魔法科高校の劣等生 〜夜を照らす紅〜   作:天兎フウ

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言い訳はしません。書く気力が起きませんでした!反省はしています。だが後悔はしていない!


……はい、申し訳ありません。できるだけ間を開けずに投稿できるようにしますが、これからもこんなことがあると思います。
ですが、何度も言っているようにエタることはしません。

それから、いつの間にかお気に入りが1000件を超えていました。これも皆様のおかげです。誠にありがとうございます。

気分次第で投稿が遅くなるような作者ですが、こんなのでもよければこれからもよろしくお願いします!



九校戦編Ⅲ

 

 

兄さんと別れた俺は少しうんざりしながら他のチームメイトたちを片手間に対応する。正直、とても面倒なのでさっさと終わらせたいのだが、俺のそんな気も知らずにチームメイトたち(特に女子)は騒がしくしながら俺の周りに寄ってくる。これじゃあ深雪の方はもっと大変なのだろうと深雪の健闘を祈っておく。

そんな中、九島烈の挨拶が始まる頃になり、やっと俺は解放された。さすがに他の人達も九島烈は気になるようだ。

そしてついに九島烈の名前が呼ばれ、会場の全員が息をのんで檀上を見つめる。そんなとき、俺は自分の精神に魔法が干渉しているのを知覚した。少し驚きながら魔法を解析して、解析結果に呆れたようなため息を吐く。それと同時に檀上のスポットライトが金髪の女性を照らし出した。だが、檀上にいるのは女性だけではない。その後ろに一人の老人がたっていた。それこそが九島烈。成る程、確かにかつて最高と呼ばれた魔法師なだけはある。俺の視線に気が付いたのか、九島烈は視線をこちらに向けてニヤリと悪戯が成功した子供のような笑みを浮かべた。

九島烈が女性に囁き、女性がスッと脇に退くとライトが九島烈を照らし出した。同時に大きなどよめきが沸き起こる。

 

「まずは、悪ふざけに付き合わせたことを謝罪する」

 

九島烈はそう謝罪をすると、一度会場全体を見回してコツコツコツンと不規則に足音を立てながら檀上を左右に動く。

 

「今のはちょっとした余興だ。魔法というより手品の類だ。だが、手品のタネに気が付いた者は私の見たところ六人だけだった。つまり」

 

檀上の中央で足を止めた九島烈は再度会場を見回して、俺の姿を捉える。それに対して一つ頷くと、九島烈は楽しそうに笑った。

 

「もし私が君たちの殺害を目論むテロリストで、来賓に紛れて毒ガスなり爆弾なりを仕掛けたとしても、それを阻むべく行動を起こすことができたのは六人だけだ、ということだ」

 

そう言って九島烈が演説をする中、俺は声には出さずに笑い続けた。

成る程、これが老師か、ただの老いぼれなどとんでもない。かつて最巧と呼ばれた魔法師は未だに健在だ。はたして今の彼でも勝てる者は一体何人か、俺の知る限りでは片手の指で事足りるだろう。ああ、これが笑わずにいられるか。こんなにも楽しい気分は久しぶりだ。九島烈、それならば俺も期待に応えよう。その度胆を抜かしてやろうじゃないか。それなら先ずは、直接会って話してみようか。

後から思い返すと、この時の俺はまともなテンションじゃなかった。だが、それほどに俺の中に響くものがあったのだ。

 

 

 

懇親会も終わりそれぞれが好きに行動をする中、俺はホテルの最上階にあるVIPルームに足を運んでいた。普通なら俺のような一般の学生がこの階に入った時点で止められるのだが、俺は何の問題もなく目的地に到着した。恐らくはこれから会う人物が手を回しておいたのだろう。目的の部屋の扉の前で一つ息を整えるとインターホンのチャイムを鳴らす。数秒の沈黙の後、インターホンから90歳の老人とは思えない若々しい声が発せられた。

 

「入りたまえ」

「…失礼します」

 

オートで鍵が開錠されたのを確認して一言告げてから扉を開ける。中に入るとそこは廊下で直線で進んだ一番奥の扉が開いていた。開いている扉の前で立ち止まり、もう一度声を掛けてから部屋に足を入れる。

