明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
投稿が遅い?
許せサスケ……これで最後だ(願望)
────魔法。
この一言を聞いて思い浮かべるのは一体何だろうか? 俺なら、それは浪漫だと答える。未知、夢、憧れ。生前の世界であれば、表現の差異こそあれど皆が似たような答えに辿り着く筈だ。
即ち、摩訶不思議な力。
しかし、この世界では魔法は摩訶不思議な力ではなくなり、科学的に解明されたものになった。結果として、人々が魔法に抱く印象は俺の考えるものとは全く違うものになる。
そもそもの話。魔法師が『戦争の道具』として見られるようになったのは、魔法が世界に認知された瞬間だった。
1999年。狂信者集団による核兵器テロを、とある警官が超能力を使って未然に阻止したことが現代魔法の始まりとされている。
当然のことながら、個人で核兵器を無力化する能力を世界はこぞって研究した。急速に進む現代魔法の研究は、時代の移り変わりと共に縮小していった古式魔法の儀式や退魔的要素を全て省き、戦争の道具として洗練されていったのだ。
つまり、現代魔法は、そもそもの成り立ちからして戦争利用を前提としているのである。
そんなモノに対して何の力も持たない一般人が抱いたのが、漠然とした恐怖だったのは当然の流れだったのだろう。
まだ魔法が未知の力であったのならば、羨望や嫉妬などの感情を持ったに違いない。しかし、そてが現実的な兵器として開発されたモノであれば、抱くものが恐怖や嫌悪になることなど分かりきっていた。
これが、最近台頭する反魔法的風潮の根底である。
────そんな中でも世界に12人しかいない特別な兵器が二人、テーブルを挟んで向かい合う。
時間は放課後、バレンタインデー。行きつけの喫茶店アイネ・ブリーゼで、リーナと俺はメニューに目を通していた。
生徒会を先に抜けて喫茶店で二人っきり。しかもそれがバレンタインデーともなれば甘い関係に見えるのだろうが、実際はそんな甘さなど欠片もない。
リーナは戦略級魔法師の調査として俺を監視したい。俺は兄さんから目を逸らさせる為に自分が戦略級魔法師であると疑われたい。そんな利害による渋さすら感じる関係だ。
最も、得ている利と害が釣り合っているとは限らないが。
「それで、わざわざ喫茶店に寄って。話って一体何かしら?」
腹の内で少し悪どいことを考えていると、わざわざ話があると言って店に入ったのに中々要件を切り出さない所為か、リーナが焦れた様子で聞いてくる。
「そう焦るな。飲み物くらい頼んだらどうだ?」
肩を竦め、奢ってやるよ。なんてメニューを差し出してみれば、彼女は少し苛立った様子で、結構よ。と言いながらもメニューを受け取った。どうやら奢られるのは嫌でも飲み物は頼むようだ。
メニュー表を捲るリーナの視線の先を情報次元から辿る。実に無駄のない無駄で素敵な魔法行使は、途中で躊躇いがちにデザートの写真に目が行ったのも見逃さない。その視線が、妙にチョコレートの部分に向ける回数が多いのは気づかないフリをするべきか。
くつくつと忍笑いを漏らし、リーナの許可なく顔見知りと言えるくらいには仲良くなったマスターを呼んでメニューを指差す。
「コーヒーとチョコレートケーキを二つ」
「ちょっと、勝手に頼まないで」
極めて常識的な文句を言ってくるリーナに、じゃあ取り消すか? と尋ねてみれば、返ってきたのは無言の睥睨だった。その反応が普段にも増して過剰なのは気のせいではないだろう。表情豊かな彼女の態度を可愛らしく思い、今度は隠すこともなく笑いを零す。
全く、誰がこの様子を見て彼女を兵器だと思うのだろう。
それも、世界に100といない戦略級の兵器だなんて。
「……コウヤ?」
考えていたことが表情に出ていたのだろうか。不思議そうに名前を呼ぶリーナに、何でもないと首を振る。
「ちょっと今日の夕飯について考えてただけさ」
「本当に? それにしては随分深刻な顔をしてたけど」
「いやまあ、家に帰ったらバレンタイン仕様の兄さんと深雪がいると思うとな……」
訝しげなリーナを誤魔化すように小さく苦笑を零す。
先ほどまで怒ったポーズを取っていたのに俺が少し考え込んだだけで態度を変えてしまう辺り、優しさというか甘さというか、彼女のチョロさが露見していた。
「ところで今日の授業で──」
と、コーヒーが来るまでの雑談を振りながら、何気なく窓の外へと視線を向ける。
────分からない、か。
