窓付きが異世界から来るそうですよ?   作:一反目連

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およそ一年ぶり、お久しぶりです。
FGOで時間を潰し、小説書くにも納得のいく出来にできずに止めてしまい、仕方なしに書いてみた此方の話が何故か割りとスラスラと書けてしまったので投稿します。
誤字指摘、感想などお待ちしています。


5.夢賚之良(むらいのりょう)

「私の夢は、一つの異空間なんだったんだよ」

 

思い直せば私は自身の事、自身のギフトの事について、全く説明をしていなかったので、皆に説明をする事にした。

 

「私が子供の頃に見た夢、それが私の恩恵(ギフト)の本質たる物だね。そして私の夢の中で探索をして手に入れたのが、『エフェクト』。エフェクトにはそれぞれ効果がある」

 

私は『★△ずきん★』を使うと、幽霊が頭に付けているような三角頭巾が私の頭に付いた。

 

「私のエフェクトの一つ、『★△ずきん★』を例に挙げて説明するね」

 

私が念じると、自身の身体がぼやける様に薄くなった。

 

「見ての通り、使用すると私の身体が半透明になるの。このエフェクトをつかってると敵性存在に追跡されなくなるんだ」

「敵性存在?お前の夢には敵キャラまでいるのか?」

「うん。捕まったら最後、脱出不可能な空間へ閉じ込められるから私や娘達は『幽閉キャラ』なんて言ってたりもしたね。」

 

私の場合は鳥人間であったが、娘の一人である『うろつき』は黒い女性だったらしい。私は『★△ずきん★』を解除し、卵状の物質として実体化させる。

 

「あと、エフェクトはこうやって物質として出現させる事もできるね。娘達のエフェクトはこの状態で貰ったから、この状態なら人への譲渡が可能なんだと思う」

恩恵(ギフト)の譲渡が簡単に可能とは……」

 

私はエフェクトを戻し、言葉を続ける。

 

「ただ、エフェクトの全てに意味があるわけじゃないの。姿が変わるだけだったり、特に意味の無い効果だったり、そういうエフェクトも多数存在するね」

「成程のぅ……」

「で、私の夢の世界には敵性存在以外の存在も居る。私が大人になってから夢の世界で会ったら自我がより明確になった状態で会うことができたんだ」

 

ただ、私も本名は知らない。多分本名なんて無いのだろう。だから私はあだ名のような物で呼ぶようにしていた。モノ子、モノ江、ポニ子、マフラー子、かまくら子―――

 

「そして、先生っていうのはその中の一人。何となく先生って感じがしたから先生」

「そうか……」

「何でかは知らないけど、他の皆からは『センチメンタル小室マイケル坂本ダダ先生』なんで呼ばれていた時期もあったね」

「まるで意味がわからねぇぞ!?」

 

十六夜の突っ込む気持ちはわかるが、私も分からないのだから仕方が無いだろう。

 

「で、私が寿命で死んだ時に先生が私の今の体と娘達のエフェクトをくれて、あとは皆が知ってる通り黒ウサギに召喚されたの」

 

   *   *   *   *   *

 

 説明し終えて暫く静寂が流れると、始めに白夜叉が話を切り出してくる。

 

「おんしの恩恵(ギフト)はわかった。しかし……その先生とやらは何か優秀な魔術師だった、とかではないのか?」

「うーん……元々が夢の中の人物だし、偶に蘊蓄とか言える程度の知識はあるけど、魔術師ではないと思う」

「しかしその身体は素晴らしい完成度……ううむ、謎に包まれておるな」

「でも、漸く窓付きさんに娘がいる、って事に納得がいったわ」

 

 うんうんと頷く飛鳥に、耀も同じ様にして同意する。

 

「で、結局窓付きのエフェクトの数が分からないんだが?」

 

 十六夜の言葉に黒ウサギも白夜叉も、全員が口を閉ざす。そしてその目は口よりも雄弁に語っていた。即ち、『気になる』と。

 

「えっと……結構な数だから、数えるのに時間かかるし、今は遠慮したいんだけど……」

「チッ」

「……さっき舌打ちした?」

「気のせいだろ」

 

 十六夜はあからさまに目を逸らして、口笛を吹く。どうやらこの少年は誤魔化すつもりなんて殆んど無いらしい。私は溜め息をついて、話を変えることにした。

 

「ところで十六夜のギフトって何なの?」

「ん?ああ、そういえば窓付きが余りにも面白―――ん゙ん゙っ、衝撃的だったもんだから忘れかけてたな。これってレアケースなのか?」

 

 そう言って十六夜はギフトカードを白夜叉に見せると、白夜叉の表情が劇的なまでに変化した。

 

「……いや、そんな馬鹿な」

 

 尋常ならざる雰囲気で、白夜叉はすぐさまギフトカードを取り上げた。真剣な眼差しでギフトカードを見る白夜叉のそれは、まさしく有り得ない物を見たかのような……?