中はとても広く、多分俺たち一般の学生の部屋の五つ分はあるだろう。そんな部屋の中央に置かれたテーブルにいる人物がソファアに座ったまま無言で対面に座れと促すので、礼儀として一言告げてからソファアに座る。沈黙が降りる中、最初に切り出したのは老人の方だった。

 

「さて、初めまして司波紅夜……いや、氷雨夜光君」

「ええ、初めまして。九島閣下」

 

この挨拶に俺は予想していたことなので驚きはなく安堵する。原作知識で九島烈が俺たちを四葉の人間と気が付いていることは知っているので、もしも四葉紅夜として呼ばれたのではないかと面倒に思っていたが、どうやらそんなことはなかったようで本当に安心した。もちろんそれを悟られるようなことはせず、完璧なポーカーフェイスで話を続ける。

 

「それで、わざわざあのような方法で呼び出した理由は何でしょう」

「ははは、まあ、よくもあの呼び出しに気が付いたものだ」

「いえ、さすがに一度目では気が付けませんでしたよ。まさか魔法による手品の後にモールス符号なんていうアナログな方法を取るとは思ってもみませんでした」

 

九島烈の言葉に無言でジト目を送り、貴方がやったことだろうと呆れたような視線を向けるが、九島烈は気にした様子もなく話を続ける。

 

「君を呼び出した理由だったかな。実は特にはないのだよ」

「はい?」

 

わざわざあんな面倒な呼び出しをしておいて用事がないとは一体どういうことだろうか。そんな俺の疑問を感じたのか九島烈は笑いながら口を開いた。

 

「いや、正確にはもう用事は終わったというべきか。ここに君が来ること自体が用事だったのだ」

「……どういうことですか?」

「先ほどの演説でも言ったが、魔法とは手段であって目的ではない。特に戦略級魔法師ほどの力を持つ者は猶の事そのことを理解していなければならない。魔法という力の為に事を成すのではなく、事の為に魔法を使う必要がある。これを分かっていない者ほど魔法に便り、他の事が見えなくなってしまうのだ」

「成る程、それであのような呼び出しをしたということですか。確かに無知でありながら強大な力を持つほど危険な存在は有りませんからね」

 

つまり、九島烈は俺が力を持つ意味とかそういうのを含めた俺の人間性を見て危険な存在かを確認したかったということだろう。そして、この話を聞かされている時点で俺は九島烈に問題ないと判断されたということか。

結局、九島烈の話は本当にこれだけで他愛のない話を少しして終わった。ただ最後に、「試合を楽しみにしている」という言葉をもらったので俺はそれに対して「楽しませて見せますよ」と返して九島烈の笑い声を聞きながら退室した。

 

 

 

 

 

九島烈との話し合いを終えた俺は自分の部屋に戻る為にエレベーターのボタンを押して上がって来るのを待つ間の暇つぶしとして大きな窓から外の景色を眺めていた。ここが最上階ということもありなかなかいい景色だったので、じっくりと外を眺めていたのだが、ふと何か違和感を感じてホテルの真下を見下ろす。すると、そこには黒装束を着た怪しげな集団が気配を消して潜んでいた。何事かと思い【叡智の眼(ソフィア・サイト)】を展開する。

 

今いる場所はビルの最上階。常時展開している【叡智の眼(ソフィア・サイト)】の知覚範囲50メートルでは、地上の情報を観ることができない。──そう、()()()()()()()()場合だ。

俺の眼は、兄さんの【精霊の眼(エレメンタル・サイト)】のようにイデアを観ることはできない。情報の記録されたプラットフォームにアクセスする能力はなく、ただそこにある情報を知覚するだけだ。当然情報を調べるときに必要な労力、つまり情報を処理する魔法演算領域の負荷は俺の眼の方が大きくなる。故に兄さんの1キロという規格外の知覚範囲に対して、俺は50メートルという限られた範囲の情報しか読み取ることができないのだ。

しかし、逆説的に言えば、どれだけ情報量が大きくても魔法演算領域の容量が大きければ知覚範囲もそれだけ大きくなるということになる。

四葉の完成作である俺は、魔法演算領域を常に圧迫されている兄さんと比べ、遥かに魔法演算領域が大きい。それでも兄さんより知覚範囲が狭い理由は、戦闘に備えて常に魔法演算領域に空きを作っているからだ。少なくとも、俺の持つ魔法の中で最も負荷の必要とする【灼熱劫火(ゲヘナフレイム)】を常に発動できる程度には余裕を持たせていた。