兄さんの話ではここ最近、遠方──それも恐らく衛星からの監視を受けているらしい。しかし店内にいるからか、もしくは相手が敵意を持っていない為か、俺の知覚では監視されているのか判断できなかった。
兄さんと違い、俺の眼はイデアにアクセスする知覚は持っていない。イデアというデータバンクから
相手がこちらに対して敵意を持っているなら
──まあ、仕方ない。
衛星からの監視である以上、最低限のプライバシーは守られているはずだし、外出時に気を使ってればいいだけだ。つまり、普段とあまり変わらない。
ならば、過剰に警戒するだけ無駄だろう。
そう思考に一区切りつけて、記憶領域の片隅で構築していた魔法式をイデアに転写した。
「これは……防音魔法?」
魔法を発動した瞬間、少しだけ警戒を含んだ声音でリーナが呟く。可能な限り魔法の発動兆候は押さえたつもりだったが、それでも発動する直前に気づいた辺り流石だと言える。
「どういうつもり? この防音魔法、普通のものとは違うみたいだけど」
「ちょっと手を加えてあるが、別に害のあるものじゃないよ。少し内緒話でもしようと思ってな」
「内緒話?」
少しだけ張り詰めた空気の中、俺は敢えて普段通りの態度で話題を切り出した。
「まあ内緒話とは言っても、少し質問するだけだから硬くなる必要はないよ」
「……それで、質問ってなに?」
だから硬くなる必要はないって、なんて笑いながらも言葉を繋げる。
「前に言ってたが、確かリーナは実戦で活躍できる魔法師になりたいんだろ?」
「ええ、そうよ」
「どうしてだ?」
「え?」
キョトンと。
まるで何を聞かれたか理解できなかったかのようにリーナは首を傾げた。
それだけで、俺の聞きたかったことは無駄だったと理解する。
「どうして実戦で活躍できる魔法師になりたいと思ったんだ?」
「そんなのワタシが…………魔法師としてUSNAに貢献するためよ」
言い淀んだ長い間に入るのは「シリウスだから」という言葉だったのが、何故か簡単に想像できた。だからこそ──
「──戦争の道具になっても?」
「そんな……!」
「そういう事だろ? ……魔法師とはそういうモノだ」
「そんなことは──」
「ないとは言わせない」
だからこそ、迷いが生まれる。
「国が何の為に魔法師を育てているのか、知らない筈はないだろう? ……人を殺させる為だよ。戦いの道具にする為だ」
「…………っ!」
……やはり彼女はシリウスには向いていない。
こんな当たり前の、誰でも思いつく言葉に揺れてしまうのだから。
「俺は怖い。戦いなんて出たくないし、人殺しなんてやりたくない」
嘘は言わない。嘘は言葉の重みをなくしてしまう。
言葉の重みで彼女を縛るのに、嘘なんて必要ない。
「でも、国が求めているのはそういう魔法師だ。リーナは分かってるはずだ。実戦で戦える魔法師になりたいんだもんな?」
「それは、そんな……」
シリウスという立場にいる彼女は、俺の言葉を否定することは出来ない。しかし、リーナは俺の言葉を肯定することもできない。
否定も肯定もできず混迷とする意識。
二つの立ち位置の狭間に置かれ、思考が鈍る。
ここには彼女を導く者はいない。
国から離れ、外の音が一切届かない隔絶したこの空間には、俺の言葉を否定できるモノが一つもない。
彼女を肯定する者が誰もいない。
────俺以外には、誰も。
「でも、俺はリーナの目標には共感できるな」
「え?」
「リーナは国に貢献したいんだろ? その考えには共感できるし凄いと思う。俺はリーナとは少し違うけど、国や世界、そして魔法師の為に役立つ事をしたいんだ」
「魔法師の為に……?」
「ああ。俺は魔法が戦いに使われるのなんて嫌なんだ。魔法にはもっと大きな可能性がある!」
例えば今使っている防音魔法。この魔法を日常に用いるだけで、騒音問題という社会問題が一つ解決することになる。
最もたるのが兄さんの研究だ。魔法によるエネルギー問題の解決は世界を大きく変えることになるだろう。
本当は魔法についてリーナはどう考えているか知りたかった。
兄さんと同じ戦略級魔法師が何を思って国につくのか。
何を思って魔法を行使するのか。
しかし、それは聞けそうにない。だったら────
「魔法で世界を変えるんだ。今はまだ空回りしている魔法師という歯車を世界の中心にする。魔法で争うのではなく、魔法で争いの元を解決するんだ!」
理想を語り、毒を乗せる。
混迷とした心に光を与えるように。
強烈な光で他のものが見えなくなるように。