 

「"正体不明(コード・アンノウン)"だと……? いいやありえん、全知である"ラプラスの紙片"がエラーを起こすはずなど」

「何にせよ、鑑定は出来なかったってことだろ。俺的にはこの方がありがたいさ」

 

 パシッと十六夜はギフトカードを白夜叉から取り上げる。白夜叉が納得できないように怪訝な瞳で十六夜を睨んでいるが、世の中不可解な事で溢れていると知ってる私からすると、余り気にしない方が良いと思うのだけど。

 私達が暖簾の下げられた店前に移動すると、私と耀、そして黒ウサギは一礼した。

 

「今日はありがとう。また遊んでくれると嬉しい」

「あら、駄目よ春日部さん。次に挑戦するときは対等の条件で挑むのだもの」

「ああ。吐いた唾を飲み込むなんて、格好付かねえからな。次は渾身の大舞台で挑むぜ」

「私も十六夜達ほど好戦的にはなれないけど……私なりに、全力を尽くすつもりだよ」

「ふふ、よかろう。楽しみにしておけ。……ところで」

 

 白夜叉はスッと真剣な面立ちとなり、私達の方を見る。

 

「今さらだが、一つだけ聞かせてくれ。おんしらは自分達のコミュニティがどういう状況にあるか、よく理解しているか?」

「ああ、名前とか旗の話か? それなら聞いたぜ」

「ならそれを取り戻すために、"魔王"と戦わねばならんことも?」

「聞いてるわよ」

「……。では、おんしらは全てを承知の上で黒ウサギのコミュニティに加入するのだな?」

 

 チラリと横目で黒ウサギを見ると、ドキリとした顔で視線をそらしている。きっとコミュニティの現状を秘密にしようとしてたことに、後ろめたさを感じてるのだろう。

 

「そうよ。打倒魔王なんてカッコいいじゃない」

「"カッコいい"で済む話ではないのだがの……全く、若さゆえのものなのか。無謀というか、勇敢というか。まあ、魔王がどういうものかはコミュニティに帰ればわかるだろ。それでも魔王と戦う事を望むというなら止めんが……そこの娘二人。おんしらは確実に死ぬぞ」

 

 その白夜叉の言葉には予言のような確信が込められていた。そして……私もその言葉に賛同するほどに、彼女達はまだ弱かった。

 

「魔王の前に様々なギフトゲームに挑んで力を付けろ。小僧と窓付きならばまだ良いが、おんしら二人の力では魔王のゲームを生き残れん。嵐に巻き込まれた虫が無様に死ぬ様は、いつ見ても悲しいものだ」

「……白夜叉。私も概ね同意だけど、少しだけ言葉が厳しいよ? 例え貴女が太陽と白夜の星霊(ヒトナラザルモノ)であっても、人の価値観が理解できるなら少しは言葉を選ぶべきだね」

 

 少しだけ怒ったように私が言うと、白夜叉は少しばかり考えこみ、飛鳥達に頭を下げた。

 

「窓付きの言う通りではあるな。小娘、悪かった」

「い、いえ……それは余り気にしてないわ」

「白夜叉も窓付きも、私達を貶める為に言ってるんじゃなくて、きちんと先を案じて言ってくれてるのは分かるから……」

 

 私は少しだけ驚く。二人はまだ若く、そして……恩恵(ギフト)の影響なのか、その年を考慮しても精神的に未成熟(おさない)と言える。いや、それを彼女達自身、理解してるのかもしれない。

 

「まあ、白夜叉さんの忠告は肝に銘じておくわ。次は貴女の本気のゲームに挑みに行くから、覚悟しておきなさい」

「ふふ、望むところだ。私は三三四五外門に本拠を構えておる。いつでも遊びに来い。……ただし、黒ウサギをチップに賭けてもらうがの」

「嫌です!」

 

 即答で返す黒ウサギと拗ねたような素振りを見せる白夜叉が問答を繰り返す様を見ると、まるで姉妹のような仲つむまじさを感じる。きっと、彼女達も彼女達なりに十六夜達の行く末を考えてくれているのだろう。

 私達は店を出ると無愛想な女性店員に見送られて"サウザンドアイズ"二一〇五三八〇外門支店を後にした。




今回出てきたエフェクト 6/115

★△ずきん★
登場作品:ゆめにっき
・頭に幽霊のような三角頭巾を被る
 ・テンキー1で姿が半透明になる
 ・半透明である間は追尾されない

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