つまり、戦闘時に俺の持つ本来の魔法のみを使うのならば知覚範囲は格段に広くなるし、魔法を必要としない状況であれば、演算領域の大半を情報処理に回すことで俺の知覚範囲はどこまでも拡大することが可能となる。

 

そんな訳で戦闘時ではない今、ホテルの真下でしかも視界に入っている相手を知覚するなど俺にとっては容易なことだった。そしてエイドスを視た結果、あの集団は武装をしている上に爆弾を所持していることが分かった。夜の暗闇に紛れて気配を消した武装集団なんてどう考えても平和ではない。【叡智の眼(ソフィア・サイト)】で相手を捕捉したまま到着したエレベーターで一階まで降りる。運の良いことに時間も時間だからかエレベーターは一度も止まることなく一階に着いた。そのまま急いでホテルを出た俺の知覚範囲に知った人物を二人捉える。どうやら兄さんと幹比古も賊に気が付いているようで二人とも賊を追いかけていた。

そして幹比古が古式魔法を発動する態勢に入る。だが俺と兄さんは幹比古の魔法が発動するよりも早く賊が拳銃を撃つ方が早いのを認識していた。そこで兄さんが援護の為に拳銃に分解を照準しているのを知覚した俺は同じく援護の為に収束・移動魔法によって突風を起こし賊の足止めをする。その直後、幹比古の発動した【雷童子】によって賊が打倒された。

 

「誰だ!」

「俺だ」

「達也?」

 

幹比古の警戒心を露わにした声に兄さんが返し姿を見せたところで俺も同様に二人の前に出る。

 

「お疲れ兄さん。それと初めまして幹比古」

 

突然姿を現した俺に幹比古が警戒するが自己紹介を聞いて警戒心を解く。

 

「君は……確か達也の弟の司波紅夜さんだっけ?」

「ああ、改めて初めまして幹比古、俺のことは紅夜と呼んでくれ」

「う、うん。初めまして、紅夜。僕は吉田幹比古だ」

 

お互いに挨拶が終わったところで俺たちは生垣の向こうに倒れている賊に視線を移すと自己加重術式を行使して生垣を飛び越える。着地をすると真っ先に賊に近づいた兄さんが賊の状態を確認する。

 

「死んでいない。良い腕だな」

「え?」

「ブラインドポジションから複数の敵に対して遠隔攻撃。捕獲を目的とした攻撃で、相手に致命傷を与えることなく一撃で無力化している。ベストの戦果だな」

「……でも僕の魔法は本来なら間に合っていなかった。達也と紅夜の援護がなかったら僕は撃たれていた」

 

何故か幹比古は褒め言葉に自嘲を込めた返しをする。

 

「アホか」

「……え?」

「おいおい幹比古。援護がなかったらというのは仮定の話だろ。事実、お前の魔法で賊の捕獲は成功したんだから問題ないだろ。仮定じゃなくて結果を見ろ」

 

兄さんと俺の容赦のない指摘に幹比古は面食らう。

 

「現実に俺と紅夜の支援があって、現実にお前の魔法は間に合った。本来ならば? 幹比古、お前はいったい、何を本来の姿と思っているんだ?」

「それは……」

「相手が何人いても、どんな相手でも、誰の援護も必要とせず、勝利することができる。まさかそんなものを基準にしているんじゃないだろうな?」

「……達也に言っても分からないよ。言ってもどうにもならないことなんだ」

 

兄さんの言葉に幹比古は困惑しながらも暗い声音で返す。だがそれは俺から見れば逃げとしか思えない。

 

「どうにかなるかもしれないぞ」

「えっ……!?」

 

そんな逃げ道を兄さんが塞いだことで幹比古は絶句した。

 

「幹比古、お前が気にしているのは魔法の発動速度じゃないか?」

「……エリカに聞いたのかい?」

「否」

「……じゃあなんで」

「お前の術式には無駄が多すぎる」

「ああ、確かに」

「……何だって?」

「お前の能力に問題があるのではなく、お前が使用している術式そのものに問題があると言ったんだ。魔法が自分の思うように発動しないのはその所為だ」

「何でそんなことが分かるんだよ!」

 