「リーナも協力してくれないか? 国の為に世界を変えよう!」
「国の、世界の為に……?」
アンジー・シリウスを否定し、アンジェリーナを肯定する。
国の為ではなく、より大きな世界の為にシリウスは必要ないとリーナの重荷を取り除く。
「そうさ。リーナがいればきっとできる!」
微笑み、手を差し出す。
蒼穹の瞳に深紅の光を映しこむ。
「リーナが必要なんだ。俺について来てくれないか?」
────俺の理想に染めてしまおう。
「ワタシ、は……ワタシ────」
躊躇いながらも手が伸びる。
リーナの手が、俺の手に触れる────
────その瞬間、2人だけの隔絶された空間に他の人が踏み込んだ。
静謐でいながらどこか張り詰めた空気が一瞬で解け、雑多な生活音が戻ってくる。
どちらからともなく、ため息がこぼれるのが分かった。
「お待たせ。ブラックコーヒーとチョコレートケーキです」
「────ありがとうございます」
思わず舌打ちしたい気持ちを抑え、笑顔でマスターに礼を言う。
もう一度ため息を吐き、思考を切り替る為にソーサーからカップを手に取りコーヒーを口に含んだ。
慣れたように行う一連の動作に、リーナの視線が注がれるのを感じる。どうやら俺の所作はUSNAの大統領とのお茶会でも通用しそうだ。
そんなことを考えながら、フォークを持ちケーキに差し込む。
「うん。美味い」
呟いて、気まずげにしているリーナに視線を向けた。未だに手をつけていないケーキをチラリと見て、食べないのかと目で促す。
それに後押しされたのか、少しぎこちなさを残しながらもリーナもケーキを口に入れた。そして、小さく目を見開いて呟く。
「……美味しい」
「そりゃ良かった」
思わず漏れた声だったのか、感想に感想を返してみれば、少し恥ずかしそうに目を逸らした。リーナは気まずげに少し視線をさまよわせて、やがて俺の手元で視線を止める。
「その……コウヤはチョコが好きなの?」
「好きか嫌いかで聞かれたら好きだな。……カカオ99%とかではない限りだけど」
「何よ、まだ根に持ってるの?」
「まだってほど前じゃないだろ。お陰でカバンを新調する羽目になりそうだ」
「……確かにアレはちょっとどうかと思うけど」
「ホント勘弁して欲しいよ……」
普段、弄ってくる真由美を逆にからかっているつけか。カバンから漂ってくる濃いカカオ臭に、思わずため息を吐く。やろうと思えば魔法で嗅覚や味覚を誤魔化せるが、流石に人から貰った食べ物に対してソレをするのは何となく自分の中の良心や良識が邪魔をしていた。
「まあ、食べ物を粗末にする気もないし、貰ったものはちゃんと食べるさ」
「ふーん。そういうところは随分と律儀なのね」
「何だかでバレンタインも貰える分には嬉しいからな」
そう言って、チラリとリーナの鞄に目を向ける。
そして別に何を言うわけでもなく、ただ含みを持たせた笑みをリーナに向けた。
一年っておはやぁい。
前回の投稿が昨日のことのようだ(10ヶ月前)
昨日実は風邪を引いていたのですが気付かず、
朝から体がふわふわして軽いなぁとか思いながら過ごし、夜に飲んだ後車に乗って酔ったところで違和感を覚え、家に帰ってお風呂に入る前にようやく微熱だったことに気付きました。その頃にはもう大晦日でしたまる
3年ぶりくらいに熱を出しましたが今日の朝には治ってたので、無事によいお年を迎えることになりそうです。皆様も体調には気を付けて、よいお年をお迎えください。
以下必要性を感じないけど趣味でやる本文解説。………解説?
『現代魔法の始まり』
・警官だったって最近知った。
『アイネブリーゼ』
・入学からの行きつけなのに8巻まで店名が分からない。原作でマスターの台詞探すのに30分かかった。
『無駄に洗練された無駄の無い無駄な魔法』
・つまり無駄。
『衛星からの監視』
・お兄様の知覚能力どうなってんの……
『勧誘(誘惑)』
・せや!戦略級魔法師手駒にしたろ!
・衝動的にやった。
『防音魔法(改造)』
・多分本当に害はない。ただちょっと耳鳴りがするほど静かで、内部の音を反射するだけ。
『嘘は言わない』
・嘘つきの常套句。でも嘘じゃないかも?
『世界の為に』
・言ってることが悪人のそれ。ファンタスティックビースト2観たい。
『チョコ』
・渡すと思った? 残念トリックだよ!(書けなかっただけ)
・渡したか渡してないかは考えてないので妄想で補ってください。
『次の投稿』
・知らんな。
そんなことよりコレ書くのに集中し過ぎてボックスガチャ残り50箱開け損ねたんですけど!?