 クラウと話していると、入り口の方から声がして後ろを振り向く。

 そこにはなのはの父親である士郎が立っていた、全く気配を感じさせなかったあたり、しばらく立夏の動きを見ていたようだ。

「少し見てやろう、来なさい」

「……」

 士郎が中段に構えた。対して立夏は右手を額近くに、左手を腰近くで手をやや開き気味で構える。

 少しずつ間合いを詰めて士郎が正拳を放つ、左手を即座に動かして拳を捌き士郎の懐に入り右手を腹部に当てようとしたが。

「おっと」

 その瞬間、士郎が後ろに跳んだ、まるでこの後の動きを察するように。

「確か……烈震虎砲だったかな?」

「もう気付きましたか」

「捌き手も彼女に似てるしね、それなら僕もあまり加減は出来ない」

 近くにあった木刀を取る、すると気配が変わった。素手とは違う空気、明らかに強いとすぐに春紀は察する。

(達人クラスだな、でも剣なら)

 再び構える、士郎が中段から一瞬で間合いを詰めて振り落とす。

 雑がない綺麗で隙のない動きだ、木刀の側面を右手流すように捌く、そこから回し蹴りを繰り出すが木刀で防がれる。

「そう言えばその和服綺麗だね」

「ありがとうございます、母から貰ったものなので」

 袴には左側に紅葉が画かれている、対して上半身の薄目の胴着にも左側に紅葉が画かれていた。立夏の道着兼家での私服だ。

 褒められたのはいいが一応試合中だ、次は立夏が後ろに跳んで下がる。

「ふっ!」

 着地を狙い鋭い突きが放たれる。しかし木刀は立夏に当たることはなく、空中で身体を捻り木刀をその流れで蹴り飛ばす。

「っ!」

「終わり、ですね」

 拳が士郎の顔すれすれで止め、立夏がゆっくり離れる

「……君は何者だ?」

「ただの子供、じゃないですね」

 きっと士郎は立夏の身元を把握はしただろう、しかしなぜ行き倒れていたのかが気になる。

 それに歳の割には動きが鋭すぎだ。

 立夏にどんな事情があるかまでは想像できなかった。

「事情があるようだね、話せるようになったら話せるな?」

 真剣な表情で士郎が見つめてくる、だが立夏はすぐに目を逸らした。

「話せる時がくれば、それまで待って下さい」

「いいだろう」

「ありがとうございます」

 それだけを聞いて士郎は何も追求せず一人道場を出て、立夏はそっとなのはの部屋に戻る。起きる気配は無く静かに寝息をたてていた。

「こうしてみると可愛いな」

 今は髪を下ろしていて、その姿は桃子によく似ている。

 優しそうな表情をしながら寝ている姿を見て少しドギマギしてしまった

「……おやすみ、なのは」

 床に敷いてある布団に潜り込み立夏は眠りにつく。

 ―――思わず見惚れてたな俺。

 翌日、なのはは学校に行き部屋にはユーノと立夏だけが残った。しばらく無言が続いたが、ユーノが質問をしてくる。

「そうだ、立夏はなんでこの街に?」

「ん、一応この街出身だからさ。故郷に戻って来たのと用事で」

「じゃあ君はミッドチルダに居たのか」

「ああ、少しだけだけど」

 ミッドチルダは次元世界にある第一管理世界の名称だ。

 魔法技術が最も使われ、地球には無い最新の機械技術なども使われている。

「ユーノはこれからどうするんだ」

「僕の力が戻るまでここで休ませてもらう、後は僕一人で」

「んじゃ手伝うよ、ユーノ一人で二十一個はきついだろ?」

 実際に一人で散らばったジュエルシードを集めるのは大変だろう、それなら二人でやれば効率が圧倒的にいい。

 それと立夏には目的もある、それに乗り掛かった船だ。

「ありがとう、でもなのはさんは」

「それはお前が決めろ、とりあえずこの町を見て回ってくる」

「うん、お願い」

 寝巻きから着替えて家を出て辺りを散策しようと町並みを見ながら歩く、意外と広い町で賑やかだ。

 ミッドチルダとは違う賑やかさがあってなんだか気持ちいい、丁度そこに魔力を感じとった。

「ジュエルシードだな、反応は?」

「北の山にある神社ですね」

「急ぐか」

 クラウが場所を特定し、立夏は一人で目的地を目指して走り始めた。

 山の上にある神社に着くと巨大な犬のような獣が唸っていた、近くには女性が気を失って倒れている。

 彼女から気を逸らすために防護服を装備してクラウを待機状態から大剣へと状態を変え構えた。

「グォォォォ!」

「完全に暴走してるな」

「お二人が来ました」

「立夏くん!」

 後ろの階段を急いでなのはが上がってきたのに気を取られ、よそ見をした瞬間に空中へと吹き飛ばされる。

「ちっ……!」

「なのは、レイジングハートの起動を!」

「へ、起動ってなんだっけ?」

 まだ起動の仕方を覚えていないのか、杖のデバイスであるレイジングハートは待機状態のままだ。そうしている間に獣はなのはに向かって走ってくる。

「なのは!」

「スタンバイレディ」

 紅い珠が杖へと姿を変え防護服を装着して獣の攻撃を防ぐ。明らかに怪我でもしていておかしくない攻撃だったがなのはは無傷だった、相当高い防御力があるらしい。

 獣が攻撃を防がれて下がったところに立夏が追撃するために剣を下段に構えながら走る。

「セアッ!!」

 剣を下段から振り上げるとそれを避けるように獣は空高くジャンプすると、跳ぶ位置を予測して展開させていた射撃魔法を撃つ。

「プラズマランサー」

「グォオオオオ……」

 空中へ帯電している魔力で生成された矢が放たれ獣に直撃する、落下した瞬間に獣を蒼白い鎖が拘束し動きを封じた。

 額にはⅩⅥの数字が浮かび上がる。

「ジュエルシード、ナンバーⅩⅥ封印」

「シーリング」

 獣は小さい宝石になり、剣の鍔のところにある白い珠に入り消える。

 思ったより簡単にジュエルシードを手に入れられて立夏は少し拍子抜けした、これならまだ前の異相体の方が面倒だっただろう。

「封印完了です」

「ああ、なのは。お疲れ」

「え、うん。お疲れ様」

(なのはも凄いけど立夏、君は……)

 成り立てとは思えない俊敏さや魔法の使い方だ、まるで元々知っているかのように。こうして立夏たちは三つ目のジュエルシードを手に入れた。

 




立夏となのはたちの邂逅、ここからが全てのはじまり。

書き溜めがあるので最初は更新が早いと思います。

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