幹比古が叫ぶのも当然かもしれない。古式魔法は古くから何年もかけて改良に改良を重ねてきたものだ。それを一度見ただけで欠陥品扱いされれば叫びたくもなるだろう。しかも幹比古の様子を見る限り、自分自身でも密かに考えていながら見ないようにしていた疑念のようだから猶更だ。

 

「俺たちには分かるんだよ。信じてもらう必要はないがな」

「……何だって?」

「俺と紅夜は『視る』だけで魔法の構造が解る。視るだけで起動式の記述内容を読み取り、魔法式を解析することができる」

 

俺と兄さんが当たり前のように使っているし、真由美や摩利もすぐに受け入れたことだから忘れがちかもしれないが、魔法の術式が見ただけで解読できるというのは普通ならあり得ないことなのだ。

 

「……無理に信じてもらう必要はない」

 

兄さんがもう一度突き放すように言った。

 

「兄さんも幹比古も今日のところは、この話はここまでにしよう。それよりこいつ等の処置だ。俺が見張っているから、どっちかが警備隊員を呼んできてくれないか?」

 

空気を変える為にも俺が話題を打ち切り別のものにする。

 

「あ、僕が呼びに行くよ」

「分かった、待ってる」

「じゃあよろしく」

 

幹比古が先ほどと同じく【跳躍】を行使して生垣の向こうに消えたのを確認すると兄さんと一緒に賊を拘束する手段を考える。方法としては様々なものがあり、俺の得意な収束魔法で固定して捉えたり、加重魔法で動けなくすることもできるが、どちらも魔法を継続して発動しなければならないので却下。減速魔法で凍らせるのも有りだが加減を間違えると大怪我になるのでこれもなし。結果、兄さんの案で分離と移動を使って地面に埋めることにした。地面に埋めるために使う魔法は全部で五工程が必要で兄さんの処理速度では時間が掛かる為、俺が魔法を行使することとなった。しかし、俺がCADにサイオンを注ごうとしたところでそれは無駄になった。

 

「随分と容赦のない指摘だったな、特尉方」

「少佐、聞いておられたのですか?」

「他人に無関心な特尉には珍しいのではないか?」

「無関心は言い過ぎだと思いますが」

「それとも身につまされたか? あの少年も君と似た悩みを抱えているようだからな」

「あのレベルの悩みなら自分は既に卒業済みです」

「つまり身に覚えがあるということか?」

「……この者たちをお願いしてもよろしいでしょうか」

 

風間が人の悪い笑みを浮かべながら追撃を重ね、退路を失った兄さんは話をそらした。その後は、賊の処置や目的について少し話してから、詳しい話は明日にすることにして終わった。

別れる直前、風間は少し足を止めると少し笑みを浮かべながら俺に質問をしてきた。

 

「ところで紅夜の方は達也と同じような悩みはあったのか?」

 

紅夜と名前で呼んでいることからも分かるように、風間にとってはちょっとした興味本位だったのだろうが、その質問は俺にとっては少し難しいものだった。

 

「……いえ、魔法の才能について悩んだことは一度もありませんよ。ただ、思った通りに魔法が使えないもどかしさなら少しは理解できます」

 

転生してからしばらくの間はサイオンの暴走によってまともに魔法が使えなかったのでかなり悔しい思いをしたのは未だに覚えている。

風間は俺が魔法を使えるようになってから出会ったからか、それをすっかり忘れていたようで、少しバツの悪そうな顔をした後「そうか」と一言だけ告げて別れた。

 

 

 

 

 





急いで書いたので少し変かもしれません。後で修正するかもです。

それにしてもまたプロットにないことを書いてしまった……





以下本編の補足的な何か

【九島烈】
作者が結構好きなキャラ。基本心の中では殆どの人を呼び捨てにしている紅夜がフルネームで呼んでる辺り、大物感が溢れている。

【叡智の眼】
何かまた変な設定を加えてしまいました。プロットにはなかった筈なのに……
書きながら考えた後付け設定なので、どこか矛盾があるかもしれません。
実はこの【叡智の眼】、プロットでは【賢者の眼(ソーサリー・サイト)】という名前で、改変されたエイドスを視て魔法を解析できるだけの能力だったんですが、書いてるうちに何故か【叡智の眼】になっていました。
どうしてこうなった……

【賊との戦闘】
これも書く筈ではありませんでした。プロットの意味が……



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